613:安全靴
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エレノアからの連絡が来たのは、その日の狩りもそろそろ終わりにしようかと考えていたタイミングだった。
シリウスの力を確かめるため、少々遠出していたのだが、戻るには面倒な位置にまで来てしまった。
若干無駄遣い気味ではあるが、スクロールを使って帰るかどうか――エレノアの連絡は、そんな相談をしていた折だったのだ。
「これはスクロールじゃないかしら? 商会で話を聞く時間を考えたらそれくらい急ぐ必要があるでしょ」
「ふむ……もう少し狩りたかったんだがな。まあ、仕方ないか……こいつを片付けたら終わりにするとしよう」
残り一体にまで減ってしまった魔物、それは現在俺たちが装備している防具の原料をドロップする種族、ドラグスパイダーであった。
ちょうどいい機会だからこいつを探してみようと各地の森を転々としていたところ、北西方面の森の中で発見することに成功したのだ。
外見は、頭がドラゴンになって、全体的に若干スマートな形状の蜘蛛といったところか。
足なんかはドラゴンらしく、強固な鱗に覆われているため中々に頑丈だ。
しかも、素材になっていた通り、こいつは糸を出すタイプの蜘蛛である。尻の部分から糸を出し、爪で器用に操ってこちらを攻撃してくるのだ。
「《練命剣》、【命輝一陣】!」
中々に厄介な魔物ではあるのだが、既に慣れたものでもある。
俺が【命輝一陣】で牽制している間に、火の粉を散らしながら駆けるのは緋真だ。
張り巡らされた糸を焼き斬りながら進む彼女は、爪による攻撃を掻い潜りながらドラグスパイダーへと肉薄する。
その刃が狙うのは、コイツの弱点部分である腹だ。糸を出す際に伸び縮みする関係上か、ここは他と比べて柔らかいのである。
そんな弱点へと向けて、緋真は紅蓮の炎を纏う刃を構え――刃が振るわれる直前、飛来した小さな矢がドラグスパイダーの腹部に刺さり、そこに赤い紋様が浮かび上がる。
「はあッ!」
それに怯むこともなく、緋真はすぐさま刃を振り抜いた。
その一閃は、若干柔らかいとはいえ強固な鱗に覆われた腹部を、あっさりと斬り裂く。
アリスの小型クロスボウによる《肉抉》の弱点付与は、どうやらうまく使えているようだ。
「しッ」
歩法――間碧。
緋真の一閃でダメージを負ったドラグスパイダーは、痛みに呻くように足を動かし、周囲の糸に乱れが生じる。
それに乗じて、隙間を縫うように接近した俺は、足の一本へと向けて刃を振り抜いた。
「《練命剣》、【命輝練斬】!」
狙うは足の関節部分。放った一閃は足を切断するには至らぬものの、半ばまでを斬り裂き腱を断ち斬る。
足の一本を失ったことでバランスが崩れたドラグスパイダーは、それでも接近している俺たちに食らいつこうと足を動かし――上空より飛来した光の槍によって貫かれた。
飛び回るルミナやセイランにとっては、糸を張り巡らせるドラグスパイダーはあまり相性の良くない相手だ。
しかし、魔法で遠距離攻撃する分には何ら問題はない。ルミナの攻撃によって怯んでいる間に、セイランが風の刃で周囲の糸を一部排除、その隙間から俺と緋真は退散する。
そして――
「グルルルルッ!」
「ギィイッ!?」
糸が付着することなどまるで意に介していない本来の姿のシリウスが、額の角を突き出しながら突撃、ドラグスパイダーの体を正面から貫いたのだった。
シリウスの角は特に頑丈な部位であり、防御力の高い魔物が相手であろうと刃こぼれ一つしない。
その強靭な角によって貫かれたドラグスパイダーは、耐えきることはできずに絶命したのだった。
『《立体走法》のスキルレベルが上昇しました』
「お前な、掃除が大変なんだから、もう少し気を付けて戦えよ?」
「グルゥ」
角に突き刺さったままのドラグスパイダーを素材化し、付着した体液はインベントリから取り出した水で洗い流す。
が、体に付いた糸は簡単には剥がれないため、そこは緋真に火で炙って貰って取り除くことにした。
相手が悪魔なら、勝手に塵になるため掃除も楽なのだが。
「ま、土産にはちょうどいいか」
「生息地の情報もいいお土産になりそうですね」
まあ、そこそこ悪魔の領域側に踏み込む必要があるため、安易に取ってこれるかと聞かれるとそうでもないのだが。
目視できない距離とはいえ、例の大要塞が近い位置である。俺たちとしても、あまり踏み込みたくはない領域だ。
「活かせるかどうかは分からんが……エレノアなら何とかするだろう。戻るとするかね」
「どっちにしろ、安定して素材を供給するにはしばらくかかりそうだけどね」
今はワールドクエストで忙しい時期だ。どうしたところで、素材の回収は滞ることだろう。
アリスの言葉にはさもありなんと肩を竦め、俺は帰還のスクロールを使用したのだった。
* * * * *
