表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
DH ~Dragon Heart~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

952/987

946:変容する迷宮











 肌を撫でる、蒸し暑い空気。噎せ返るような緑の香り。

 そして、数多の生命力に満ち溢れた、この気配。

 まさしくジャングルと呼ぶべきその光景に、俺は思わず顔を顰めた。

 正直なところ、こういった場所にはあまりいい思い出が無いのだ。



「中々、面倒臭そうなエリアだな」

「実際、結構面倒だと思いますよ。気温とかはアイテムで何とかなりますけど、視界は悪いし歩きづらいしで」



 他の門下生たちも、このエリアの難しさには気づいているようだ。

 視界が悪いのもそうだが、何よりも――この場所には、気配が多すぎる。

 生命力に満ち溢れているこのフィールドが、周囲の気配を覆い隠してしまうのだ。

 俺が感知できる範囲も、普段より狭まっていることは間違いない。

 流石に奇襲を受けるほどではないだろうが、常に周囲には気を配っておくべきだろう。



(木々となると、擬態している魔物もそれなりにいるだろうからな)



 木々に擬態しているトレント系魔物や、木の中で姿を隠している虫などの魔物。

 これらは奇襲に優れていることもあり、目視では察知することが難しい。

 だからこそ気配を探る必要があるのだが、この場所ではそれもある程度阻害されてしまうだろう。



「アリス、敵に気づいたら教えてくれ。ここだと、俺たちでも反応が遅れる可能性がある」

「了解。私にとっては得意なフィールドだけどね、ここ」



 姿を隠して戦うアリスにとっては、森の中は有利な場所である。

 足場も多く、トリッキーな動きもしやすいことだろう。

 生き生きとした様子の彼女に苦笑しつつ、俺は緋真へと視線を向けた。



「ここの情報は増えてるか?」

「いや、そんなにはですね。ただ、通常の魔物についての情報は多少出て来てます。今度は蛇系が多いみたいですね」

「蛇か……森の中では、面倒な相手だな」



 足が無いため、森の中であっても音を立てづらい。

 場合によっては、木の上から落下してきてこちらを締め上げてくる。

 静かに潜んでいて、唐突に噛みついて来るということもあるだろう。

 ゲームの世界ではなかったとしても、森の中の蛇というものは中々に危険な存在だ。

 もちろん、毒を有している可能性もあるため、僅かな接触ですら気を抜けない。

 ここは、前のエリアよりも更なる注意が必要となるだろう。



「ゴールがどこにあるかは分かっていないんだよな?」

「はい。ただ、多少は通りやすいような道は存在しているみたいなので、そこを外れないように行けばいいみたいではあります」



 よく見てみれば、確かに一部は木々が疎らな場所が存在している。

 どうやら、一応は歩きやすい道を用意しているようだ。

 まあ、それでも視界が悪いことに変わりはないため、相変わらず注意は必要だろうが。



「よし、今度は俺たちも前に出る。それからシリウス」

「グルッ?」

「木々をなぎ倒しながら先に進め。わざわざ、相手の都合に付き合ってやる必要もない」

「ガウッ!」



 俺の言葉に、シリウスはどこか笑みを浮かべるようにして頷いた。

 シリウスならば、多少の木々程度では障害にもなりはしない。

 仮に蛇に巻き付かれたとしても、それでダメージを受けるのは相手の方だ。

 先頭に立って進むのに、これほど適した存在もいないだろう。

 シリウスは本来の大きさへと戻りながら、地響きを立てつつ前へと進む。

 隠密も何もあったものではないが、シリウスは目立ってなんぼの存在だ。このまま先に進ませるとしよう。



「あまり派手にやられると、俺らの出番が無いんだけどよ」

「戦いたいなら自分なりに動けよ。俺たちはいつも通りにやるだけさ」

「獲物は自分で探せってか。いいぜ、上等さ!」



 戦刃は好戦的な笑みを浮かべ、シリウスに続いて前へと進んでいく。

 相変わらず、あまり考えずに前に出るものだが――まあ、今の戦刃なら心配する必要は無いだろう。

 俺もまた戦刃と並んで前に出つつ、緋真へと声をかける。



