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343/942

339:連戦の先

マギカテクニカ第3巻が3/19に発売となります。

活動報告、ツイッターにて情報を公開していますので、ご確認ください。












 この作戦を開始してから、どれぐらいの時間が経っただろうか。

 まあ、三回目の休憩は既に挟んでいるので、十八時間以上は戦い続けていることになるのだが。

 流石にこれだけ長時間を戦い続けたのは久しぶりだ。例え大した敵ではないにしても、精神的な負担はそれなりに大きい。

 尤も、間に休憩は挟んでいるし、敵もそこまで強いわけではない。かつての戦線に比べれば、生温いにも程があるというものだ。



「《蒐魂剣》、【奪魂斬】!」

「モオオッ!?」



 MPが尽きかけたモノセロスの首を【奪魂斬】で斬り裂いて、そのHPごと全てを奪い去る。

 それを目視で確認することはせず、俺は即座に次の標的へと視線を向ける。

 現在、俺は三体のモノセロスを相手に戦闘を続けていた。

 流石に、一体ずつ相手をするのはあまりにも退屈過ぎたため、複数を相手に戦闘を行うよう変更したのだ。

 一体ずつを相手にしてもMPは賄いきれるものではあるのだが、あまりにも退屈過ぎて眠くなってしまいそうだ。



「ブモォッ!」

「《蒐魂剣》!」



 襲い掛かってきた魔法を《蒐魂剣》で吸収しつつ、次なる獲物へと向けて駆ける。

 複数の敵を相手にする場合、位置取りは重要だ。二方向から攻撃されることが無いよう、射線に挟むように移動しつつ刃を振るう。

 尤も、残る二頭についてはまだMPを奪いきっていないため、攻撃は牽制程度のものであるが。

 軽く斬られたモノセロスは、興奮した様子で魔力を放つ。それと共に現れるのは、衝撃を伴う光の爆発だ。

 自らを中心とした範囲魔法、回避の難しい一撃であるが――



「――《蒐魂剣》」



 その予備動作と発動のタイミングは、これまでの戦いで嫌というほど頭に染みついている。

 最早目を閉じていたとしてもタイミングを逃すことはないだろう。

 青い剣閃で炸裂する光を斬り払い、その魔力を吸収する。



「そら、もうちょっと撃ってこいよ」



 ここまでMPを使い続けてきたおかげか、《MP自動大回復》はそれなりに成長してきている。

 とはいえ、効果の程を実感できるというわけではないのだが、多少なりともマシになっているだろう。

 飛来した光の槍を斬り払って吸収しながら、また適度にモノセロスへとダメージを与えていく。

 次の準備も完了しているし、倒してしまっても問題は無いのだが、流石に手伝って貰っている状況では無駄に倒し過ぎてしまうのも申し訳なく感じてしまう。



「先生、次追加しますよー!」

「ああ、やってくれ!」



 ちなみに、緋真たちはモノセロスの捕獲や、その捕獲を行っているプレイヤーの護衛を続けている。

 今はあくまでもMPを吸収することが目的であるため、緋真たちも一緒の戦闘は行っていないのだ。

 まあ、パーティは組んだままではあるが、ここまで戦闘に関わっていないとほぼ経験値も入っていないだろう。

 尤も、緋真たちは緋真たちで、モノセロスを捕まえるために戦闘は行っているため、全く経験値を得ていないというわけでもないだろうが。



「《蒐魂剣》、【奪魂斬】」



 引きずり出されるモノセロスの姿を横目に、別の個体へと刃を振るう。

 できるだけ均等にMPを奪うようにしているので、この一頭もそろそろ限界であろう。

 傷だらけになりつつあるモノセロスへと近づき、先の一閃で振り上げていた刃を反転させる。



「『生奪』」



 斬法――剛の型、中天。


 真正面から振り下ろす一閃は、先の一撃に怯んでいたモノセロスの胴を深く斬り裂いた。

 《練命剣》まで使ってしまえば、この程度の魔物を倒すのに苦労することはない。

 倒れたモノセロスは回収班に任せつつ、俺は即座に次なる個体へと刃を向けた。

 ここまで長時間続けていると、これも最早流れ作業だ。この戦闘面においては、不安な点など何一つ存在しない。

 気になるとすれば――



(……この集まりようがなぁ)



