831:攻略作戦の方針
書籍版マギカテクニカ、第11巻が12月19日(木)に発売となりました!
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「方針は分かった。だが、具体的にはどう戦うつもりなんだ?」
アルトリウスの示した方針には賛同しつつ、そう問いかける。
戦うことについて否は無い。早めに挑むこと自体も、方針としては間違いではないだろう。
だが、どのように挑むのかはまた別の話だ。
「俺たちの命にまでタイムリミットがかけられた。のんびりとは戦っている暇もない。なら――」
「いえ、流石に拙速なだけで倒せるほど、大公級は甘い相手ではありません。ましてや、戦略面に優れるエインセルが相手では。彼は、こちらから目を離しているわけではありませんから」
アルトリウスは、軽く首を横に振ってそう答える。
まあ、それも事実であろう。度々戦力を回してこちらに牽制をしている辺り、警戒を絶やしていないことは間違いない。
もしこちらが攻勢を仕掛ければ、エインセルは相応に対応を行ってくるだろう。
「ドラグハルトと戦っている現状、確かに僕たちに対する注目度は低いです。しかし、目を離すほど節穴ではない」
「慎重に事を進めるのはいいわ。けど、中途半端なのは意味がない。そうでしょう?」
「その通りですね。なので、こうします」
そう告げて、アルトリウスは俺たちへとマップを提示した。
それは、北部エリアの東側――つまりはエインセルの領土周辺のマップであった。
アルフィニールの領土だった中央部とを隔てる山脈、そのいくつかのポイントに赤いマーカーが打たれている様子が見て取れる。
そこは以前、俺たちがティエルクレスを探して北上した辺りのエリアのようではあったが――
「調べたところ、この辺りにはエインセルが建造したと思われる工場が発見されました」
「ふむ、工場ね。そりゃ何を目的とした工場だ?」
「発見されないように内部までは調べていませんが、そこから兵器が持ち出されている様子はありませんでした。つまり、目的は兵器の製造ではなく……弾薬の製造、かと思われます」
「……へぇ」
思わず、口元を笑みに歪める。
弾薬の製造ラインは、エインセルにとっては文字通り命綱であると言っても過言ではない。
奴らは強力な兵器を用いることにより、低ランクの悪魔であろうとも高い戦力を発揮できるようにしているのだ。
逆に言えば、それさえ封じることができれば、奴らにも相応の消耗を強いることができる。
補給線を断つ――戦略的に見れば常套手段なのだろう。
「慎重に進めているので、全ての拠点を割り出せているわけではありませんが――十分な調査が完了し次第、全ての生産工場に対して奇襲を仕掛けます。目的は、敵拠点の鹵獲、それが不可能であれば破壊。鹵獲後も、維持が困難と判断すれば破壊します」
「私としては、製造用の材料は確保しておきたいところなのだけど」
「流石に、山脈を確保かつ維持し続けるのは不可能だろ」
「分かってるわよ。とりあえず第一目標が鹵獲なら、特に言うことはないわ」
エレノアとしては、弾薬の大量生産は自らの勢力に欲しい要素だろう。
未だ、プレイヤーの勢力は弾薬の生産を達成できていない。
作り方は判明しているが、その材料の確保がほぼ不可能な状況だったのだ。
だが、エインセルの工場を確保できたなら、それも一気に解決することだろう。
「ですが、エインセルも当然、これを警戒しているでしょう。我々が動きを見せれば、彼らは相応の対応をしてくるはずです。それに、全ての生産拠点をそれだけで破壊できるとは考えない方が良いかと」
「それはそうだろうな。わざわざあんな離れた場所に工場を建てるなんぞ、普通は考えられん」
「得られる材料の問題でしょうね。あの山の中から採取できる素材が必要だったんでしょう」
「何にせよ、工場を破壊すればそれなりの痛手にはなる、ってことか」
それがエインセルにとってどの程度の痛手になるのか――残念ながらそれは不明だ。
しかしながら、生産拠点の多くを破壊すれば、相手から余裕を奪うことは可能だろう。
それで攻め手が鈍れば、ドラグハルト達も積極的に動き始めるはずだ。
