表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
MG ~Miniature Garden~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

243/987

240:混迷の戦場












 シェーダンの外壁内に侵入し、街の中央付近へと向けて移動を開始する。

 街中からは、既に多数の戦闘音が発生している。

 戦っているのは主に騎兵部隊だろう。馬蹄の音が、まるで地響きのように聞こえてくる。

 その様子を肉眼で確かめてみたいものだが、今はそんなことを言っている場合ではないだろう。



「アリス、先導してくれ」

「了解。霧は出す?」

「いや、今はいい。伯爵級と接敵してからでいいだろう」



 この辺りで霧を出しておくと、騎兵部隊の邪魔になりかねない。

 雑然とした街中では、騎乗状態での戦闘は難しいのだ。

 その上で視界を塞ぐような真似をしては、彼女たちにとって邪魔にしかならないだろう。

 今は敵とぶつかる可能性を考えたとしても、今はアリスの霧は使わないでおいた方が良い。


 俺の言葉に頷いたアリスは、そのまま駆け足で街中へと走っていく。

 騎兵部隊は恐らく、突撃によって門を強制的に突破したのだろう。

 そのままの勢いで街中へと入り込んだ彼らは、勢いを殺さぬまま走り続けているのだろう。

 一度勢いに乗った騎兵を止めることは難しい。尤も、街中で走り続けることもまた難しいのだが――



「彼女、思ったよりやるものね。まさか街中であれだけ走れるだなんて」

「ああ、ベーディンジアの騎兵部隊と同レベル……とまでは言わんが、それに準ずるレベルはありそうだな」



 流石は『キャメロット』の部隊長と言うべきか。

 本能的なものかもしれないが、予想以上に判断能力に長けているようだ。

 まあ、頼りになる仲間がいて良かったと考えておけばいいだろう。



「お父様! 前方に敵です!」

「分かってる。奇襲だ、速攻で片を付ける」



 前方にいるのは五体の悪魔、どうやら話に聞いていた通り、街中では五体一組で活動しているらしい。

 正面からまともにぶつかっても負けはしないだろうが、時間を要してしまうことは間違いない。

 であれば――まずは、相手を混乱させるべきだろう。

 言いつつ、俺は前方の上空へとセイランの従魔結晶を放り投げた。

 悪魔たちの頭上で姿を現したセイランは、すぐさま状況を理解し、嵐を発生させながら落下する。



「ケエエエエッ!」



 頭の上で突然巨体を持つ魔物が現れ、風と雷を纏いながら落下してくる――そんな状況になったら、俺でも瞬時に対応することは難しい。

 当然ながら、デーモンたちもそれは同じであった。

 五体いたデーモンの内の二体がセイランの下敷きとなり、その内の一体は前腕の叩き付けによって頭蓋を砕かれている。もう一体も胸から踏み潰されて動けない状況のようだ。

 そして、残る三体の悪魔たちは風に煽られて体勢を崩し、動きを止めていた。



「『生奪』」



 斬法――剛の型、穿牙。


 そして動きを止めているのならば、その隙を利用しない手はない。

 突き出した刃は脇腹から心臓を抉り、肺を貫く。

 残りの二体は緋真とアリスが片付け、セイランが踏みつけていた一体にはルミナがトドメを刺した。

 こいつらも中々に面倒な相手であるのだが、奇襲してしまえばこの程度だろう。



「先に進むぞ、経路上にいない敵は無視しろ」

「クェ!」



 今まで眠っていたセイランには軽く説明し、すぐさま地を蹴って走り出す。

 騎兵部隊が門を破り、そこから他に部隊が入ってきたためか、悪魔共はどうやらそちらに集中しているようだ。

 おかげでこちらは手薄であるらしく、悪魔の姿は殆ど見かけられない。

 残った悪魔も『キャメロット』の迎撃に向かったようであるし、今のうちに目的地まで辿り着いておくべきだろう。


 大通りに差し掛かり、話に聞いていた教会の姿が目に入る。

 あそこに回復魔法を使える人々が押し込まれているのだろう。

 気になる所ではあるが、今はそこに顔を出している暇はない。

 とりあえず、さっさとパルジファルたちに確保して貰いたい所だが――俺たちはそれよりも、先に進まなければならない。



「……アリス、あそこだな?」

「ええ、あの座席が作られてるスペースの中央ね」



 大通りの先に見えているスペース、そこには円を描くように簡素な座席が設けられている。

 非常に簡単な造りではあるが、まるで闘技場のような様相だ。

 座席が邪魔になって中央付近は見えないが、その先にいくつか動くものの気配が感じられる。

 その先に、悪魔と人々がいるのだろう。



「――手筈は覚えているな?」

「まずは現地人の保護、ですよね。了解です」



 緋真の言葉に、俺は意識を集中させながら頷く。

 保護という面もあるが、何よりも戦いに巻き込まないようにするためだ。

 正直な所、伯爵級との戦闘に巻き込んでしまった場合、守り切れるような自信は無い。

 そのためにも――まずは、相手の気を引かなければ。



「セイラン!」

「ケェッ!」



 号令と共に、セイランは強く地を蹴り突撃する。

 全身に嵐を纏って直進、跳躍しながら振り下ろした剛腕は――簡素な造りであった座席を、一撃の下に打ち砕いた。


 歩法――烈震。


