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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
MG ~Miniature Garden~

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311/987

308:閑話・ミリス共和国連邦 前編












 ミリス共和国連邦――ベーディンジア王国の東にある、小国家群の総称。

 小国と言っても規模はかなり小さく、大国の首都一つ分程度の勢力しか持たない小さな国ばかりだ。

 その中でも、最も大きな勢力を持っていたミリス王国が周辺各国と協定を結び、今の形になったとされている。

 尤も――それは、このゲームが開始するよりも遥かに前の話であり、一部を除くプレイヤーたちにとってはそれほど興味のない内容であった。

 彼らにとって重要なことはただ一つ。それは――



「それではこれより、首都ミリスの攻略を開始します」

『ワールドクエスト《侵食都市の攻防》を開始します』



 ミリス共和国連邦の首都、ミリス王国の王都であった都市。

 その前に立ち並んでいるのは、無数のプレイヤーたちであった。

 彼らは第二陣――初期ロット以降に発売された『Magica Technica』を購入したプレイヤーたちである。

 第一陣の最前線に追いつくにはまだレベルが足りず、かと言ってベーディンジアで活動し続けるだけというのもつまらない。

 そんな第二陣のトップ層たちは、未だ手つかずであったミリスの攻略に乗り出したのだ。

 尤も、全てが第二陣のプレイヤーというわけではなく、一部は第一陣の者も含まれていた。

 アドミス聖王国で活動するには時間も実力も足りない、そんな彼らも、こちらでは十分すぎる戦力なのである。


 そして、そんな数々のプレイヤーを纏め上げているのがクラン『我剣神通』。

 その先頭に立つ者こそが、先程声を上げた男――水蓮であった。

 二振りの小太刀を手に、非常に落ち着いた様子の彼は、ミリス内部へと足を踏み入れながら声を上げる。



「目標は伯爵級悪魔。この内部に潜んでいるであろう敵を討てば、晴れてこの国は攻略完了となります」

「あの……水蓮さん」

「おや、何か質問ですか、壱胡さん」



 そんな彼の後ろについているのは、ゲーム開始当初から行動を共にすることになった大神壱胡だ。

 配信者である彼女は、今日も普段通り配信を行いながらこのクエストに参加していた。

 とはいえ、彼女も困惑を隠せぬ様子であったが。何しろ――



「その、まだ潜伏場所分かっていないんですよね? それなのに、もう決戦始めちゃって大丈夫なんですか?」

「ああ、既におおよその所は掴めていますからね。そこにこれ以上時間をかけるよりは、気取られる前に攻めた方が楽ですよ」

「くははは! よく言うな、水蓮! お前、師範の本気が見たいからさっさとこっちを片付けたいだけだろ?」

「それは言わないお約束ですよ、戦刃さん。貴方だってそれは同じでしょうに」

「ま、否定はしねぇけどな。俺も賛成だ、こっちはさっさと片付けて、聖王国とやらに向かおうぜ」



 既に大太刀を抜き放って肩に担いでいる大男、戦刃。

 反応は多々あれど、どうやら『我剣神通』の面々は、その言葉に否と言うつもりはない様子であった。

 彼らにとって、この決戦は単なる通過点に過ぎず、その先に真の目的があるということだ。

 そんな彼らの様子に、四人の配信者たちは揃って顔を見合わせる。



「まさか、これを終わらせてすぐに最前線に行くってことですか!?」

「えー……急にペースアップしたと思ったら、理由それ?」

「ははは、済みませんね。しかし、状況を動かすのに十分なお膳立てはしましたから」


『一晩経ったら拠点をいくつも落としてたの草も生えない』

『協力に頑なだったNPCをどうやって説得したんですかね……』



 配信画面に流れてくるコメントへ内心で同意しつつも、壱胡はそれ以上に、最前線へ向かう理由を気にしていた。

 師範――即ち、水蓮たちにとっての師である人物。今も最前線で戦っているであろう、クオンという名のプレイヤーだ。

 彼の本気を目にしたいとは、一体どういうことなのだろうか。

 そんな壱胡の表情に、普段のクールな様子はなく、どこか得意げな表情をしたユキが告げた。



「お兄様は、我ら久遠神通流の中でも最高峰の技術を修められています。それこそ、この世でたった二人しか扱えぬ秘奥すらも。お兄様は、今回それを使うつもりなのでしょう……ああ、楽しみです」

