852:動く世界
『――ワールドクエスト《最果てに在りし王》の開始に関するお知らせです』
――運営より、その通知が為されたのは突然のことであった。
ワールドクエスト、即ち大規模な悪魔との決戦。それは即ち、エインセルの陣営との戦いに他ならない。
クエスト名からして、戦う相手はローフィカルムではないだろう。
まず間違いなく、エインセルが動き出したということである。
「エインセルが向こうから動き始めるとはな……」
「先手を打った、ということでしょうか?」
「大公級の動きにどこまでの制限や制約があるのかは分からんが、こちらに主導権を握らせないようにしている可能性は高いな」
通知されている内容は普段通り、イベントの開催時期に関する話だ。
だが、今回はイベントの開始タイミングだけであり、終了のタイミングに関する情報は無い。
つまり、勝負がつくまでエインセルとの戦争状態は続くということだろう。
そしてイベント情報の中には、エインセルが積極的に攻めてくるという類の情報がある。
攻めるだけではなく、守りを固めることもまた重要になるということだ。
「……難しいな」
「普段通りじゃないの?」
ぽつりと呟いた俺の言葉に、アリスが首を傾げながら問いかけてくる。
その質問に、俺は軽く肩を竦めてから返した。
「エインセルの拠点を少しつずつ攻略する方法ならいつもとあまり変わらなかったが、今回は本丸を攻めるしかないからな。どうやるかはともかくとして、いきなり最終決戦みたいなもんだ」
ただでさえ厳しい相手であるというのに、敵からも攻撃をしてくるとなると中々に面倒臭い。
長期戦にはしたくないのだが、下手をすると泥沼の戦いに発展しかねない。
流石にそれは消耗が激しすぎるためアルトリウスも避けるだろうが、どのように戦うかはまだまだ見えてこないだろう。
さて、であればどのように戦うべきか。正直、まだまだ方向性は見えてこない状況であった。
「けど、力押しで何とかなるような相手かしら?」
「いや、幾らなんでもそれは無茶だろうな。馬鹿正直に真正面から戦おうとしたところで、あしらわれるのが関の山だ」
ここで問題となるのは、エインセルが堅実なタイプであるという点だろう。
アルフィニールぐらい隙の大きいタイプであるならまだ手はあっただろうが、エインセルを相手にそれを期待することはできない。
奴らの持っている資材を多少は削れたかもしれないが、戦力面についてはほぼ万全であると考えていいだろう。
手があるとすればアルトリウスやエレノアの掘っているトンネルだろうが、さてどこまで通用することやら。
(とにかく、必要なのはエインセルの元まで辿り着くことか)
十全な状態のエインセルは、わざわざ前線まで出てくる必要性が無い。
奴は本拠地でふんぞり返っていることだろう。
つまり奴を倒すためには、何とかしてそこまで辿り着かなくてはならないのだ。
「アルトリウスがどんな作戦を立てるにせよ、まともにぶつかり合ったところでジリ貧にしかならん。こちらから攻める時は、一気にやり切る必要があるだろうな」
「プレイヤー側が全力を出したからって、大公を一気に攻め落とせます?」
「さて……何ともな」
感覚的には、かなり厳しいと思っている。
エインセルの戦い方は俺たちにとって理解のできるものでこそあるが、未だにその正体は判然としない。
扱っている兵器もそうだが、エインセル本体の能力が完全に謎のままだ。
仮に大公まで肉薄することができたとして、全く情報のない敵を相手に戦うことができるのか。
だが、それでも戦わざるを得ない。ワールドクエストという形でお膳立てされた以上、その舞台から逃れることはできないのだから。
(やってくれるな、ローフィカルム)
この舞台を作り上げたのは、間違いなくローフィカルムだろう。
どこまでシステムを理解しているのかは知らないが、俺たちはエインセルを含め、ステージの上にあげられてしまった。
既に後戻りもできない段階まで突入し、あの老獪な悪魔はほくそ笑んでいることだろう。
その表情を崩してやりたいところではあるが、奴がどこまで想定しているのかも不明なところだ。
どうしたものかと、溜め息を吐き出す。
「……とりあえず、クエストの開始まではまだ少しだけ時間がある。最後のレベル上げ、やっておくとするか」
「ですね。何とか、目標には間に合いそうですし」
「通用するようなテクニックを得られたら万々歳だけどね」
さて、それもどこまで期待できるものなのか。
だが、場合によっては大きな手札を得ることにもなる。
少しだけ期待しつつ、作戦の開始まで動き続けることとしよう。
* * * * *
――アルトリウスからの連絡が来たのは、何だかんだで目標を達成し、得られたテクニックを確認していた時だった。
そのテクニックの扱い方に悩んでいたところだったのだが、それは後回しでもいいだろう。
このタイミングでのアルトリウスからの連絡は、間違いなくワールドクエストに関連するもの。
果たして、どのような結論に達したのか。それは詳細に確認する必要があるだろう。
