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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
HW ~Hello World~

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65/945

065:再戦












『レベルが上昇しました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀》のスキルレベルが上昇しました』

『《MP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《HP自動回復》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』



 あれから、猿と蜂を二度ずつ相手をし、再びルミナのレベルが上がる。

 間に回復時間を挟んではいるが、明らかに効率は上がっている。やはり、シェパードを仲間に加えたのは正解だったようだ。

 まあ、彼は俺たちほど連戦に慣れているわけではなく、多少は休息を挟む必要があったが。

 とは言え、レベルアップの合間にルミナへの稽古をつけたいこともあり、その休息時間はそれなりにありがたい。

 シェパードにとっても、集中してレベルを上げたいシルフィのMPを回復させるのにちょうどよい時間となっているだろう。



「さて……この休憩が終わったら、奥に行ってみるぞ」

「え……先生、もしかしてあいつらと戦うんですか?」

「あいつら?」



 ルミナの調子を横で確認していた緋真は、俺の言葉に顔を引き攣らせながらこちらへと向き直る。

 その言葉にシェパードは首を傾げていたが、それには答えず、俺は口元を笑みに歪めて緋真へと返していた。



「問題は無いだろう。連携も確認したし、以前よりも調子が出ていることは確実だ。今なら、あの連中相手にも十分戦えるはずだ」

「ええ……いやまあ、確かにそうかもしれませんけど、今度こそ倒し切るつもりなんでしょう? 本当に行けますかね?」

「何、厳しけりゃ前と同じようにやるだけだ」

「ええと……何か不気味な会話なんですが、何と戦うつもりなんですか?」



 俺たちが苦戦したとも取れる話を聞いて、シェパードは警戒した様子で問いかけてくる。

 そんな彼の様子に、俺はくつくつと笑い声を零していた。

 気持ちは分からんでもないが、今の退屈な戦闘を幾度も繰り返すつもりは無い。

 それに、以前の戦いは敗走にも近いものだ。何の手段も持っていないのであればまだしも、新たな施策がある以上、試さずに終わらせる訳にはいかない。

 今度こそあいつらに――あの蟻共に、目に物を見せてやるとしよう。



「戦うのは蟻の群れだ。まあ、今までの連中と同じく、数で押してくる相手だな」

「はぁ……蟻、ですか。以前は、そいつらを倒し切れなかったと?」

「不本意ながらな。何しろ、連中は数が多すぎる。退却しながら戦って、何とか片付けたと言った所だ」

「……そんな連中相手に勝てるんですか?」

「負けはしない。少なくとも、三人で挑んだ時でも死にはしなかったからな。だが、あれは勝利ではなかった」



 少なくとも、前と同じ戦法を取れば死ぬ可能性は低いだろう。

 初見の時とは異なり、連中に関する知識もある。以前に比べれば幾分か楽になることは間違いない。

 蟻――レギオンアントの持つ強みは、何と言ってもその数だ。猿や蜂共とは比べ物にならないほどの物量による攻めこそが奴らの武器である。

 俺たちが奴らを相手に敗走したのは、純粋に手が回らなかったからだ。奴らは数が多すぎて、俺たち三人では対処しきれなかったのである。

 だが、今は違う。パーティメンバーの数だけで言えば純粋に倍、そしてシェパードの《呪歌》によって連中の足止めを行うことができる。

 あの進行速度が遅れるだけでも、こちらの取れる手段は多くなるのだ。幾らでもやりようはあるだろう。



「メンバーについては考慮が必要だが……お前さんは前衛は出さない方がいいだろう」

「何故ですか? 数に負けたってことは、手が足りていなかったんですよね」

「前衛が三人から四人になった所で大差はない。出すのであればお前さんの護衛だな。下手な前衛では、蟻に群がられてあっという間に脱落するぞ?」



 例え動きが鈍ったとしても、数が減っている訳ではないのだ。

 あの蟻に複数取り付かれたら、その時点で脱出は不可能だと考えた方がいい。

 その点を考えると、機動力に欠ける熊や防御の薄いライオンはあまり適さない。精々がスピードの速い狼だろうが、あれの攻撃手段は爪と噛みつきだ。蟻を相手にするには距離が近すぎるのである。