 横目でちらりと陣地の方へ視線を向ければ、そこでは大量のプレイヤーが跋扈している状況であった。

 『キャメロット』や『エレノア商会』、『MT探索会』のメンバーだけではない。

 これらのクランに属さないプレイヤーまでもが、この場に集まってきているのである。

 どうやら、俺たちの行っていることに対して、野次馬が集まってきているようだ。

 フィールドでも多少奥まった位置にあるとはいえ、ここは専用のエリアというわけでもない。このような活動をしていれば、当然人目に付いたとしても不思議はないだろう。

 ただのプレイヤーであれば、『妙なことをしているな』という程度で終わったかもしれないが、生憎とこの場にいるのは俺を含めて有名人だらけだ。

 当然、噂は即座に拡散され、こうして野次馬が増えてしまったのである。



(こっちも中々ギリギリのことをしているからな……文句も言えんか)



 引き寄せている数はそれほどではないため、狩場の独占というほどではないのだが、流石に陣地まで作ってやっていると目立ってしまう。

 最早収拾がつかなくなってきてしまい、仕方なしに説明を行ったのだが、その結果更にプレイヤーを集めることになってしまった。

 孵化の時間が近付くにつれてプレイヤーの数も増えてきており、今か今かとドラゴンの誕生を待ち構えている。

 確かに、そのようなイベントがあれば俺も顔を出していたかもしれないが、視線を向けられる側になると中々に座りが悪い。

 とはいえ、追い返そうとしても余計な混乱が起こるだけだろうし、致し方ないものとして放置しているのだが。



「先生、次のを……って、先生!」

「おん? どうした緋真、さっさと次のを連れてこい」

「背中、背中光ってますよ!」

「ぬ……!?」



 俺の背中と言えば、当然真龍の卵だろう。

 バックパックに入れ、羽織の下に背負っているため分かり辛いが、どうやらその上から漏れ出るほどの光量を放っているようだ。

 さっさと降ろして確認したいが、目の前にはまだ魔物が存在する。

 舌打ちし、俺はこちらへと魔法を放とうとしていた残る一頭へと肉薄した。


 歩法――縮地。



「《練命剣》、【命輝閃】!」



 魔法を回避して放った一閃は、モノセロスの頭を唐竹割にする。

 耐えられるはずもなく即死したモノセロスを尻目に、俺はさっさとバックパックを降ろし、中の卵を確認した。

 取り出した真龍の卵は、眩い銀色の光を放っている。

 そして、掲げた卵に表示されたウィンドウには、確かに二十四時間の経過を告げるメッセージが表示されていた。



『魔力の注入が完了しました。孵化を開始しますか? Yes/No』



 その表示に、思わず笑みが零れる。

 すぐさま了承したい所ではあるのだが、流石に魔物が出現するフィールドでは落ち着けない。

 人は多いが、聖火のランタンによって確保された陣地内で行うべきだろう。

 そう判断し、俺は緋真に合図を送って、そそくさと陣地内まで帰還した。



「クオン殿、完了しましたか!」

「ええ。孵化させるので、少しスペースを開けて貰えると……」

「勿論ですとも! さあ皆、下がってくれ!」

「そういう教授もですよ! あんただけ傍で見ようったってそうは行きませんからね!」

「ま、待て、待ちたまえ! このような貴重な機会、傍で観察する人間が一人は――」



 『MT探索会』のメンバーに引きずられていく教授を見送り、陣地内の開けたスペースへと移動する。

 緋真たちも戻ってきたのを確認し、更にエレノアやアルトリウスが現れるのを待って、俺はようやく卵の画面へと視線を戻した。

 果たして、どのような姿で生まれてくるのか。その期待を胸に込め、俺はYesのボタンを押下した。

 瞬間――さらに強い光を放った真龍の卵が、俺の手からひとりでに浮かび上がる。



「……ッ!」



 膨れ上がる眩い光。腕で目を庇いながら様子を見れば、光の中に浮かぶ卵のシルエットが、徐々に形を変えて巨大化していく。

 ドラゴンというから、以前に戦った亜竜のような姿を想像していた。だが、卵から変化していくその姿は、思っていたほどは大きくない。

 膨れ上がったその大きさは、ウルフドッグ――大型犬の中でも更に大きい犬と同じぐらいのサイズだろうか。

 周囲に放たれていた眩い光は、徐々にその体へと収束していく。その様子は、テイムモンスターの進化にも似ていた。

 浮かび上がっていたそのシルエットは、ゆっくりと地面に降下し、俺の目の前へと着地する。

 やがて、ドラゴンの全身を覆っていた光は、弾ける様に粒子となって消え去り――



「ルゥァアアアアアアアアアッ!」

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』



