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465:探索の結果











 掘り起こした石碑の一部であるが、本来の石碑から考えるとほんの一部、根元の部分のみであるらしい。

 しかし、この破壊の痕跡を鑑みるによほど高い火力でもなければ破壊できないということだろうか。

 上位の悪魔であれば、攻撃を重ねれば石碑を破壊できるのかもしれない。

 とはいえ、ディーンクラッドが占拠していた聖都シャンドラの石碑は、封印されてはいたものの、破壊はされていなかった。

 恐らく、破壊にも何かしらの条件があるのだろう。



「しかし……ますますこちらから攻めるのに時間がかかるな」



 石碑の原材料を入手できる場所が分かったとしても、加工する方法が分かったわけではない。

 聖女様は何かしら情報を持っているかもしれないが、当の本人が加工方法を熟知しているとは考えづらい。

 採取から研究、作成までとなると、流石のエレノアでもそれなりの時間を要することになるだろう。

 しかもアドミス聖王国の復旧を同時並行で行っているのだから、簡単に進められるはずがない。

 それでも何とかしてしまいそうな辺りがあの女のとんでもないところではあるが……これについては俺に手伝えるような要素はない。

 精々、準備が整うまでの間、悪魔共を迎撃する程度だろう。



「先生、何があったんですか?」

「ああ、ちょっとな。そっちの家は探索し終わったのか?」

「はい。一部ですけど、この集落のパンフレットというか、来歴が書いてある紙みたいなのが出てきました」



 やはり、レベル上限の解放は現地人たちにとっても重要なものだったのだろう。

 石碑の入手もあるが、やはり人間の限界を超えられる場所となれば特別な意味を持つのも不思議ではない。



「どんなことが書いてあったんだ?」

「私達的にはそれほど意味のある内容ではありませんでしたね。この場所がどういう成り立ちなのかっていう話と、あとは道を通って試練を超え、頂上にある神殿に辿り着けっていう話ぐらいですよ」

