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067:新素材












「中々面倒だったが……これでリベンジ達成か」

「はぁ……ずっと歌いっ放しもきついですよ、クオンさん」

「何、中々いい稼ぎにはなっただろう?」



 残念ながらルミナのレベルはまだ上がらなかったが、それでも大きく経験を稼げたことだろう。

 数ばかりが多い面倒な敵ではあるが、塵も積もれば何とやらだ。

 それに、こうして巣まで辿り着ければ、多少は歯応えのある相手もいる。

 いい加減慣れてきた猿や蜂共よりは、幾らか緊張感のある戦いができたのだ。

 俺はそれなりに満足しつつ、周囲をぐるりと見渡していた。



「しかし……また随分と倒したもんだな」

「これ全部回収するの面倒ですね……」

「私も先生も、インベントリがそろそろ圧迫されてますよ。余裕があったらシェパードさんが回収しちゃってください」

「あー、あんなレベリングしてればそりゃそうなりますか。分かりました、王都で精算しましょう」



 シェパードは緋真の言葉に対して苦笑を零し、周囲の蟻たちの素材を回収し始める。

 俺たちとしては、蟻の素材はあまり使い所も無いし、正直扱いに困るだけだ。

 こいつらの甲殻は軽鎧の素材として使えるのではと考えているが、俺も緋真も鎧は装備していない。

 まあ、篭手があるので皆無というわけではないのだが、それならこちらのルークの素材を使った方がいいだろう。

 そんなことを胸中で呟きながら、俺は目の前のルークから素材を回収していた。


■《素材》群蟻鎧種の甲殻

 重量:6

 レアリティ:4

 付与効果:腐食耐性


■《素材》群蟻鎧種の顎

 重量:3

 レアリティ:5

 付与効果:腐食耐性


 顎については予想外だったが、やはり目論見通り、甲殻を取得することができた。

 しかも結構でかいためか、数もそれなりに回収できている。

 一つ一つの大きさも結構なものであるし、一匹で二人分の鎧は作れるのではないだろうか。

 まあ、俺と緋真、そしてルミナの分の篭手や足甲を作っても十分余るだろう。

 残りは精算するか、新しい装備の料金代わりに売りつければ済む話だ。無駄にはなるまい。

 ついでに、もう一つの上位種、ナイトの方であるが――


■《素材》群蟻騎士種の足刃

 重量:2

 レアリティ:4

 付与効果:腐食耐性


■《素材》群蟻騎士種の軽殻

 重量:2

 レアリティ:4

 付与効果:腐食耐性


 どうやら、足についている刃と、その甲殻であるらしい。

 特徴としては、どちらも非常に軽い。若干強度に不安はあるが、この軽さを考慮すれば有用性は十分にあるだろう。

 まあ、俺としてはあまり利用するメリットは感じないが……その辺についてはフィノたちに調べて貰えば済む話か。

 しかし、この腐食耐性と言うのは一体どんな効果なのか。

 字面の通りで見るのならば、腐食による劣化を抑えるという効果なのだろうが、ゲーム的にはどのような効果が現れるのか。

 新しい素材について一通り見分し――そこで、突如としてシェパードが素っ頓狂な声を上げていた。



「あれっ!?」

「ん、どうした、シェパード?」

「いや、この巣なんですけど……」



 視線を上げてみれば、シェパードが困惑気味に蟻の巣を指さしていた。

 見た目は、地面がドーム状に盛り上がったような物体だ。

 正直、日常生活の中で見かける蟻の巣とは似ても似つかないものである。

 まあ、見た目には変わっているが、そこから蟻が出現していたのだから蟻の巣に間違いはあるまい。

 果たして、それに何があったのかと、俺たちは疑問符を浮かべながらもそちらに接近していた。

 そして、俺たちの方へと振り返ったシェパードは、困惑した様子のまま俺たちへと告げていた。



「この巣、《採掘》ポイントですよ」

「えっ!? ちょ、ちょっと待ってください」



 その言葉に目を見開いた緋真は、急ぎ己のメニューを操作し始める。

 何をしているのかと覗き込んでみれば、どうやら自分のスキルを弄っているようだった。

 何やらスキルを入れ替えた緋真は改めて蟻の巣を観察し――驚きと共に声を上げる。



「ホントだ……先生、この巣は《採掘》が可能みたいですよ」

「《採掘》? 蟻の巣からか?」

「ええ。何が掘れるのかはよく分かりませんけど……何か、珍しいアイテムがゲットできそうですね!」



 楽しげな様子の緋真に対し、俺は顎に手を当てながら頷き、視線を巣へと戻す。

 成程確かに、見た目はどこか岩のような質感だ。鶴嘴で掘ろうと思えば掘れるだろう。

 しかし、蟻の巣から一体何が掘れると言うのか。その辺りの知識は無いし、皆目見当もつかない話だった。



「……まあ、試してみりゃ分かる話か」

「ですね。先生、ピッケルあります?」

「最初にフィノから譲って貰ったやつがな。ずっとお蔵入りしたままだったが」



