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548:精鋭小隊











 隠れてこちらの様子を観察していた悪魔の小隊。その足となるスレイヴビーストを片付けたところで、俺は一旦その悪魔たちから距離を取った。

 高い実力を持つ悪魔であるが故に、決して油断するわけにはいかない。

 加えて――



(……あの悪魔。見たことのない姿だ)



 俺から見て最も奥にいる悪魔は、これまで目にしてきた悪魔たちとは異なる姿をしていた。

 これまで見てきたデーモンやアークデーモンは、それぞれ細かく姿は違っていたものの、大まかな特徴はある程度共通していた。

 しかしながら、その悪魔はそれらとはまた異なる姿をしていたのだ。

 爵位悪魔かとも思ったが、その割にはこちらに対する感情を感じ取ることができない。この無機質さは、通常の悪魔と変わらぬ感覚だ。



(だが、魔力量はかなりのもの。こいつは――)



■グレーターデーモン

 種別:悪魔

 レベル:110

 状態:アクティブ

 属性:闇・炎

 戦闘位置:地上・空中



 その名をスキルで確認して、思わず眼を細める。

 レッサーデーモン、デーモン、アークデーモンときて、ついに更なる上位種が姿を現したか。

 顔は仮面に隠れていて見えないが、姿かたちは人間に近い。顔面が見えないおかげか、頭だけを見た場合は、角が生えていること以外は人間と変わらないように見える。

 しかしながら、その腕は明らかな異形そのものであった。なにしろ、その腕は地面に付きそうなほどに長く、そしてその手は岩すらも鷲掴みにできそうなほどに巨大であったのだ。

 皮膚も肘から先は黒く、金属質な光沢を持っている。腕というよりは、巨大な篭手か義手のような様相だ。

 まるで、体の一部分だけ《化身解放メタモルフォーゼ》を行っているかのような――



(……案外、それが正解なのかもしれないな)



 先ほど飛び込んできたときは、あのような異形の腕は目に入らなかった。

 何かしらのスキルか能力で、腕を変貌させたと考えるべきだろう。

 それが如何なる性質のものなのかは分からないが、《化身解放メタモルフォーゼ》に似ていることは間違いない。

 ひょっとしたら爵位悪魔の誕生に関するヒントになるのかもしれないが、生憎とそんな無駄な考察をしている暇はなさそうだ。



「ふッ」



 歩法――縮地。


 敵はデーモン二体、アークデーモン二体、グレーターデーモン一体。

 無秩序にこちらに襲い掛かるアルフィニールの悪魔とは違い、しっかりとこちらの動きを観察している。やはり例の、別領域の悪魔たちだろう。

 ならば、デーモンであったとしても厄介な相手となってしまう。一刻も早く、頭数を減らさなければなるまい。



「『生奪』」



 斬法――剛の型、中天。


 スキルを発動し、デーモンへと肉薄する。

 振るう刃は肩口を狙い、その身を一刀で斬り裂こうと唸りを上げる。

 だが、その一撃は腕を変質させた盾によって受け止められた。



(グレーターデーモンだけじゃなく、ただのデーモンすら似たような技を使えるのか!)