「魔法の扱いは気を付けろよ。まあ、そうそう燃えるような森じゃなさそうだがな」

「わかってますよ。それより、先生も気を付けてくださいよ? 出現する魔物の中には、結構ヤバいのだっているんですから」

「ほう、そこまで言う程か」

「まあ、ゲーマー視点で危険視されている感じですけど……バジリスク系統には注意してくださいよ」

「バジリスク?」



 名前の響きについては、何となく聞いた覚えがある。

 これまでに戦った覚えはない気がするが、蛇の魔物の名前だったか。

 そんな俺の反応に、緋真は軽く肩を竦めながら声を上げる。



「ヴェルンリードですよ、忘れましたか?」

「あ? あー……だが、あいつはドラゴンじゃなかったか?」

「蛇でもドラゴンでもどっちでもあるんですけど、とにかくああいう石化の魔眼を持っている魔物ですよ。ヴェルンリードは悪魔だから、魔物の姿とは別系統かもしれませんし」



 ヴェルンリード――初めて戦った伯爵級悪魔。

 その正体は、額に瞳を持つ巨大なドラゴンであった。

 その目からは光線を放ち、命中した相手をエメラルドの彫像に変えてしまう凶悪な魔物。

 かなり前に戦った相手ではあるが、その能力は確かに脅威であった。

 今回もエメラルドということは無いだろうが、似たような魔物は存在しているということか。



「しかも血液は毒ですからね、直接戦闘とは別のところで能力を持っている類は厄介なんですよ」

「ふむ……確かに、あいつには苦労させられたな」



 そんな昔の話ではないはずなのに、随分と前のことのように感じられる。

 ヴェルンリードの血液も毒であり、故に斬ることには随分と苦労させられた。

 ここに出現するバジリスクにも同じような能力を持っているなら、気を付けて戦う必要があるだろう。



「まあ、油断はしないさ。ヴァルフレアのダンジョンに、そんな余裕があるとは思えんしな」



 何だかんだ、ここは大公にちなんだダンジョンなのだ。

 油断していれば、あっという間にこちらが追い詰められてしまうだろう。

 出現する敵には注意しつつ、先へと進んでいくこととしよう。



「水蓮。そういえば、先に進んだ連中は見なかったのか?」

「ええ、こちらでは確認していませんよ。我々が下りてくるよりも早く、先に進んだのでしょう」

「それなりに早く倒したつもりだったが……まあ、いつまでも待つようなものでもないか」



 顔を合わせるなら話ぐらいはしておいても良かったが、無理に話すほど必要性があるわけではない。

 無理をして追いかける必要も無いだろう。

 尤も、同じように木々の間の道を選んで進んでいれば、出会うこともあるかもしれないが。

 と――



「グルルッ」

「――クオン、注意して」



 響いた声に、足を止めて餓狼丸の鯉口を切る。

 ほんの一瞬だけ遅れて門下生たちもそれに倣い――全員が、その気配を捉えた。

 地面を這いずる、巨大な気配。恐らくはシリウスの放つ気配に呼び寄せられてきたであろう、強力な魔物。

 その気配だけでも、相手の大きさや強さは感じ取ることができる。

 決して、生半可な覚悟で戦えるような相手ではないだろう。



「……早速来ましたね、キングバジリスク」



 それは、茶色い鱗を持つ巨大な蛇。

 大きさで言えばシリウスには及ばないが、それに準ずるほどのサイズがあることだろう。

 そして、やはり額にあるのは異形の瞳。

 鎌首を持ち上げたキングバジリスクは、その三つの瞳を以ってシリウスのことを睥睨していた。



「邪眼には注意しろよ。さあ――早速、このエリアの小手調べを始めるとしようか」



 数は一体。だが、それ故に油断することはできない。

 どの程度の力を持つ相手なのか、注意深く戦うこととしよう。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギカテクニカ書籍版第13巻、1/19(月)発売です!
書籍情報はTwitter, 活動報告にて公開中です!
表紙絵


ご購入はAmazonから!


  https://x.com/AllenSeaze
書籍化情報や連載情報等呟いています。
宜しければフォローをお願いいたします。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