 今まで流されるままに――と言うか、目の前の戦いに気を取られ続けていた結果、全く《採掘》を使ってこなかったのだ。

 ランダムで取得したスキルとは言え、我ながらどうかとは思う。

 とは言え、こうして使うタイミングを得ることができたのだ。決して無駄ではなかったのだろう。


 試しに、俺もスキルを入れ替え、《採掘》をセットしてみる。

 するとどうだろう、目の前で盛り上がっている蟻の巣が、僅かに光を放ち始めた。

 ……いや、それによって周囲が照らされている様子は無いから、そのように見えているだけなのか。

 どうやら、これが《採掘》の効果であるようだ。



「さて、何が掘れますかねー」

「ここまで苦労したんだ。多少はいい素材であってほしいもんだな」



 何しろ、蟻共を全滅させなければ落ち着いて《採掘》などできないのだから。

 俺が言うのもなんだが、あの蟻共を全滅させるのは中々に骨が折れる。

 そこまで苦労した末のアイテムなのだから、その苦労に見合う素材であってほしいところだ。

 とは言え、《採掘》の勝手もよく分からんので、具体的なイメージの無い曖昧な願望でしかないのだが。


 巣はそれなりに巨大だ。直径では10メートル近くあるかもしれない。

 それだけの大きさがあるため、俺たちは三方向から一斉に《採掘》を行うことができた。

 ピッケルを振り下ろせば、硬い音と共に火花が散る。

 どうやら一回振り下ろせばいいというものではないらしく、何度かそれを繰り返し――そこで、一つのアイテムが転がり落ちてきた。


■《素材》蟻酸鉱

 重量:3

 レアリティ:5

 付与効果:腐食



「おお……こういう風に手に入るのか。しかし、何だこりゃ?」

「あ、先生も手に入りました? この蟻酸鉱とかいう鉱石!」

「ああ。しかし、蟻酸で鉱石って何だ?」

「んー、私にもちょっと分からないですね。《鑑定》持ちが居たら詳しく解析できるんですけど……まあ、フィノの所に持っていけば分かりますよ」

「でも、レアリティから見てかなり珍しい鉱石ですね。名前的にも、蟻の巣からしか手に入らないんじゃないですか?」



 二人の言葉に、成程と頷く。

 鉱石の類ならば、フィノが扱えることだろう。それに、もしかしたら新しい刀を作ることができるかもしれない。

 まあ、付与効果の腐食とやらが少々気になるわけだが。

 とは言え、流石にこの鉱石を使った武器自体がすぐに腐食するという話ではないだろう。

 手に入れるのにここまで苦労したのだ、そんな笑い話にもならないような結末は勘弁してもらいたい。



「確か、鋼がレアリティ3でしたよね、緋真さん。だったら、かなり強い武器が作れるんじゃ?」

「可能性はありますけど、どっちかと言うとこの付与効果の影響じゃないですかね? 鉱石の時点で付与効果が付いてるなんて、私聞いたことも無いですけど」

「それはそれで、武器に新たな付与効果が生まれるかもってことじゃないですか。まあ、僕は金属武器使いませんけど」

「腐食かぁ……何か、いまいち強そうな字面じゃないですけど」



 首を傾げている緋真ではあるが、新しい刀そのものには興味を抱いているらしい。

 尤も、それに関しては俺も例外というわけではない。やはり、新しい武器というものは心躍るものがある。

 とは言え、碌な腕の無い鍛冶の作品ではそれも興醒めと言うものだが。

 現状、フィノの作品は満足できるものである。こいつを渡しても、彼女ならばいい刀を仕上げてくれることだろう。



(……とはいえ、まだまだ名刀の領域には届いていないが)



 腰にあるフィノの太刀に軽く触れつつ、俺は胸中でそう呟く。

 彼女の作った刀は、数打ちの武器としてみれば十分なものだ。

 俺も、かつて使い潰していた刀はこれぐらいの出来だったが故に、中々手に馴染んではいる。

 だが、俺は知っているのだ。名工の打った傑作を、真に名刀と呼ぶべき刀の存在を。

 それと比べれば、まだまだと言った所だろう……まあ、あれと比較してしまうのは、流石に彼女が可哀想ではあるが。



『《採掘》のスキルレベルが上昇しました』



 鉱石を掘っている内に、《採掘》のスキルレベルは面白いように上がっていく。

 とは言え、毎回都合良く蟻酸鉱が出現するわけではないようだ。

 鉄鉱石であることもあるし、運が悪い時にはただの石ころという時もある。

 中々、確率はシビアなものだ。最初は全員手に入っていたことを考えると、もしかしたら初回のみは確実だったのかもしれないが。

 そしてそれを繰り返している内に、いつしか蟻の巣が発していた薄い光は完全に消え去ってしまっていた。



「あー、《採掘》ポイント終了ですね。ちょっと数が物足りないかなぁ」

「そこそこ手に入ったと思っていたが、そうでもないのか?」

「武器にするにはまずインゴットにしないといけないですからね。その時点で結構数が減りますし……フィノの腕ならそうそう失敗することは無いと思いますけど、失敗できる量は無いかなぁ」