「というわけで作られたのが、この『試作型安全靴r0.998(仮)』よ」
「名前が適当すぎるだろ」
「何回試作したらそんなリビジョンになるの?」
エレノアが差し出してきたブーツの胡乱なアイテム名に、俺たちは揃って半眼を向ける。
これに関しては当のエレノアも同意見であるのか、若干視線を逸らしながら続けた。
「全環境対応型の靴をどうやって実現するかと考えて、結局足の下に薄い魔力の層を作り出すことで対処するという結論に至ったわ。要は、ほんの僅かに浮いているような感覚ね」
「ふむ……少し重いな」
「その辺りは今後の改良次第だけど、流石に今の段階じゃこれが限度ね」
形状がブーツで、靴底も厚め。こうなると、流石に少々重く感じてしまう。
とはいえ、その辺りはかつての部隊時代に装備していたものと大差ないため、慣らせばどうとでもなるだろう。
流石に、アリスは足回りが重くなることに困惑気味であるようだが。
「しかし、足元に魔力の層を作るってことは……《空歩》みたいなこともできるのか?」
「それは無理ね。スキルと違って、どこに足場を作るかの指定なんてできないわ。単純に、靴底に物体が近付いた時に自動的に発生させられる程度のものだし、しかも強度もそこまではないもの」
「ふむ……流石にそう上手くはいかないか」
流石に、第三段階まで進化したスキルと同じ効果を装備だけで得られてしまっては問題があるか。
これに関してはダメもとで聞いただけであるし、別に残念という程のものでもない。
「その代わり、装備者の魔力は一切消費しないわ。単純に、装備してるだけで効果を発揮するわよ」
「成程な、試してみてもいいか?」
「ええ、存分に」
とりあえず、差し出されるままにそのブーツを装備する。
確かに足が若干重いのだが、しばらく歩いていればそれにも慣れるだろう。
普通に動き回る分には特に問題は無さそうだし、後は効果さえ確認できれば十分だ。
「それじゃ、これで試してみて」
「金ダライってなぁ……まさか、これを浮島みたいに跳び移れってか?」
先ほどから気になってはいたのだが、部屋の中に三つの金ダライが設置されていたのだ。
しかも、タライはぎっしりと氷が張られている。表面だけではなく、中まで氷の塊であるようだ。
靴に金と時間をかけたのに、何故こういうところは妙に手を抜くのかと疑問に思いつつも、俺はそのタライの上に足を載せた。
「お……?」
氷の地面を想像しながら垂直に足を降ろしたのだが、感触はどちらかというとリノリウムの床のよう。
見た目とは異なる奇妙な感覚に困惑しつつも、俺は両足で氷の上に立つ。
「どうですか、先生?」
「ああ、滑らないな。これは中々面白い感覚だ」
試しに他の金ダライに跳び移ってみるが、やはり感触は氷の地面ではない。
タライの下が固定されているわけではないため、あまり強くは跳躍できないが、この感覚ならば氷の上でも十分に歩き回れそうだ。
「こいつは素晴らしいな。感謝する、エレノア」
「注文通りに仕事をしただけよ。こちらとしても、いい商品のアイデアになったしね。これは試供品だけど、正式版は是非自分で購入して頂戴」
「勿論だ。いい改良を期待してるぞ」
ともあれ、これで準備は整った。
今度こそ、デルシェーラの居城へと足を踏み入れることとしよう。
■アバター名:クオン
■性別:男
■種族:羅刹族
■レベル:114
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:90
VIT:57
INT:57
MND:40
AGI:40
DEX:30
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.35》
《武王:Lv.4》
マジックスキル:《昇華魔法:Lv.47》
《神霊魔法:Lv.22》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.39》
《MP自動超回復:Lv.16》
《奪命剣:Lv.71》
《練命剣:Lv.71》
《蒐魂剣:Lv.71》
《テイム:Lv.87》
《HP自動超回復:Lv.16》
《生命力操作:Lv.93》
《魔力操作:Lv.93》
《魔技共演:Lv.55》
《クロスレンジ:Lv.34》
《回復特性:Lv.45》
《超位戦闘技能:Lv.10》
《剣氣収斂:Lv.66》
《見識:Lv.27》
《血の代償:Lv.35》
《立体走法:Lv.37》
《会心破断:Lv.41》
《再生者:Lv.26》
《ワイドレンジ:Lv.6》
サブスキル:《採掘:Lv.15》
《聖女の祝福》
種族スキル:《夜叉業》
称号スキル:《剣鬼羅刹》
■現在SP:44
■アバター名:緋真
■性別:女
■種族:羅刹女族
■レベル:114
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:82
