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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
DH ~Dragon Heart~

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834:採掘施設

書籍版マギカテクニカ、第11巻が12月19日(木)に発売となりました!

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 露出した山肌に沿うようにして建てられた施設。

 と言ってもしっかりした建物というわけではなく、簡易的な建造物であるようだったが。

 プレハブ小屋程度の、簡素な建物がいくつか。だが、その肝となっているのは山肌に穿たれた洞窟であるらしい。

 既に建物内への侵入を果たし、内部の状況を確認してきたアリスは、そう結論付けた。



「単純に言うと、ここは坑道――採掘施設ね。何を掘り出していたのかはよく分からなかったけど」

「その目的と思われる資源は見つからなかったのか?」

「ええ、一時的な倉庫になっていたと思われる場所はあったけど、今は何も入っていなかったわ」



 戻ってきたアリスの言葉を聞き、思わず眉根を寄せる。

 タイミングが悪かったというべきか、奴らが集めていた資材は既に輸送されてしまった後だったらしい。

 貯まっているタイミングであれば横取りもできただろうが、致し方ない。

 今はとりあえず、この場所の確保だけを考えることとしよう。



「それで、内部は洞窟のようになっていたんだよな?」

「そうね。あまり広くは無いし、戦闘行動にはあまり向かないかも」

「下手に暴れると崩落の危険もあるか。それに……」



 エインセルがこの場を奪われることを警戒しているとしたら、その洞窟を一気に破壊する仕掛けを作っていたとしてもおかしくはない。

 何しろ、爆薬をこれでもかと使用している連中だ。内部にそれらを仕掛けておく程度は造作もないだろう。

 であれば――



「何よりも注意すべきは、洞窟の中に生き埋めにされることだ。いくら戦えようが、それをやられちゃひとたまりも無いからな」

「でも、それだと内部じゃ戦えなくないですか?」

「まあ、そうだな。俺やアリスはともかく、お前は内部での戦闘には向かんだろう」



 緋真が火力を発揮するためには、基本的に炎を発する必要がある。

 しかしながら、この鉱山は爆薬の原料を採掘していると思われる場所だ。

 火気厳禁であることは言うまでもないし、少し爆破するだけでまとめて吹き飛ばすことも可能だと思われる。

 正直、緋真は中に入るだけでリスクであると言えるだろう。



「やるべきことは二つ。一つは内部の制圧と、もう一つはこのエリアの防衛だ」

「ある程度はアリスさんが片付けましたけど、まだ来ますかね?」

「可能性は否定できんからな。哨戒に外回りをしていても不思議じゃないだろう」



 流石のアリスとはいえ、遠くに離れている敵まで察知できるわけではない。

 離れていた連中が戻ってきて、退路を塞がれるのは避けたいのだ。

 というより、最も恐ろしいのは外側から内部を発破する仕掛けがあることだ。

 俺たちが揃って中に入った後、外から戻ってきた連中に爆破されることは避けなければならない。



「有線式なら助かるが……まず、周辺の建物の探索。そこで内部を爆破するような仕掛けがあるかどうかを確認する。その上で、パーティを二つに分けて内部を探索するぞ」

「まあ、残ってるメンバーは外の防衛ですよね?」

「そうだな。内部へは、俺とアリスだけで行くつもりだ」



 隠密行動に長けているのは、俺とアリスしかいない。

 緋真もある程度はできるだろうが、戦闘力の大半が炎に依存しているため今回は留守番だ。

 まあ、後方を守ってくれるだけでもかなり助かるため、仕事がないというわけではないのだが。



「とりあえず、手分けして周辺の探索だ。アリス、ここいらにいた連中はもう片付けてあるんだろう?」

「ええ、それは大丈夫よ」

「なら、洞窟内部から外に出て来そうな奴がいたら片付けておいてくれ。その間に、爆破装置の有無を確認する」



 最悪の場合、俺たちの手でそれを使用することになるだろうが。

 アルトリウスからの要求は、この場所の破棄も含まれている。

 無論、それは最後の手段ではあるものの、手間なくそれを実現できる装置があるなら活用も視野に入るだろう。



「ルミナ、お前は上空から周囲を監視してくれ。太陽を背に、見つからないようにな」

「はい、分かりました」



 光の翼を広げて空へと舞い上がるルミナであるが、昼間であればそこまで目立つことは無いだろう。

 あえて光の魔法を使いでもしなければ、上空のルミナに気付かれることはない筈だ。

 後はシリウスのサイズを縮めておきつつ、手分けをして周囲の建物の観察を開始する。



(採掘したものを輸送した後だとすると、エインセルの本拠地にはそれなりに資材が溜め込まれているわけか)



