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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
DH ~Dragon Heart~

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944:疾走するもの











 出現した亜竜、名前はランドストーム。

 残念ながら、スキルではその名前以上の情報を確認することはできなかった。

 それは、相手が強すぎるから情報を閲覧できないというより、そもそもの規格が異なっているというべきか。

 何にせよ、その情報の大半が不明であることに違いはなかった。



「……ま、戦い方は見りゃ分かるか」



 紅の鱗に身を包んだ、馬のような造形のドラゴン。

 地面を掻くその足は炎に包まれており、足が地に着く度に小さく火の粉を散らしていた。

 その姿は基本的に、ここまで出現してきた亜竜の強化版といったところだ。

 故にこそ、その動きはある程度読みやすい。



「――シリウス」

「グルルッ!」



 その巨体による疾走は確かに危険だろう。

 故にこそ、まずはその動きを潰さなければならない。

 俺の指示に従ってシリウスが前に出るのとほぼ同時、ランドストームはその疾走を開始した。

 地面に炎の足跡を残しながら駆け抜けるその速さは、巨体も相まって危険極まりない。

 地上を駆けるスピードでは、セイランにすら届くであろう圧倒的な速さだ。

 ――それでも、シリウスの頑強な体を貫くには至らないだろう。



『向こうも向こうで、流石に勝ち目のない争いにこだわるつもりは無いようですね』



 ベルの言葉の通り、ランドストームは正面からシリウスに挑む真似はせず、迂回するように走り出した。

 正面からぶつかっても、シリウスを撃破することはできないと判断したのだろう。

 獰猛そうに見えるが、案外と冷静な判断力はあるらしい。



「それなら、動きを制限しろ、セイラン」

「クェエッ!」



 俺の指示に従い、セイランは嵐を纏って走り出す。

 スピードは同等であろうが、急激な方向転換が可能なセイランの方が小回りは利く。

 セイランはランドストームに追い縋り、その巨体へと向けて雷での攻撃を開始した。



『ブルル……ッ!』



 煩わしそうに、ランドストームは唸り声を上げている。

 セイランの攻撃は、大きなダメージというほどでもないが、同時に無視できるレベルでもないのだろう。

 確実にダメージを与えてくるセイランの攻撃を嫌がり、ランドストームはそちらを意識しながらも更にスピードを上げる。

 だが、スピードは匹敵していてもセイランの方が小回りは利くのだ。その状態では、セイランを振り切れるはずもない。

 結果として、ランドストームはセイランから逃げ回るように無秩序な走り方をするしかなかった。



「追いかけてくる相手への対処は想定してなかったのか? シリウスを避ける程度の頭はあったようだが……」

『地上であのスピードに匹敵するものはそうそういないでしょうからね。対処法を学ぶ機会も無かったのでは?』

「そんなもんか……まあ、対応ができていないならそのまま攻めるとするかね。ルミナ、ベル!」



 回避行動として走るしかないのなら、こちらから更に攻撃を重ねてやるまでだ。

 ルミナとベルは多数の魔法を展開、周囲から取り囲むようにランドストームへと向ける。

 セイランの攻撃に対処していたランドストームであるが、周囲から向けられた攻撃に対しても反応を示した。

 何とか方向を転換し、攻撃の密度が薄い方向へと頭を向けたのだ。

 間違いではない。攻撃を避けるためには正しい対処だと言えるだろう。

 尤も――それが、誘導された先でなければ、だが。



「ようやくこっちに来たか! 走ってるだけじゃ何も変わらねぇぞ!」



 真っ先に飛び出したのは、ランドストームが向かってくる場所にいた戦刃であった。

 何の躊躇いもなく飛び出した戦刃は、その長大な刃を以って刹火の一閃を叩き込む。

 スキルも組み合わせた強力な一撃であるが、相手もこのダンジョンのボスである。そうそう大きなダメージが出るわけではない。

 だが、戦刃が手に持つその刃は、赤龍王の爪によって作り上げられた、炎を食らう刃だ。