VIT:50
INT:70
MND:40
AGI:40
DEX:30
■スキル
ウェポンスキル:《刀神:Lv.35》
《武王:Lv.10》
マジックスキル:《灼炎魔法:Lv.25》
《昇華魔法:Lv.22》
セットスキル:《武神闘気:Lv.13》
《オーバースペル:Lv.11》
《火属性超強化:Lv.12》
《回復特性:Lv.36》
《炎身:Lv.50》
《致命の一刺し:Lv.32》
《超位戦闘技能:Lv.15》
《空歩:Lv.17》
《術理掌握:Lv.27》
《MP自動超回復:Lv.12》
《省略詠唱:Lv.2》
《蒐魂剣:Lv.49》
《魔力操作:Lv.77》
《並列魔法:Lv.22》
《魔技共演:Lv.30》
《燎原の火:Lv.54》
《二刀流:Lv.49》
《賢人の智慧:Lv.41》
《見識:Lv.23》
《軽業:Lv.6》
サブスキル:《採取:Lv.7》
《採掘:Lv.15》
《聖女の祝福》
種族スキル:《夜叉業》
称号スキル:《緋の剣姫》
■現在SP:24
■モンスター名:ルミナ
■性別:メス
■種族:ヴァルハラガーディアン
■レベル:28
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:83
VIT:40
INT:80
MND:40
AGI:55
DEX:40
■スキル
ウェポンスキル:《刀神》
《神槍》
マジックスキル:《天光魔法》
《大空魔法》
スキル:《光属性超強化》
《戦乙女の戦翼》
《魔法抵抗:極大》
《物理抵抗:大》
《MP自動超回復》
《超位魔法陣》
《ブーストアクセル》
《空歩》
《風属性超強化》
《HP自動大回復》
《光輝の戦鎧》
《戦乙女の加護》
《半神》
《精霊の囁き》
《吶喊》
《霊撃》
《精霊召喚》
《精霊強化》
称号スキル:《精霊王の眷属》
■モンスター名:セイラン
■性別:オス
■種族:ワイルドハント
■レベル:27
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:100
VIT:52
INT:59
MND:40
AGI:80
DEX:40
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《天嵐魔法》
《大空魔法》
スキル:《風属性超強化》
《天駆》
《騎乗》
《物理抵抗:大》
《痛恨撃》
《剛爪撃》
《覇王気》
《騎乗者大強化》
《天歩》
《マルチターゲット》
《神鳴魔法》
《雷属性超強化》
《魔法抵抗:大》
《空中機動》
《嵐属性超強化》
《吶喊》
《帯電》
《亡霊召喚》
《纏嵐》
称号スキル:《嵐の王》
■アバター名:アリシェラ
■性別:女
■種族:闇月族
■レベル:114
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:43
VIT:30
INT:53
MND:30
AGI:80
DEX:80
■スキル
ウェポンスキル:《闇殺刃:Lv.35》
《連弩:Lv.4》
マジックスキル:《深淵魔法:Lv.14》
《闇月魔法:Lv.8》
セットスキル:《致命の一刺し:Lv.40》
《姿なき侵入者:Lv.18》
《上位毒耐性:Lv.40》
《フェイタルエッジ:Lv.15》
《回復特性:Lv.24》
《闇属性超強化:Lv.8》
《ピアシングエッジ:Lv.19》
《トキシックエッジ:Lv.10》
《静寂の鬨:Lv.3》
《真実の目:Lv.26》
《パルクール:Lv.16》
《投擲術:Lv.49》
《肉抉:Lv.48》
《ミアズマウェポン:Lv.60》
《空歩:Lv.10》
《魔技共演:Lv.27》
《闇月の理:Lv.7》
《ブリンクアヴォイド:Lv.38》
《死神の手:Lv.29》
《リサイクル:Lv.6》
サブスキル:《採取:Lv.23》
《調薬:Lv.28》
《偽装:Lv.27》
《閃光魔法:Lv.1》
《聖女の祝福》
種族スキル:《闇月の魔眼》
称号スキル:《天月狼の導き》
■現在SP:8
■モンスター名:シリウス
■性別:オス
■種族:ブレイドドラゴン
■レベル:21
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:99
VIT:99
INT:54
MND:55
AGI:55
DEX:55
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《昇華魔法》
スキル:《剛爪撃》
《穿鋭牙》
《吶喊》
《ブラストブレス》
《物理抵抗:極大》
《硬質化》
《鋭斬鱗》
《鋭刃翼》
《斬尾撃》
《魔法抵抗:大》
《覇気》
《移動要塞》
《研磨》
《変化》
《龍気》
《バインドハウル》
《自己修復》
《鱗魔弾》
《魔剣化》
称号スキル:《真龍》