 ――俺の目の前に、全身を銀色の鱗で覆われたドラゴンが姿を現した。

 響き渡る歓声の中でその姿を観察すれば、鏡のように磨き抜かれた鱗は硬質でありながら、一つ一つが鋭く尖っていることが見て取れた。

 未だ大きくはない爪や牙はとてつもなく鋭く、地面に手を突いただけで、その爪の先が地面の中に埋まっているほどだ。

 鼻先や側頭部から伸びる角も刃そのものであり、さらに尻尾の先にも偃月刀のような刃が伸びている。

 未だ大きくはない翼も刃のように鋭く、その翼で飛ぶことができるのであれば、突進するだけで敵を斬り裂くことができるだろう。

 全身を刃と金属に覆われた竜――それが、真龍の卵より顕れたドラゴンの姿であった。



「種族は……ソードドラゴン・パピー。称号に《真龍》、と」



 どうやら亜竜ではなく、きちんと真龍として生み出すことができたらしい。

 ひとまずはそのことに安堵しつつ、既に俺のテイムモンスターとして登録されているこのドラゴンを観察する。

 ソードドラゴン、剣の龍か。《強化魔法》系統の魔力を注ぎ続けると、このような姿の真龍が生まれるということなのだろう。

 魔法との繋がりもあるし、その点は理解できないわけではない。



「……立派な姿だな」

「グルゥ?」



 俺の言葉はまだ理解できていないのか、龍の幼生は首を傾げる。

 だが、俺に対しての信頼の視線を向けてきていることから、俺が主人であるということは理解しているようだ。

 さてそうなれば、まずは名前を付けてやらねばならんだろう……まあ、既に決まっているんだがな。

 ドラゴン、最強の魔物。それに名をつけるならば、己の中で最強のイメージを持つ単語を使うべきだと考えていた。

 俺が目にし続けてきた、最強の一振り。剣の龍に付けるのであれば、おあつらえ向きの名前だろう。



「お前の名はシリウスだ。強くなれ、何物も斬り裂けるように」

「グルォゥ!」



 ジジイの刀、餓狼丸の原型――天狼丸。

 俺の中でイメージする、最強の剣。ならば、その天狼星シリウスの名こそがこのドラゴンにはふさわしい。

 その言葉を受けて力強く返事をしたシリウスに、俺は思わず会心の笑みを浮かべていた。











■アバター名:クオン

■性別:男

■種族:人間族ヒューマン

■レベル:71

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:46

VIT:33

INT:46

MND:33

AGI:21

DEX:21

■スキル

ウェポンスキル:《刀術:Lv.42》

 《格闘術:Lv.11》

マジックスキル:《昇華魔法:Lv.8》

 《降霊魔法:Lv.34》

セットスキル:《死点撃ち:Lv.47》

 《MP自動大回復:Lv.24》

 《奪命剣:Lv.35》

 《練命剣:Lv.35》

 《蒐魂剣:Lv.37》

 《テイム:Lv.49》

 《HP自動大回復:Lv.22》

 《生命力操作:Lv.51》

 《魔力操作:Lv.53》

 《魔技共演:Lv.33》

 《エンゲージ:Lv.16》

 《回復適性:Lv.48》

 《高位戦闘技能:Lv.12》

 《剣氣収斂:Lv.25》

 《識別:Lv.34》

 《背水:Lv.2》

 《走破:Lv.5》

サブスキル:《採掘:Lv.15》

 《聖女の祝福》

称号スキル:《剣鬼羅刹》

■現在SP:46






■アバター名:緋真

■性別:女

■種族:人間族ヒューマン

■レベル:71

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:48

VIT:30

INT:42

MND:30

AGI:25

DEX:25

■スキル

ウェポンスキル:《刀術:Lv.42》

 《格闘術:Lv.25》

マジックスキル:《火炎魔法:Lv.32》

 《強化魔法:Lv.39》

セットスキル:《練闘気:Lv.27》

 《スペルエンハンス:Lv.24》

 《火属性大強化:Lv.20》

 《回復適性:Lv.45》

 《炎身:Lv.5》

 《死点撃ち:Lv.44》

 《高位戦闘技能:Lv.25》

 《立体走法:Lv.24》

 《術理装填:Lv.42》

 《MP自動大回復:Lv.16》

 《多重詠唱:Lv.14》

 《蒐魂剣:Lv.6》

 《魔力操作:Lv.36》

 《遅延魔法:Lv.29》

 《識別:Lv.43》

 《魔技共演:Lv.2》

 《燎原の火:Lv.4》

サブスキル:《採取:Lv.7》

 《採掘:Lv.15》

 《聖女の祝福》

称号スキル:《緋の剣姫》

■現在SP:53






■モンスター名:ルミナ

■性別:メス

■種族:ヴァルハラリッター

■レベル:19