「へぇ……凄いですね、この世で二人だけとか。もう一人はどなたなんです?」

「先代の師範ですね。しかし、こちらにはいらっしゃらないので、見せて頂けるのはお兄様だけです」


『ユキさんめっちゃテンション高いな』

『そんなゲームみたいな設定の人がリアルにいるとは思わなんだ』



 配信者組、そして彼女たちを通じて状況を眺めている視聴者たちは、困惑しつつも納得する。

 あまりイメージしきれないような内容ではあったが、珍しい映像を見たいという思いは全員が理解できるものであったからだ。

 そして同時に、自分たちもそれを目にしてみたいと、多くの人間が同じ感想を抱いていた。

 この世でたった二人だけの技術、まるで人間国宝の技術を見る機会のようだが、戦いに関連するような技術などテレビでもそうそう目にするようなものではない。

 達人の技術は、ただその姿だけで一種の芸術にすら相当するのだ。例え久遠神通流でなかったとしても、興味を惹かれる者がいることは否定できないだろう。



「ともあれ……そういうわけで、ここの攻略は本日中に片付け、明日中にはアドミス聖王国に入ります。勿論、伯爵級悪魔が存在するため、決して油断はできません。全力で事に当たるとしましょう」



 かなり強引に推し進められてはいるものの、用意自体はかなり周到な状況だ。

 現在、この都市の周囲は現地人たちの軍によって包囲された状況にある。

 小国が群を成し、議会によって全体を運営しているこの国では、それぞれの小国が軍を保有している。

 水蓮たちは各国に紛れ込んでいた悪魔を掃討、その上で彼らを説得し、首都を包囲させたのだ。

 尤も、彼らはそれほど規模も大きくはなく、伯爵級悪魔と戦えるほどの力があるかと問われればそれは否だ。

 しかし、こうして外に脱出しづらい状況を作っているだけでも、プレイヤーたちにとってはありがたい状況であった。

 何しろ、この国の悪魔は人間に化けている。普通の状況であれば、脱走しようと思えば人間のフリをして逃げることが可能なのだ。

 故に、水蓮は各国の軍に依頼したのだ。包囲し、誰一人として通れぬようにしてくれればそれでいいと。



「で、水蓮よ。こっからどうすんだ?」

「敵の位置は分かっています。各国からの後ろ盾もありますから――堂々と、正面から行くとしましょうか」



 視線の向かう先は、首都の中央にある城だ。

 ベーディンジアと比較しても小規模なものでしかないが、城は城である。

 潜入しようとしても警備があって難しく、であれば正面から堂々と入り込めばよいと判断したのだ。



「とはいえ……このまま乗り込むのも、少々難しいですね?」

「あん? 警備の連中は大したことはないだろ?」

「実力的にはそうですが、このままだとアウェーですからね。少しばかり、デモンストレーションがあればいいんですが」



 現状、周囲の人々は物々しい雰囲気のプレイヤーたちに不審の目を向けている。

 まあ、突如として武装した集団が街に乗り込んで来れば、警戒して当然だろう。

 後に禍根を残すかどうか、ということは、水蓮はあまり考えてはいない。単純に、これからの戦いを邪魔されなければそれでいいのだ。

 しかしながら、現状ではそれも妨害されかねない状況だ。故に――



「ほう? なら、あいつらでいいんじゃねぇか?」

「ふむ……そうですね。派手にやるとしましょうか」



 戦刃が示した先には、プレイヤーたちの方へと向かって走ってくる警備兵の集団の姿。

 武器を抜いたまま入ってきたプレイヤーたちに対する警戒と警告だが、水蓮たちの視線はその中の一人、集団の後ろに位置どった一人へと向けられていた。



「おい、お前たち、一体何者――」



 誰何の声。しかし、それを無視して水蓮は一歩前へと足を踏み出す。


 歩法――間碧。


 ――そして次の瞬間、彼の体は騎士たちの集団を一気に擦り抜けていた。

 両手に構えられた刃は交差し、眼前にいる兵士の首へと突きつけられる。

 兵士は突如として目の前に現れた相手に硬直し――


 斬法・改伝――柔の型、断差。


 振り抜かれた刃が、兵士の首を一息に斬り飛ばした。

 その瞬間、緑の血が溢れ、兵士の体は装備を残し、黒い塵となって消滅する。

 多くの人々が見る前でその姿を曝し、水蓮は堂々と宣言した。



「我らは異邦人、悪魔を討つ者です。これより、この街にて人間に化けた悪魔を掃討します。ご安心を……貴方がたの敵は、我らが一匹残らず討ち取ってみせましょう」



 しばしの静寂――しかし、突然の惨劇とその現実を理解するに至って、人々は徐々に歓声を上げ始めた。

 悪魔は現地人にとって共通の敵であり脅威だ。それを見事に斬り捨ててみせた異邦人は、不気味な存在から自分たちにとっての味方にカテゴライズされたのである。

 状況を飲み込み切れずに困惑する兵士たちは、混乱が収まる前に素早く丸め込みつつ、水蓮は城の方へと視線を向ける。

 この国を迂遠な方法で攻める悪魔の首魁、それが潜む場所へと。



「さて……討ち入りを開始するとしましょうか」



 初めて相対する伯爵級。単なる通過点に過ぎないとは思いつつも、彼らの心には確かな高揚が存在していた。











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[一言] 幕末ですね。
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