342:レッサードラゴン
書籍版マギカテクニカ3巻、3/19(金)に発売となります。
情報は順次、活動報告とツイッターにアップしていきますので、ご確認ください!
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移動すると決めたとはいえ、今回はそれほど急ぐ旅というわけではない。
帝国で具体的に何をするという目的があるわけではなく、純粋にレベル上げのために移動しているのだ。
そのため今回はのんびりと、街道を離れつつ徒歩で西に向かうこととした。
この辺りの敵は亜竜ばかりだが、ワイバーンさえ気を付けていればそれほど危険ということはない。
そもそも、あいつらはこちらから空を飛ばない限りはあまり接触することも無いのだが。
そのため、主な獲物となるのは地中から這い出てくるアースドラゴンであった。
「ふむ……案外戦えるものだな」
「ガアアアッ!」
ある程度弱らせたアースドラゴンへ、シリウスをけしかける。
シリウスは《硬質化》のスキルを持っているため、物理攻撃に対しては中々タフだ。
少なくとも、勢いの伴わない攻撃を受けた程度でどうにかなるほど軟ではない。
MPを吸収し尽くされたアースドラゴンが相手であれば、回復に気を付けておけば負けるということはない。
《斬鱗》でアースドラゴンの鱗を削り取ったシリウスは、そこに爪や牙を突き立てながら攻撃を行っている。
その様子を傍目から見ながら、俺はアースドラゴンの攻撃がシリウスに向かわぬよう、正面から敵の注意を引く。
パルジファルのような楯役がいれば楽なのだろうが、俺たちは全員アタッカーだからな。
「ケェエッ!」
アースドラゴンの意識がシリウスに向かいそうになった瞬間、横から突っ込んできたセイランが、アースドラゴンの鼻っ面を殴りつける。
強制的に顔を背けられたアースドラゴンは怒りの視線をセイランへと向けるが、セイランはどこ吹く風だ。
その間にも、シリウスはガリガリと削り取るようにアースドラゴンの腹へと爪を立ててゆく。
大したダメージにはなっていないだろうが、それでも経験値を積むには十分なはずだ。
「『生奪』」
戦闘参加しているメンバーが経験値を得るためには、ある程度の戦闘貢献を行う必要がある。
ダメージを与えるなり、魔法による援護を行うなり、その方法は様々だが――MP回復手段の少ないシリウスには攻撃を行って貰うのが最も楽だ。
これまで戦闘を繰り返してきた体感では、相手のHPの十分の一程度を一人で削っていれば十分な経験値を得られるらしい。
今回もその程度は減らしたであろうし、そろそろとどめを刺してしまうとしよう。
「《練命剣》、【命輝閃】!」
こちらへと噛みついてきた一撃を回避しつつ、その首へと刃を振り下ろす。
アースドラゴンは堅牢な外殻を持っているが、攻撃力が高まった今の俺にはそれほど難しい相手ではない。
黄金に煌めく一閃は、鱗に護られているはずの首を斬り裂き、大量の血を噴出させた。
しかし、アースドラゴンはそれでも尚こちらのことを恨めし気に睨み据え――そのまま、力なく地面に横たわった。
『《エンゲージ》のスキルレベルが上昇しました』
『《背水》のスキルレベルが上昇しました』
『《走破》のスキルレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《シリウス》のレベルが上昇しました』
『テイムモンスター《シリウス》がレベル上限に達しました。《ソードドラゴン・パピー》の種族進化が可能です』
響いたアナウンスに、俺は深く息を吐き出す。
まさか、レベルを上げるのにここまで時間がかかるとは思っていなかったのだ。
シリウスは真龍とは言え、まだまだ幼体。強い魔物と戦うには力不足もいい所だ。
これが他のテイムモンスターであれば、とっくの昔に次の段階まで進化していてもおかしくは無かったのだが……ドラゴンを育てるのは、今後も苦労しそうなところだな。
しかし、それはそれで進化が楽しみというものでもある。早速、シリウスの進化先を確認することとしよう。
「まあ、ある程度想像はつくんだがな……」
とりあえず、巨大化することだけは間違いないだろう。
以前見かけた、空を駆ける真龍。あれに近い姿へと成長していくはずだ。
まだ幼体であるシリウスが、果たしてどのように進化するのか。
期待を込めて、その進化先を確認する。
■ソードドラゴン・レッサー
種別:真龍
属性:無
戦闘位置:地上・空中
女神の眷属たるドラゴンの一族、その若い個体。
《強化魔法》に秀でた魔力を有し、全身を鋭い刃に覆われている。
また強靭な肉体を持っており、物理攻撃に対して高い耐性を持つ。
「成程、下位龍ということか」
一段階進化した程度では、まだまだ成体には届かないということだろう。
とりあえず、赤ん坊から若い個体にまでは成長できる訳だから、ひとまず良しとしておくか。
進化先はこれしかないことだし、悩む必要もない。さっさと進化させて先に進むとしよう。