 尤も、グレーターデーモンのそれと比べれば明らかに小さい、バックラーサイズの盾だ。

 その程度で受け止められると思っているのならば、実に甘いと言わざるを得ない。

 俺が正面から振り下ろした一閃を受け、デーモンはがくりと膝を折る。

 盾は割れ、腕はへし折れ、とてもではないが攻撃を防げたとは言えないその様相。

 ――無論のこと、それで攻撃の手を緩めることなどありはしない。



「《練命剣》、【命輝閃】!」



 斬法――剛の型、中天・刃重。


 再び振り上げた刃を、更なる力を込めて振り下ろす。

 他の悪魔のフォローが届くよりも早く振るわれたその一閃は、掲げられていた腕ごと悪魔の体を真っ二つに斬り裂いた。

 だが、そこで動きは止めず、即座の残心から刃を翻す。


 斬法――柔の型、流水。


 こちらへと打ち掛かってきたのは、腕そのものを長大な刃へと変えたアークデーモンだ。

 大剣のようなサイズへと変貌したその腕は、相手の強力さも相まってまともに受けられるものではない。

 故に、餓狼丸を絡めて攻撃を逸らしつつ、半歩左手側へと移動して回避する。



「《蒐魂剣》、【因果応報】」



 そして、俺はこちらへと飛来した黒い炎の魔法を斬り裂き、餓狼丸の刀身へと吸収した。

 それを放ったのはグレーターデーモン。軽く放たれた魔法ではあったが、威力はかなりのものだった。

 恐らくは、味方に当てぬために効果範囲を引き絞った一撃。

 余計な余波が発生しない攻撃は、それだけあのグレーターデーモンの思慮を示しているかのようだった。

 だが――



「《練命剣》、【命輝一陣】!」



 中途半端な攻撃で俺を止められると思っているのであれば、それは思い上がりだと言わざるを得ない。

 受けた魔法を攻撃へと変じ、生命力の刃に乗せて撃ち放つ。

 狙った先は、こちらに魔法を放とうとしていたデーモンだ。

 己の方に攻撃が飛んでくるとは考えていなかったのか、反応が僅かに遅れている。

 それでも、反応できているだけ大したものだとは思うが、一瞬でも遅れたのであれば、その攻撃を躱す術などない。



「ッ……!」



 右腕を斬り飛ばされたデーモンは、その衝撃にバランスを崩す。

 だが、そこに追撃を放つには距離があり、また別のアークデーモンがこちらへと接近している状況でもあった。

 更には先ほど攻撃を受け流したアークデーモンが、切り返しの一撃をこちらにはなってきている。

 俺の首を狙うその一閃は体を屈めて回避しつつ、敵の位置関係を確認した。



(デーモンは数秒動けない。ならば――)



 こちらへと接近してくるアークデーモン。その手は、両手首の上から刃が生えているような姿へと変わっている。

 両手の刃は短剣程度の長さ。明らかに近距離戦闘を意識した姿だ。素早いその悪魔は、両腕を振り上げた姿勢からこちらへと斬りかかってきている。

 それを目にした俺は、餓狼丸を手放しつつ小太刀を抜き放った。


 斬法――柔の型、流水・流転。


 振り上げるように一閃、振り下ろしてくる両手の刃の交差する点へと小太刀の刃を差し込む。

 それを受け止めながら掻い潜るように接近した俺は、アークデーモンの腹部へと己が拳を押し当てた。


 打法――寸哮。


 足元が衝撃に爆ぜ割れ、臓腑を揺らす破壊力がアークデーモンの体内を抉る。

 だが、流石に頑丈な悪魔だけあり、それだけで致命傷に至るには足りないようだ。

 それでも、衝撃によってこちらに対する攻撃の手が緩む。

 ならばと、俺は小太刀の刃をアークデーモンの心臓に突き立て、更にその体をもう一体のアークデーモンの方へと投げ飛ばし、足元の餓狼丸を蹴り上げて右手に掴み取った。


 歩法――烈震。


 右腕を失ったデーモンがその体勢を立て直す。

 だが、次なる攻撃態勢に移るよりも早く、俺はその懐へと肉薄した。



「『生奪』」



 斬法――剛の型、穿牙。


 片腕を失ったデーモンは体のバランスを失っている。

 故に、懐まで潜り込んだ俺への対処も一瞬遅れ、その隙に餓狼丸の刀身は相手の心臓を穿っていた。

 崩れ落ちるその身を尻目に、俺は体を反転させながら刃を上段へと構える。



「《練命剣》、【煌命閃】」



 斬法――剛の型、輪旋。


 こちらへと打ち掛かってきたのは、残る二体。

 片腕を大剣と化したアークデーモンと、異形の手を振り上げるグレーターデーモン。

 全くの同時に攻撃を繰り出してきたのは、いっそ見事と言えるだろう。

 だが、両方を視界に収められる位置であるならば、迎撃は不可能ではない。

 大きく広げた生命力の刃は、両者の攻撃を受け止めて弾き返し――



「《練命剣》、【命輝練斬】」



 接近しつつ返す刀で放った一閃が、アークデーモンの体を胴から両断したのだった。











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