「これまで生産に努め、備蓄している可能性はありますが、ドラグハルト達との戦いでの消費は大きい筈。拠点を潰してすぐにエインセルが息切れすることは無いと思われますが――戦いが続けば、なりふり構わず動き始めるでしょう」
「そのタイミングを待つのか?」
「それも一つの手ではありますが……まだ、エインセルの動きが分かりません。状況次第ですね」
軍事化された組織であるが故に、エインセル陣営の内部情報を手に入れることは難しい。
故にこそ、彼らの出方を予想することは困難だということだ。
しかし、その状況に陥ってまで、こちらに対して無反応というわけにはいかないだろう。
エインセル側の余裕を失わせたうえで、二面作戦を強要させる。それこそが、アルトリウスの描いた盤面だ。
「先ほどの話もありますが、この作戦は極秘です。『キャメロット』でも、内部情報に通じる幹部クラスだけが知っています。作戦の主導は軍曹にお願いしていますが……クオンさん、貴方にも参加をお願いします」
「ああ、勿論だ。その手の破壊工作は何度か経験があるからな」
敵拠点の奇襲は、軍曹も得意とするタイプの作戦だ。
尤も、複数拠点を同時に攻めなければならないことは少々難しい点だろうが。
第一目標が鹵獲であることも、難易度の上昇に拍車をかけている。
ただ破壊するだけなら楽なのだが、無傷で手に入れることは困難だろう。
「調査が終わりましたら、作戦の通達を連絡します。恐らく、クオンさんには個別のパーティで襲撃していただくことになると思いますが」
「人手が足りていないんだろう、分かってるさ」
今回のこれは極秘作戦だ。準備には相応の時間を必要とする。
ここは大人しく、準備をして待ち構えておくこととしよう。
もう少しで、一つの目標が見えて来そうではあるしな。
「それでは、ここは解散しましょう。作戦の開始までは、これまで通りに」
「気取られるなってことだろ? こっちからエインセルに仕掛けることはないさ」
「私たちもね。地下街のクエストもある程度目途は立ってきたけど、まだまだ終わりそうにはないから」
連絡は終わったと、それぞれ会議室を後にする。
俺たちの動きはこれまでと変わることは無く――しかし、刻一刻と迫るタイムリミットが、息の詰まるような錯覚を覚えさせていた。
* * * * *
「というわけで、本格的な作戦が目前に迫ってきてる」
「つまり、さっさとレベル上げをしろってことですね」
会議から戻った俺は、まず奇襲作戦のことだけを緋真とアリスに伝えた。
極秘とはいえ、この二人は作戦の参加メンバーなのだから、伝えておかなければなるまい。
例のタイムリミットの件については――
(伝えるべきはいまではない、か)
教えてはおくべきだ。しかし、このゲームの中でそれを口に出すことは相応にリスクがある。
その件については、今日ログアウトした後に教えておくこととしよう。
正直、世界の滅びが目前にまで迫ってきていると言われても、実感を得られない話ではあったが。
「私とアリスさんはとりあえず目標達成できましたけど、先生はもうちょっとですね」
「最近、ちょっとレベルが上がり辛くなってきたわよね。良い狩場があるといいのだけど」
「上がり辛くなるのは致し方のない話ではあるがな」
ここ数日で、俺たちは二つほどレベルを上げた。
現在のレベルは139、もう少しでスキルスロットが一つ解放されることだろう。
尤も、現在は少々無理にティエルクレスのスキルを割り振っている状況であるため、次のスキルスロット解放ではそれを戻すだけになるだろうが。
「先生の《神霊魔法》は……流石に、次の作戦には間に合いませんかね?」
「あと一つか二つならまだしも、あと四つだからな。流石にそう簡単にはいかんだろうさ」
今回のレベリングで、緋真とアリスは新たな呪文を習得している。
緋真は《灼炎魔法》の【エンチャント・ヘルフレイム】、そしてアリスは《闇月魔法》の【アングラヴィティ】だった。
【エンチャント・ヘルフレイム】は単純で、自身の武器に対する強化魔法である。
普段から燃えているのであまり差が分からないのだが、重ね掛けができるようなので無駄にはならないだろう。
