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716:ポイントα












 軍曹がポイントαとして指定した場所は、崖状になり戦場を見渡しやすいエリアであった。

 戦場までの距離は最大で五百メートルほど。訓練を受けた狙撃兵であれば、十分に当てられる距離だろう。

 軍曹ならばその三倍でも当てるだろうが――まあ、このゲームでは色々と勝手が違うだろうし、向こう基準で考えるのは止めておこう。



「ポイントαの上空に到達。今のところ、見えているのは悪魔だけだ」

「隠れている可能性もあるけど……私のスキルでも関知はできないわね」

「ティエルクレスのスキルで強化されているお前さんですら発見できないなら、隠れてるってことも無いだろうさ」



 ファム曰く、今回の俺たちの襲撃については情報を流していないらしい。

 つまり、連中はこの場で俺たちが横槍を入れてくることは想定外の筈だ。

 今ならば、確実に奇襲を成功させることができるだろう。


 ドラグハルトとアルフィニール、二つの勢力がぶつかり合っている戦場の方は、基本的にはドラグハルト側が有利に進んでいる。

 しかしながら、アルフィニール側の放つ戦力はまさに無尽蔵、切れ目が見えないほどの数だ。

 それは、これまでに俺たちが相手にしてきた密度よりも明らかに高い。どうやら、あれが戦闘態勢に入ったアルフィニールの力であるということらしい。



「ドラグハルト側も進めてはいるが……さて、どうなるかな」

『現状、まだまだ前哨戦だ。どちらも本気を出しちゃいないだろうよ』

『ああ、軍曹。リスポーン地点の攻撃は、連中がもうちょいと食いついてから行うべきだ。狙撃ポイントの確保も、プレイヤーがいるようなら待機した方がいいだろう』

「俺たちがここにいることが悟られると厄介だから、か」



 軍曹とランドの言葉に、小さく呟く。

 悪魔が相手ならばともかく、プレイヤーが相手では、倒すことはできても正体を隠すことが難しい。

 俺たちの存在が露呈するだけならばともかく、それでドラグハルト達が後退するとこちらが困るのだ。

 あいつらが引けないところまで食い込んだところで、その戦力を削るべきだろう。



「というわけだが、どうする? この地点を確保することはできるが」

『プレイヤーがいないなら構わんぞ。正直、連中にもそこまで余裕があるわけじゃないからな』

『……言うなれば、ドラグハルトもワールドクエストに参加している状況だ。つまり、開催期間の時間制限はある。実際のところ、退却して体勢を立て直すには時間が足りないのさ』

