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701:フィノの強化へ向けて











 ティエルクレスという最高峰の強敵と戦ったこともあり、流石に俺も少々疲れはある。

 とはいえ、ログアウトするにはまだ早い時間でもあるため、素材集めの依頼はこなしていくこととしよう。

 それに伴っての相手であるが、やはりどんな敵でもいいというわけではない。



「フィノが使うとなると、やはり生物系の素材ってわけじゃないよな」

「ですね。《鍛冶》系統だとやっぱり鉱物か、最低限でも爪とか牙みたいな硬質の素材じゃないと」

「魔物素材を加工するのなら、できるだけ大きい素材の方がいいわよね」



 言いつつ、アリスが見つめているのはシリウスだ。

 確かに、シリウスの鱗や爪は、フィノが加工するには最も適している素材だろう。

 しかし、シリウスは安易に自らの体の一部を渡すような真似はしない。

 剥がれ落ちた一部であればいいのだが、自ら鱗を剥がして渡すようなことは認めないだろう。

 まあ、戦いの中で剥がれ、回収していた一部はまとめてフィノに渡しておいたのだが。

 アリスの視線を追ってシリウスを眺めていた緋真は、思い出したようにしみじみと呟く。



「シリウスの鱗素材の武具って、実は噂になってるんですよね」

「そうそう出回るもんではないと思うが、話題になるほどか?」

「そりゃ、レアですけど実在するアイテムですしね。しかも普通のプレイヤーが持ってるものですから、噂にはなりますよ」



 シリウスは、たまに気に入った相手には剥がれた鱗を渡していたりする。

 それを加工して自らの武器にする者や、たまにフィノが加工して売りに出していたものを速攻で購入したり、オークションで購入したりした者もいるのである。

 そういった連中が自慢でもすれば、多少は話題にもなることだろう。



「シリウスの素材で作った装備って、癖がなくて使い易いんですよね。頑丈で威力が高いので」

「属性の偏りもないから、どんな相手にも使い易いって話が出回ってるみたいね」

「その割には、あまり素材目当てに寄ってくる奴がいた覚えはないが」

「そりゃ、人気のない場所に遠征ばっかりしてますし……それに、そこらの建物よりもでっかいシリウスに、素材目当てに近づいてくるのは流石に怖いでしょうから」



 流石に、街中でシリウスをフルサイズにはしていないのだが。

 まあ、面倒が減っているならそれで良しとしておこうか。



「まあいい、邪魔が少ないならそれに越したことはないからな。仮に来たとしても素材は全部フィノに渡したんだし、教えてやればそっちに行くだろ」

「……商会長の彼女、何であんなにニコニコしてたのかしらね。明らかに面倒臭そうなのに」

「まあ、研究も終わっていて、高く売りつけられる素材だからでしょうね……」



 シリウスの鱗は加工の難しさはあるが、分かりやすく強力な装備が作れる。商品としては扱いやすい代物なのだろう。

 相変わらずの商魂たくましい様子には苦笑しつつ、改めて次なる目的地について確認する。



「で……場所は、ここから北西でいいのか?」

「はい。アルフィニールの領域の端っこを通る形になりますが、悪魔の群れとの遭遇例はないそうです」

「金属素材っていうならあのサイでも良さそうな気はするが、またあっちまで行くのも面倒だしな……そっちの方が気楽でいいか」



