633:風の歩む先、凍れる城塞あり その20
Magica Technicaのコミック第3巻が6/12(月)、書籍第8巻が6/19(月)に発売となります。
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その行動は、俺にとっても驚くべきものであった。
シリウスのブレスは、対集団戦における切り札の一つ。《ブラストブレス》に成長してからは、範囲の拡大もあり、多数の敵を相手にはめっぽう強力なスキルであった。
だがその性質上、単体の敵を攻撃するには向かず、そうそうカジュアルに使えるスキルではない印象だった。
今回の場合、前足でオーガを押さえつけていたため、上半身側で行える攻撃が必要だった。
だからこそ、シリウスはブレスによる攻撃を選択したのだろうが――
「自分の足を巻き込む必要はないだろうに、阿呆」
《ブラストブレス》は広く拡散するブレスだ。だが、口から放たれる以上、当然その根元は一点に集中している。
密着した状態から放てば、拡散する前のブレスを叩き込むことができるというわけだ。
シリウスがそこまで理解して使ったのかは分からないが、何にせよ自分の右足ごと巻き込むというのはやり過ぎだろう。
しかしながら、その効果は絶大だ。右腕の鱗と爪をボロボロにしながらも放ったその一撃は、オーガの身を物理的に削り取りながら吹き飛ばす。
強大な破壊力の嵐の中ですら己が武器を手放さなかったのは天晴れだが――流石に、無事では済まなかったようだ。
「ルミナ、シリウスのフォローを。トドメを刺しに行くぞ、緋真!」
「了解です!」
身を削り取られたオーガは氷の鎧も吹き飛び、全身から血を流しながら、それでも両足で大地を踏みしめ立っている。
手負いの獣だ。だからこそ恐ろしい。防具を失い大きくダメージを負った今でさえ、奴の瞳は戦意と殺意に満ち溢れているのだから。
だが、それでこそだ。窮地であろうとも決して諦めぬその在り方に、俺は敬意を表しながら地を蹴った。
歩法――烈震。
地を爆ぜさせるほどの加速。既に白影は解除しているが、スピードは十分だろう。
満身創痍のオーガであるが、重心のブレはなく、どっしりと構えた大剣はぴたりと静止している。
防御力こそ落ちただろうが、攻撃能力に陰りは無いだろう。
「オオッ!」
大剣が斧槍と化し、その刃で俺たち二人を同時に狙ってくる。
リーチの長いその武器であるが、破壊力は抜群だ。動きの精彩を欠いていない以上、その脅威度は依然として高い。
歩法――陽炎。
尤も、来ると分かっている攻撃に当たるほど手緩いつもりはないが。
オーガとてそれは分かっていたのだろう、今の攻撃は俺たちのスピードを落とすための牽制だ。
本命となるのはこの後、振り切ったはずの斧槍が虚空へと消失した瞬間だ。
(――ガントレットか!)
尤もコンパクトで隙の少ないであろう、拳による打撃。
直に力が伝わるため受け流しもし辛く、かと言ってこちらを殴り殺すには十分すぎる膂力。
リーチの短さを除けば、武器を操られるよりも厄介だと言えるだろう。
斬法――柔の型、流水・無刀。
こちらへと打ち掛かり、振り下ろしてきた巨大な拳。
俺の頭蓋を打ち砕かんと迫るそれに、俺は横から左手を添えた。
こちらの体へと伝わる衝撃は地面にまで受け流し、ほんの僅かに軌道を逸らせながら右側へと体を傾ける。
掠めた拳によって左肩の装甲が弾き飛ばされるが、そのおかげかダメージはほぼ受けなかったようだ。
だが、相手の体勢を崩せていない以上、コンパクトな動きのオーガはすぐさま反撃を放ってくるだろう。
(恐らくは右のフック――)
体を屈め、こちらの側頭部を狙ってくる拳を回避する。
相手が人間ならばここで足を払うところなのだが、流石にこの体重の敵を崩すことはできないだろう。
故に――
「『生奪』!」
斬法――柔剛交差・穿牙零絶。
密着状態から放つ刺突。
それが狙ったのは、相手の胴ではなく左足の腱だ。
人の形をしているが故に、その壊し方は容易に想像ができる。
左足のアキレス腱を切断されたオーガは、流石にその激痛には耐えきれずに膝を折り――
「――ようやく狙い易い位置に来たわね」
――黒い刃が、その心臓を貫いた。
今の今まで、その存在に気付かなかったからだろう。いつの間にか己の足元にまで潜り込んでいたアリスの姿に、オーガは驚愕に眼を見開いて硬直する。
その間に、アリスは距離に拘泥することもなく、《ブリンクアヴォイド》にてその場から撤退した。
己に大ダメージを与えた相手に対する注視、そしてそれが一瞬で消え去ったことへの困惑。
その隙がほんの僅かであったことは見事と言えるだろう。だが、俺たちにとってはそれでも十分すぎる。
「《練命剣》、【煌命閃】」
「術式解放――【ボルケーノ】!」
陽炎にて接近した緋真が、アリスの消えた空間へと燃え盛る刃を突き出す。
狙うは、アリスが突き刺していた心臓――ご丁寧に追加の弱点付与までされたそこは、オーガにとって急所も急所だ。
本来ならば、絶対に避けなければならなかった場所。しかし、足を潰され、アリスによって意識を逸らされたオーガには、このタイミングでの対処は不可能。
緋真が突き出した穿牙の一撃は、オーガの心臓を貫いた上で爆炎によって吹き飛ばす。