「ふむ……まあ、予想通りだったなってだけだな。試練の内容は書いてないのか?」

「ないですねぇ。事前に知らせるつもりはないってことでしょう」



 まあ、あらかじめ内容が分かっていたら、試練の意味も半減するかもしれないからな。

 とりあえず、ある程度の情報にはなるだろうし、『キャメロット』なり『MT探索会』なりに渡せばいいだろう。

 設定面の話はともかくとして、これで道を通って神殿まで辿り着けばいいということは確定した。

 レベルが上限に達したら、ここに来て山を登ればいいということだ。



「で、先生の方は何を見つけたんですか?」

「シリウスが持っているこれでしょう……はぁ、やっぱり石碑が破壊されてたのね」



 どうやら、アリスは一目でそれが石碑であると気づいたらしい。

 緋真もアリスの言葉で理解したのか、シリウスの手にあるそれを眺めて顔を顰める。

 状況が厄介な方向に傾いていることを理解したのだろう。



「どうします、先生? これ……」

「破壊されたとはいえ、貴重な石碑のサンプルだ。エレノアなら何かしらに活かせるだろう」



 生産系のスキルには詳しくないし、どのように解析してどのように活かすのかは全く分からないが。

 こうして地盤を固める段階になると、俺たちにはできることが少ない。

 襲撃してくる悪魔を防ぐのはアルトリウスの方が得意だろうし、俺たちは精々この領地を荒らして回るぐらいしかないか。

 さて、とりあえずは――



「細かく調べてもいいが……ある程度情報は集まったし、そろそろ行くか」

「どうするんです? 一旦戻りますか?」

「ざっとこの辺りを見て回ってからだがな。悪魔共が拠点の構築でもしていたら、軽く邪魔してから帰りたい」



 緋真の騎獣のこと、シリウスのレベルアップ、そしてこの石碑のこと。

 悪魔との戦争はまだ大きく動いてはいない状況であるというのに、やることは山積みだ。

 だが、この悪魔領まで足を延ばしている以上、悪魔の動向はある程度確認しておきたい。

 あるかどうかは分からないが、こちらへと攻撃を仕掛けてくるつもりであれば対応する必要がある。



「尤も、あるかどうかわからんものを探すために時間をかけるつもりもない。ざっと調べたら帰還することとしよう」

「了解です、お父様」



 さて、話は済んだし、とっとと移動することとしようか。

 セイランに乗り込みつつ、石碑の破片を手に入れたことをエレノアにメールして、俺たちは再び空へと舞い上がったのだった。











 * * * * *











「まさか本当にあるとは」

「どうするのよ、クオン。普通に集結しようとしてるわよ」



 通話の結果エレノアに帰還を急かされたこともあり、あまり本気を出して捜索するつもりも無かったのだが……残念というべきか、俺たちは悪魔の群れを発見してしまった。

 といっても、俺たちのように前線拠点を構築しているわけではなく、何やら悪魔及びスレイヴビーストが群れているだけの状況だ。

 重要なのは、そこにいる数が都市にダメージを与えられるレベルの規模であるということだろう。



「どこからあれだけの数が集まってきたのかしら? 普通に目撃されてそうなものだけど」

「さあな、確かめている暇はない。もう、向こうに捕捉されているぞ」



 向こうも襲撃を企てているせいか、周囲への警戒は密な状況だ。

 こちらは上空にいるとはいえ、傍らにはひたすら目立つシリウスがいる。隠密行動を行うことは不可能だろう。

 迎撃のためこちらへと飛び上がってくる悪魔たちの姿に、俺は嘆息と共に餓狼丸を抜き放った。



「緋真、ルミナ、セイラン! 空中の敵を迎撃しろ! シリウスはそれに乗じて突っ込め!」

「了解です! 《スペルエンハンス》、【ファイアジャベリン】!」

「精霊の戦列よ!」

「ケェエエエッ!」



 緋真が炎を放ち、飛翔する悪魔たちの足止めをする。

 そしてその間に、ルミナとセイランはそれぞれ《精霊召喚》、《亡霊召喚》を発動させた。

 ルミナと並ぶように現れた精霊たちは魔法を準備し、虚空から現れた亡霊たちは悪魔たちに張り付いてその動きを阻害する。

 そして動きが止まったその瞬間、ルミナたちの放った魔法が一斉に悪魔たちを貫いた。



「ガアアアアアアアッ!」



 それを確認した瞬間、シリウスが翼を羽ばたかせて一気に突撃する。

 地上からは迎撃のための魔法が放たれるが、多少の魔法程度でシリウスの突撃を防ぐことは不可能だ。

 その背を追うようにしながら俺たちも地上へと向かい――次の瞬間、悪魔の群れを蹴散らしながらシリウスが地面へと降り立った。

 鋭い両手を振るい、尾の刃を振りかざし、悪魔たちを薙ぎ払いながらシリウスは暴れる。

 その混乱を尻目に、セイランの背中から飛び出した俺とアリスはいつも通りの行動を開始した。



「【ミスリルエッジ】、【ミスリルスキン】、【武具神霊召喚】、《剣氣収斂》!」



 餓狼丸の解放はせず、けれど全力で強化を実行する。

 そして、輝きを纏った餓狼丸の刃を振るい、シリウスに気を取られていたデーモンの首を一息に刎ねる。

 ただのデーモンで、防御の態勢を取っていないのであれば、仕留めることなど容易い。

 アリスは既に姿を隠し、セイランは嵐を纏いながら縦横無尽に走り回っている状況だ。

 そして、緋真とルミナも空中の敵を迎撃して降下してきている。程なくして戦線に参加することだろう。



「さてと――大将首はどこかね」



 こうも集団となっているのであれば、必ずそれを率いるものが存在するはずだ。

 元より自意識の薄い名無しの悪魔であれば、頭を潰してやれば烏合の衆になることだろう。

 ついでに、それが爵位悪魔であるならば、敵の戦力を削ぐことにも繋がる。

 侯爵級がいたら流石に厳しいが、伯爵級までなら俺たちだけでも何とかなるだろう。

 可能であればここで潰してやる――そう思った瞬間、離れた場所で声が響いた。



「何でこんな所に魔剣使いがいるのよ! 冗談じゃないわ!」



 聞き覚えのない声。名無しの悪魔は声を発しないことから、これがただの悪魔によるものではないことが分かる。

 その声の発生源の方へと視線を向ければ、紫色の髪をした少女の姿をした悪魔の姿があった。

 目の合ったその悪魔は引き攣ったように表情を強張らせ、即座に踵を返し――後方にあった黒い魔力の渦の中へと姿を消した。



「っ……!?」



 すぐに確認したかったが、流石に距離がありすぎる。

 他の悪魔を無視して向かうには時間がかかりすぎてしまう。

 先に周囲の悪魔を片付けなければなるまい。



「チッ……面倒だが、仕方ないか」



 とにかく、先に周囲の悪魔を片付ける。

 あの渦を調べるのはその後で行うこととしよう。











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― 新着の感想 ―
[一言] おおっと、これはすごい発見かもしれませんw 黒い魔力の渦、つまり悪魔側の転移門という存在……これは大きいかもしれないw
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