 そうである場合は少々厄介だ。

 どれぐらいの量の資材が集められているのかは分からないが、その量によってはエインセルの息切れは程遠いということになってしまう。

 果たして、今回の作戦がどの程度の効果を発揮するのか――現状では何とも言えないが、ある程度長引くことも視野に入れておくべきだろう。

 俺たちに残された時間は、まだあるとはいえ悪化しない保証もない。



「果たして、どうなるもんかね」



 愚痴るように零しながら、まずは洞窟の入口になっている建物を確認する。

 見たところ、線らしきものが繋がっている様子はない。

 それに、簡素な小屋の中は仕分け場のような構造となっていて、装置のようなものは確認できない。

 建物の大きさからして、隠された部屋のようなものも無さそうだし、あるとすれば床下程度だが――



「……アリス、ここには何もなさそうか?」

「ええ、恐らく。スキルは何も反応しないわね」

「なら、ここには何もなさそうか。あるとすればここかと思ったんだがな」



 生き物の気配ならばまだしも、隠された物の発見において、俺はアリスに及ばない。

 《看破》系統に加えて《超直感》のスキルによる補助は、俺には見破れないものを容易く発見する筈だ。

 そのアリスにすら見つけられないのであれば、俺がここで粘っても時間の無駄だろう。

 アリスにはそのまま洞窟の入口を見張って貰うこととし、それ以外の建物の探索へと向かう。

 近場にあるもう一つの建物は、恐らくは採掘した資源を保管しておく場所だったのだろう。

 それなりに大きい建物ではあるのだが、地面は剝き出しで機材と思われるものは殆ど置かれていない。



(使っていた道具の類はともかく、資源はほとんど残されちゃいない……だが)



 倉庫の片隅に残されていた、赤い石の欠片。

 マーブル模様のそれは製錬されていない鉱石のようだが、恐らくはこれが、エインセルの求めていた資源なのだろう。

 アイテムそのものについては分かったのだが、これをどのように製錬すればあの弾薬の元になるのかが分からない。

 製錬を行っているのがエインセルの本拠地である場合、その方法をここで知ることはできないだろう。

 まあエレノアたちであれば、元になる資源と完成品さえあればそこに辿り着いてしまったとしても不思議ではないが。



(それより、エインセルの本拠地にある集積資材を襲撃できれば一番いいんだが……流石に、そう簡単にはいかないか)



 未だ、エインセルの本拠地に接近できたという報告は聞いていない。

 破壊工作を行うにしても、尋常な手段では成し遂げることはできないだろう。

 それこそ、あのファムの専門分野ではあるのだが――今回は生憎と、得意のハニートラップが通用する相手ではない。

 あいつでも、流石に対処に苦労していることだろう。



(まあ、手を貸すつもりもないが。あいつなら何とかするだろう)



 尤も、目を離していた方が怖いという意見もあるが、その辺は軍曹の監督責任である。

 ともあれ、今俺たちにできるのは、この採掘施設を可能な限り無傷で手に入れることだけだ。

 それを阻む可能性のある装置は、この建物内には発見できない。

 地面が剥き出しであるため床下に隠されているということも無さそうだし、ここは空振りだろう。

 別の場所を探そうと踵を返し――ちょうど、この建物に入ろうとした緋真と目が合った。



「っと、ここは先生が見てましたか。何もなかったですか?」

「ああ、そのようだな。他はもう見て回ったのか?」

「大して数もなかったですからね。それらしいものは見つけられませんでした」

「そうか……まあ、仕方あるまい」



 起爆の仕掛けが存在する可能性は高いと考えていたのだが――まあ、見つからないのならいつまでも時間を掛けてはいられない。

 先に、内部に残っている悪魔を排除することを優先するとしよう。



「第二段階に進む。俺とアリスで内部に侵入し、敵を排除してくる」

「気を付けてくださいよ、こっちからは援護できませんから」

「どうしようも無くなったらスクロールを使うさ。その代わり、外の警備は任せるぞ」



 頷いた緋真に満足し、アリスが監視している建物へと移動する。

 懸念していた可能性については――俺の杞憂であったことを、祈ることとしよう。











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マギカテクニカ書籍版第12巻、7/18(金)発売です!
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