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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
DH ~Dragon Heart~

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943:地を駆ける竜











 ダンジョンとしてのこのエリアは、構造としてはそれほど複雑なものではなかった。

 度々分かれ道には遭遇するのだが、間違った方向に行っても程なくして行き止まりに到達する。

 更なる分かれ道があることも少なく、すぐに正しい道へと戻ることができた。

 ただし、出現する敵は相変わらず中々のものだ。門下生たちは容易く対処しているものの、数がいなければ中々に厳しい戦いとなっていただろう。



「とはいえ……今のところは常識的な範囲内だと思うんだがな」

「敵も強いは強いんですけどね」



 今のところ、俺たちの位置まで敵が到達していない。

 つまり、門下生たちだけで全て対処しきれてしまっているのだ。

 後方からも敵が襲ってくるのは中々に容赦のない構成であるとは思うのだが、警戒していれば問題ない程度のレベルだ。

 現状ではルミナの援護も殆ど必要のない状態であるため、しばらくはこのまま進むことができるだろう。



(敵も多少変化はあるんだがな……)



 リザードマンがメインで出現するエリアだが、たまに混じっていたのは翼の生えている個体だ。

 プレイヤー側にも似た姿の種族が存在するが、今出現しているのはやたらと前傾姿勢になっているのが特徴的だろう。

 翼によって急速に加速してくるほか、ブレスも吐いてくるため注意が必要だ。

 ルミナによる回復が必要になったのは、主にコイツの攻撃によるものである。

 流石に、不意打ちでのブレスは対処しきれるものではなかったようだ。



(まあ、俺なら【護法壁】で防ぐが)



 殺気を感じた時点で対処すれば良いのだが、範囲の魔力攻撃に対する対処能力が足りていないようだ。

 もう少し、防御に関するスキルは習熟させておいた方が良い気もするが――まあ、直接口出しするほどのことでもないだろう。

 どうせ全員が《蒐魂剣》は習得しているのだ。手札は足りているのだから、後はそれの使い方である。

 自らの課題は理解しているだろうし、いちいち口を挟むほどのことでもないだろう。

 後は――



「お、デカブツが出たぞ! オラ、刻め刻めェ!」



 もう一つ出現するのが、亜竜に分類される魔物だ。

 見た目としては、馬とドラゴンの相の子のような姿をした魔物である。

 大きさはセイランと同じ程度であるため、シリウスとは比べるべくもないのだが――それはそれとして、人の身の丈を超える大きさの獣が全速力で襲い掛かってくれば、それだけで脅威であると言える。