『とはいえ、念のために少し様子は見たいから、プレイヤーがいる場合には時期を待つがな』



 改めて後ろに乗っているアリスに視線を向けると、彼女は小さく頷いて見せた。

 くまなく確認してみたが、やはりプレイヤーの姿は見つけられなかったということだ。

 であれば、ここの確保は問題ないということになるが――



「悪魔が通信手段を持っている可能性は?」

『デーモンナイト以上ならあるだろうな。逆に、それ以下なら無い可能性が高い。どちらにせよ、通信される前に速攻で仕留めれば問題ないな』

「定期通信の有無で異常を察知される可能性もあるだろ」

『それもあるが、最終的な判断を降せるのはドラグハルトだ。そこまで報告が上がるにも多少は時間を要するし、クエストの時間制限を解決できるわけじゃない』



 つまり、ドラグハルト側が撤退を判断する可能性は著しく低いということか。

 状況を盾にしているようなものではあるが、その点は向こうも同じだろう。

 俺たちが戦わねばならぬ状況を利用して、アルフィニールの戦力を削ろうとしているのだから。


 まるで一つの生き物のように流動する戦場――その様子を眺めながら、俺は小さく息を吐き出した。

 結局のところ、判断を下すのは俺ではない。余計なことを考える必要はないのだ。

 俺はただ、指し示された敵を殺す刃であればいいのだから。



「指令はアンタが下してくれ、軍曹。それを合図に仕掛ける」

『ははは、調子が戻ってきたな、シェラート! それなら、昔通りに行くとしようか!』



 楽しげに笑う軍曹の声に、こちらもまた笑みを浮かべる。

 やるべきことは明白だ。ならば、その通りに戦えば済む話である。



『――作戦開始だ』



 その声が耳に届いた瞬間、アリスはセイランの背中の上から飛び降りた。

 自由落下しながら悪魔の群れへと向かって行くアリス――その落下速度が、急激に弱まる。

 それは、ここ数日のレベルアップで増えたスキル枠にセットした、《天上の舞踏エアリアルダンス》の効果であった。

 重力の向きを変更して落下速度を抑えたアリスは、《空歩》によって空中を蹴り、標的――地上にいたデーモンナイトへと一直線に落下する。

 そして――アリスの放った一撃は、デーモンナイトの首を正確に穿ち、その命脈を断ち切った。



「しッ」



 それに続くように、俺とセイランもまた地上へと落下する。

 ギリギリのタイミングでセイランの背中から飛び出した俺は、近場にいた一体へと組みつき、勢いを殺しながらその首をへし折る。

 そして着地と共に餓狼丸を抜き放ち、俺は直近にいた悪魔へと大きく刃を振るった。


 斬法――剛の型、輪旋。



「『生奪』」



 防御態勢を整えられていないならば、その一撃を防げる道理もない。

 首を飛ばされた悪魔は緑色の血を撒き散らしながら塵となり――その横を、空中から飛来したテイムモンスターたちが強襲した。

 刃を以て斬り裂くルミナと、前肢で敵を押し潰すセイランとシリウス。

 目立たないようにするため小型化はして貰ったが、戦闘能力に変わりはない。

 たとえそれがグレーターデーモンだったとしても、第五段階に達した真龍の一撃を防ぎ切れる筈もなかった



『――――!?』



 六体の悪魔がほぼ同時に片付けられ、ようやく悪魔共が異常を察知する。

 それまで戦場を眺めていただけだった悪魔たちは、こちらの姿を捉えて魔力を昂らせ――



「――遅いな」



 歩法――縮地。


 いつの間にか眼前にいた俺の動きを捉え切れず、そのまま俺の一閃を受けることとなった。

 肩口から両断された悪魔は血を撒き散らしながら塵となり、痕跡も残さずに消滅していく。

 悪魔のいいところは、死体を片付けなくてもいい点ぐらいだろうな。



(戦場を眺めていただけか……この距離を攻撃する手段はないってことかね)



