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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
MG ~Miniature Garden~

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287:荒山の探索












 獄炎纏いをどうやって倒すか――それを考えた時、最大の障害となるのは間違いなくあの鱗粉だろう。

 常に獄炎纏いの周囲に漂っていて、攻撃時には広範囲に広げることができる鱗粉。

 一度あの鱗粉の中に飲み込まれてしまったら、その時点で勝ち目はなくなるだろう。

 逆に言えば、あの鱗粉さえ何とかすることができれば、どうとでも対処できるということだ。

 まあ、そこまで結論を急ぐのもどうかとは思うが、何にせよあの鱗粉だけは何とかしなくてはならない。



「とはいえ……あれは奴のメインの攻撃手段だろうからな」

「クェ?」

「……何でもない、独り言だ」



 俺の呟きに反応したセイランに対し、苦笑と共にそう返す。

 果たして、そう簡単に奴の攻撃手段を封じることができるのか。

 仮に封じることができたとして、それがいつまでも持続するのか。

 正直、奴がネームドモンスターという優遇された存在である以上、あまり期待することはできないだろう。

 とは言え、何の対策もなく挑めば返り討ちに遭うことは必定。何かしらの小細工は絶対に必要だ。



「さて、俺の予想が正しければ……やはりそうか」



 しばし山頂方向へと進めば、徐々にではあるが、鼻に突く異臭が漂い始める。

 よく覚えのある、硫黄の匂いだ。黒い岩肌の多い荒れた山だと思っていたが、やはり活火山であったようだ。

 まあ、あんな炎関連の魔物が出現するぐらいなのだから、火山であっても全く違和感はないが。

 ともあれ、ここが火山であるならば、俺としても都合がいい。



「あの生態じゃ、火口に堕としたとしても死ぬかどうかは分からんが……というか、火口であんな爆発を起こすのはちょっとな」



 あの調子では、火口の中に巣があると言われても違和感がないレベルだ。

 それに、下手なことをして火山が噴火でもしたら大問題だ。

 俺が求めているのは、火口でもマグマでもない。火山特有の地形である。



「……! セイラン、向こうだ」

「クェ!」



 セイランは俺の示した方向へと飛翔する。

 進むにつれて荒れ地に植物が増え始め、やがて見えてきたのは、空の青を映し出す広い湖であった。



「やはりカルデラ湖があったか。まあ、火山だしな」



 地下のマグマの活動によってできた窪地、そこに水が溜まったものがカルデラ湖だ。

 火山ならばできている可能性が高いと踏んでいたが、やはり存在していたか。

 俺が獄炎纏いに対して講じている対策は単純で、奴を水に堕としてしまおうというものだ。

 例え爆薬に近しい性質を持った鱗粉であったとしても、それ自体が濡れてしまえば爆発する筈もない。特に水中まで入ってしまえば安心だろう。

 まあ、俺たちは水中では戦えないため、奴を水の中に叩き落すのが精々と言った所か。ともあれ、それはそれでやりようはあるし、何とかなるだろう。

 問題は――



「……奴をどうやってここまで連れてくるか、だな」



 あの自立行動する戦略兵器を、どうやってこの場まで連れてくるかが問題だ。

 正直、やり方など一つしか無いとは思うのだが、流石にあれを相手にするのは気が重い。

 とは言え、やらざるを得ないだろう。現状、思いつく中で最も勝率が高いのはこの方法なのだから。



「……よし、場所は記録した。戻るぞセイラン」

「クェエ?」

「もういいのかって? ああ、とりあえずの目的は達したからな。後は作戦を実行するだけだ……まあ、お前には結構負担をかけることになるが」

「ケェ!」

「気にするなってか。相変わらずだな、お前は」



 強敵を相手に怯む様子のないセイランに、俺は小さく笑みを浮かべる。

 コイツは本当に、血気盛んで勇敢だ。あれほどの攻撃を見せた獄炎纏いを前に、全くと言っていいほど怯んでいない。

 であれば、乗り手として俺も情けない姿は見せられないな。

 獄炎纏いの攻略、ここで果たして見せるとしよう。











 * * * * *











「お帰りなさい、先生」

「ああ、何か変化はあったか?」

「特に何も。少しずつ移動はしていますけど、今は満腹なのか他の魔物を攻撃する気配はないです」

「ふむ。あまり感知能力は高くないみたいだな」



 ある程度距離を開けてはいるが、獄炎纏いは俺たちの気配に気づいた様子はない。

 とは言え、身を隠す場所が少ない荒山だ、あまり油断できるような話でもないのだが。