 あの鎧を纏ったサイも、体表は金属のような質感だった。

 しかし、あれはエインセルが優先的に捕獲しようとしている魔物であったようだし、奴らと接触してしまう可能性も高い。

 例の警戒されているエリアのこともあるし、あちら側には極力近付かない方がいいだろう。



「『ブレードアリゲーター・アサルト』ね……何か上位種っぽい名前だが」

「普通のブレードアリゲーターはもっと前に出現する魔物でしたね。あんまり川とかは近付きませんでしたし」

「ワニだし、やっぱり川なのよね。足場が悪そうだわ」



 エレノアから紹介された標的であるブレードアリゲーター・アサルトは、体の前面が金属質な鱗に覆われた大型のワニだ。

 ちなみに、サイズは熊並みであり、人間ぐらいなら丸呑みにできてしまいそうなサイズだ。普通の動物だったとしても十分に脅威である。

 鱗も頑丈なのだが、とげとげとした刃がいくつも生えており、それを武器として突進するような戦法を得意としているらしい。

 ちなみに、強襲アサルトの名の通り、陸上まで突撃してくる積極的な魔物だ。川の中で待ち構えられていたら面倒だが、その点は狩りやすいと言えるだろう。

 とはいえワニはワニ、一度食らいついたら離さず、そのまま川の中まで引きずり込もうとするらしい。

 そこまで行かれたら、プレイヤーには最早為す術はないだろう。地上にいる間に仕留め切るのが鉄則だ。



「それなりに数がいて、群れやすく、そこそこいい素材を多く落とす……か」

「その条件なら、狩りに行ってるプレイヤーも多そうだけど?」

「あー、それがこのワニの噛みつき、ガードしてても食らいつかれて、そのまま引き摺られるんですよね。盾タンクには面倒な相手ですよ」



 どうやら、そこそこに穴場な様子ではある。

 敵の攻撃を引き付ける役目であるタンクが、一度攻撃を受けただけで逆に救助対象となってしまうのだ。

 鈍重で回避力には優れないプレイヤーには、大層厄介な相手であることだろう。

 逆に、回避力に特化しているのであれば、それほど恐れるような相手でもない。これも相性差ということだろう。



「避けタンク採用じゃないと厳しい狩場ってことね。それなら、そこまで混んでるってこともないでしょう」

「単純な回避構成は最近減ってますしね。公爵級と戦った経験上、仕方ない話ではありますけど」



 公爵級悪魔は、人間の姿をしている時はまだしも、真の姿を現した場合はとにかく巨大な化け物へと変貌する。

 あの攻撃の規模は、とてもではないが多少の回避で避け切れるようなものではないだろう。

 それに、仮に注意を引いた上で攻撃を避けることができたとしても、規模が大きすぎて他の味方は結局巻き込まれてしまう。

 あれだけの巨体を持つ相手には、回避主体の囮はそこまで活躍できないのだ。

 そういう背景もあり、単純な避けタンクは減っているらしい。



「……まあ、人が少ないなら好都合だ。エレノアも配慮してくれたんだろう」

「ですね。早速行きましょうか」

「心残りがあるとすれば『キャメロット』の連中だが……まあいい、報告は上げているしな。向こうも忙しいだろう」



 何しろ、あのファムが動いているのだ。

 邪魔者を排除するために、あえてドラグハルトの勢力を利用していたとしても全く不思議ではない。

 あいつがあれこれやっているなら、アルトリウスや軍曹もその処理に追われていることだろう。



(ティエルクレスの情報は送らない方が良かったか……?)