 できれば、遠距離での広範囲攻撃能力を持つテイムモンスターが相応しいが、それに該当するであろう妖精はまだ未熟だ。

 長時間の戦闘に耐えられるだけのMPが無い以上、シルフィを戦闘に出すのは難しいだろう。



「まあ、前を受け持つのは俺と緋真でやる。ルミナは……まあ、今なら多少回しても大丈夫かもな。どちらかと言えば、魔法での殲滅能力を当てにしたいところだが」

「結構ガチの戦法ですね……それだけヤバい相手なんですか?」

「単体で見ればただの雑魚なんだがな。地面を埋め尽くすほどの数は流石に脅威だ……しかし、やりようはある」

「それに、僕の《呪歌》が必要だと?」

「そういうことだ。何、やることはさっきとそれほど変わりは無いさ」



 シェパードには《呪歌》を使って貰い、ひたすら蟻共の動きを鈍らせる。

 猿や蜂に発揮されていた効果から考えて、この足止め効果があれば退却することなく蟻共を殲滅できるはずだ。

 前は退却せざるを得なかったあのエリアには、果たして何があるのか。

 その好奇心も含め、奴らとの戦いは待ち望んでいたものでもある。



「緋真、そろそろ出発するが、どんな調子だ?」

「いい調子ですよ。きっちり上達してます。まあ、実戦で使うにはまだ早い状況ですが」

「ふむ……まあ、とりあえずはそんなものか。よし、移動を開始するぞ」



 蟻共の生息地は、関所の近辺から少し離れた程度の場所だ。

 到着までにはそれほど時間はかからない。

 覚悟を決めた様子のシェパードも引き連れ、俺たちは蟻の生息地へと向けて出発していた。



「ルミナのレベルもあと3か……そうしたら、王都まで戻るとするか」

「何とか間に合いそうですね。先に武器の耐久度が無くなるかと思いましたよ」

「お前の戦い方に無駄が多いんだよ。俺の太刀はまだ半分はあるぞ?」

「むしろ、先生は何であんな無茶な戦い方してるのにそれだけ残ってるんですか……倒した数だと、私の1.5倍はいってますよね?」



 嘆息する緋真に対し、軽く肩を竦めて返す。その理由は明らかだろう。単純に、手札の数が違うからだ。

 だがその言葉を返す前に、シェパードは納得した様子で声を上げていた。



「クオンさんって、結構殴る蹴るで攻撃してますよね。そのおかげじゃないですか?」

「え? あー……そっか、先生の打法ならこの辺りの敵は殺せますか」

「そういうことだ。まあ、お前はあまり、攻撃性の高い打法はまだ学んでいないからな。差が出るのも当然だろう」



 緋真に教えている打法は、どちらかと言えば補助的な役割を持っているものの方が多い。

 まあ、こいつは俺に比べて筋力も体重も低い。どうしても打撃力が低くなることから、補助的な役割の技術を多く学ばせていたのだ。

 リーチが短いというリスクはあるが、それでもどのような状況下でも使える打法は中々優秀な戦闘技術だ。

 緋真にも、いくつか打法を見繕って覚えさせておくべきだろう。軽視する門下生も多いが、最後に信頼できるのは打法なのだ。



「まあ、私は二振り目用意してますけど……その辺は後で相談させてください」

「勿論だ、色々と教えてやるさ。まあ、それよりも今は――」



 太刀を抜き、意識を先鋭化させる。

 まだ蟻の生息領域には足を掛けた程度であるが、連中を相手には可能な限り先手を打てるようにしたい。

 だが、奴らは少々気配の掴みづらい存在だ。あらかじめ集中しておかなければ、奇襲を受ける可能性もある。

 間隔を広げ、気配を探り――森の奥に、無数に蠢く奴らの気配を察知する。

 まだ若干距離はあるが、それでもあまり時間的余裕は無いだろう。



「シェパード、入れ替えは大丈夫か?」

「ええ、シルフィはチーコと交代です。風の魔法で援護して貰いますよ」

「ふむ、エアロファルコンか……突風で押し返すことはできるか?」

「それくらいなら問題ありません。指示しておきますか?」

「ああ、近づいたら吹き飛ばすように言っておいてくれ」



 無理やり距離を空けさせられるのは非常に便利だ。特に、この蟻共が相手の場合は。

 効果のほどは実際に試してみなければ分からないが、途中でガス欠になるよりはマシだろう。



「よし、前衛は俺と緋真。その後ろにルミナが付いて、抜けていく奴を片付けろ。シェパードたちは、後ろでひたすら援護だ」

「分かりました」

「はい、お父さま」

「了解です」



 淀みのない了承の声と共に、隊列が形成される。

 今度は退くことを想定したものではなく、前から来る連中を押し留めるための構成だ。

 これによって、今度こそあの蟻共を殲滅する。その決意と共に、俺は仲間たちに指示を下していた。



「魔法詠唱開始、そのまま前進だ」



 その言葉に頷いた緋真とルミナは、揃って魔法の準備を開始する。

 それを横目に見ながら、俺もまた《強化魔法》の詠唱を始めていた。

 詠唱完了のタイミングは既に把握している。俺はタイミングを合わせながら前進し――蟻共がこちらに反応したその瞬間に、即座に指示を飛ばしていた。



「放てッ!」

「【フレイムバースト】ッ!」

「光よっ!」