そしてアリスの【アングラヴィティ】は中々に面白い効果で、対象に無重力状態を付与することができる。
効果時間は短いのだが、短時間でも大きく跳躍できるようになることはメリットだと言えるだろう。
また面白い点は、この魔法は敵に対しても付与できるということだ。
予想外のタイミングで無重力になった敵が、明後日の方向にすっ飛んでいく様は中々に壮観だった。
まあ、無重力というよりは低重力状態だったのだろうが、上手く使えば面白い効果を発揮できるだろう。
「ともあれ、作戦までにもう一つぐらいはレベルを上げておきたいところだな。エインセルと戦うまでには、《神霊魔法》をレベル50にしてみせるさ」
ステータスウィンドウを閉じ、そう決意する。
あまり時間的余裕はない。できるところまで強化しておかなければならないだろう。
エインセルの拠点を攻め、本格的な戦闘状態へと移行する作戦。
――それに関する情報が通達されたのは、会議の翌日のことであった。
■アバター名:クオン
■性別:男
■種族:羅刹族
■レベル:139
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:102
VIT:60
INT:70
MND:40
AGI:52
DEX:40
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.60》
《武王:Lv.31》
マジックスキル:《昇華魔法:Lv.74》
《神霊魔法:Lv.46》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.66》
《MP自動超回復:Lv.43》
《奪命剣:Lv.95》
《練命剣:Lv.95》
《蒐魂剣:Lv.95》
《テイム:Lv.100》LIMIT
《HP自動超回復:Lv.43》
《生命力操作:Lv.100》LIMIT
《魔力操作:Lv.100》LIMIT
《魔技共演:Lv.70》
《レンジ・ゼロ:Lv.11》
《回復特性:Lv.72》
《超位戦闘技能:Lv.37》
《剣氣収斂:Lv.91》
《血戦舞踏:Lv.12》
《空歩:Lv.16》
《会心破断:Lv.64》
《再生者:Lv.47》
《オーバーレンジ:Lv.11》
《三魔剣皆伝:Lv.16》
《天与の肉体:Lv.15》
《抜山蓋世:Lv.12》
サブスキル:《採掘:Lv.18》
《聖女の祝福》
《見識:Lv.36》
種族スキル:《夜叉業》
《獄卒変生:黒縄熱鎖》
称号スキル:《剣鬼羅刹》
■現在SP:46
■アバター名:緋真
■性別:女
■種族:羅刹女族
■レベル:139
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:95
VIT:50
INT:90
MND:40
AGI:50
DEX:37
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.60》
《武王:Lv.35》
マジックスキル:《灼炎魔法:Lv.50》
《昇華魔法:Lv.47》
セットスキル:《武神闘気:Lv.38》
《オーバースペル:Lv.36》
《火属性超強化:Lv.40》
《回復特性:Lv.63》
《炎身:Lv.75》
《致命の一刺し:Lv.56》
《超位戦闘技能:Lv.42》
《空歩:Lv.44》
《術理掌握:Lv.50》
《MP自動超回復:Lv.36》
《省略詠唱:Lv.30》
《蒐魂剣:Lv.70》
《魔力操作:Lv.100》LIMIT
《並列魔法:Lv.46》
《魔技共演:Lv.46》
《燎原の火:Lv.77》
《二天一流:Lv.26》
《賢人の智慧:Lv.63》
《曲芸:Lv.13》
《臨界融点:Lv.18》
《剣技:絶景倒覇:Lv.15》
《抜山蓋世:Lv.11》
サブスキル:《採取:Lv.7》
《採掘:Lv.19》
《聖女の祝福》
《見識:Lv.35》
種族スキル:《夜叉業》
《獄卒変生:焦熱烈火》
称号スキル:《緋の剣姫》
■現在SP:62
■モンスター名:ルミナ
■性別:メス
■種族:ヴァルハラガーディアン『破邪剣精』
■レベル:53
