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239:騎兵部隊











 『キャメロット』の部隊は、一部隊でおおよそ五十名が在籍している。

 だが、それは第二陣や一線級ではないプレイヤーも含まれているため、最前線で戦える最精鋭は精々二十名程度だろう。

 つまるところ、彼らはそれぞれが三パーティ程度でここまで来ているわけだが……それも三部隊いると中々壮観だ。

 彼ら三部隊、それに加えて俺たちは、シェーダンの街へと向けて騎獣で移動を開始していた。



「ねえねえ師匠さんさ、その子どうやって進化したの?」

「……お前さん、本当に遠慮が無いな」

「えー? だって、聞くだけならタダじゃん。それで教えて貰えたら儲けものだし」



 そんな中、俺の隣を並走しているのはラミティーズだ。

 スキルによるものか、或いは自前の馬術か――彼女がグリフォンを乗りこなす姿は中々様になっている。

 中々に調子がいい人物ではあるが、実力は確かなようだ。

 しかし、あっけらかんとしているというか、この遠慮のなさで嫌味を感じないのは一つの特技と言えるかもしれない。



「……まあ、構わんがな。ストームグリフォンへの進化だろう?」

「そうそう! その子、特別な進化でしょ? 巫女様が言ってたし!」



 どうやら、グリフォンの進化についてベーディンジアにいる従魔の巫女に話を聞いていたらしい。

 まあ、あの巫女は嵐王ワイルドハントのことも知っていた訳だし、その下位種であるストームグリフォンを知っていたとしても不思議ではないか。

 であればその進化方法も知っていそうなものだが――いや、そうか。



「……コイツの、セイランの場合は、嵐王系統のアイテムを与えたことで称号を得て進化先が増えたな」

「嵐王系統? って言うと、『嵐王の風切羽』とか?」

「知っていたか。アルファシアの国境を超える時のグリフォンから手に入れたのか?」

「そうそう、あのグリフォンが低確率で落とすんだけど、いまいち使い道が分からないアイテムだったね」



 まあ確かに、俺自身使い道が分からず、ずっと死蔵していたわけだが。

 とは言え、使ったアイテムはそれだけではない。というより、むしろあちらの方が重要そうだ。



「それに加えて、俺は『嵐王の宝玉』というアイテムも使った」

「何それ? 聞いたことないけど?」

「ベーディンジアの王女から譲り受けたアイテムだ。救出してくれた礼だとな」

「えー……『キャメロット』だって救出したじゃんかー」

「それはそうだが、お前さんはいなかっただろう」



 別の所で活動していたのかもしれないが、少なくとも王女の救出にはいなかった。

 その状況であの報酬を手に入れるのは流石に無理だろう。

 何しろ、あの嵐王の宝玉は、死したグリフォンの心臓だ。

 今その力はセイランに引き継がれているし、テイムモンスターであるセイランには死が存在しない。

 仮に取れたとしても取らせるつもりは無いが、今『嵐王の宝玉』を手に入れる手段はないと考えた方が良いだろう。



「とにかく、その二つのアイテムを与えたら称号を得て、進化先が増えたわけだ」

「うぅー、そのアイテムめっちゃ欲しいんだけど!」

「ストームグリフォンへの進化か……セイラン、『嵐王の宝玉』無しで称号を得る手段は無いのか?」

「クェ」



 称号を得る方法を知っていたセイランならば何か分かるのではないか、と半ばダメ元で問いかけてみたのだが、セイランはあっさりと頷いて見せた。

 【アニマルエンパシー】を通して伝わってきたのは、大量の羽根のイメージだ。

 これはつまり――



「……羽根を大量に使えば、宝玉と同じ効果があるのか?」

「クェ!」

「え、マジで? ホント? ならマスターからめっちゃ貰うわ!」



 まあ、『キャメロット』ならばあの羽根も余らせている可能性があるし、それで何とかできないことも無いか。