『単純に言いますと……一時的に、ドラグハルト側と同盟を結ぶことになりました。正確に言えば、協定ですね』
「俺が言うまでもないことだろうが、大丈夫なのか?」
アルトリウスから伝えられたその言葉には、思わず眉根を寄せることにはなったが。
だが、正直なところあり得なくはない選択肢だろう。
ドラグハルトとは最終的な着地点は完全に相容れないのだが、そこに至るまでについては協力できる点もある。
特に今回は、こちらの動きをリークすることで疑似的に協力してもいたのだ。今更といえば今更だろう。
「具体的にはどうするつもりなんだ?」
『そこまで詳細な情報を共有するつもりはお互いにありません。ただ、動きを合わせる程度は可能です』
「同時に突撃した程度でどうにかなる相手か?」
戦力は純粋に増えるが、果たしてエインセルはその程度でどうにかなる相手だろうか。
今でも二面作戦をして十分に動けている辺り、あまり期待しきれるものではないと思うのだが。
『敵の戦力を二分できるだけでも価値はありますし、攻撃のタイミングを合わせるだけでもプレッシャーはかけられます。そして、開始のタイミングはこちらで主導権を握れました』
「それはそれで驚きだが……いつを開始のタイミングにするつもりだ?」
『単純ではありますが……トンネルの開通を、同時に行えるように調整しています。トンネルの開通、および坑道の制圧。それを開始のタイミングとします』
「それは、ローフィカルムの防衛条件には引っかからないのか?」
ローフィカルムが出現したのは、あの採掘拠点を制圧してからだ。
手を出すとなれば、再びローフィカルムが姿を現す可能性も否定はできないと思うのだが。
そんな俺の疑問に対し、アルトリウスの声の中には僅かな溜息が混じる。
『可能性はあります。しかし、それでもエインセルの動きを鈍らせるにはどうしても必要な手順です。資源の回収を遅らせ、再生産を抑えられるようになれば、使える手札も増えますので』
「そこまでリスクを取る必要がある、と。だが、そうなるといつから戦うことになるんだ」
『トンネルの作業も足並みを揃える必要がありますので、もう少しかかります。そのため、エインセルからの最初の攻撃は、少なくとも防衛の必要があるかと』
すぐに攻勢に出ることはできない、ということか。
だが、防衛しておけば連中の手札をある程度は知ることができるかもしれない。
きちんと防衛することができれば、それも悪くないだろう。
「……了解した、まずは防衛ってことだな。場所はどこだ?」
『デルシェーラから奪還した、旧凍結都市を。場所的に、あそこが最前線となるでしょう』
いきなり最前線に放り込んでくれるその判断に、思わず笑みを浮かべる。
先のことは不透明だが、まずやることは明らかになった。
ならば、一つ一つその仕事をこなしていくこととしよう。
■アバター名:クオン
■性別:男
■種族:羅刹族
■レベル:142
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:105
VIT:60
INT:70
MND:40
AGI:55
DEX:40
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.63》
《武王:Lv.35》
マジックスキル:《昇華魔法:Lv.77》
《神霊魔法:Lv.50》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.69》
《MP自動超回復:Lv.46》
《奪命剣:Lv.97》
《練命剣:Lv.97》
《蒐魂剣:Lv.97》
《テイム:Lv.100》LIMIT
《HP自動超回復:Lv.45》
《生命力操作:Lv.100》LIMIT
《魔力操作:Lv.100》LIMIT
《魔技共演:Lv.72》
《レンジ・ゼロ:Lv.14》
《回復特性:Lv.73》
《超位戦闘技能:Lv.40》
《剣氣収斂:Lv.94》
《血戦舞踏:Lv.15》
《空歩:Lv.20》
《会心破断:Lv.65》
《再生者:Lv.47》
《オーバーレンジ:Lv.15》
《三魔剣皆伝:Lv.18》
《天与の肉体:Lv.20》
《抜山蓋世:Lv.15》
《見識:Lv.40》
サブスキル:《採掘:Lv.18》
《聖女の祝福》
種族スキル:《夜叉業》
《獄卒変生:黒縄熱鎖》
称号スキル:《剣鬼羅刹》
■現在SP:52
■アバター名:緋真
■性別:女
■種族:羅刹女族
■レベル:142
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:98
VIT:50
INT:90
MND:40
AGI:50
DEX:40
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.63》
《武王:Lv.39》
マジックスキル:《灼炎魔法:Lv.53》
《昇華魔法:Lv.50》
セットスキル:《武神闘気:Lv.42》
《オーバースペル:Lv.39》
《火属性超強化:Lv.43》
《回復特性:Lv.65》
《炎身:Lv.78》
