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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
DF ~Dragon's Field~

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414:龍王の傲慢











 まずそもそもの話であるが、基本的に龍王に勝つことは不可能だ。

 彼らの力は大公級の悪魔にも匹敵し、公爵級悪魔よりも強力な力を持っていると考えられる。

 そんな怪物を相手に、勝利条件の定められてない戦いを挑むことはほぼ自殺行為だと言えるだろう。



(さてと、どうしたもんか)



 その赤龍王であるが、どうやら最初は様子見なのか、或いは余裕を見せているつもりなのか、あまり積極的には攻撃してきていない。

 というより、俺が呼び出したシリウスに興味を惹かれているのか、シリウスの行動を観察しているようにも見える。

 その姿は何と言うか、先輩風を吹かせているような印象だ。

 まあ、手加減をしてくれているのであれば、こちらとしても都合がいい。その間に、こちらは一気に攻め立てる準備をすればいいだけだ。



「クハハハハッ! 珍しい奴だな! いいぞ、もっと来い!」

「ガアアアアアアッ!」



 シリウスは自身に強化を掛けて赤龍王に挑んでいるが、殆どダメージは与えられていない状況だ。

 シリウスの攻撃力でもロクにダメージを与えられないということは、かなり物理的なステータスは高いと見ていいだろう。

 金龍王はダメージを与えることはできたのだが――尤も、向こうは即座に回復してしまうため、どちらがマシかと言われると判断は難しい所であるが。



「……まあ、やはり普通に戦ってちゃ歯が立たんか」



 赤龍王がどんな条件を付けているのかはよく分からんが、とにかく普通の攻撃では彼には届かない。

 正直あまり気は進まないが、強制解放リミットブレイクを使う他に道はないだろう。

 素材については一応集められているし、面倒ではあるが武器を育て直せば何とか今のレベルに戻すことはできる。

 問題は、どのタイミングでこれを発動するかだ。今はシリウスが視線を集め、ルミナとセイランがそのサポートをしている状態だが、こちらが全力を出せば赤龍王も俺たちの方に注目してくることだろう。

 そこから先は全力の戦闘だ。赤龍王が様子見を終えるまでに、こちらは全力を出せる状態を整えなければならない。

 ならば、まずは――成長武器を解放させなくてはなるまい。



「やるか……貪り喰らえ、『餓狼丸』!」

「焦天に咲け、『紅蓮舞姫』!」

「暗夜に刻め、『ネメ』!」



 シリウスが赤龍王の注意を引いている間に、成長武器を解放する。

 俺の強制解放リミットブレイクは解放後しばらくは相手のHPを吸収しておかなければならないため、今すぐに発動することはできない。

 となると、やはりここは少し加減をしておくべきだろう。



「緋真、まだ解放はしなくていい。少し時間を稼ぐぞ」

「いいんですか? 私、強制解放リミットブレイクを使わないと赤龍王にダメージを与えられませんけど」



 緋真の強制解放リミットブレイクは、相手の耐性を無視してダメージを与えられるようになる性質がある。

 火属性に偏っている緋真は、この性質を利用しなければ、赤龍王にダメージを与えることはできないだろう。

 しかし――



「もしも火でダメージを与えるようなことがあれば、あいつは間違いなくお前に注目してくる。その時、お前ひとりであの怪獣を相手にできるか?」

「あー……それはきついですね」



 己に通じる筈がない火属性の攻撃、それによってダメージを受けたとなれば、赤龍王の注意は一気に緋真へと向かうことになる。

 その時点で彼にダメージを与えられる存在は緋真だけであるため、相手の動きを止めることもままならない。

 それによって緋真が落とされてしまえば、そこから総崩れになる可能性も否めないのだ。

 申し訳ないが、もうしばしシリウスに相手の注意を引いておいて貰わなければならないだろう。



(だが、どこまで持つかだな)



