第1章7話 『言い争い』
「アベル、話を聞いていますか?」
「…ごめん、何の話だっけ?」
夕食の時間、上の空で食事を食べているとシスターがこちらを睨んでいた。
「…冒険者ギルドに行っていたでしょう?
まだ冒険者になるなんて夢を見ているんですか?
行ってることは知ってましたし、アンナから危ないことは何もさせていないから安心して、なんて言われていたから見て見ぬ振りをしていました。
ですが貴方ももう12歳。冒険者になることができる歳になってしまった。」
「…なるよ、冒険者。」
「何度も言っているでしょう。そんな危ない仕事じゃなくたっていいじゃないですか。
男の子がカッコいいものに憧れるということは知っています。
だったら騎士を目指してもいいし、魔術が好きなら魔術学校に行くのもいいじゃないですか。
何も冒険者ではなくても…。」
「俺は!冒険者になるんだ!」
シスターの言葉を遮って叫ぶ。
イライラしていた自覚はあった。だが自分が思っていた以上に気持ちが荒れていたようだ。
思わず大声で言い返してしまった。
「何故そこまで冒険者に憧れるんですか!?冒険者じゃなくたっていいでしょう!」
「シスターこそ何でそこまで否定するんだよ!」
「私の両親は冒険者で、そして亡くなったからです。」
俺はハッと息を飲む。
「だから家族の心配をするのは当たり前です!私の両親と、私のような目に遭わせたくなかったからです!」
シスターが頑なに冒険者に反対していた理由がわかった。
しかし、虫の居所が悪かった余計な一言を言ってしまった。
「…でも俺とシスターは本当の家族じゃない。」
パァン。
乾いた音とともに俺の頰に鋭い痛みが走る。
シスターは泣きながら外に走り去って行った。
「何を言っているんだ俺は…。」
叩かれた痛みで頭が冷えた。
精神年齢30代の男が一体何にキレてるんだ。
精神が体の年齢に引きずられているとは言っても今のなんてただのガキだったじゃないか。
頭を机に叩きつける。
気恥ずかしさと申し訳なさを紛らわすために。
「謝らないとな…。」




