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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
MG ~Miniature Garden~

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323/987

320:舞い踊る炎花











 端的に言って、最終形態となったゼオンガレオスは脅威の一言だ。

 相変わらず知能は低いため、あっさりとパルジファルたちの挑発に引っかかってはいるのだが、その攻撃力が尋常ではない。

 最大限の防御を強化し、《フォートレス》の同時発動における適応最大人数で防御を固めて尚、彼女のHPを一撃で三割削り取ったのだ。

 《フォートレス》の発動中、ダメージは発動しているメンバー全体に適応されるため、彼女よりも防御で劣るプレイヤーは当然さらに大きなダメージを受けている。

 すぐさま回復魔法が降り注ぐが、これでは回復が追い付かなくなるのが目に見えているだろう。

 故に、俺は舌打ちしつつ緋真と共に前に出た。



「やることは分かってるな?」

「当然ですよ。直接斬れないのが残念ですけど……」



 俺と並んで駆ける緋真は、既に紅蓮舞姫を解放している。

 当然ながら攻撃属性は炎に変化しており、炎に対する高い耐性を持つゼオンガレオスには殆ど攻撃が通じない状態だ。

 相性の観点からすれば、最悪の相手であると言っても過言ではないだろう。

 とはいえ、できることが全くないというわけでもない。何故ならば――



「消えなさい――【朱椿】ッ!」



 紅蓮舞姫を構えながら、緋真はその名を口にする。

 解放された紅蓮舞姫の持つ力の一つ、【朱椿】。その能力は、己の周囲にある炎を吸収することで自身を回復させるというものだ。

 以前に獄炎纏いを相手に使用したその力は――今回も、その力を狙い通りに発揮した。



『ゴアアッ!?』



 ゼオンガレオスが纏う炎、その全てを紅蓮舞姫が吸い取っていく。

 突如として火が消えたことに驚いたのか、ゼオンガレオスはパルジファルたちへの攻撃の手を緩め、動揺した様子で周囲へと視線を走らせていた。

 無論、その隙を逃がすことなどあり得ない。



「《練命剣》――【命輝閃】!」



 歩法――烈震。


 勢いよくゼオンガレオスへと肉薄した俺は、跳躍して膝を足場に、奴の脇腹へと刃を振り下ろした。

 幾ら一度火を消したと言っても、ずっとこのままでいる保証などない。

 故に、少ない攻撃の機会にできるだけのダメージを与えられるようにしなければならないのだ。



『ガアアアアアアアアアアアッ!』



 しかし、当然ながらゼオンガレオスも黙って攻撃を受けているわけではない。

 奴は左腕を薙ぎ払うようにしながら俺のことを振り払おうとするが、俺は咄嗟にその腕へと己の刃を合わせながら跳躍した。


 斬法――柔の型、流水・浮羽。


 衝撃は全て殺したが、その勢いによって体が飛ぶ。

 空中でくるくると回転させられるが、軽く刀を振るうことでバランスを保ち、俺は近くの街灯へと鉤縄を放った。

 吹き飛ばされた勢いをそのままに、街灯を支点としてぐるりと円周運動、その勢いを利用して軽く地を駆け、跳躍してゼオンガレオスへと一気に肉薄する。


 斬法――剛の型、穿牙。



『ガ……ッ!?』



 俺の動きを追いきれなかったのだろう。ゼオンガレオスは自らの胸に突き刺さった刃に、隻眼を大きく見開いている。

 だが、それを悠長に観察している暇はない。俺は突き刺さった刃に体重をかけ、内部を抉りながら刃を引き抜き、地面へと着地した。

 引っ張られるような形で前傾姿勢になったゼオンガレオス。着地した俺は刃を振るって血を落とし、そのまま更なるテクニックを発動した。



「《練命剣》、【煌命閃】!」



 斬法――剛の型、扇渉。


 【煌命閃】に若干の溜めは必要だが、ゼオンガレオスが体勢を立て直す時間があれば十分すぎる。

 生命力に満たされた刃を振りかざし、俺は前方へと進み出ながら大きく刃を振るった。

 長い軌道を描いた生命力の刃は、縦にゼオンガレオスの胴を斬り裂き、緑色の血を地面へと零す。

 その間に股の間を抜けて後方へと移動し、刃を拭いながら距離を取る。

 それなりにダメージは与えたが、この程度でゼオンガレオスを倒すには至らないだろう。

 だが、パルジファルたちが回復するための時間は十分に稼げたはずだ。



『グ、オオオオオオオオオオオオオッ!』



 パルジファルたちが楯を掲げ、再び《プロヴォック》を発動しようとし――そこで、ゼオンガレオスはこれまでに見せなかった行動をとり始めた。

