945:次なる階層
『――超位スキルの取得が解放されました』
「……あん?」
「え、何ですかこれ?」
レベル150。一つの節目を迎えた、このタイミング。
恐らく、マレウスに挑むまでに迎えられる節目は、これが最後だろうと予測されたレベルだ。
まさか、そんなタイミングで新たな要素が解放されるとは思っておらず、俺は思わず眼を瞬かせた。
そんな俺たちの様子を見た水蓮が、何事かとこちらに声をかけてくる。
「どうかしましたか、師範?」
「ああ、いや……ちょうど節目のレベルだったもんでな。後ろに次のプレイヤーは控えていないか?」
「そうでしたか。ええ、後続のパーティやレイドはいないようです」
「重畳。それなら、時間をかけて確認するから、お前たちは少し休んでてくれ」
俺たちがここに居座っていては後続のプレイヤーがボスに挑めないが、逆に言うとここに居座る間は安全だ。
後ろに急かされていないなら、ここで情報を確認する方が安全だろう。
さて、それでは超位スキルとは何なのか――それは一言で言えば、《聖女の祝福》のようなスキルである。
極めて強力な効果を持つ代わりにレベルを持たず、成長しない。
また、《聖女の祝福》だけではわからなかったが、どうやらこのタイプのスキルは一つしかセットできないらしい。
つまり、《聖女の祝福》と同時には、新たなスキルを装備することはできないということだ。
「……そんなスキルを無造作に配布してたのか、あの姫さんは」
今更ながら、聖女という存在の規格外さに驚嘆する。
本来であればこのレベルに到達しなければ手に入らなかったようなスキルを、まさかあんな前の頃から渡すことができるとは。
だが正直、俺としては《聖女の祝福》はあまり使う機会のないスキルなので、それに代わるものが手に入るというのは中々魅力的な話だ。
「今まで付けてはいなかったけど、《聖女の祝福》に頼っていたプレイヤーにとってはちょっと大変そうね」
「まあ……使いようじゃないか、それは?」
何だかんだで、HPが1だけでも残るという効果は十分に強力だ。
保険としてこれほど優秀な効果も無いだろう。
俺自身、このスキルによって命を拾った場面はあるのだから。
とはいえ、今は使用していない状況であるし、もっと俺に合った効果のスキルも存在するだろう。
確認のためにも、新たに取得可能になったスキルを閲覧することにする。
「……結構、多様だな」
「あー、これは悩みますね」
ざっと確認してみただけでも、結構な数が存在している。
これをすべてチェックしていくのは中々に骨が折れることだろう。
幸い、ソート機能は存在しているため、自分にとって関係のありそうなスキルだけに絞って表示していくことにする。
(特に決まったパターンがあるってわけでもないが、どちらかというとパッシブが多いか?)
思った以上にパターンが多いが、パッシブスキルが多めであることは確かであるようだ。
特定のステータスを大幅に上昇させるものであったり、武器種に限定された効果などもある。
クールタイムが長い強力なスキルも存在しており、どれもこれもかなり高い性能を持っているようだ。
さて、果たして何を見越して強化を行うべきか――
「……まあ、攻撃の威力だわな」
回復性能を強化するという手もあるだろうが、正直《再生者》の効果以上の性能には必要性を感じていない。
やはり、攻撃力をさらに上昇させていくべきだろう。
しかしながら、単純なステータスの増強は勿体なく感じる。
確かに強力ではあるのだが、条件が指定されているスキルの方が強化の倍率は高いのだ。
無理なく条件を満たすことができ、尚且つ十分な効果の恩恵を受けられるスキル――目指すべきは、そういった類だろう。
(となると……《刀鬼の武辺》、この辺りか)
これはパッシブの効果で、刀系統の武器攻撃時のみ効果が発生する。
その能力は、クリティカルダメージの25%上昇。
クリティカルとは、敵に攻撃をクリーンヒットさせたときに出る判定だ。
防御させず、相手に直撃させた攻撃にのみ、その能力が発動するということだろう。
それなりに条件の縛りはあるものの、ダメージ上昇の倍率はかなり高い。
これならば、十分に効果を発揮させることができるだろう。
「しかし、随分とまたポイントを要求してくるもんだな」
超位スキルの習得コストは、何と一律で50ポイントである。
他のスキルが10以下で習得や進化ができる中、まさかこんなとんでもない量のポイントを要求してくるとは。
まあ、最近は使いどころも無かったため、ポイントは余っている状況ではあったのだが。
若干の躊躇いを覚えつつもスキルの習得を選択し、早速増えたスキル枠に超位スキルを追加する。
これでいよいよ《聖女の祝福》の出番は無くなるだろうが、元より使っていなかったのだから変わりはしないだろう。
「さてと……こっちは取り終わったが、二人はどうだ?」
「私は《炎熱の魔人》、炎属性ダメージの上昇ですね。ほとんどの攻撃に効果が乗りますから」
緋真は属性に限定した効果を選んだらしい。