《致命の一刺し:Lv.57》
《超位戦闘技能:Lv.46》
《空歩:Lv.48》
《術理掌握:Lv.53》
《MP自動超回復:Lv.39》
《省略詠唱:Lv.32》
《蒐魂剣:Lv.75》
《魔力操作:Lv.100》LIMIT
《並列魔法:Lv.49》
《魔技共演:Lv.47》
《燎原の火:Lv.80》
《二天一流:Lv.30》
《賢人の智慧:Lv.65》
《曲芸:Lv.18》
《臨界融点:Lv.20》
《剣技:絶景倒覇:Lv.17》
《抜山蓋世:Lv.16》
《見識:Lv.39》
サブスキル:《採取:Lv.7》
《採掘:Lv.19》
《聖女の祝福》
種族スキル:《夜叉業》
《獄卒変生:焦熱烈火》
称号スキル:《緋の剣姫》
■現在SP:66
■モンスター名:ルミナ
■性別:メス
■種族:ヴァルハラガーディアン『破邪剣精』
■レベル:56
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:100
VIT:50
INT:100
MND:50
AGI:83
DEX:51
■スキル
ウェポンスキル:《刀神》
《神槍》
マジックスキル:《天光魔法》
《大空魔法》
スキル:《光属性超強化》
《戦乙女の神翼》
《魔法抵抗:極大》
《物理抵抗:大》
《MP自動超回復》
《超位魔法陣》
《ブーストアクセル》
《空歩》
《風属性超強化》
《HP自動超回復》
《光輝の戦鎧》
《戦乙女の大加護》
《女神の霊核》
《精霊の囁き》
《吶喊》
《大霊撃》
《戦乙女の騎行》
《精霊強化》
《戦闘指揮》
《神霊化》
《神域の智慧》
称号スキル:《精霊王の眷属》
■モンスター名:セイラン
■性別:オス
■種族:ワイルドハント『嚆矢嵐征』
■レベル:56
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:120
VIT:75
INT:69
MND:50
AGI:103
DEX:50
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《天嵐魔法》
《大空魔法》
スキル:《風属性超強化》
《天征》
《騎乗》
《物理抵抗:極大》
《痛恨撃》
《剛爪撃》
《覇王気》
《騎乗者大強化》
《天歩》
《マルチターゲット》
《神鳴魔法》
《雷属性超強化》
《魔法抵抗:大》
《空中機動》
《嵐属性超強化》
《吶喊》
《雷電降臨》
《亡霊召喚》
《剛嵐》
《亡霊操作》
《デコイ》
《麻痺耐性:大》
《一番槍》
《轟雷疾駆》
称号スキル:《嵐の王》
■アバター名:アリシェラ
■性別:女
■種族:闇月族
■レベル:142
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:60
VIT:40
INT:60
MND:40
AGI:90
DEX:80
■スキル
ウェポンスキル:《闇殺刃:Lv.63》
《連弩:Lv.36》
マジックスキル:《深淵魔法:Lv.42》
《闇月魔法:Lv.34》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.68》
《姿なき侵入者:Lv.46》
《超位毒耐性:Lv.16》
《フェイタルエッジ:Lv.42》
《回復特性:Lv.54》
《闇属性超強化:Lv.37》
《ピアシングエッジ:Lv.48》
《トキシックエッジ:Lv.40》
《静寂の鬨:Lv.31》
《真実の目:Lv.52》
《パルクール:Lv.44》
《パリスの光弓:Lv.26》
《血纏:Lv.28》
《ミアズマウェポン:Lv.84》
《空歩:Lv.39》
《魔技共演:Lv.47》
《闇月の理:Lv.37》
《ブリンクアヴォイド:Lv.62》
《死神の手:Lv.52》
《光神の槍:Lv.27》
《超直感:Lv.18》
《天上の舞踏:Lv.15》
《リサイクル:Lv.25》
サブスキル:《採取:Lv.23》
《調薬:Lv.28》
《偽装:Lv.27》
《閃光魔法:Lv.1》
《聖女の祝福》
種族スキル:《闇月の魔眼》
《月光祭壇:闇月》
称号スキル:《天月狼の導き》
■現在SP:46
■モンスター名:シリウス
■性別:オス
■種族:ブレイドドラゴン・デュランダル
■レベル:16
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:140
VIT:130
INT:70
MND:80
AGI:70
DEX:68
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《昇華魔法》
スキル:《断爪撃》
《絶鋭牙》
《吶喊》
《ブラストブレス》
《物理抵抗:極大》
《不毀》
《鋭斬鱗》
《鋭刃翼》
《斬尾撃》
《魔法抵抗:極大》
《覇気》
《移動要塞》
《研磨》
《変化》
《龍王気》
《バインドハウル》
《急速再生》
《鱗魔弾》
《不毀の絶剣》
《ディフェンシング》
《魔力蓄積》
称号スキル:《真龍》