第1章3話 『冒険者ギルド』
シスターの説得に失敗してしまった。
だがこんなことで諦めるわけがない。
説得できないなら実力行使だ。
1人で冒険者ギルドに行く。
この1ヶ月の間に、シスターと外出した時に冒険者ギルドの位置は把握している。
そして都合のいいことにシスターは明日、午前中は用事で外出すると言っていた。
ならばその間に冒険者ギルドに行く。
「…じゃあ、私は出かけます。1人でお留守番をお願いします。
誰か来ても出ちゃダメですよ。」
そう言ってシスターは出かけて行った。
昨日から少し機嫌が良くないようだが俺も折れる気は無い。
シスターが出てから30分ほど経ってから鍵を閉めて孤児院を出る。
歩いて15分ほどのところに冒険者ギルドはあった。
思っていたよりもずっと近かった。
石造りの二階建ての建物、孤児院よりもずっと大きい。
いざ、目の前に立つと緊張してきた…。
「どうしたの?うちに何か用事?」
後ろから声をかけられて慌てて振り向く。
そこにいたのは柔らかい笑顔を浮かべた女性。
うちってことはギルド関係者だ。
「あの、冒険者になりたくてきました!」
「そうなのかー。うーん…とりあえず入っていく?」
「はい!」
もしかしたらギルド関係者に案内をしてもらえるかもしれない。
扉を開け建物に入る。
俺は、冒険者たちが集まって賑やかな場所をイメージしていたのだが、ギルド内は静かで何人か冒険者と関係者がいただけだった。
「初めて来た人はがっかりするんだけど、昼とかはみんなクエストに出てるからあんまり人はいないのよ。
夜になると人が多くなるんだけどね。」
顔に出ていたのだろうか。
「冒険者ギルド、カデナ支部へようこそ。
私は受付をしているアンナ、よろしくね。」
そう言ってアンナさんは俺にウインクをする。
「アベル・グラントです。よろしくお願いします!」
「アベルくんって言うのね。
…それでね、アベルくん。冒険者になれるのは12歳になってからなの。」
年齢制限があるのか!
…いや、当たり前か。
命のかかることが多い仕事だもんな。
12歳でも早すぎるくらいかもしれない。
「俺はまだ5歳です。でも、冒険者になって活躍したいんです。
だから、色々なことを早く覚えたいんです。」
「そういうことだったら、私が色々教えてあげる。
危ないことはさせられないけどね。」
アンナさんは優しく俺の頭を撫でる。
精神年齢でいうと30近くだから少し恥ずかしい。
冒険者にはまだなれないが、いい出会いができた。
ともあれ、これで冒険者としての知識をえることができる。