 届くならばいくらでも狙い放題だろうに、攻撃をしようとする様子はなかった。

 どうやら、五百メートルを届くような狙撃攻撃は持たないようだ。

 それはそれで僥倖であると判断し、思考を脇に置きつつ次なる標的へと向けて突撃する。

 最初の奇襲で、厄介なデーモンナイト及びグレーターデーモンは片付けた。

 残っているのはアークデーモン以下、今の俺たちにとっては雑魚ばかりだ。

 しかして油断することはなく、確実に敵の命脈を断ち斬っていく。

 そして――



「ランド」

『動体反応なし。周辺の索敵も完了、他の敵反応も存在せず。第一目標クリア』

『聞いたな、ファム。部隊を一つ動かせ』

『ええ軍曹、了解よぉ』

『はぁ、こっちの仕事は無かったんですね』



 撤退者や敵の増援を警戒して控えていたアンヘル、そして緋真には仕事は無かった。

 まあ、それは手間が省けてよかったと考えておこう。

 無駄な時間を使わずに済んだのはこちらにとっても都合が良い。



「で、次はどうする?」

『まずは部隊の展開、それが終わったのちにポイントβの偵察だ。お嬢ちゃん、また仕事だぜ?』

「……まあいいわ」



 アリスとしては、あまり軍曹の指示を受けて動くことは好ましくないようだが、仕方のない話だ。

 ここが作戦領域である以上、現場指揮官の指示には従わなくてはなるまい。



「ドラグハルトは……少しずつ、食い込んできたか。さて、どう動くかね」



 戦いはまだ序盤――最前線は激しい戦いになっているが、まだ互いに本気とは言い難い状況だ。

 さて、この状況をドラグハルトは、そしてアルフィニールはどのように動かしてくるのか。

 次なるポイントへと移動しつつ、状況の推移を確認していくこととしよう。











■アバター名:クオン

■性別:男

■種族:羅刹族

■レベル:131

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:100

VIT:60

INT:70

MND:40

AGI:44

DEX:34

■スキル

ウェポンスキル:《刀神:Lv.52》

 《武王:Lv.23》

マジックスキル:《昇華魔法:Lv.66》

 《神霊魔法:Lv.37》

セットスキル:《致命の一刺し:Lv.58》

 《MP自動超回復:Lv.34》

 《奪命剣:Lv.87》

 《練命剣:Lv.87》

 《蒐魂剣:Lv.87》

 《テイム:Lv.100》LIMIT

 《HP自動超回復:Lv.34》

 《生命力操作:Lv.100》LIMIT

 《魔力操作:Lv.100》LIMIT

 《魔技共演:Lv.66》

 《レンジ・ゼロ:Lv.3》NEW

 《回復特性:Lv.64》

 《超位戦闘技能:Lv.30》

 《剣氣収斂:Lv.83》

 《血戦舞踏:Lv.3》NEW

 《空歩:Lv.8》

 《会心破断:Lv.56》

 《再生者リジェネレイター:Lv.41》

 《オーバーレンジ:Lv.2》NEW

 《三魔剣皆伝:Lv.10》

 《天与の肉体:Lv.7》

 《抜山蓋世:Lv.3》

サブスキル:《採掘:Lv.15》

 《聖女の祝福》

 《見識:Lv.36》

種族スキル:《夜叉業》

称号スキル:《剣鬼羅刹》

■現在SP:30






■アバター名:緋真

■性別:女

■種族:羅刹女族

■レベル:131

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:90

VIT:50

INT:87

MND:40

AGI:49

DEX:30

■スキル

ウェポンスキル:《刀神:Lv.52》

 《武王:Lv.27》

マジックスキル:《灼炎魔法:Lv.43》

 《昇華魔法:Lv.40》

セットスキル:《武神闘気:Lv.30》

 《オーバースペル:Lv.28》

 《火属性超強化:Lv.32》

 《回復特性:Lv.55》

 《炎身:Lv.67》

 《致命の一刺し:Lv.49》

 《超位戦闘技能:Lv.35》

 《空歩:Lv.36》

 《術理掌握:Lv.42》

 《MP自動超回復:Lv.28》

 《省略詠唱:Lv.21》

 《蒐魂剣:Lv.64》

 《魔力操作:Lv.95》

 《並列魔法:Lv.38》

 《魔技共演:Lv.41》

 《燎原の火:Lv.69》

 《二天一流:Lv.18》

 《賢人の智慧:Lv.56》

 《曲芸:Lv.2》NEW

 《臨界融点:Lv.10》

 《剣技:絶景倒覇:Lv.7》

 《抜山蓋世:Lv.2》

サブスキル:《採取:Lv.7》

 《採掘:Lv.15》

 《聖女の祝福》

 《見識:Lv.35》

種族スキル:《夜叉業》

称号スキル:《緋の剣姫》

■現在SP:46






■モンスター名:ルミナ

■性別:メス

■種族:ヴァルハラガーディアン

■レベル:45

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:90

VIT:40

INT:90

MND:40

AGI:72

DEX:40

■スキル

ウェポンスキル:《刀神》

 《神槍》

