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515:次なる制圧











 森の外に出ていた悪魔たちを掃討した後は、森の中へと入り、ゲートの破壊を目指す。

 木々がまばらなエリアまでであればセイランに乗りつつ掃討することも可能だったが、流石に森の中に入るとそうもいかない。

 単純に障害物も多いし、背の低い木々の枝には頭をぶつけかねないのだ。

 残念だが、森の中に入ってからはセイランに乗ることは不可能だろう。



「ま、さっきと変わることは無いがな」



 尤も、強引にゲートまで押し通るという行為は先ほども行ってきたところだ。

 ゲートから出現する悪魔の戦力に変化がない以上、こちらの戦力が増えている分だけ多少は楽になっている。

 例え自由に走り回ることができずとも、セイランは純粋な戦闘能力だけで十分に優秀なのだ。


 歩法――間碧。


 俺は悪魔たちの隙間を縫うように駆け抜けながら、【命双刃】で作り上げた二刀を滑らせる。

 極限まで攻撃力が高まった状態の餓狼丸は、【命双刃】で作り上げられた重さのない刃でも十分な威力を発揮していた。

 とはいえ、優先すべきは先への移動。敵を倒し、ゲートの元まで辿り着いて破壊できればそれで終わりだ。

 故に、道中の悪魔は適当に行動不能にする程度に抑えておく。

 そうすることで、俺の後ろに続くセイランが、その剛腕によって次々に叩き潰してくれるのだ。



(変に受け止められると厄介だからな……)



 この場所では、セイランはトップスピードに乗ることはできない。そのため、下手をすると悪魔によって突進を受け止められてしまうこともあり得るのだ。

 流石に正面から動きを止められてしまうと危険であるため、こうしてセイランがこじ開けやすい道を拓いているのである。

 正面から突破されたことでこちらを追い縋る悪魔も出てくるが、そういった連中はセイランが召喚した亡霊たちによって足止めを喰らっている。

 おかげで、俺はただ正面に集中するだけで前へと進むことができていた。

 やはり、フォローができる仲間がいる状況は中々に安心できるものだ。



「《奪命剣》、【呪衝閃】」



 だが悪魔共もずっとしてやられてばかりいるわけではなく、こちらの正面を塞ぐように動くこともある。

 隙間なく正面を塞がれると、流石に潜り抜けることは難しい。

 跳躍して上を通り抜けるという方法もあるが、空中で迎撃されてしまう可能性もあるため、こうして蹴散らしてしまった方が確実だ。

 一直線に伸びた黒い槍は、正面にいた悪魔を纏めて貫いて枯死させる。

 一気に大量の敵からHPを吸収することができるのは、このテクニックのいいところだ。

 【咆風呪】や【冥哮閃】などもそうだが、多数を巻き込める状況においては非常に有効な回復手段であると言えるだろう。



(《夜叉業》を使っていると、こいつらが生命線になりそうだな)



