291:第六段階
すみません、投稿タイミングを一日間違えてました。
「……で、またこの素材の量なわけね」
「それなりに強い敵が多かったもんでな」
「こうも初見の素材ばかりだと扱いが難しいのだけど……まあいいわ、査定しておく。それより――」
「ああ、フィノのことは別に気にしていないぞ。さっさと仕事をして貰えてありがたいさ」
レベル上げを終え、南の街まで戻ってきた俺たちは、早速餓狼丸と紅蓮舞姫をフィノに預けたのだ。
あらかじめ準備をして待機していたフィノは、俺たちの姿を見るなり成長武器をかっぱらって行った。
相変わらずの様子ではあるが、仕事は完璧なのだ。それに関して文句を言うつもりはない。
ついでに伊織を含めて装備のメンテナンスを頼みつつ、俺は己の額を指先で叩いているエレノアへと視線を向ける。
「それで、エレノア。東の状況はどんな感じなんだ?」
「ああ、東の街……ディーロンはもう少しって所ね。明日には何とかなっていると思うわよ」
「その口ぶりは、アルトリウスか?」
「ええ、彼が本腰を入れ始めたし、時間の問題でしょう」
確かに、あいつが動いているならば、子爵級の攻略はそこまで難しい話ではないだろう。
これまで動きが鈍かったのは、聖火の塔関連の動きか、或いは伯爵級攻略のための布石か。
何にせよ、あいつが本腰を入れたのであれば、心配する必要はないだろう。
恐らく、明日にはマーナガルムの討伐に動けるようになるはずだ。
「俺たちは、明日になったらそっちに移動する。アリスの成長武器も強化したい所だしな」
「それは構わないけれど……正直、厳しい相手だと思うわよ?」
「――でも、それをやるだけの価値はあるよ」
と――若干気後れしている様子のエレノアに対し、背後から声がかかる。
その声を上げたのは、俺たちの武器を抱えて部屋に戻ってきたフィノであった。
普段から眠たげな表情を見せているフィノであるが、今の彼女は実に真剣な表情だ。
あまり見られぬその姿に目を瞬かせつつ、俺は彼女へと向けて問いかける。
「★6への強化には、それだけ大きな変化があったってことか?」
「うん。ちょっと見てみて」
俺の問いに対し、フィノは真剣な表情で首肯しながら、餓狼丸と紅蓮舞姫を俺たちに返してきた。
見た目は普段と変わらぬ、いつもの刀だ。であれば、重大な変化が起こったのはその中身だろう。
果たして、どのような強化が成されたのか。俺と緋真は軽く視線を見合わせつつ、成長武器の情報を表示した。
■《武器:刀》餓狼丸 ★6
攻撃力:59
重量:21
耐久度:-
付与効果:成長 限定解放
製作者:-
■限定解放
⇒Lv.1:餓狼の怨嗟(消費経験値10%)
自身を中心に半径35メートル以内に黒いオーラを発生させる。
オーラに触れている敵味方全てに毎秒0.4%のダメージを与え、
与えた量に応じて武器の攻撃力を上昇させる。
⇒Lv.6:強制解放
餓狼の怨嗟による攻撃力上昇が最大値に到達した状態で、
現段階で蓄積している全経験値ゲージを消費して発動。
五分間の間、全ての攻撃力を大幅に上昇させる。
発動終了後、強制的に成長段階が一段階下降する。
→餓狼呑星
発動残り時間を一分消費して発動。次に行う攻撃のダメージを十倍にする。
残り一分未満で発動した場合、攻撃後に強制解放状態が終了する。
■《武器:刀》紅蓮舞姫 ★6
攻撃力:55
重量:18
耐久度:-
付与効果:成長 限定解放
製作者:-
■限定解放
⇒Lv.1:緋炎散華(消費経験値10%)
攻撃力を上昇させ、攻撃のダメージ属性を炎・魔法属性に変更する。
また、発動中に限り、専用のスキルの発動を可能にする。
専用スキルは武器を特定の姿勢で構えている状態でのみ使用可能。
→Lv.1:緋牡丹
上段の構えの時のみ使用可能。
斬りつけた相手に周囲から炎が集まり、爆発を起こす。
→Lv.2:紅桜
脇構えの時のみ使用可能。
横薙ぎの一閃と共に飛び散った火の粉が広範囲に爆発を起こす。
→Lv.3:灼楠花
霞の構えの時のみ使用可能。
突き刺した相手に特殊状態異常『熱毒』を付与する。
→LV.4:灼薬
正眼の構えの時のみ使用可能。
全身に炎を纏い、ステータスを向上させる。
→LV.5:朱椿
下段の構えの時のみ使用可能。
周囲の炎を吸収して、HPとMPを回復させる。
→LV.6:火日葵
脇構えの時のみ使用可能。
振り上げと共に放つ火球が大爆発を起こす。