炎は背中までをも貫き、オーガの体に大穴を開け――それでも尚、英雄の目から殺意は消えていない。
「――見事」
斬法――剛の型、輪旋。
最後の一撃で、緋真を道連れにしようと拳を振り上げ――それを振り下ろす前に、俺の放った一閃がオーガの首を斬り飛ばした。
緋真が退避した直後、首と心臓を失った巨体は倒れ、沈黙する。
あまりのしぶとさ故に一応警戒は続けていたが、どうやら問題は無いようだ。
『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』
『《刀神》のスキルレベルが上昇しました』
『《武王》のスキルレベルが上昇しました』
『《昇華魔法》のスキルレベルが上昇しました』
『《神霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』
『《致命の一刺し》のスキルレベルが上昇しました』
『《MP自動超回復》のスキルレベルが上昇しました』
『《奪命剣》のスキルレベルが上昇しました』
『《練命剣》のスキルレベルが上昇しました』
『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』
『《HP自動超回復》のスキルレベルが上昇しました』
『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』
『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』
『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』
『《クロスレンジ》のスキルレベルが上昇しました』
『《回復特性》のスキルレベルが上昇しました』
『《超位戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』
『《剣氣収斂》のスキルレベルが上昇しました』
『《見識》のスキルレベルが上昇しました』
『《血の代償》のスキルレベルが上昇しました』
『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』
『《会心破断》のスキルレベルが上昇しました』
『《再生者》のスキルレベルが上昇しました』
『《ワイドレンジ》のスキルレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《セイラン》のレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』
戦闘終了と共に、大量のステータス上昇の知らせが届く。
確実に戦闘が終わったことを確信し、俺はようやく息を吐いて構えを解いた。
実に良い敵だった。可能ならば俺一人で戦ってみたい相手だったが……まあ、贅沢は言うまい。
通常の魔物であるならばどこかで出現するかもしれないし、再戦を楽しみにしておくこととしよう。
ともあれ、都市を封じるボスの一体を倒した。
オーガの死体からは滲み出るように魔力が溢れ、宙に浮かび上がり一つの紋章を描く。
剣を模したかのようなその紋章は、やがて黒く染まり、粉々に砕け散ったのだった。
「ふぅ……これで二つ目も解放か」
「何とか成長武器は使わずに済みましたね……」
「あの再生能力を見ると、使いたいところではあったけどな」
ともあれ、リソースを使わずに勝利できたことは僥倖だ。
残る封印は一つ、虫型のボスだ。果たして、『キャメロット』以外にそれを狩れるのかどうか――時間はあるし、確認しておくこととしよう。
■アバター名:クオン
■性別:男
■種族:羅刹族
■レベル:115
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:90
VIT:58
INT:58
MND:40
AGI:40
DEX:30
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.36》
《武王:Lv.5》
マジックスキル:《昇華魔法:Lv.49》
《神霊魔法:Lv.23》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.41》
《MP自動超回復:Lv.18》
《奪命剣:Lv.73》
《練命剣:Lv.73》
《蒐魂剣:Lv.71》
《テイム:Lv.89》
《HP自動超回復:Lv.18》
《生命力操作:Lv.95》
《魔力操作:Lv.95》
《魔技共演:Lv.56》
《クロスレンジ:Lv.36》
《回復特性:Lv.47》
《超位戦闘技能:Lv.12》
《剣氣収斂:Lv.68》
《見識:Lv.28》
《血の代償:Lv.36》
《立体走法:Lv.39》
《会心破断:Lv.43》
《再生者:Lv.28》
《ワイドレンジ:Lv.10》
サブスキル:《採掘:Lv.15》
《聖女の祝福》
種族スキル:《夜叉業》
称号スキル:《剣鬼羅刹》
■現在SP:46
■アバター名:緋真
■性別:女
■種族:羅刹女族
■レベル:115