「……フィノさんでも、このレアリティの鉱石を一発成功は難しいんじゃ?」

「フィノの腕は信用してますから。でもまぁ、確実にとは言い切れないのは、私も否定できないかな」



 どうやら、鉱石のレアリティが高いと、武器の作成に失敗する可能性があるらしい。

 苦労して持ち帰ったものを失敗で台無しにされるのは、俺としても避けたいところだ。

 であるならば――



「……よし。ならばもう一回だ」

「はい、お父さま。戦いなら頑張ります!」

「え? いやいやいや……ちょっと、先生? まさか、また蟻たちと?」

「マジですか……」



 引きつった表情の緋真と、げんなりと嘆息するシェパード。

 確かに厳しい戦いであったとはいえ、まだ一度しかやっていないのだ。少しはルミナを見習ってほしい所である。

 それに、猿ばかりと戦っていても退屈なだけだ。蟻共との戦いの方がまだ緊張感がある。

 見返りも大きいのだから、こいつらを狙わない理由は無いだろう。



「そら、少し休憩したらまた次の蟻を探すぞ。それを片付けたら今日は終わりにするかね。回復は済ませておけよ」

「はーい……ホント、戦闘だとタフなんですから」



 半眼を向けてくる緋真に対してにやりと笑い、軽く肩を竦める。

 戦闘による疲労は、時間よりも密度によるものが大きい。

 今回の場合、緊張するほどの戦いは最後の上位種との戦闘程度だった。

 これでは、疲労するということは無いだろう。



「休憩すれば何とかなるだろ。目標は、俺たち三人の刀の分だ」

「分かってますよ……私も、新しい刀は欲しいですしね」



 まあ、なんだかんだ言って、緋真も俺と同じ性質の人間だ。

 新しい武器が手に入るとなれば、興味を抱かずにはいられないだろう。

 そんな弟子の様子に苦笑しながら、俺は次なる戦闘の構想を練り始めていた。





















■アバター名:クオン

■性別:男

■種族:人間族ヒューマン

■レベル:24

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:22

VIT:18

INT:22

MND:18

AGI:13

DEX:13

■スキル

ウェポンスキル:《刀:Lv.24》

マジックスキル:《強化魔法:Lv.16》

セットスキル:《死点撃ち:Lv.17》

 《MP自動回復:Lv.13》

 《収奪の剣:Lv.13》

 《識別:Lv.15》

 《生命の剣:Lv.16》

 《斬魔の剣:Lv.5》

 《テイム:Lv.10》

 《HP自動回復:Lv.10》

 《生命力操作:Lv.7》

サブスキル:《採掘:Lv.4》

称号スキル:《妖精の祝福》

■現在SP:24






■アバター名:緋真

■性別:女

■種族:人間族ヒューマン

■レベル:25

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:24

VIT:16

INT:21

MND:18

AGI:15

DEX:14

■スキル

ウェポンスキル:《刀:Lv.25》

マジックスキル:《火魔法:Lv.21》

セットスキル:《闘気:Lv.17》

 《スペルチャージ:Lv.15》

 《火属性強化:Lv.16》

 《回復適正:Lv.9》

 《識別:Lv.15》

 《死点撃ち:Lv.15》

 《格闘:Lv.15》

 《戦闘技能:Lv.15》

 《走破:Lv.14》

サブスキル:《採取:Lv.7》

 《採掘:Lv.4》

称号スキル:《緋の剣姫》

■現在SP:26






■モンスター名:ルミナ

■性別:メス

■種族:スプライト

■レベル:13

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:20

VIT:13

INT:30

MND:19

AGI:17

DEX:16

■スキル

ウェポンスキル:《刀》

マジックスキル:《光魔法》

スキル:《光属性強化》

 《飛翔》

 《魔法抵抗:大》

 《物理抵抗:小》

 《MP自動大回復》

 《風魔法》

称号スキル:《精霊王の眷属》

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― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりに周回していたら ここの採掘シーンがモンハンに侵食されていた モンハンの採掘も大変だけど、ダクソの原盤マラソンよりは断然楽ちん
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