⇒Lv.6:強制解放
緋炎散華を発動している状態で、
現段階で蓄積している全経験値ゲージを消費して発動。
緋炎散華の専用スキルの威力を上昇させ、クールタイムが全て五秒となる。
また、相手の耐性を無視してダメージを与えられるようになる。
発動終了後、強制的に成長段階が一段階下降する。
「……何だ、これは」
「嘘でしょ、何これ……?」
俺も緋真も、思わず呆然と呟いた。
あまりにも強力過ぎる効果と、重すぎるコスト。安易に使うことはできないが、成程確かに、こいつは強力極まりない。
ディーンクラッドと戦う上においても、こいつは確実に切り札となり得るだろう。
無論、コストも非常に高いため、それに見合うだけの効果は十分にある。
とは言え、安易に試すというわけにもいかないのだが。
「アルトリウスがああも露骨に★6を目指せと言っていた理由が分かったな……あいつのコールブランドも既に★6に達しているということか」
「でしょうね。んー……私の解放は制限時間が書いてないですけど、戦闘中はずっと使えるんですかね?」
「一定時間使えるタイプと、長時間使えるタイプ? もしかしたら、他にも種類があるのかもしれないわね」
まあ、あまりにもコストが重過ぎるため、試しで使ってみるというのも少々怖い。
一応、素材的にはもう一度強化することは可能ではあるのだが……本番で使った後にもう一度素材を取りに行かなければならないのは面倒だ。
俺の方は単純に攻撃力が上がるだけ、緋真の方はそれまで使っていた専用スキルを連発できるようになるだけだ。それだけならば、試しで使う必要もないだろう。
ともあれ、ここに来てようやく、奴にも有効打を与えられるであろう手段を手に入れることができた。
俺の場合は制限時間があるため、勝負をつける時にしか使えないだろうが……逆に言えば、それだけ強力な攻撃手段であるということだ。
必ずや、奴の喉笛に刃を届かせる。そのためにも、更に地力を上げて行くことが重要だ。素の攻撃力が高ければ高いほど、強制解放の効果は上昇するのだから。
「……とりあえず、勝てる可能性が見えてきたことは喜ばしいことね。私は、もう一度『MT探索会』の方に確認を投げてみるわ」
「何だ、いきなり乗り気になったな」
「そりゃ、そこまでの武器を見ればそうなるわよ。第六段階に到達した成長武器があればあるほど都合がいいわ」
身も蓋もない言い方ではあるが、否定できない事実だ。
これは確実に、今回の戦いにおける切り札となる。であれば、その切り札を一枚でも多く準備しておきたいという思いを抱くのは当然であろう。
アリスの場合、強制解放の効果がどのような形で発現するのかも気になるしな。
「それなら、こちらも遠慮なく、明日はマーナガルム討伐のために動かせて貰うとしよう」
「いいけれど、そちらでも情報は集めてからにしてね。どうせ、出現するのは夜だけなのだし」
「ふむ……まあ正直、情報はそっちに任せて、俺たちはレベル上げを優先したいんだが」
「横着しないで――と言いたいけど、それはそうなのよね。まあ、できる限りこちらで情報は集めておくわ」
軽く嘆息しつつのエレノアの言葉に、俺は笑みを浮かべて首肯する。
渋々といった表情を見せてはいるが、彼女ならば何だかんだで可能な限りの情報を集めてくれることだろう。
まあ、彼女の言う通り、こういう状況でない限りは自分で調べるべきなのだろうが。
ともあれ、やるべきことは決まった。明日に備え、今日はゆっくり休むこととしよう。
「とりあえず、素材については査定金額が決まったらまた連絡してくれ。それで新しい装備を作るつもりも無いし、勝手に使って貰っても構わんぞ」
「せめて代金を払うまでは使わないわよ」
「律儀なこったな……まあいいか、そっちもよろしくな」
強化、修理した装備を受け取って、『エレノア商会』を後にする。
明日は最後、三体目のネームドモンスター。果たして、そいつはどのような能力を持っているのか。
――その戦いにおいて予想外の出会いをすることになるなど、胸を躍らせる今の俺には想像すらできなかった。
■アバター名:クオン
■性別:男
■種族:人間族
■レベル:60
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:42
VIT:28
INT:42
MND:28
AGI:19
DEX:19