 シリウスの能力を見るためなのだろう、赤龍王はあまり積極的には攻撃していない。

 しかし、それも決して皆無というわけではない。時折放たれる赤龍王の攻撃は、確実にシリウスの体力を削っていた。

 ルミナがつきっきりで回復して、セイランが赤龍王の攻撃を逸らしたりはしているものの、それでも賄い切れている状態ではない。

 遠からず、シリウスは戦闘不能になってしまうだろう。

 であれば――少しでも、こちらで注意を引かなくてはなるまい。


 歩法――烈震。



「《練命剣》、【煌命閃】」



 生命力を注ぎ込んだ餓狼丸が、黒い靄の中で黄金に輝く。

 その軌跡を中空に描きながら、俺は赤龍王の足へと一閃を叩きつけた。

 当てるのは刃そのものではなく、刃から放たれる生命力の一撃。

 刃そのものでは赤龍王の鱗は貫けまいが、黄金の光そのものはきちんと効果を発揮するだろう。

 とはいえ――



「おおっ? 何だ、ようやく参戦か? いいぜ、やってやろうじゃねぇか!」



 その衝撃は精々、足に小石がぶつかった程度のものだっただろうが。

 しかし、俺の存在を認識した赤龍王は、思惑通りこちらへと攻撃を繰り出してきた。

 放たれたのは大きく翻り、頭上から振り下ろされる尻尾の一撃。

 シリウスのように刃などはついていないが、その重量を受け止めることは絶対に不可能だ。

 俺は横へと跳躍しながら、赤龍王の尻尾を回避しつつ刃を振るう。



「《奪命剣》、【咆風呪】!」



 マトモに攻撃が通らないのであれば、やはり防御力を無視する攻撃を放つしかない。

 振り下ろした刃より放たれた黒い風は、赤龍王の体へと直撃してその体力を削り取る。

 これによって先ほどの【煌命閃】で消費したHPは回復できたが、やはり赤龍王のHP総量と比べれば微々たるものだ。有効なダメージと呼ぶには程遠いものでしかないだろう。

 しかし、赤龍王の注意を引くには十分だったらしい。



「クハハ! 妙な攻撃だな、人間!」

「っ、頑丈だな……!」



 適当な攻撃では届かないと判断したのだろう、赤龍王はその前足をこちらへと向けて振り下ろしてくる。

 魔法やブレスを使わず、物理攻撃だけで攻撃してくれることはありがたいが、どちらにせよ喰らったら終わりであることに変わりはない。

 だが、自分から頭を寄せてくれるのであれば、こちらとしてもやりやすいものだ。



「ふ……ッ!」



 歩法――陽炎。


 動きの速度を変え、振り下ろされる一撃を回避する。

 その上で赤龍王の手を足場としながら、俺は彼の首元まで肉薄した。



「『練命破断』!」



 それは、《魔技共演》に登録した新たなスキルの組み合わせ。

 《練命剣》の生命力を纏う一撃は、こちらの動きを捉え切れなかった赤龍王の首へと吸い込まれ――その鱗を叩き割り、肉へと刃を届かせた。



「ぬ……ッ!? 成程、やるじゃねぇか!」

「《奪命剣》、【命喰牙】!」



 急所に対するクリーンヒットに限り、防御力を無視する《会心破断》。

 その能力は、赤龍王相手にも確かに効果を発揮したようだ。

 彼のHPの総量からすれば微々たるダメージではあるが、それでも初のマトモなダメージだ。やはり、このスキルは取得した甲斐があったらしい。

 俺は赤龍王の体を駆け降りながら【命喰牙】を突き刺し、追撃を受ける前に距離を取る。

 赤龍王はこちらに興味を惹かれているが、まだ本気ではない。ダメージを与えることに成功したとはいえ、まだまだ届かないと思っているのだろう。



(そうだ、まだ油断していろ。頼むからこちらを舐めていてくれよ)



 赤龍王はどうやら、俺たちのことを弱い存在であると認識しているらしい。

 まあ、赤龍王から比べれば弱いことは間違いない事実であるのだが、どうも個々人を見ているわけではなく、俺たちを十把一絡げに弱いと認識しているようだ。

 つまり、俺たちが何をしたとしても、自分には届かないと思っているのだろう。

 金龍王からの依頼についても、適当な所で認めてやればいいと、そう思っているのだろうか。

 気に入らないことではあるが――今はそれが好都合だ。



(餓狼丸はあと少しで溜まり切る。そこからが本番だ)



 攻撃が通じるようになれば、赤龍王は本格的に攻撃を開始するだろう。

 そこからは短期決戦だ。鍵となるのは――今は姿を隠している、アリスだろう。

 赤龍王に対して最も大きなダメージを与えられるのは、間違いなく彼女なのだから。



「グルアアアアアアアアッ!」



 俺に注意を取られていた赤龍王に、横からシリウスが殴りかかる。

 不意を突かれたのか、油断していたのか――赤龍王は、その一撃にたたらを踏んだ。

 流石に、シリウスの体当たり同然の衝撃は小さくなかったのだろう。

 その衝撃に、赤龍王の注意は再びシリウスの方へと向けられた。

 だが――



「――よくやった、シリウス。これで、準備は完了だ」



 膨大すぎる赤龍王のHP。それ故に、餓狼丸の吸収は驚くほどに速く完了した。

 故に、戦いはここからが本番だ。俺と緋真、そしてアリス。全ての成長武器、その真の力を解放する。

 ――こちらのことを舐め切った赤龍王に、目に物を見せてやるとしよう。











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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、あのディーンクラッドよりもヤバイだから、人間が蟻とか虫とかに見えるだろうよw 事実、成長武器とリミットブレイクがないと抗う手段殆どないんだからねー
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