マジックスキル:《天光魔法》

 《大空魔法》

スキル:《光属性超強化》

 《戦乙女の戦翼》

 《魔法抵抗:極大》

 《物理抵抗:大》

 《MP自動超回復》

 《超位魔法陣》

 《ブーストアクセル》

 《空歩》

 《風属性超強化》

 《HP自動超回復》

 《光輝の戦鎧》

 《戦乙女の大加護》

 《半神》

 《精霊の囁き》

 《吶喊》

 《大霊撃》

 《戦乙女の戦列》

 《精霊強化》

 《戦闘指揮》

称号スキル:《精霊王の眷属》






■モンスター名:セイラン

■性別:オス

■種族:ワイルドハント

■レベル:45

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:108

VIT:67

INT:60

MND:40

AGI:90

DEX:40

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《天嵐魔法》

 《大空魔法》

スキル:《風属性超強化》

 《天駆》

 《騎乗》

 《物理抵抗:極大》

 《痛恨撃》

 《剛爪撃》

 《覇王気》

 《騎乗者大強化》

 《天歩》

 《マルチターゲット》

 《神鳴魔法》

 《雷属性超強化》

 《魔法抵抗:大》

 《空中機動》

 《嵐属性超強化》

 《吶喊》

 《帯電》

 《亡霊召喚》

 《剛嵐》

 《亡霊操作》

 《デコイ》

 《麻痺耐性:中》

称号スキル:《嵐の王》






■アバター名:アリシェラ

■性別:女

■種族:闇月族エクリプス

■レベル:131

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:59

VIT:30

INT:60

MND:30

AGI:89

DEX:80

■スキル

ウェポンスキル:《闇殺刃:Lv.52》

 《連弩:Lv.22》

マジックスキル:《深淵魔法:Lv.30》

 《闇月魔法:Lv.23》

セットスキル:《致命の一刺し:Lv.57》

 《姿なき侵入者インビジブル:Lv.35》

 《超位毒耐性:Lv.6》

 《フェイタルエッジ:Lv.32》

 《回復特性:Lv.42》

 《闇属性超強化:Lv.26》

 《ピアシングエッジ:Lv.37》

 《トキシックエッジ:Lv.29》

 《静寂の鬨:Lv.21》

 《真実の目トゥルースサイト:Lv.43》

 《パルクール:Lv.33》

 《パリスの光弓:Lv.17》

 《血纏:Lv.16》

 《ミアズマウェポン:Lv.74》

 《空歩:Lv.27》

 《魔技共演:Lv.41》

 《闇月の理:Lv.24》

 《ブリンクアヴォイド:Lv.52》

 《死神の手:Lv.43》

 《光神の槍:Lv.15》

 《超直感:Lv.7》

 《天上の舞踏エアリアルダンス:Lv.2》

サブスキル:《採取:Lv.23》

 《調薬:Lv.28》

 《偽装:Lv.27》

 《閃光魔法:Lv.1》

 《聖女の祝福》

 《リサイクル:Lv.20》

種族スキル:《闇月の魔眼》

称号スキル:《天月狼の導き》

■現在SP:24






■モンスター名:シリウス

■性別:オス

■種族:ブレイドドラゴン・デュランダル

■レベル:5

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:132

VIT:125

INT:65

MND:79

AGI:70

DEX:65

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《昇華魔法》

スキル:《断爪撃》

 《絶鋭牙》

 《吶喊》

 《ブラストブレス》

 《物理抵抗:極大》

 《不毀》UP

 《鋭斬鱗》

 《鋭刃翼》

 《斬尾撃》

 《魔法抵抗:極大》

 《覇気》

 《移動要塞》

 《研磨》

 《変化》

 《龍王気》

 《バインドハウル》

 《自己再生》

 《鱗魔弾》

 《不毀の絶剣デュランダル

 《ディフェンシング》

称号スキル:《真龍》

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マギカテクニカ書籍版第12巻、7/18(金)発売です!
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  https://x.com/AllenSeaze
書籍化情報や連載情報等呟いています。
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― 新着の感想 ―
[一言] 冒頭のファンタジー的な俺tueeeeが結構好きだけど 今回みたいな本格的な軍事行動もまたよきかな
[一言] アリスがどんどん人外化していく・・・・・・ 最初から規格外だったクオンと一緒にデーモンの群れを片付けて、 さらに偵察に必要な隠密能力もある。 クオンにばかり目が行ってると見落としそうですね…
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