■スキル
ウェポンスキル:《刀術:Lv.31》
《格闘:Lv.26》
マジックスキル:《強化魔法:Lv.46》
《降霊魔法:Lv.21》
セットスキル:《死点撃ち:Lv.40》
《MP自動大回復:Lv.13》
《奪命剣:Lv.25》
《練命剣:Lv.25》
《蒐魂剣:Lv.24》
《テイム:Lv.40》
《HP自動大回復:Lv.15》
《生命力操作:Lv.43》
《魔力操作:Lv.43》
《魔技共演:Lv.27》
《エンゲージ:Lv.5》
《回復適性:Lv.36》
《戦闘技能:Lv.26》
《剣氣収斂:Lv.8》
《聖女の祝福》
サブスキル:《採掘:Lv.13》
《識別:Lv.32》
称号スキル:《剣鬼羅刹》
■現在SP:44
■アバター名:緋真
■性別:女
■種族:人間族
■レベル:60
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:44
VIT:27
INT:38
MND:27
AGI:21
DEX:21
■スキル
ウェポンスキル:《刀術:Lv.31》
《格闘術:Lv.15》
マジックスキル:《火炎魔法:Lv.26》
《強化魔法:Lv.26》
セットスキル:《練闘気:Lv.15》
《スペルエンハンス:Lv.15》
《火属性大強化:Lv.13》
《回復適性:Lv.38》
《識別:Lv.37》
《死点撃ち:Lv.37》
《高位戦闘技能:Lv.14》
《立体走法:Lv.14》
《術理装填:Lv.35》
《MP自動大回復:Lv.5》
《多重詠唱:Lv.5》
《斬魔の剣:Lv.25》
《魔力操作:Lv.24》
《遅延魔法:Lv.23》
《聖女の祝福》
サブスキル:《採取:Lv.7》
《採掘:Lv.13》
称号スキル:《緋の剣姫》
■現在SP:40
■モンスター名:ルミナ
■性別:メス
■種族:ヴァルハラリッター
■レベル:8
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:44
VIT:25
INT:50
MND:25
AGI:31
DEX:25
■スキル
ウェポンスキル:《刀術》
《槍》
マジックスキル:《閃光魔法》
《旋風魔法》
スキル:《光属性大強化》
《戦乙女の戦翼》
《魔法抵抗:大》
《物理抵抗:大》
《MP自動大回復》
《高位魔法陣》
《ブーストアクセル》
《空歩》
《風属性大強化》
《HP自動回復》
《光輝の鎧》
《戦乙女の加護》
《半神》
称号スキル:《精霊王の眷属》
■モンスター名:セイラン
■性別:オス
■種族:ストームグリフォン
■レベル:8
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:56
VIT:36
INT:40
MND:26
AGI:46
DEX:24
■スキル
ウェポンスキル:なし
マジックスキル:《嵐魔法》
《旋風魔法》
スキル:《風属性大強化》
《天駆》
《騎乗》
《物理抵抗:大》
《痛撃》
《剛爪撃》
《威圧》
《騎乗者大強化》
《空歩》
《マルチターゲット》
《雷鳴魔法》
《雷属性大強化》
《魔法抵抗:中》
《空中機動》
《嵐属性強化》
《突撃》
称号スキル:《嵐王の系譜》
■アバター名:アリシェラ
■性別:女
■種族:魔人族
■レベル:60
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:26
VIT:20
INT:26
MND:20
AGI:47
DEX:47
■スキル
ウェポンスキル:《暗剣術:Lv.31》
《弓:Lv.23》
マジックスキル:《暗黒魔法:Lv.16》
《光魔法:Lv.24》
セットスキル:《死点撃ち:Lv.38》
《隠密行動:Lv.16》
《上位毒耐性:Lv.2》
《アサシネイト:Lv.17》
《回復適性:Lv.35》
《闇属性大強化:Lv.15》
《スティンガー:Lv.15》
《看破:Lv.38》
《ベノムエッジ:Lv.13》
《無音発動:Lv.29》
《曲芸:Lv.16》
《投擲術:Lv.6》
《傷穿:Lv.20》
《ミアズマウェポン:Lv.7》
《走破:Lv.29》
サブスキル:《採取:Lv.23》
《調薬:Lv.26》
《偽装:Lv.27》
《聖女の祝福》
称号スキル:なし
■現在SP:46