 下手をするとアンヘルが暴走しそうな気もするが、そこは何とかランドに抑えて貰いたいところである。

 ともあれ、接触できないならば仕方ない。今は自分たちの予定を優先することとしよう。

 そう結論付け、さっさと出発することとしたのだった。











 * * * * *











「《ディフェンシング》ってそういう効果だったんだな」



 目的地まではさっさと移動しようということで、空を飛んで移動していたのだが、一度戦闘しただけで再びレベルが上がってしまった。

 どうやら、あのクエスト内で得た経験値はまだ蓄積していたらしい。

 あの化け物の群れに加えてティエルクレスとも戦ったのだ、それも無理はない結果かもしれないが。

 まあそれはともかくとして、前回のレベルアップで、シリウスは新たなスキルを習得していた。



「《自己再生》も《ディフェンシング》も、どっちも使える効果ですね」

「ああ、悪くない。こいつは中々の強化だ」



 《自己再生》は、《自己修復》が進化したスキルである。

 これは実に単純で、鱗や爪などの修復速度が上がるというものだ。

 以前は、完全に欠けているとすぐには戻らなかったのだが、今はあっという間に元通りになる。

 しかも、微量ではあるがHPも回復している。魔力は消費するが、便利なスキルだ。


 そして《ディフェンシング》は、正直効果は分かりづらかった。

 単純に言うと、相手の行動を妨害するスキルで、相手の攻撃や進行方向に素早く割り込むことができるようになる。

 恐らく、ティエルクレスの攻撃を弾き返した時の行動が反映されたのではないだろうか。

 ああいった、敵の行動のインターセプトを行い易くするスキルであるらしい。



「実感は湧き辛いが、普段の行動に補正がかかるなら結構なプラス要素だな」

「グルッ」



 満足げに頷くシリウスだが、果たして当人にその自覚があるのかどうか。

 体が大きすぎて鈍重であるため、動き出しが素早くなるだけでもかなり便利になることだろう。

 その辺りは実際に戦って、体に馴染ませてやればいいか――進化も、目の前まで見えてきているわけだしな。



「さて、あそこが目的地か」



 前方に広がっているのは、川幅の広い河川。

 東で見たものと同様だが、この辺りには橋は存在していない。

 そんな川べりでウロウロしている大型の魔物――黒っぽい体表のワニこそが、今回の標的だろう。



「……向こうの方には狩りをしているプレイヤーがいるわね」

「対岸側でもこいつらは出るんだよな? なら、向こう側でいいか」



 アリスの助言に従い、川の向こう側へと移動する。

 この辺りには河川を渡る手段が無い以上、向こう側の方が他のプレイヤーは少ないだろう。

 さて、フィノの成長の手助けついでに、俺たちもレベルを上げていくこととしよう。

 目指すはシリウスの進化。今日だけではそこまでは行けないだろうが、できるだけ近付いておかなければ。











■アバター名:クオン

■性別:男

■種族:羅刹族

■レベル:124

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:97

VIT:60

INT:67

MND:40

AGI:40

DEX:30

■スキル

ウェポンスキル:《刀神:Lv.45》

 《武王:Lv.15》

マジックスキル:《昇華魔法:Lv.59》

 《神霊魔法:Lv.31》

セットスキル:《致命の一刺し:Lv.51》

 《MP自動超回復:Lv.27》

 《奪命剣:Lv.81》

 《練命剣:Lv.81》

 《蒐魂剣:Lv.81》

 《テイム:Lv.97》

 《HP自動超回復:Lv.27》

 《生命力操作:Lv.100》LIMIT

 《魔力操作:Lv.100》LIMIT

 《魔技共演:Lv.62》

 《クロスレンジ:Lv.45》

 《回復特性:Lv.57》

 《超位戦闘技能:Lv.23》

 《剣氣収斂:Lv.77》

 《血の代償:Lv.46》

 《立体走法:Lv.49》

 《会心破断:Lv.49》

 《再生者リジェネレイター:Lv.36》

 《ワイドレンジ:Lv.23》

 《三魔剣皆伝:Lv.5》

 《天与の肉体:Lv.1》

サブスキル:《採掘:Lv.15》

 《聖女の祝福》

 《抜山蓋世:Lv.1》

 《見識:Lv.36》

種族スキル:《夜叉業》

称号スキル:《剣鬼羅刹》

■現在SP:44






■アバター名:緋真

■性別:女

■種族:羅刹女族

■レベル:124

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:90

VIT:50

INT:80

MND:40

AGI:42

DEX:30

■スキル

ウェポンスキル:《刀神:Lv.45》

 《武王:Lv.20》

マジックスキル:《灼炎魔法:Lv.36》

 《昇華魔法:Lv.33》

セットスキル:《武神闘気:Lv.23》

 《オーバースペル:Lv.20》

 《火属性超強化:Lv.25》

 《回復特性:Lv.48》

 《炎身:Lv.60》

 《致命の一刺し:Lv.42》

 《超位戦闘技能:Lv.27》

 《空歩:Lv.29》

 《術理掌握:Lv.36》

 《MP自動超回復:Lv.21》

 《省略詠唱:Lv.13》

 《蒐魂剣:Lv.58》

 《魔力操作:Lv.88》

 《並列魔法:Lv.31》

 《魔技共演:Lv.37》

 《燎原の火:Lv.62》

 《二天一流:Lv.11》

