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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
MG ~Miniature Garden~

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243:盾と剣












 現地人の保護を終えてきたパルジファルをパーティに加え、バルドレッドとの交戦を再開する。

 人々の状況は気にはなるが、彼女がこちらに来れる余裕があるならば問題は無いだろう。

 現状、緋真とセイランは交互に攻撃を繰り出すことでバルドレッドを押し留めているが、少なからずダメージは受けてしまっている。

 直撃こそ受けていないが、あの黒い衝撃波への対処は難しかったらしい。

 それでも崩れていないのは、要所要所でアリスが横槍を入れてバルドレッドの動きを阻害していたからだろう。

 三人がかりでも完全には抑えきれない辺り、流石は伯爵級と言った所か――と、胸中で呟いたその時、俺はあることに気づいて思わず舌打ちを零していた。



「ッ……緋真、セイラン、下がれ!」



 俺の言葉に従い、緋真とセイランはバルドレッドの傍から飛び離れる。

 それと入れ替わるように、盾を構えたパルジファルが前に出た。

 アリスはまだ霧の中に潜んでいるようだが、彼女はそれほどダメージを受けた様子も無いし、問題は無いだろう。



「《練闘気》、《ハイブースト:VIT》、《戦意高揚》――《プロヴォック》!」

「新手か……!」



 どうやら、バルドレッドはすぐにパルジファルの方に標的を移したようだ。

 ルミナはパルジファルの後方に配置させ、魔法の準備。後は――



「お前ら、大丈夫か?」

「はい……いえ、正直大丈夫とは言えないですね」

「クエェ……」



 先ほどまで交戦していた二人のことだ。

 ある程度善戦してはいたのだが、二人は決して無事とは言えない状況である。

 何故なら、二人の体にはバルドレッドの纏っていた黒いオーラと同じものが纏わりついていたからだ。



「特殊状態異常……『呪い』、らしいです」

「俺もセイランのステータスで確認できているが……ランダムでステータスを下げる状態異常か。しかも蓄積するようだな」



 緋真にかかっている状態異常は『呪い1』だが、セイランのは『呪い3』だ。

 纏わりついている黒いオーラも、セイランの方が多い状況である。

 減少幅も、やはりセイランの方が大きい状況であるようだ。



「どのタイミングで状態異常を受けた?」

「衝撃波みたいな攻撃です。あれを対処し損ねると受けてしまうんだと思います」

「厄介だな……さらに蓄積するとどうなるか分からんしな。お前たち、そこを動くなよ」



 だが、元となっているものがあの黒いオーラであるならば、対処できる可能性はある。

 二人にはその場に立ったままでいるよう命じ、俺は二人を掠めるようにして餓狼丸を一閃した。



「《蒐魂剣》」



 元が魔法による現象であるならば、これで斬れるのではないかと考えたのだが――どうやら、効果はあったようだ。

 二人の体に纏わりついていたオーラが消え、ステータスからも『呪い』の文字が消え去る。

 ダメ元のつもりではあったが、どうやらこれで対処はできるようだ。

 よく考えたら、解除できない蓄積型の状態異常など、厄介どころの話ではない。解除手段が用意されているのは当然と言えば当然だ。

 俺が納得して頷いている一方、黒いオーラが消えたことを確かめた緋真は、軽く嘆息して俺に半眼を向けてきた。



「助かりましたけど……一言言ってからやって下さいよ」

「言っただろうが」

「タイムラグ無さすぎですから! ……それで、どう攻めます?」

「ルミナが大技を当てる。その直後に致命傷を負わせる。それまで、奴を釘付けにしろ」

「了解です。今度は同じ轍は踏みませんから」



 どうやら、緋真も状態異常を喰らったことを腹に据えかねていたようだ。

 小さく笑い、バルドレッドへと向けて駆ける。

 奴はその大剣でパルジファルへと攻撃を繰り出しているが、彼女はタワーシールドを巧みに操りその攻撃を凌いでいるようだ。

 あの大楯をただ防ぐだけでなく、受け流す形で使えるのは流石と言うべきか。

 見た所、『呪い』を喰らった様子はない。俺も《蒐魂剣》で斬っているが、きちんと防げれば『呪い』を受けることはないのだろうか。



「ケエエエエッ!」



 跳躍したセイランが、雷を纏う暴風を撃ち放つ。

 その勢いに押され、バルドレッドは若干ながら仰け反るように後退した。

 俺と緋真はその瞬間に両側から距離を詰め、挟み込むように一閃を狙う。

 バルドレッドは俺たちの攻撃に即座に反応、緋真の攻撃を防ぎ、俺の攻撃は鎧で受け止めた。

 どうやら、魔法効果の付与されている緋真の攻撃の方が痛いということらしい。

 尤も――それはそれで好都合であるのだが



「おいおい、無視してくれるなよ」



 打法――侵震。


 添えた掌より、衝撃を鎧越しに叩き付ける。

 バルドレッドの防御力では大した痛手にはならないだろうが、ほんの僅かであれ隙ができれば十分だ。

 その隙を待っていたと言わんばかりに、霧の中から姿を現したアリスが再び刃を突き立てる。

 その位置は先ほど突き刺した場所と同じ、《傷穿》の効果が及んでいる場所だ。



「小癪な小娘がッ!」

「っ、あぶな!」