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:100
VIT:48
INT:100
MND:48
AGI:82
DEX:50
■スキル
ウェポンスキル:《刀神》
《神槍》
マジックスキル:《天光魔法》
《大空魔法》
スキル:《光属性超強化》
《戦乙女の神翼》
《魔法抵抗:極大》
《物理抵抗:大》
《MP自動超回復》
《超位魔法陣》
《ブーストアクセル》
《空歩》
《風属性超強化》
《HP自動超回復》
《光輝の戦鎧》
《戦乙女の大加護》
《女神の霊核》
《精霊の囁き》
《吶喊》
《大霊撃》
《戦乙女の騎行》
《精霊強化》
《戦闘指揮》
《神霊化》
《神域の智慧》
称号スキル:《精霊王の眷属》
■モンスター名:セイラン
■性別:オス
■種族:ワイルドハント『嚆矢嵐征』
■レベル:53
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:120
VIT:75
INT:68
MND:48
AGI:102
DEX:48
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《天嵐魔法》
《大空魔法》
スキル:《風属性超強化》
《天征》
《騎乗》
《物理抵抗:極大》
《痛恨撃》
《剛爪撃》
《覇王気》
《騎乗者大強化》
《天歩》
《マルチターゲット》
《神鳴魔法》
《雷属性超強化》
《魔法抵抗:大》
《空中機動》
《嵐属性超強化》
《吶喊》
《雷電降臨》
《亡霊召喚》
《剛嵐》
《亡霊操作》
《デコイ》
《麻痺耐性:大》
《一番槍》
《轟雷疾駆》
称号スキル:《嵐の王》
■アバター名:アリシェラ
■性別:女
■種族:闇月族
■レベル:139
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:60
VIT:37
INT:60
MND:37
AGI:90
DEX:80
■スキル
ウェポンスキル:《闇殺刃:Lv.60》
《連弩:Lv.31》
マジックスキル:《深淵魔法:Lv.38》
《闇月魔法:Lv.31》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.65》
《姿なき侵入者:Lv.43》
《超位毒耐性:Lv.13》
《フェイタルエッジ:Lv.40》
《回復特性:Lv.51》
《闇属性超強化:Lv.34》
《ピアシングエッジ:Lv.45》
《トキシックエッジ:Lv.38》
《静寂の鬨:Lv.28》
《真実の目:Lv.50》
《パルクール:Lv.41》
《パリスの光弓:Lv.25》
《血纏:Lv.25》
《ミアズマウェポン:Lv.82》
《空歩:Lv.35》
《魔技共演:Lv.46》
《闇月の理:Lv.33》
《ブリンクアヴォイド:Lv.60》
《死神の手:Lv.49》
《光神の槍:Lv.23》
《超直感:Lv.16》
《天上の舞踏:Lv.11》
サブスキル:《採取:Lv.23》
《調薬:Lv.28》
《偽装:Lv.27》
《閃光魔法:Lv.1》
《聖女の祝福》
《リサイクル:Lv.20》
種族スキル:《闇月の魔眼》
《月光祭壇:闇月》
称号スキル:《天月狼の導き》
■現在SP:40
■モンスター名:シリウス
■性別:オス
■種族:ブレイドドラゴン・デュランダル
■レベル:13
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:140
VIT:130
INT:67
MND:80
AGI:70
DEX:65
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《昇華魔法》
スキル:《断爪撃》
《絶鋭牙》
《吶喊》
《ブラストブレス》
《物理抵抗:極大》
《不毀》
《鋭斬鱗》
《鋭刃翼》
《斬尾撃》
《魔法抵抗:極大》
《覇気》
《移動要塞》
《研磨》
《変化》
《龍王気》
《バインドハウル》
《急速再生》
《鱗魔弾》
《不毀の絶剣》
《ディフェンシング》
《魔力蓄積》
称号スキル:《真龍》