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:83
VIT:50
INT:71
MND:40
AGI:40
DEX:30
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.36》
《武王:Lv.11》
マジックスキル:《灼炎魔法:Lv.27》
《昇華魔法:Lv.24》
セットスキル:《武神闘気:Lv.14》
《オーバースペル:Lv.12》
《火属性超強化:Lv.14》
《回復特性:Lv.39》
《炎身:Lv.51》
《致命の一刺し:Lv.33》
《超位戦闘技能:Lv.16》
《空歩:Lv.20》
《術理掌握:Lv.28》
《MP自動超回復:Lv.13》
《省略詠唱:Lv.4》
《蒐魂剣:Lv.50》
《魔力操作:Lv.78》
《並列魔法:Lv.24》
《魔技共演:Lv.31》
《燎原の火:Lv.55》
《二刀流:Lv.50》MAX
《賢人の智慧:Lv.42》
《見識:Lv.24》
《軽業:Lv.9》
サブスキル:《採取:Lv.7》
《採掘:Lv.15》
《聖女の祝福》
種族スキル:《夜叉業》
称号スキル:《緋の剣姫》
■現在SP:26
■モンスター名:ルミナ
■性別:メス
■種族:ヴァルハラガーディアン
■レベル:29
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:84
VIT:40
INT:80
MND:40
AGI:56
DEX:40
■スキル
ウェポンスキル:《刀神》
《神槍》
マジックスキル:《天光魔法》
《大空魔法》
スキル:《光属性超強化》
《戦乙女の戦翼》
《魔法抵抗:極大》
《物理抵抗:大》
《MP自動超回復》
《超位魔法陣》
《ブーストアクセル》
《空歩》
《風属性超強化》
《HP自動大回復》
《光輝の戦鎧》
《戦乙女の加護》
《半神》
《精霊の囁き》
《吶喊》
《霊撃》
《精霊召喚》
《精霊強化》
称号スキル:《精霊王の眷属》
■モンスター名:セイラン
■性別:オス
■種族:ワイルドハント
■レベル:28
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:100
VIT:53
INT:60
MND:40
AGI:80
DEX:40
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《天嵐魔法》
《大空魔法》
スキル:《風属性超強化》
《天駆》
《騎乗》
《物理抵抗:大》
《痛恨撃》
《剛爪撃》
《覇王気》
《騎乗者大強化》
《天歩》
《マルチターゲット》
《神鳴魔法》
《雷属性超強化》
《魔法抵抗:大》
《空中機動》
《嵐属性超強化》
《吶喊》
《帯電》
《亡霊召喚》
《纏嵐》
称号スキル:《嵐の王》
■アバター名:アリシェラ
■性別:女
■種族:闇月族
■レベル:115
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:44
VIT:30
INT:54
MND:30
AGI:80
DEX:80
■スキル
ウェポンスキル:《闇殺刃:Lv.36》
《連弩:Lv.6》
マジックスキル:《深淵魔法:Lv.15》
《闇月魔法:Lv.9》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.42》
《姿なき侵入者:Lv.20》
《上位毒耐性:Lv.40》
《フェイタルエッジ:Lv.17》
《回復特性:Lv.25》
《闇属性超強化:Lv.10》
《ピアシングエッジ:Lv.20》
《トキシックエッジ:Lv.11》
《静寂の鬨:Lv.4》
《真実の目:Lv.29》
《パルクール:Lv.18》
《投擲術:Lv.49》
《肉抉:Lv.49》
《ミアズマウェポン:Lv.62》
《空歩:Lv.12》
《魔技共演:Lv.28》
《闇月の理:Lv.8》
《ブリンクアヴォイド:Lv.39》
《死神の手:Lv.30》
《リサイクル:Lv.7》
サブスキル:《採取:Lv.23》
《調薬:Lv.28》
《偽装:Lv.27》
《閃光魔法:Lv.1》
《聖女の祝福》
種族スキル:《闇月の魔眼》
称号スキル:《天月狼の導き》
■現在SP:10
■モンスター名:シリウス
■性別:オス
■種族:ブレイドドラゴン
■レベル:22
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:100
VIT:100
INT:54
MND:55
AGI:55
DEX:55
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《昇華魔法》
スキル:《剛爪撃》
《穿鋭牙》
《吶喊》
《ブラストブレス》
《物理抵抗:極大》
《硬質化》
《鋭斬鱗》
《鋭刃翼》
《斬尾撃》
《魔法抵抗:大》
《覇気》
《移動要塞》
《研磨》
《変化》
《龍気》
《バインドハウル》
《自己修復》
《鱗魔弾》
《魔剣化》
称号スキル:《真龍》