 一言で言えば、ドラミングだろう。そのゴリラらしい様相と相まって、胸を張って両手で叩くその姿は実に様になっている。

 地を震わせるような打撃音に、俺は警戒しながら刃を構え直し――すぐさま異変に気付いて舌打ちし、ゼオンガレオスから距離を取った。



『グルァアアアアアアアッ!』

「……ッ!」



 そして次の瞬間、ゼオンガレオスの全身が再び炎に包まれた。

 先ほどと変わらぬその姿で、奴は背後にいる俺へと襲い掛かろうとし――



「――《プロヴォック》!」



 再び、パルジファルたちによってその意識を誘引された。

 どうやらパルジファルたちの《フォートレス》は効果が切れてしまったらしく、次なる集団に移行しているが、やることは変わらない。

 タンクたちの方へと意識を向けたゼオンガレオスは、右手を薙ぎ払うように彼らへと向けて叩き付ける。

 そして、流れるように振り下ろした左手を、上段から彼らへと向けて振り下ろした。



「拙い……!」



 一撃ならば耐えられるだろうが、連撃となればそうも行かない。

 パルジファルでさえ三発がギリギリなのだ。あそこに並ぶ連中も、既に瀕死となってしまっている者が多い。

 そして――ゼオンガレオスは、決して攻撃の手を緩めることはない。



「緋真、次はいつ使える!?」

「あと三十秒です!」



 どう考えても間に合わない。何とか止めなければならないが、炎に包まれている状態では俺も近付くことは難しい。

 しかし、タンクたちが瓦解してしまえば俺たちが厳しくなることも事実だ。

 遠距離攻撃によって少しずつ削ってはいるものの、ゼオンガレオスの体力はまだまだ残っている。

 このままでは拙い。誰もがそんな思いを抱く中、ゼオンガレオスは腕を振り下ろし――



「――【ミラージュ】」



 ――見当違いの場所に叩き付けられた。

 それを成したのは、パルジファルの後ろで杖を掲げるマリンであろう。

 相変わらずよく分からない魔法だが、便利であることには違いない。

 そして、大きく隙を晒したゼオンガレオスの顔面に対し、後方から眩い熱線が突き刺さった。



『ガアアア……ッ!?』



 スカーレッドの放った魔法だろう。

 無防備な体勢で顔面に痛撃を受けたゼオンガレオスは、片手で顔面を押さえて苦悶している。

 彼女が使っていたのは熱魔法、炎ではないためその耐性をすり抜けることができたのだろう。

 顔面を焼かれたゼオンガレオスは、その痛みに暴れ回るが、視界を塞がれているため見当違いの方向を攻撃している。

 マリンの魔法も続けざまに使えるものではない。であれば――



「アルトリウス、畳み掛けるぞ!」

「総員、攻撃態勢! ここで仕留め切ります!」



 俺の意図を即座に把握したらしいアルトリウスは、即座に了承して全体に号令をかける。

 その声を聞きながら、俺は再び緋真と共にゼオンガレオスへと接近した。

 やることは同じ。だがまずは――



「【朱椿】!」

「《練命剣》、【煌命閃】!」

『ゴガ……ッ!?』



 炎が消えたゼオンガレオスへと肉薄した俺は、その膝裏へと向けて最大の一撃を叩きつけた。

 膝を崩された大猿は、そのままうつ伏せの形で地面に倒れ込む。

 ――その隙が生まれるよりも早く、アルトリウスは動き出していた。



「かかれッ!」



 『キャメロット』の総員が――そして、その動きに遅れまいと付いてきた他のプレイヤーが、一斉にゼオンガレオスへと襲い掛かる。

 ゼオンガレオスも攻撃に晒されて藻掻くが、それを潰すように幾重にも重なる攻撃がその巨体へと振り下ろされた。

 その様を見つめながらポーションでHPを回復、ゼオンガレオスのHPの減り具合と、奴が再び炎を発するまでの時間を計算する。



「……ギリギリだな。セイラン!」

「クェエ!」



 上空へと呼びかけた瞬間、セイランが翼を羽ばたかせてこちらに飛来する。

 俺はその足に掴まって上空へと駆け上がり、何とか起き上がろうともがくゼオンガレオスの頭上を取った。



「《練命剣》――【命輝閃】ッ!」



 巨猿は群がるプレイヤーを強引に振り払い、起き上がろうと肘をついて上半身を起こす。

 その姿を見下ろしながら、俺はセイランの足を離して一直線に落下した。



「ここまで好き勝手やったんだ――蹂躙されるのが応報ってものだろうよ」



 斬法――柔の型、襲牙。


 生命力に輝く餓狼丸の切っ先は、ゼオンガレオスの延髄を狙い違えることなく穿つ。

 そしてこいつの首を足蹴にし、握りを持ち替えて抉るように刃を振り抜く。

 炎に熱せられた血は勢いよく噴き出し――大きく目を見開いたゼオンガレオスは、そのままゆっくりと倒れ伏したのだった。











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