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:51

VIT:26

INT:58

MND:26

AGI:35

DEX:26

■スキル

ウェポンスキル:《刀術》

 《槍》

マジックスキル:《閃光魔法》

 《旋風魔法》

スキル:《光属性大強化》

 《戦乙女の戦翼》

 《魔法抵抗:大》

 《物理抵抗:大》

 《MP自動大回復》

 《高位魔法陣》

 《ブーストアクセル》

 《空歩》

 《風属性大強化》

 《HP自動大回復》

 《光輝の鎧》

 《戦乙女の加護》

 《半神》

 《精霊の囁き》

称号スキル:《精霊王の眷属》






■モンスター名:セイラン

■性別:オス

■種族:ストームグリフォン

■レベル:19

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:63

VIT:40

INT:40

MND:30

AGI:50

DEX:27

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《嵐魔法》

 《旋風魔法》

スキル:《風属性大強化》

 《天駆》

 《騎乗》

 《物理抵抗:大》

 《痛撃》

 《剛爪撃》

 《威圧》

 《騎乗者大強化》

 《空歩》

 《マルチターゲット》

 《雷鳴魔法》

 《雷属性大強化》

 《魔法抵抗:大》

 《空中機動》

 《嵐属性大強化》

 《突撃》

称号スキル:《嵐王の系譜》






■アバター名:アリシェラ

■性別:女

■種族:魔人族ダークス

■レベル:71

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:34

VIT:20

INT:34

MND:20

AGI:50

DEX:50

■スキル

ウェポンスキル:《暗剣術:Lv.42》

 《短弓術:Lv.9》

マジックスキル:《暗黒魔法:Lv.23》

 《月魔法:Lv.10》

セットスキル:《死点撃ち:Lv.45》

 《隠密行動:Lv.29》

 《上位毒耐性:Lv.7》

 《アサシネイト:Lv.25》

 《回復適性:Lv.40》

 《闇属性大強化:Lv.23》

 《スティンガー:Lv.27》

 《ベノムエッジ:Lv.21》

 《無影発動:Lv.12》

 《看破:Lv.43》

 《曲芸:Lv.28》

 《投擲術:Lv.15》

 《肉抉:Lv.7》

 《ミアズマウェポン:Lv.24》

 《立体走法:Lv.12》

 《魔技共演:Lv.2》

 《月属性強化:Lv.4》

サブスキル:《採取:Lv.23》

 《調薬:Lv.28》

 《偽装:Lv.27》

 《閃光魔法:Lv.1》

 《聖女の祝福》

称号スキル:《天月狼の導き》

■現在SP:36






■モンスター名:シリウス

■性別:オス

■種族:ソードドラゴン・パピー

■レベル:1

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:20

VIT:20

INT:20

MND:20

AGI:20

DEX:20

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《強化魔法》

スキル:《爪》

 《牙》

 《突進》

 《ブレス》

 《物理抵抗:中》

 《硬質化》

 《斬鱗》

称号スキル:《真龍》

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マギカテクニカ書籍版第12巻、7/18(金)発売です!
書籍情報はTwitter, 活動報告にて公開中です!
表紙絵


ご購入はAmazonから!


  https://x.com/AllenSeaze
書籍化情報や連載情報等呟いています。
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― 新着の感想 ―
[一言] 昇華の前提の強化魔法、強化率が低くて死にスキルみたいなこと言ってたけど今はどうなんかね?
[一言] 強化魔法はソードドラゴンですか、格好いいですね 師匠は月魔法の場合どんなドラゴンになるか気にしてたけど自分は熱魔法とか幻惑魔法の方が気になります、特に熱魔法は火魔法と微妙に被ってる気がします…
[良い点] とうとうパーティーの枠が埋まった 格好いいドラゴン!(ノ≧ヮ≦)ノ [気になる点] この子、ナデナデ出来なさそうw(全身凶器)
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