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第1章10話『現実を知る』

冒険者の強さは等級で決まる。


駆け出しは10等級、そこから1つずつ上がっていって一番上が1等級。


1等級など各国数人程度しかおらず、もはや英雄的な立ち位置になる。


俺はまだ10等級。

駆け出しのこなせるクエストなどたかが知れている。


だがどれだけ小さな一歩でも一歩は一歩だ。


チートがないとわかった今、地道に進んでいくしかないのだ。


魔術師としては三流以下の能力しか持ち得ないなら戦士として強くなっていけばいい。


「アベル、クエスト帰りか?」


「はい、お疲れ様です!」


「おう、気ぃつけろよ。どんなクエストだって命がかかることがあるんだからな。」


カデナ支部の先輩冒険者に挨拶をし、ギルドへ報告をしにいく。


今日のクエストはジャイアントラット退治。

近隣の農家の作物を荒らす魔獣で、大きさは大型犬ほどの大きさのネズミだ。


ただ、雑食で人を喰うこともある。一度味をしめたジャイアントラットは厄介なのだ。


「お疲れ様です。ギルドマスターは訓練室にいますよ。」


今日の受付はアンナさんではなかった。

もう長いことここにもきてるからみんな顔馴染みなんだけどね。

ギルドでの報告を終えて、ギルド内にある訓練室へ向かう。


訓練室へ行くとギルマスが腕を組んで立っていた。


「ギルマス?どうしたんですか?」


「…アベル、打ってこい。」


ギルマスは床に置いていた木剣を投げてよこす。


いつもの訓練とは違う雰囲気。


剣を掴んだと同時に走り出す。


右上段からの振り下ろし、あっさりと受け止められる。


受け止められた状態から、前蹴りをし、ギルマスと一旦距離を取る。

そしてそのまま突きを繰り出す。


「…やはりな。」


ギルマスは俺の剣を弾き飛ばす。


「アベル、お前は戦士には向いていない。」


「…は?」


「このまま戦士としてやっていっても8等級、よくて7等級冒険者が限界だ。」


いきなり何を言い出すんだ…?

ギルマス、筋がいいって褒めてくれてたじゃないか。


「お前が冒険者に強く憧れてるのは知っている。

だから冒険者を諦めろとは言わねぇ。戦士、いや、戦闘職は諦めろ。

斥候とかならもう少し上に行けるかもしれん。」


ギルマスは床に落ちた木剣を片付けながらいつも通りといった感じで話している。


「…何をいってるんですか?」


「まぁ、どんなすごいパーティにも戦闘職じゃないやつもいるしな。

そういうとこを目指すのが現実的かもしれんな。」


「説明してくださいよ!」


「前に戦闘職の人間は、気を用いて身体を強化する話をしたな。」


高位の冒険者や、騎士は人間を超越したような身体能力を発揮する。

それは、気によって自分を強化しているとの話を前にギルマスがしていた。

ギルマスの動きを見せてもらった時は、俺にもこんな事が出来るようになるんだろうか、と信じられない気持ちだった。


「アベル、お前に、気は使えない。

中にはいるんだよ、気を扱えない奴が。魔術師とかに多いから、魔力とかが関係してるんだろうな。」


「そんな…。」


「アベル、お前は…。」


ギルマスが何か言葉を発する前に走り出す。


ギルドを出て、カデナの町から出て、それでも走る。


「何が魔力チートだよ馬鹿野郎!」


カデナから離れたところで走りながら叫ぶ。


「足引っ張ってるだけじゃねぇか!」


叫びながら走り続け、カデナからかなり離れたところで足を止める。


カデナで冒険者はもうできない。

遅かれ早かれみんないつかは俺が冒険者に向いてないことを知るだろう。

みんな、優しいから気を使ってくれるかもしれない。

でも、憐れまれながら冒険者を続けるなんて俺には無理だ。


「…誰も俺を知らないところへ行こう。」


ただの現実逃避。

でも、今俺にできることはそれくらいしか思いつかなかった。

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