 こういった、あまりダメージを受けずに倒し切れる悪魔が相手であれば問題はない。

 厄介なのは、公爵級などの強力極まりない悪魔が出現した場合だ。

 そういった悪魔を相手に回復手段を封じられていると厄介であるため、こういった強力なテクニックは上手く活用していきたいところである。

 ともあれ、これで正面の敵をこじ開けることができた。その隙間に滑り込むようにして駆け出し――直後、セイランが強引にこじ開ける。

 ゲートに近づくにつれて悪魔の数が増えてくるが、今のところ爵位悪魔による攻撃は見受けられない。ここまで接近して、攻撃を仕掛けてこないことなどないと思うのだが。

 だが何であれ、攻撃が来ないのであればこちらとしても都合がいい。



「そろそろ目標地点だ。セイラン、派手に蹴散らせ!」

「ケエエエエエッ!」



 セイランが勇ましく叫び、凄まじい魔力が逆巻く。

 それと共に放たれた嵐は、渦を巻きながら周囲の悪魔たちのみを吹き飛ばした。

 風に煽られて空に吹き飛ばされ、雷に撃たれて塵と化す。

 その蹂躙の様を横目に見ながら、俺は前方にあるゲートの姿を確認した。

 黒い渦の如き、ゲートの姿。その横に立つのは、赤い髪の少年――否。



「案外遅かったわね」

「……やっぱりいたか。中々の手際だったな」



 目を見開いたままの少年姿の悪魔は、口から大量の血を吐き出してその場に崩れ落ちる。

 背後にいたのは、赤いフードの暗殺者の姿だ。

 どうやら、先回りしてこの場所の強力な悪魔を相手にしていたらしい。

 尤も、彼女には魔法破壊のスキルはないため、こうして強力な悪魔を片付けるに留めていたのだろうが。

 ともあれ――



「まずはゲート破壊だな。セイラン!」

「クェエ!」



 未だに悪魔を吐き出そうとしている黒い渦。これを放置していれば、いつまでも敵の戦力が増え続けてしまう。

 俺の指示を受け魔力を滾らせたセイランは、そのまま勢い良く跳躍し、嵐を纏う剛腕をゲートのすぐ傍に叩き付けた。

 瞬間、劈くばかりの雷鳴が響き渡り、周囲に紫色の閃光を走らせる。

 それによって吹き飛ばされた悪魔たちの間を縫うように駆けた俺は、黒く渦を巻くゲートへと向けて刃を振り下ろした。



「《蒐魂剣》!」



 青く輝く一閃は、何の抵抗もなくゲートを斬り裂き、吸い尽くすように消滅させる。

 これで、この場所のゲート破壊は完了だ。



「よし。援護に感謝するぞ、アリス」

「別に、少しセイランに補給していた程度で、大したことはしていないわよ」

「だが、それが無ければセイランはガス欠していただろうからな。十分すぎる仕事だったさ」



 先ほどから感じていた、セイランの消耗の少なさ。

 ある程度予想はついていたのだが、やはりアリスが援護に来てくれていたらしい。

 元々、戦闘能力だけで見るのであれば、セイランはこの程度の悪魔相手に苦戦するような要素はない。

 問題はMPの補給だけであったわけだし、そこはアリスがMPポーションを融通することで何とかなったということだろう。



「悪いな、ポーションは立て替えておこうか?」

「別に、大丈夫よ。元々、スキルレベルを上げるついでに自作したものだから、元手はかかってないわ。自分ではあまり使わないしね」



 アリスは薬を作成するスキルを持っているが、基本的に作成するのは毒薬ばかりだ。

 だが、手に入った素材によっては回復用のポーションの類を作成することもある。

 生産職のプレイヤーのように、それに特化して育てているわけではないため、効果は『エレノア商会』で購入したものには及ばない。

 だが、それでも複数使用すれば十分な回復を行うことができる。セイランの回復に使用したのは、そう言ったポーションだろう。

 アリス自身はあまり多くMPを使用することは無いため、回復に使う機会は少ないのだ。



「そうか? まあ、後で欲しいものでもあれば融通するが」

「それなら考えておくわね。それで、この後はどうするの?」

「合流しながらゲート破壊だな。緋真の方は自力で何とかするだろうから、ルミナとシリウスの援護に向かいたいところだ」

「そうね……緋真さんなら自力でゲートを破壊できるでしょうし」



 緋真は《蒐魂剣》を持っているため、自力での魔法破壊が可能だ。

 戦闘能力の面でも十分に高いため、多少時間がかかったとしてもゲートの破壊を成し遂げるだろう。

 懸念があるのは、ルミナとシリウスの方だ。



「どっちも戦線を維持することは可能だろうが、ゲートを破壊することはできないからな。どちらかの援護をしたいところだが……」

「とりあえず、ゲートを一つ破壊したことを報告した方がいいんじゃないの?」

「っと、そうだな。状況も確認しておくか」



 ゲートの破壊がどうなっているのか、進捗を確認する意味もある。

 あれから少し時間は立ったが、果たしてどのような状況になっているのか。

 多少の期待を込め、俺は改めてアルトリウスを呼び出した。



「アルトリウス、二つ目のゲートの破壊が完了したぞ」

『ありがとうございます。ペースが上がって来ましたね』

「まあ、ゲートを護衛していた戦力を早急に排除できたお陰だな」



 ちらりとアリスに目配せすれば、彼女は僅かに不敵な笑みを浮かべて頷いた。

 《化身解放メタモルフォーゼ》していなかったということは恐らく子爵級辺りだったのだろうが、それでもあそこまでスマートに排除できたのは流石と言わざるを得ない。

 俺の場合はどうしても正面からの戦闘になってしまうし、上手く決まった時のアリスよりは時間がかかってしまうだろう。



「とりあえず、これで五つ目だな」

『いえ、六つ目ですね。クオンさんの真龍が暴れていたところは、高玉さんの狙撃によって破壊されました』

「そうか。森の中なのに、上手くやったもんだな」

『クオンさんの真龍……シリウスでしたか。彼が暴れたおかげで、森の一部が更地になっていましたからね』



 その言葉に、思わず苦笑を零す。

 確かに、シリウスならば多少の悪魔程度なら蹂躙できるだろうし、そのまま悪魔を追って森の中に踏み込めば、周囲の木々ごと薙ぎ払ってしまうことだろう。

 そうして露出したゲートなら、悪魔の戦力もゲート防衛を行う余裕がなくなり、高玉は容易に狙撃できてしまうというわけだ。



「分かった。それなら、俺たちはルミナの援護に向かう。緋真は大丈夫だろうからな」

『ええ、まあ……彼女も中々凄い戦い方をしていますが、恐らく何とかなるかと。ただ、誰か戦力を集落に戻せませんか?』

「何かあったか?」

『悪魔側が物見櫓に対しての攻撃をしようとしています。今はまだ数が少ないため何とかなっていますが、徐々に増えてきていますね』

「直接そっちを狙ってきたということは、飛行する戦力か。ラミティーズは――」

『彼女の突破力を攻撃に回す必要があります。少しずつ楽になって来てはいますが、戦線を押し上げるにはまだ厳しいですから』



 アルトリウスの言葉に頷く。

 となると、セイランを戻す必要があるってことか。移動に時間がかかってしまうため、できればこのまま行きたかったところだが、こうなっては仕方がない。



「了解した、セイランをそっちに送る。アリス、お前さんは――」

「私は貴方と行くわよ。どうせ、防衛でできることなんてないし」



 確かに、アリスの能力は防衛向きではない。

 ついでに言えば、上空の敵に対する対処もあまり得意ではないだろう。

 それができるとしたらルミナとセイランだろうし、ここはついて来て貰った方が得策だ。



「了解した。セイラン、お前は集落であの櫓を防衛しろ。俺たちはルミナのところに向かう」

「クェ」

『……よろしくお願いします。こちらも、もう少しで状況を打開できそうです』



 集落内部の状況は分からないが、多少は状況も進んでいる筈だ。

 アルトリウスの手際には期待しつつ、ルミナの援護に向かうこととしよう。











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― 新着の感想 ―
[一言] さすが仕事人wやはり仕事ができるw 緋真は、やはり剣術とアーツと魔法の組み合わせか? なかなか楽しそうな戦い方ですねw
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