 刃を抜いたアリスへと向けて、バルドレッドが振り向き様の一閃を放つ。

 しかし、アリスはすぐさま体を屈めて回避し、転がるように後ろに下がって俺の傍まで後退してきた。

 どうやら、流石に肝を冷やしたようだ。バルドレッドは先ほどから隠れて攻撃を繰り返していたアリスに腹を立てているようだ。

 が――その剣がアリスへと追撃を仕掛ける前に、パルジファルのインターセプトが入る。



「貴様の相手は私だ、《シールドチャージ》ッ!」

「ぬぅ……ッ!」



 巨大なタワーシールドを構えたまま高速で移動する姿は、まるで壁が迫ってくるかのようだ。

 セイランの突撃ほどの衝撃は無いだろうが、それでも注意を向けていない所に突進を受ければ体勢を崩さざるを得なかったのだろう。

 背中に体当たりを受けたバルドレッドは、前につんのめるように動きを止める。

 その瞬間に、俺はバルドレッドへと肉薄した。



「『生奪』」



 斬法――剛の型、穿牙。


 体勢を崩したバルドレッドの背中、アリスが鎧に付けた傷へと向けて刃を突き入れる。

 鋭い刺突の一撃は、正確にバルドレッドの傷を抉り――確実に臓腑を貫いた感触を返しながら、それでもバルドレッドのHPは殆ど減らない。

 この悪魔は、一体どんな体の構造をしているのか。

 即座に刃を引き抜いて後退、蹴りを入れてパルジファルの方へと押し出しながら距離を取った。



「アリス、他は刺したか?」

「ええ、でも結果は同じ。急所を抉ってもダメージは殆ど無いわ」

「刃は通るのにダメージは通らない……《死点撃ち》の効果も乗っていないか」

「何か仕組みがありそうだけど……まあいいわ、チャンスまでまた潜伏する」



 そう呟き、アリスは後方へと跳躍、再び霧の中へと姿を消した。

 スキルを使っているのもあるが、相変わらず見事な隠形だ。

 しかし、急所への攻撃が効かないとなると、やはり一撃で殺す以外の手が取り辛い。

 この悪魔、本当にどんな性質をしているのか――



「まあいい、やりようはある」



 パルジファルがバルドレッドの攻撃を受け止め、その瞬間に押し返す。

 その衝撃によってたたらを踏んだバルドレッドへ襲い掛かったのは、炎を纏う刃を振るう緋真だ。



「【紅桜】!」



 振るった刃より舞い散った火の粉がバルドレッドへと命中し、連鎖する爆発を巻き起こす。

 その炎と煙に紛れるように前進した俺に、バルドレッドは迎撃の刃を振るう。

 視界が塞がれていても正確な剣閃は、しかしこちらが狙った通りのものだ。


 斬法――柔の型、流水・流転。


 バルドレッドの剣閃を受け流しつつ絡め取り、その勢いを利用して僅かに相手の重心を崩す。

 その瞬間にバルドレッドへと肉薄した俺は、懐に潜り込みつつ肩を押し当てた。


 打法――破山。


 全力の衝撃を、今度は相手を突き抜けるように叩き付ける。

 その一撃によって、バルドレッドは後ろに仰け反るようにバランスを崩す。

 刹那、俺の横を掠めるようにパルジファルが突撃した。



「《シールドチャージ》!」

「ぬおっ!?」



 パルジファルの体当たりによって、バルドレッドは仰向けに転倒する。

 その瞬間、魔法陣を溜め続けていたルミナが、ついにその魔法を解放した。



「光よ、柱となれ!」

「ぐ、がああああああああああッ!?」



 複数の魔法陣が重なり、眩い輝きとなって、光の柱が立ち上る。

 その中心に叩き込まれたバルドレッドは、悲鳴を上げながら身を捩り、範囲内から出ようとした。

 だが、黒いオーラが消え去り、そして冷静な判断力を失った今この瞬間こそが、千載一遇のチャンスだ。



「《蒐魂剣》――【因果応報】!」



 光の中から抜け出そうとしたバルドレッドへ、その光ごと刃を振るう。

 ルミナの魔法を吸収した餓狼丸は光り輝き――


 斬法――剛の型、輪旋。


 ――その一閃を以て、バルドレッドの首を断ち斬った。



「――――っ!?」



 一撃で首を斬り落とせたことに、何よりも己自身が驚愕し――同時に、手応えの異様さに疑問を覚える。

 今のは、決して肉を斬り、骨を断った感触ではなかった。

 もっと軽い、まるで最初から切れ目が入っていたかのような――



「ッ!?」



 斬法――柔の型、流水。


 ――刹那、背中から襲い掛かってきた一閃を、俺は咄嗟に翻した刃で迎撃した。

 完全には受け流し切れず、その勢いに押されて地を滑るように後退する。

 その勢いに乗って後方へと跳躍し、改めて今の攻撃をしてきた相手へ眼を向けて――絶句した。



「……よもや、我が首を落とす者がいようとはな」

「おいおい……首が無くなったら死んでおけよ」



 そこに立っていたのは、首を失ったバルドレッド。

 この悪魔は、首を失ったまま平然と動き、俺へと攻撃を繰り出してきたのだ。

 断ち斬ったはずの首を片手に、バルドレッドはゆっくりと声を上げる。



「やはり、閣下の警戒する相手……一筋縄ではいかぬか。では我も、全力で相手をするとしよう――《化身解放メタモルフォーゼ》」



 瞬間――視界を塞ぐように、漆黒の瘴気が噴き上がり、バルドレッドの全身を包み込んだ。











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― 新着の感想 ―
[一言] 急所を抉っても効果薄、首は落ちても問題無し、んで騎士道精神持ち。なるほどアレかぁ
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