 その一閃により、ランドストームが身に纏っていた炎は吸収され、消え去ることとなった。



「一瞬ですが……十分ですね」



 それとほぼ同時、ユキが手にした薙刀を振るう。

 魔法と共に振るわれたその一閃は、彼女の目の前から放射状に地面を凍てつかせた。

 ランドストームが炎を纏っていたなら、大した問題ではなかっただろう。

 だが、戦刃の一閃によって炎を消されたその体では、一瞬でその氷に対処することはできなかった。



『――――ッ!?』



 凄まじいスピードであっただけに、その転倒の勢いも凄まじい。

 盛大にすっ転んだランドストームは、地面に叩きつけられながらこちらへと向けて滑り込んでくることとなった。

 ちなみに、セイランは即座に飛翔に移って転倒を回避している。

 まあ、あの鋭い爪ならば氷程度でバランスを崩すことは無かっただろうが。



「では、ダメ押しと行きましょうか」

「うむ。余分な抵抗をさせはしない」



 そして、その転んだランドストームへと追撃を行ったのは水蓮と巌だ。

 それぞれが左に構えた小太刀と篭手。その能力は、相手を強制的に凍結させるというものだ。

 体の二ヶ所に銀龍王由来の攻撃を受けたランドストームは、その体を急速に凍結させられる。

 炎を発することができるとはいえ、それを一瞬で解除することは不可能だろう。

 そして、それだけの時間があるならば――



「『生奪』――押さえつけろ、シリウス!」

「グルァアッ!」



 俺やシリウスが攻撃をするための時間は、十分にある。

 強く踏み込み、走らせた餓狼丸の一閃。その刃は、起き上がろうとするランドストームの足へと食い込み、斬り裂いた。

 鱗、筋肉、骨――どれを取っても頑丈だ。そうそう簡単に断ち切れるものではない。

 だが、それでも立ち上がる挙動をキャンセルさせるには十分だった。



「グルルルッ!」

『グガァッ!?』



 そして、その時間があれば、シリウスの攻撃を届かせることも十分に可能。

 強靭な前足による攻撃はランドストームの胴へと叩きつけられ、鋭い爪を食い込ませながら地面へと抑え込んだ。

 ランドストームは氷を溶かしながら炎を用いて反撃するが、多少のダメージ程度でシリウスが怯むはずもない。

 絶対に逃がさないという決意と共に、シリウスはランドストームの巨体を制圧して見せた。



「総員、かかれッ!」



 そして、動きを止めたのならばこちらのものだ。

 この魔物の厄介な点は、圧倒的な速さと突進力にある。

 その両方を剥奪したこの状況であるならば、最早恐れるような要素などあるはずもない。



「《練命剣》、【命輝練斬】!」



 斬法――剛の型、白輝。


 だが、ランドストームもまだ諦めているわけではない。

 暴れ、炎を発し、シリウスの拘束から逃れようと藻掻いている。

 故にこそダメ押しに、俺は餓狼丸の刃を先ほど付けた傷へと向けて正確に走らせた。

 鋭い刃の一閃は、今度こそ半ばまで斬り裂いていたその足を、確実に切断する。



『ガ――――!』



 この魔物は、強力な再生能力を有しているわけではない。

 故にこそ、足を失うことは致命的であると言えるだろう。

 立ち上がる手段を失ったランドストームへは、次々と鋭い刃が振り下ろされてゆく。

 全員、間合いを誤るような真似はしない。吹き上がる炎も、その熱も、シリウス以外の誰かを傷つけることは無く――その命は、瞬く間に斬り削られてゆく。

 いかなる抵抗も、反撃も、全てが無意味であった。



「相性差だな。同じレベルのスピードを想定していなかったなら――残念だが、早々に退場しな」



 笑みと共にそう告げて、餓狼丸へと生命力を収束させる。

 眩く輝くその刃は、ランドストームの喉笛から頭蓋へと侵入し――その命脈を、確実に貫いたのだった。



『レベルが上昇しました。ステータスポイントを割り振ってください――』












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― 新着の感想 ―
950話おめでとうございます。 レイドの典型的なパターンに嵌まりましたか(笑) けどコレってシリウスという強力なタンクが居るからあっさり終わりましたが、 一般プレイヤーの中には相性が悪い集団も居そう…
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