「よし……シリウス、進化させるぞ」
「ガウッ!」
シリウスとしても特に不安はないらしい。
その返答に満足しつつ進化を実行すれば、シリウスの全身は眩い光に包まれた。
眩く輝く光は球状にシリウスの体を包み込み、眩い光で染め上げる。
その輝きは、大型犬ほどの大きさであったパピーとは段違いのサイズとなっている。
一回り二回りどころではない、巨大な体躯のシルエットと化した銀の光は、やがて弾けるように霧散した。
「グルゥァアッ!」
弾ける光の中から姿を現したのは、マイクロバスほどの大きさのあるドラゴンの姿であった。
パピーの頃でも立ち上がれば二メートルぐらいはあっただろうが、今はその倍以上はあるだろう。
前までは若干丸っこかったシルエットも、すらっと伸びてシャープな印象を受ける。
見た目としてはパピーの頃の姿をよりスマートにして、更に翼が大きくなったようなイメージだろう。
「新しいスキルは……《刃翼》、《尾撃》、《魔法抵抗》か。飛べるようになったのか?」
「ガウッ!」
俺の問いに対して、シリウスは銀色に輝く翼を広げてみせた。
翼膜は肉である筈なのだがその光沢はどこか金属質で、触ってみるとひんやりと冷たい。
表面は硬く、しかししなやかに曲がるこれは、非常に面白い感触であった。
これで防具が作れたらかなり便利な代物になりそうだが、生憎と真龍の素材が手に入ることはないだろう。
俺が少し離れると、シリウスはそのまま翼を羽ばたかせ、ふわりと空中に舞い上がってみせた。
この巨体が宙に浮くのは、中々に冗談のような光景だ。
「おお、ドラゴンらしくなってきましたね!」
「ホント、物騒な姿だけど」
空を飛べるようになったことを祝福しているのか、セイランもシリウスの周りをぐるりと飛び回る。
そんな姿を眺めながら、俺はアリスの言葉に対して苦笑交じりに同意した。
爪や牙、そして尾の先にある刃。それら全てが、パピーの頃よりもより鋭く、大きな刃と化している。
それに加え、今のシリウスは額からも鋭い刃が生えているのだ。恐らく角なのだろうが、槍の穂先にしか見えない。
翼の骨の部分もそれ自体が刃のようであり、飛びながら擦れ違うだけで相手を斬り裂くことができるだろう。
「まさに全身凶器よね。ステータスも伸びて来たんでしょう?」
「ああ、上昇率はかなりのもんだ。特化したステータスってわけでもないのに、この時点で三十を超えているステータスが三つもある。冗談のようなステータスだよ」
「テイムモンスターは人間よりステータス高めであるとはいえ……これは凄いですね」
自由にスキルを取得できないことに対する救済措置なのか、テイムモンスターたちのステータスは、基本的に人間よりも高い値が設定されている。
まあ、人外の存在なのだから、人間よりも身体能力が高くても全くといって良いほど不思議ではないが。
しかし、このステータスの高さについては、シリウスは実に顕著であった。
ルミナが最初に進化した時は特化型のステータスだったが、その値が全てのステータスに適応されているようなものだ。
流石は真龍、最強の生命体と言ったところか。
「よーし、お前らそろそろ降りてこい! もう先に進むぞ!」
「クェッ!」
「ガウッ!」
はしゃいでいる様子ではあったものの、二頭は素直に俺の言葉に従い、地面に降下してきた。
着陸の衝撃だけで地響きが鳴ったが、果たしてシリウスはどれだけの重さがあるのか。
全身が金属の塊のようなものだし、ボディプレスするだけでも結構な威力になりそうだな。
ともあれ、そろそろグランドドラゴンと戦闘したボスエリアだ。
倒してから時間が経っているし、もう一度挑むことはできるだろうが、今回は戦わずに通り抜けさせて貰うとしよう。
目指す先はシェンドラン帝国の領地――まずは、国境付近にある街に立ち寄らせて貰うこととしよう。
「果たしてこいつを連れて行っていいものなのかは気になるがな……」
「グル?」
真龍と契約している国に、真龍を《テイム》して連れて行った場合は果たしてどうなるのか。
一応、まだマイクロバス程度の大きさであるため、街中に入れないわけではないのだが――面倒なことになるようであれば従魔結晶に戻しておく必要があるだろう。
果たして、帝国はどのような場所なのか……期待と不安を胸に、国境へと足を踏み出したのだった。
■アバター名:クオン
■性別:男
■種族:人間族
■レベル:71
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:46
VIT:33
INT:46
MND:33
AGI:21
DEX:21
■スキル
ウェポンスキル:《刀術:Lv.42》
《格闘術:Lv.11》
マジックスキル:《昇華魔法:Lv.8》
《降霊魔法:Lv.34》
セットスキル:《死点撃ち:Lv.47》
《MP自動大回復:Lv.24》
《奪命剣:Lv.35》
《練命剣:Lv.35》
《蒐魂剣:Lv.37》
《テイム:Lv.49》