 できれば先制攻撃を当ててから行動に移りたいし、気づかれていないことは都合がいい。



「とりあえず、これからやることだが……主な目的は、獄炎纏いを湖に叩き落すことだ」

「ああ……成程? 水に濡れたら鱗粉も使えなくなるかもしれないってことですか」

「そんなに上手く行くかしら? 多少濡れたぐらいならすぐに蒸発させそうなものだけど」

「一時的な効果かもしれんが、それならその度に水に浸けてやるさ」



 ともあれ、他に奴の鱗粉を封じる手段も思い浮かばないし、挑戦する価値はあるだろう。

 失敗したら……まあ、その時はまた別の作戦を考えることとしよう。

 とりあえずは、奴を湖の上まで連れて行かなければならない訳だ。



「湖の位置はここだ。そこまでは俺とセイランが奴を誘導する。ルミナ、お前は事前に湖の上で待機していてくれ。奴を湖に叩き落すのはお前の役目だ」

「はい! 刻印を使うのですか?」

「ああ、奴を湖に落とすのは最優先事項だ。万全を期して動かねばなるまい」



 ルミナの刻印は切り札だ。ここで使用してしまうのは確かに惜しいかもしれない。

 けれど、獄炎纏いの鱗粉を封じるのは、奴を倒すうえで必要不可欠だ。

 そのために刻印を使うのであれば、決して惜しくはないだろう。



「俺とセイランが奴の注意を引き、湖の中央まで連れてくる。そうしたら、上から奴に魔法を叩き込んでやれ」

「はい、分かりました。お任せください……!」



 重要な役割だということは分かっているのだろう。ルミナは緊張しつつも、決意を秘めた表情で頷く。

 一方で、困惑した表情を浮かべているのは緋真だ。



「あの、私は何するんですか?」

「お前とアリスは、離れた所から俺のことを援護してくれ。正直、ペガサスだと奴の攻撃から逃れるのは難しいだろう。奴の注意を引きすぎない程度に援護を頼む」

「まあ、それはそうですね……了解です、ヘイトを取り過ぎないように注意します」



 ペガサスも決して遅いというわけではないのだが、ストームグリフォンであるセイランと比べるとかなり劣る。

 分の悪い賭けになってしまうし、緋真たちにはあまり無理をさせるべきではないだろう。



「まあ、奴が鱗粉を使ったら、俺に届く前に爆破してくれ。それだけでもかなり助かる」

「了解です。あれに飲まれたらひとたまりもないですしね」

「一応、セイランの風である程度対策はするつもりだが、どこまで通用するかは分からんからな。頼んだぞ」



 とりあえず、単純ではあるが作戦はこんなものだ。

 尤も、この作戦が成功した所で、奴を倒し切れるわけではない。

 むしろ、これが成功してからが本番と言った所だろう。

 正直な所、それ以降については行き当たりばったりであるため、賭けとなる部分はかなり多い。

 だが、それでもやるしかない。俺たちには、あまり時間的余裕が残されていないのだ。



「よし……まずは一当てだ。追いかけっこを始める前に、できる限り削っておくぞ」



 とりあえず、最初に遠距離攻撃で可能な限りダメージを与える。それでどこまで削れるかを確認するとしよう。

 相手の防御力と体力が分かれば、ある程度の方針も立てられる。

 俺は餓狼丸に強化を掛け、緋真たちは魔法を準備。アリスは一応矢を取り出したが、これについてはあまりダメージは与えられないだろう。

 だが、それでも何もしないよりは遥かにマシだ。少しでもダメージを与え、勝率を上げておきたい。それほどまでに、あの獄炎纏いは難敵なのだ。

 ルミナが複数の魔法陣を展開し、魔法の詠唱を完了させる。それに合わせ、俺たちは一斉に攻撃を解き放った。



「《練命剣》――【命輝一陣】!」

「《スペルエンハンス》、【ファイアジャベリン】!」

「【ダークスナイプ】」

「光の投槍よ、連なりて!」

「クアアアアアアッ!」



 全員で放つ、渾身の遠距離攻撃。

 それが発動した瞬間に獄炎纏いは反応したが、迅雷と共に放った【命輝一陣】は一瞬で奴の元まで到達する。

 その直撃を受けて揺らいだ蝶へ、複数の魔法が一気に突き刺さり――周囲の鱗粉に引火して、巨大な爆発を巻き起こした。



「移動しろ!」



 その結果を確認することなく、俺たちはすぐさま騎獣に乗り込み、移動を開始した。

 セイランに跨り、上空へと駆け登って――そんな俺たちの眼下を、橙色の粒子に満ちた風が吹き抜けてゆく。

 そして一瞬後、地上はまとめて爆破されていた。



「ッ……巻き込まれるなよ、行くぞ!」



 戦慄を覚えながらも、作戦行動を開始する。

 空に舞い上がる緋色の蝶、奴から放たれる鱗粉を回避しながら、俺たちは素早く湖の方向へと移動を開始した。











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[良い点] 獄炎纏いかっこいい
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