まあ、今更発動系スキルを増やすのも使い辛いだろうし、妥当なところだろう。
単純に炎属性とは言うが、これは『炎上』の状態異常に対しても効果が発揮される。
緋真の攻撃はほとんどが炎属性だし、成長武器を解放すれば全てが炎に固定される上に耐性まで無視し始める。
コイツにとってみれば、条件など存在しないようなものであるだろう。
「私は《透き通る殺意》、未発見状態でのダメージ倍率上昇と敵の状態異常耐性ダウン。耐性を半減させるのは中々よね」
アリスは相変わらず、不意打ちに特化したスキルを習得したらしい。
未発見状態は中々に難しい条件であるため、効果もかなり高く設定されているようだ。
また、発生の可能性がある『即死』は状態異常扱いであるため、相手の耐性を半減させるのは中々に大きい。
耐性が高い相手であっても、『即死』を発生させられる可能性があるということなのだから。
まあ、流石に耐性が高すぎる相手には効果は無いだろうが、それでもダメージ倍率が伸びる点は大きいだろう。
「やはりパッシブスキルを取ったか」
「このタイミングで発動系を取るのもね。しばらく扱いには慣れないだろうし」
「こっちの方が違和感なく使えますよねぇ」
どうやら、その辺りの考えは全員が共通であったようだ。
ともあれ、これなら大きな強化を得つつ、その上で戦闘スタイルを変えずに戦うことができるだろう。
まあ、アリスは少し『即死』を気にする必要はあるだろうが。
「さてと……お前ら、終わったぞ。先に進むか」
「お待ちしてましたよ。何人かは気になって先に行っていましたが……中々、面白い構造のようですよ」
「ダンジョンの構造が、か?」
俺たちがスキルの確認をしている間、幾人かの門下生たちは先のエリアまで進んでしまったようだ。
とはいえ、勝手にその先の探索まで進めているわけではないだろうが。
さて、構造そのものが面白いとはどういうことか。
どうやら緋真は既に知っているらしくしたり顔であったが、話を聞くよりは先に進んでしまった方が早いだろう。
小さく苦笑しつつ、水蓮が示す階段の先へと歩を進める。
「小手調べも終わったわけだし、ここからは俺も前に出るからな?」
「我々としても、その方が勉強になりますからね。望むところですよ」
消耗を避けるという名目だったが、流石に後方で見ているだけの戦いにも飽きた。
そろそろ、俺も刀を振るわせて貰うこととしよう。
その決意と共に踏み入れた、次なる階層。
そこには――視界を覆いつくすような、森の景色が広がっていた。
■アバター名:クオン
■性別:男
■種族:羅刹族
■レベル:150
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:110
VIT:60
INT:73
MND:40
AGI:63
DEX:40
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.71》
《武王:Lv.43》
マジックスキル:《昇華魔法:Lv.85》
《神霊魔法:Lv.56》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.77》
《MP自動超回復:Lv.55》
《奪命剣:Lv.100》LIMIT
《練命剣:Lv.100》LIMIT
《蒐魂剣:Lv.100》LIMIT
《テイム:Lv.100》LIMIT
《HP自動超回復:Lv.55》
《生命力操作:Lv.100》LIMIT
《魔力操作:Lv.100》LIMIT
《魔技共演:Lv.77》
《レンジ・ゼロ:Lv.22》
《回復特性:Lv.81》
《超位戦闘技能:Lv.48》
《剣氣収斂:Lv.100》LIMIT
《血戦舞踏:Lv.24》
《空歩:Lv.29》
《会心破断:Lv.73》
《再生者:Lv.54》
《オーバーレンジ:Lv.23》
《三魔剣皆伝:Lv.25》
《天与の肉体:Lv.28》
《抜山蓋世:Lv.24》
《見識:Lv.49》
《刀鬼の武辺》
サブスキル:《採掘:Lv.18》
《聖女の祝福》
種族スキル:《夜叉業》
《獄卒変生:黒縄熱鎖》
称号スキル:《剣鬼羅刹》
■現在SP:18
■アバター名:緋真
■性別:女
■種族:羅刹女族
■レベル:150
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:101
VIT:50
INT:90
MND:50
AGI:59
DEX:40
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.71》
《武王:Lv.47》
マジックスキル:《灼炎魔法:Lv.61》
《昇華魔法:Lv.58》
セットスキル:《武神闘気:Lv.50》
《オーバースペル:Lv.47》
《火属性超強化:Lv.51》
《回復特性:Lv.73》
《炎身:Lv.86》
《致命の一刺し:Lv.65》
《超位戦闘技能:Lv.54》
《空歩:Lv.56》
《術理掌握:Lv.61》