《HP自動大回復:Lv.22》
《生命力操作:Lv.51》
《魔力操作:Lv.53》
《魔技共演:Lv.33》
《エンゲージ:Lv.18》
《回復適性:Lv.48》
《高位戦闘技能:Lv.12》
《剣氣収斂:Lv.25》
《識別:Lv.35》
《背水:Lv.5》
《走破:Lv.7》
サブスキル:《採掘:Lv.15》
《聖女の祝福》
称号スキル:《剣鬼羅刹》
■現在SP:46
■アバター名:緋真
■性別:女
■種族:人間族
■レベル:71
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:48
VIT:30
INT:42
MND:30
AGI:25
DEX:25
■スキル
ウェポンスキル:《刀術:Lv.42》
《格闘術:Lv.25》
マジックスキル:《火炎魔法:Lv.32》
《強化魔法:Lv.39》
セットスキル:《練闘気:Lv.27》
《スペルエンハンス:Lv.24》
《火属性大強化:Lv.20》
《回復適性:Lv.45》
《炎身:Lv.5》
《死点撃ち:Lv.44》
《高位戦闘技能:Lv.25》
《立体走法:Lv.25》
《術理装填:Lv.42》
《MP自動大回復:Lv.16》
《多重詠唱:Lv.14》
《蒐魂剣:Lv.6》
《魔力操作:Lv.37》
《遅延魔法:Lv.29》
《識別:Lv.43》
《魔技共演:Lv.2》
《燎原の火:Lv.6》
サブスキル:《採取:Lv.7》
《採掘:Lv.15》
《聖女の祝福》
称号スキル:《緋の剣姫》
■現在SP:53
■モンスター名:ルミナ
■性別:メス
■種族:ヴァルハラリッター
■レベル:19
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:51
VIT:26
INT:58
MND:26
AGI:35
DEX:26
■スキル
ウェポンスキル:《刀術》
《槍》
マジックスキル:《閃光魔法》
《旋風魔法》
スキル:《光属性大強化》
《戦乙女の戦翼》
《魔法抵抗:大》
《物理抵抗:大》
《MP自動大回復》
《高位魔法陣》
《ブーストアクセル》
《空歩》
《風属性大強化》
《HP自動大回復》
《光輝の鎧》
《戦乙女の加護》
《半神》
《精霊の囁き》
称号スキル:《精霊王の眷属》
■モンスター名:セイラン
■性別:オス
■種族:ストームグリフォン
■レベル:19
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:63
VIT:40
INT:40
MND:30
AGI:50
DEX:27
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《嵐魔法》
《旋風魔法》
スキル:《風属性大強化》
《天駆》
《騎乗》
《物理抵抗:大》
《痛撃》
《剛爪撃》
《威圧》
《騎乗者大強化》
《空歩》
《マルチターゲット》
《雷鳴魔法》
《雷属性大強化》
《魔法抵抗:大》
《空中機動》
《嵐属性大強化》
《突撃》
称号スキル:《嵐王の系譜》
■アバター名:アリシェラ
■性別:女
■種族:魔人族
■レベル:71
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:34
VIT:20
INT:34
MND:20
AGI:50
DEX:50
■スキル
ウェポンスキル:《暗剣術:Lv.42》
《短弓術:Lv.10》
マジックスキル:《暗黒魔法:Lv.23》
《月魔法:Lv.12》
セットスキル:《死点撃ち:Lv.45》
《隠密行動:Lv.29》
《上位毒耐性:Lv.7》
《アサシネイト:Lv.25》
《回復適性:Lv.40》
《闇属性大強化:Lv.23》
《スティンガー:Lv.27》
《ベノムエッジ:Lv.21》
《無影発動:Lv.13》
《看破:Lv.43》
《曲芸:Lv.28》
《投擲術:Lv.15》
《肉抉:Lv.7》
《ミアズマウェポン:Lv.24》
《立体走法:Lv.12》
《魔技共演:Lv.3》
《月属性強化:Lv.6》
サブスキル:《採取:Lv.23》
《調薬:Lv.28》
《偽装:Lv.27》
《閃光魔法:Lv.1》
《聖女の祝福》
称号スキル:《天月狼の導き》
■現在SP:36
■モンスター名:シリウス
■性別:オス
■種族:ソードドラゴン・レッサー
■レベル:1
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:31
VIT:32
INT:24
MND:25
AGI:30
DEX:29
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《強化魔法》
スキル:《爪》
《牙》
《突進》
《ブレス》
《物理抵抗:中》
《硬質化》
《斬鱗》
《刃翼》
《尾撃》
《魔法抵抗:小》
称号スキル:《真龍》