 緋真とルミナの放った二つの魔法は、それぞれこちらに近づいてくる蟻共の両翼で爆裂する。

 レベルが上がったこともあり、その威力は以前よりも大きく増しているのだ。

 元より、個体のHPは低い蟻共に耐えられるはずも無く、その効果範囲内にいた蟻はまとめて消し飛ばされていた。

 だが、仲間が消し飛ばされようとも、あの蟻共には一切の動揺はない。

 黒い波のような蟻の群れは、その両側を吹き飛ばされながらもこちらへと殺到してきている。

 だが――



「《呪歌》――【バラード】」



 蟻たちが接近してきたその瞬間、シェパードの演奏が響き渡る。

 その瞬間、蟻たちの足並みが、突如として迷走を始めていた。

 一斉にこちらへと向かってきていたはずの蟻のうち、いくつかがウロウロとその場で歩き回り始めたのだ。

 その結果、蟻たちの足並みは崩れ、その進行速度は一気に低下する。

 予想通り――いや、予想以上の効果だ。やはり、シェパードを連れてきたのは正解であったらしい。



「よし……前進だ、行くぞ」

『はい!』



 【アイアンエッジ】と【アイアンスキン】を発動しながら、前へ。

 以前は敗走することになった蟻共へ、今度はこちらから攻撃を仕掛けていく。

 ただし、囲まれないように注意しながら、だが。



「横は任せるぞ、ルミナ! 緋真、やれ!」

「了解です……二発目、【フレイムバースト】!」



 緋真の発動した二度目の魔法が、足並みを崩した蟻共の中心で炸裂する。

 吹き上がった炎によって千々に吹き飛ばされる蟻共の中、俺と緋真は飛び込むようにしながら刃を振るっていた。

 踏み込む足によって炎に巻かれていた蟻を粉砕し、飛び散る火の粉と共に振るう刃が二匹の蟻を纏めて両断する。

 その甲殻は若干硬いが、それでも斬り裂けないという程ではない。



「さて……今回はこちらの番だ。思う存分やらせて貰うとしようか」



 後方で光の矢が閃き、突風がうなりを上げる。

 その様子を気配で感じ取りながら、俺は冷たい殺意を向けてくる蟻共へと笑みを向ける。

 ――戦いの高揚に歪む、その口元を。






















■アバター名:クオン

■性別:男

■種族:人間族ヒューマン

■レベル:24

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:22

VIT:18

INT:22

MND:18

AGI:13

DEX:13

■スキル

ウェポンスキル:《刀:Lv.24》

マジックスキル:《強化魔法:Lv.15》

セットスキル:《死点撃ち:Lv.16》

 《MP自動回復:Lv.13》

 《収奪の剣:Lv.13》

 《識別:Lv.14》

 《生命の剣:Lv.15》

 《斬魔の剣:Lv.5》

 《テイム:Lv.10》

 《HP自動回復:Lv.10》

 《生命力操作:Lv.6》

サブスキル:《採掘:Lv.1》

称号スキル:《妖精の祝福》

■現在SP:24






■アバター名:緋真

■性別:女

■種族:人間族ヒューマン

■レベル:25

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:24

VIT:16

INT:21

MND:18

AGI:15

DEX:14

■スキル

ウェポンスキル:《刀:Lv.25》

マジックスキル:《火魔法:Lv.20》

セットスキル:《闘気:Lv.17》

 《スペルチャージ:Lv.14》

 《火属性強化:Lv.15》

 《回復適正:Lv.9》

 《識別:Lv.14》

 《死点撃ち:Lv.15》

 《格闘:Lv.15》

 《戦闘技能:Lv.15》

 《走破:Lv.14》

サブスキル:《採取:Lv.7》

 《採掘:Lv.4》

称号スキル:《緋の剣姫》

■現在SP:26






■モンスター名:ルミナ

■性別:メス

■種族:スプライト

■レベル:13

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:20

VIT:13

INT:30

MND:19

AGI:17

DEX:16

■スキル

ウェポンスキル:《刀》

マジックスキル:《光魔法》

スキル:《光属性強化》

 《飛翔》

 《魔法抵抗:大》

 《物理抵抗:小》

 《MP自動大回復》

 《風魔法》

称号スキル:《精霊王の眷属》

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― 新着の感想 ―
シェパード「蟻って言うから踏み潰せるやつかと思ったら、こんな巨大だなんて聞いてないっすよ!?」
[一言] 武器の耐久値が気になるならば 素手で殴れば良いではないか(´・ω・`) そんなことを爛れ続ける者戦以外で言って見たかった武明であった、、、 ※ダクソ無印のボス『爛れ続ける者』は素手で倒すこと…
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