《MP自動超回復:Lv.48》
《省略詠唱:Lv.41》
《蒐魂剣:Lv.83》
《魔力操作:Lv.100》LIMIT
《並列魔法:Lv.57》
《魔技共演:Lv.53》
《燎原の火:Lv.88》
《二天一流:Lv.38》
《賢人の智慧:Lv.73》
《曲芸:Lv.28》
《臨界融点:Lv.28》
《剣技:絶景倒覇:Lv.26》
《抜山蓋世:Lv.24》
《見識:Lv.49》
《炎熱の魔人》
サブスキル:《採取:Lv.7》
《採掘:Lv.19》
《聖女の祝福》
種族スキル:《夜叉業》
《獄卒変生:焦熱烈火》
称号スキル:《緋の剣姫》
■現在SP:32
■モンスター名:ルミナ
■性別:メス
■種族:ヴァルハラガーディアン『破邪剣精』
■レベル:64
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:100
VIT:52
INT:100
MND:52
AGI:92
DEX:60
■スキル
ウェポンスキル:《刀神》
《神槍》
マジックスキル:《天光魔法》
《大空魔法》
スキル:《光属性超強化》
《戦乙女の神翼》
《魔法抵抗:極大》
《物理抵抗:大》
《MP自動超回復》
《超位魔法陣》
《ブーストアクセル》
《空歩》
《風属性超強化》
《HP自動超回復》
《光輝の戦鎧》
《戦乙女の大加護》
《女神の霊核》
《精霊の囁き》
《吶喊》
《大霊撃》
《戦乙女の騎行》
《精霊進化》
《戦術指揮》
《神霊化》
《神域の智慧》
称号スキル:《精霊王の眷属》
■モンスター名:セイラン
■性別:オス
■種族:ワイルドハント『嚆矢嵐征』
■レベル:64
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:120
VIT:80
INT:72
MND:51
AGI:110
DEX:50
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《天嵐魔法》
《大空魔法》
スキル:《風属性超強化》
《天征》
《騎乗》
《物理抵抗:極大》
《痛恨撃》
《剛爪撃》
《覇王気》
《騎乗者大強化》
《天歩》
《マルチターゲット》
《神鳴魔法》
《雷属性超強化》
《魔法抵抗:大》
《空中機動》
《嵐属性超強化》
《吶喊》
《雷電降臨》
《亡霊召喚》
《剛嵐》
《亡霊操作》
《亡霊分身》
《麻痺耐性:超》
《一番槍》
《轟雷疾駆》
称号スキル:《嵐の王》
■アバター名:アリシェラ
■性別:女
■種族:闇月族
■レベル:150
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:60
VIT:45
INT:60
MND:45
AGI:90
DEX:80
■スキル
ウェポンスキル:《闇殺刃:Lv.71》
《連弩:Lv.44》
マジックスキル:《深淵魔法:Lv.50》
《闇月魔法:Lv.42》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.76》
《姿なき侵入者:Lv.55》
《超位毒耐性:Lv.24》
《フェイタルエッジ:Lv.50》
《回復特性:Lv.62》
《闇属性超強化:Lv.45》
《ピアシングエッジ:Lv.56》
《トキシックエッジ:Lv.48》
《静寂の鬨:Lv.39》
《真実の目:Lv.60》
《パルクール:Lv.52》
《パリスの光弓:Lv.35》
《血纏:Lv.37》
《ミアズマウェポン:Lv.92》
《空歩:Lv.47》
《魔技共演:Lv.53》
《闇月の理:Lv.45》
《ブリンクアヴォイド:Lv.70》
《死神の手:Lv.60》
《光神の槍:Lv.36》
《超直感:Lv.26》
《天上の舞踏:Lv.24》
《リサイクル:Lv.35》
《透き通る殺意》
サブスキル:《採取:Lv.23》
《調薬:Lv.28》
《偽装:Lv.27》
《閃光魔法:Lv.1》
《聖女の祝福》
種族スキル:《闇月の魔眼》
《月光祭壇:闇月》
称号スキル:《天月狼の導き》
■現在SP:12
■モンスター名:シリウス
■性別:オス
■種族:ブレイドドラゴン・デュランダル
■レベル:24
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:140
VIT:130
INT:70
MND:91
AGI:70
DEX:79
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《昇華魔法》
スキル:《断爪撃》
《絶鋭牙》
《吶喊》
《ブラストブレス》
《物理抵抗:極大》
《不毀》
《鋭斬鱗》
《鋭刃翼》
《斬尾撃》
《魔法抵抗:極大》
《龍覇気》
《移動要塞》
《研磨》
《変化》
《龍王気》
《バインドハウル》
《急速再生》
《鱗魔弾》
《不毀の絶剣》
《ディフェンシング》
《魔力蓄積》
《リフレクトインパクト》
称号スキル:《真龍》