 だが生憎と、その程度で怯む久遠神通流ではなかった。

 刃を掲げた戦刃は、むしろ自ら相手の懐へと飛び込んでいき、刹火の一閃にて相手の足を斬り飛ばす。

 龍王の爪による刃の鋭さは、亜竜の頑丈な鱗も強靭な肉体も、容易く食い破って見せたのだ。



「相変わらず、思い切りがいいな」



 刹火は、初見の相手に振るうにはリスクのある術理だ。

 相手の攻撃を確実に見極め、紙一重で躱しながらカウンターを叩き込む――そうであるが故に、ある程度は相手の動きを理解できていなければ危険に過ぎる。

 だというのに、あのバカは何の躊躇いもなく踏み込んでいったのだ。確実に躱し切れるという確証も無かっただろうに。

 だが、それこそが戦刃の強みであるとも言えるだろう。敵を恐れぬ、躊躇いのない踏み込みこそが、剛の型の真髄へと近づく一歩である。



「リザードマンの集団も問題なし、亜竜も相手にならず。となると、それこそこの階層では仕事がなさそうだな」

「まあまあ……それに、この後には流石に仕事がありますから」



 苦笑しながらの緋真の言葉に、軽く肩を竦めて返す。

 その言葉の通り、この後には流石に仕事があることだろう。

 何故なら――この先こそが、この階層のボスエリアなのだから。

 強敵が相手となれば黙っている理由もない。存分に刃を振るわせて貰いたいところだ。



「……戻ったわ」

「おかえり、特に問題は無さそうだな?」



 戻ってきたアリスに、そう声をかける。

 何か問題が発生していたのなら、アリスは通話で連絡をしてくるはずだ。

 こうしてわざわざ戻ってきたということは、何も問題は発生していないということだろう。

 尤も、当のアリスにしてみれば退屈な仕事であるだろうが。



「ボスエリアまでは特に何もなしね。トラップも無いし、つまらないエリアだわ」

「トラップ解除なんて覚えてないんだから、無い方が都合はいいだろうに」

「まあ、そうなんだけどね……」



 アリスとしても、普段の戦いに慣れてしまったか。

 こうして、露払いで戦ってくれるメンバーがいるという状況は違和感があるのだろう。

 とはいえ、相手は向こうの世界でも日常的に接している顔見知り。

 不快に思うほどの相手でもないため、困惑を拭い切れないのだろう。

 まあ、その辺りについては割り切って貰うしかあるまい。



「はぁ、まあいいわ。ボスエリアだけど、他のプレイヤーが戦っていたわよ」

「そうか。ここまで遭遇しなかったから、ちょうど少ないタイミングかと思っていたんだが……」

「向こうもレイドだったみたいだし、徒党を組んでいたのかもしれないわね」



 選択としては妥当なところだろう。

 たとえ普段から組んでいない相手であったとしても、数というものは力になるのだから。

 とはいえ、あまり足を引っ張りすぎるようではそれも無意味となってしまうだろうが。



「お前さんから見てどうだった?」

「んー……情報を集めていた動きだったし、八割方は大丈夫じゃないかしら」

「となると、次の階層で合うかもしれんな」



 さて、レイド同士で顔を合わせるとなると中々に面倒がありそうだが――まあ、それを今気にしても仕方のない話か。

 レイドの人数には限界がある。たとえ顔を合わせることができたとしても、レイドを合流させるということはできないのだから。

 情報交換程度の協力はともかく、それ以上の協力は不可能だろう。



「まあ、何にせよボスのエリアで共闘ということは無いか。終わってなかったら、しばらく待つことになりそうだな」

「ボスエリアの前は安全だし、別に問題はないんじゃない?」

「そうだな。だが、彼らが勝つにせよ負けるにせよ、早めに先に進ませて貰いたいところだ」



 このダンジョンで先行している彼らは、果たしてどのような思いで挑んでいるのか。

 義憤か、功名心か、或いは生存本能か。

 まあ、何でもいい。ここで勝利するのは俺たちではなくても良いのだから。

 尤も――最初のエリアで二割も負け筋が残っているとなると、最奥まで到達するのは中々に難しそうな話ではあるが。



「さて、ボスエリアももう目の前だが――ああ、向こうは終わっているようだな」



 鬨の声が聞こえてくる。

 幸いなことに、どうやら彼らはこの第一のエリアを突破することに成功したようだ。

 見えてきた戦闘エリアの内部には、幾人ものプレイヤーが立ち、勝利の喜びを分かち合っていた。

 その様子を目の前に、前方を歩いていた戦刃たちもいったん足を止める。

 流石に、ボスエリアは一つのグループしか内部に入ることはできない。

 彼らはすぐに次のエリアに移動するだろうが、それまでは俺たちもここで足止めを受けることとなる。

 その間に、俺は前へと出て戦刃たちと合流することとした。



「消耗はないな、お前たち?」

「応よ、この程度で傷を負ってちゃ、久遠神通流の名折れってもんだろう」



 まあ、多少はダメージを負っているメンバーもいたのだが、そこには目を瞑ることとしよう。

 ともあれ、ボスとの戦闘に入るのに不足はない状態だ。

 ならば、余計な時間をかける必要もないだろう。

 ボスエリア内部にいたプレイヤーたちも、俺たちの姿に気づき先に進み始めたようだ。

 一部は俺の存在にも気が付いていたようであるが――まあ、特に気にする必要も無いだろう。

 先へと進んでいく彼らを見送り、こちらもまた内部へと踏み込む準備を整える。



「さて、お前たち……ここまで来たからには、俺も手を出すからな?」

「我々だけに任せて頂きたい思いもありますが……流石に、退屈でしょうからね」

「気を使いすぎなんだよ。だが、俺を出し抜いて斬れるって言うなら存分にやればいいさ」



 餓狼丸を抜き放ち、不敵に告げる。

 その言葉に、師範代たちもまた奮起したようだ。

 さて、果たして俺よりも先にボスを斬ることができるのか。

 新たな武器を手に入れたとはいえ、そうそう容易くやらせてやるつもりはない。



「それじゃあ、始めるとするか」



 無人となったボスエリアへ、先頭で足を踏み入れる。

 瞬間――収束する魔力と共に、その怪物は姿を現した。



『ブルルルルルルッ!!』



 それは、先ほど出現した馬のような姿をした亜竜を、より巨大化させたような姿の怪物。

 鋭い角を槍の穂先のようにこちらへと向け、足で地面を掻くその姿に、思わず口元に笑みを浮かべる。



「威勢がいいな、それでこそだ」



 さて、それでは――このダンジョンの小手調べをさせて貰うこととしよう。











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