 《賢人の智慧:Lv.49》

 《軽業:Lv.22》

 《臨界融点:Lv.5》

 《剣技:絶景倒覇:Lv.1》

サブスキル:《採取:Lv.7》

 《採掘:Lv.15》

 《聖女の祝福》

 《抜山蓋世:Lv.1》

 《見識:Lv.35》

種族スキル:《夜叉業》

称号スキル:《緋の剣姫》

■現在SP:34






■モンスター名:ルミナ

■性別:メス

■種族:ヴァルハラガーディアン

■レベル:38

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:90

VIT:40

INT:83

MND:40

AGI:65

DEX:40

■スキル

ウェポンスキル:《刀神》

 《神槍》

マジックスキル:《天光魔法》

 《大空魔法》

スキル:《光属性超強化》

 《戦乙女の戦翼》

 《魔法抵抗:極大》

 《物理抵抗:大》

 《MP自動超回復》

 《超位魔法陣》

 《ブーストアクセル》

 《空歩》

 《風属性超強化》

 《HP自動超回復》

 《光輝の戦鎧》

 《戦乙女の加護》

 《半神》

 《精霊の囁き》

 《吶喊》

 《霊撃》

 《戦乙女の戦列》

 《精霊強化》

 《戦闘指揮》

称号スキル:《精霊王の眷属》






■モンスター名:セイラン

■性別:オス

■種族:ワイルドハント

■レベル:38

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:101

VIT:62

INT:60

MND:40

AGI:88

DEX:40

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《天嵐魔法》

 《大空魔法》

スキル:《風属性超強化》

 《天駆》

 《騎乗》

 《物理抵抗:極大》

 《痛恨撃》

 《剛爪撃》

 《覇王気》

 《騎乗者大強化》

 《天歩》

 《マルチターゲット》

 《神鳴魔法》

 《雷属性超強化》

 《魔法抵抗:大》

 《空中機動》

 《嵐属性超強化》

 《吶喊》

 《帯電》

 《亡霊召喚》

 《纏嵐》

 《亡霊操作》

 《デコイ》

称号スキル:《嵐の王》






■アバター名:アリシェラ

■性別:女

■種族:闇月族エクリプス

■レベル:124

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:52

VIT:30

INT:60

MND:30

AGI:82

DEX:80

■スキル

ウェポンスキル:《闇殺刃:Lv.45》

 《連弩:Lv.15》

マジックスキル:《深淵魔法:Lv.23》

 《闇月魔法:Lv.18》

セットスキル:《致命の一刺し:Lv.50》

 《姿なき侵入者インビジブル:Lv.28》

 《上位毒耐性:Lv.48》

 《フェイタルエッジ:Lv.25》

 《回復特性:Lv.34》

 《闇属性超強化:Lv.18》

 《ピアシングエッジ:Lv.30》

 《トキシックエッジ:Lv.22》

 《静寂の鬨:Lv.13》

 《真実の目トゥルースサイト:Lv.38》

 《パルクール:Lv.26》

 《パリスの光弓:Lv.10》

 《血纏:Lv.9》

 《ミアズマウェポン:Lv.69》

 《空歩:Lv.20》

 《魔技共演:Lv.36》

 《闇月の理:Lv.17》

 《ブリンクアヴォイド:Lv.45》

 《死神の手:Lv.37》

 《光神の槍:Lv.7》

 《超直感:Lv.1》

サブスキル:《採取:Lv.23》

 《調薬:Lv.28》

 《偽装:Lv.27》

 《閃光魔法:Lv.1》

 《聖女の祝福》

 《天上の舞踏エアリアルダンス:Lv.1》

 《リサイクル:Lv.20》

種族スキル:《闇月の魔眼》

称号スキル:《天月狼の導き》

■現在SP:16






■モンスター名:シリウス

■性別:オス

■種族:ブレイドドラゴン

■レベル:31

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:105

VIT:103

INT:55

MND:60

AGI:59

DEX:55

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《昇華魔法》

スキル:《剛爪撃》

 《穿鋭牙》

 《吶喊》

 《ブラストブレス》

 《物理抵抗:極大》

 《硬質化》

 《鋭斬鱗》

 《鋭刃翼》

 《斬尾撃》

 《魔法抵抗:大》

 《覇気》

 《移動要塞》

 《研磨》

 《変化》

 《龍気》

 《バインドハウル》

 《自己再生》

 《鱗魔弾》

 《魔剣化》

 《ディフェンシング》

称号スキル:《真龍》

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書籍化情報や連載情報等呟いています。
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― 新着の感想 ―
[一言] 確かに回避盾なんて諸々デフォルメされてて 単純に確率計算上で避けられるから形になってたとこあるものな こんなリアルなゲームで実際に避ける動作しなきゃってなったらあまり現実的じゃないのかもな~…
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