 吹き飛ぶ瓦礫の中へと、一直線に駆け入る。

 それと共に状況を確認。内部にいるのは数体の悪魔、武装した人間、そして――鎧姿の壮年の男。

 その姿を目にした瞬間、俺は直感的に理解した。

 あれこそが伯爵級悪魔、この街を支配した存在、バルドレッドなのだと。



「ぬぅっ!」

「シィィイイ……ッ!」



 俺が発した殺気に、バルドレッドは即座に反応して地面に突き刺していた大剣を振り上げる。

 その切っ先へ、俺はあえて飛び込むようにしながら地を踏みしめた。


 歩法――陽炎。


 急激な減速によって目標を見誤ったバルドレッドの一撃は空を切り、俺の眼前を斬り裂いて振り下ろされる。

 その一撃は地面に衝突する前にピタリと止まり、この悪魔の持つ技量の高さを示して見せた。

 だが、目の前にある以上はそれを無視するつもりも無い。

 俺は振り下ろされた大剣を踏みつけながら跳躍、その首筋へと刃を振り下ろした。


 斬法――柔の型、襲牙。



「ちぃッ!」



 だが、鎧姿の悪魔は瞬時に身を捩り、餓狼丸の切っ先を鎧の肩で受け止めた。

 舌打ちし、しかし追撃には拘泥せず相手の背中へと飛び降り――互いに刃を振るう。


 斬法――柔の型、流水。


 相手が横薙ぎに振るってきた刃を下から掬い上げるようにして受け流し、いったん距離を取る。

 この悪魔の攻撃はかなり重い。今のは横薙ぎであったため何とかなったが、振り下ろしの一撃では受け流し切るのは難しいだろう。

 餓狼丸を正眼に構え、周囲の状況を意識しながら、俺は鎧姿の悪魔を正面から睨みつけた。



「奇襲とはな……この騒ぎもお主の仕業か」

「さてな。伯爵級悪魔バルドレッドと見受けるが、如何に」

「如何にも。伯爵級第二十五位、バルドレッドである」



 全身を鈍色の甲冑に包んだ、壮年の悪魔。

 その身長は俺よりも高く、二メートル以上はあることだろう。

 重厚な甲冑と大剣であるが、しかしその動きは決して鈍くはない。

 剣の振りも速く、以前相対した男爵級悪魔のような見掛け倒しではないだろう。



「そういうお主は……聞いているぞ、魔剣使いよ。ヴェルンリードを討ったのはお主であるな」

「仇討ちとでも言うつもりか?」

「否、あ奴の無力など我が感知するところではない。だが――」



 鎧が重い金属音を立てる。

 ゆっくりと持ち上がった大剣の切っ先は、こちらを叩き潰そうとしているかのようだ。

 そして、兜の奥にある赤い瞳は、強大な殺意に染まりこちらを睨みつけていた。



「お主は、我が主ディーンクラッド様の敵。故にその身、その意志――我が剣で両断してくれる」

「ハッ……抜かせよ、塵風情が」



 成程、悪魔にしては随分と筋の通った人物なのだろう。

 主君に仕え、その剣として戦う――騎士らしいその在り方は、普通であれば好感の持てるものだ。

 だが――目の前のコイツは、既にそのような評価を下す段階ではない。

 例えどれほど高潔な志を持っていたとしても、コイツの所業を認めることなどできはしない。



「人を資源程度にしか思っていない分際で、騎士の真似事か? 笑わせるな。貴様も――そしてディーンクラッドとやらも同じ、獣同然の存在だ」

「……ほざいたな、魔剣使いッ!」

「気に入らないなら黙らせてみせるんだな」



 挑発し、相手の意識をこちらに集める。

 口に出している言葉は紛れもない本音であるが、本来の目的は時間稼ぎだ。

 安全な場所などありはしないが、せめて人々が巻き込まれない距離まで下がって貰いたい所である。

 何しろ、近づかれてしまっている状況では、餓狼丸の力に巻き込んでしまうのだから。


 とりあえず、バルドレッドと相対していた現地人たちは、ある程度距離を離させることには成功した。

 流石に、メンバーを彼らの護衛に残している余裕は無いため、後は隠れていてもらうしかないが。

 ともあれ、状況は完了した。であれば、後は心おきなく殺し合うだけだ。


 バルドレッドは憤怒に身を震わせ、前傾姿勢で構える。

 案の定と言うべきか、妙な所でプライドが高い様子だ。

 奴の意識は既に俺だけに向けられており、先の人々からは完全に注意が外れている。

 さあ――ここからが本番だ。



「不遜なる者よ――砕け散るがいいッ!」

「斬り崩してやろう……貪り喰らえ、『餓狼丸』ッ!」



 剣を振り上げたバルドレッドが石畳を踏み砕きながら突進する。

 対する俺は餓狼丸を構え、その刀身が怨嗟の叫びを発し、黒い闇が溢れ出す。

 その靄を掻き分けるように前へと踏み出して――交錯する刃が、眩い火花を上げたのだった。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギカテクニカ書籍版第13巻、1/19(月)発売です!
書籍情報はTwitter, 活動報告にて公開中です!
表紙絵


ご購入はAmazonから!


  https://x.com/AllenSeaze
書籍化情報や連載情報等呟いています。
宜しければフォローをお願いいたします。


― 新着の感想 ―
この主人公は妙な人間至上主義なとこあるよね 自分も悪魔と同じで人以外を素材とか経験値としか見てないのに
[一言] おや?みんな見て見て!餌が自分から名乗りを上げてるYO!おいしそうだねぇwwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