 俺のパターンは特殊であるようだし、その辺を検証する上では有用かもしれない。

 とりあえず、その辺りは『キャメロット』に任せておけばいいだろう。



「……というかお前さん、テイマーだったんだな」

「そうそう、この子はただの騎獣じゃなくて、テイムモンスターだよ。まあ、騎乗のための《テイム》だから他のテイムモンスターは持ってないけど」



 テイマーにはシェパードのように大量のテイムモンスターを従えている者もいれば、俺やラミティーズのように必要最低限しか連れていない者もいる。

 まあ、俺は別段こだわりがあってこうしているわけではないのだが……まあ、パーティ枠のこともあるし、もう一体ぐらいは《テイム》を使用してもいいんだがな。



「ま、ストームグリフォンはこの通り優秀だ。頼れる相棒になるのは保証しよう」

「うんうん、ありがとう! マスターに相談してみるわ!」



 お調子者ではあるが、思い切りが必要である騎乗戦闘においてはある意味適性の高い性格なのか。

 楽しそうに笑っているラミティーズからは、戦いを前にした緊張という物は感じられない。

 精神的な面は問題ないが、戦闘に於いては果たしてどれほど実力を有しているのか。

 まあ生憎と、俺はその活躍を見ることはできないのだが。



「それで、作戦は理解しているな?」

「勿論! あたしたちが突破して、パルっちが制圧と保護、トリは全体のサポート! そして師匠さんたちは、その間に別口から侵入するんでしょ?」

「そういうことだな。派手に目を引き付けてくれることを期待してるぞ」

「りょーかい! 派手なのは得意だからね!」



 アルトリウスがいないため、生憎と綿密な計画などはない。

 『キャメロット』の面々には派手に暴れて貰い、その間に俺たちで伯爵級悪魔バルドレッドを討つ計画だ。

 まあ、計画と言うより単なる力押しなのだが。とはいえ、この騎兵部隊の突破力があれば決して不可能ではないだろう。



「しかし、いいのか? お前さんらだって伯爵級を討ちたいだろうに」

「それを今聞く? そりゃまあ、チャンスがあれば狙ってくけどさ……流石に、二枚看板抜きで勝てるとは思ってないよ」



 二枚看板、というとディーンとデューラックのことだろう。

 確かに、あいつらは『キャメロット』の部隊長の中でも別格だ。

 あの二人およびその部隊がいれば十分に戦えるだろうが、今の状況では難しいというのは否定できないだろう。



「ま、機会があったらサポートするよ。倒せないようならあたしたちが取っちゃうから」

「それは楽しみだ――と、俺たちはそろそろ離脱する。後は任せるぞ」

「りょーかい! それじゃ、また後で!」



 手を振るラミティーズに軽く返し、その隊列から離れていく。

 緋真やルミナたちを引き連れ、目指す先はシェーダンの壁外区画。

 あの時、あの小僧と交わした約束を果たしに行くとしよう。











 * * * * *











 壁外区画に到着し、騎獣から降りる。

 雑然とした街中ではセイランを連れて行くことはできないため、一度従魔結晶へと戻してから街の奥へと足を踏み入れた。

 移動する先は以前あの坊主と話をした場所――壁内への通路があるあの場所だ。



「……戦闘の音、聞こえてきますね」

「ああ、どうやらあいつらはもう始めているようだな」



 重装のメンバーを連れているとはいえ、流石に寄り道をしている俺たちよりは先に到着したか。

 さて、となればこちらもあまり悠長にはしていられない。

 さっさと街中に侵入し、この街を支配している悪魔を探さなければ。尤も、バルドレッドがどこにいるのかは分かり切っているのだが。

 とにかく、俺たちの仕事はここからが本番だ。だがその前に、まずは入口の前で待っていた坊主に一言話をしておくべきだろう。



「坊主、約束通りやってきたぞ」

「……ホントに、来たのか」

「当たり前だ。それが仕事だからな」



 半信半疑で、それでも期待していたのだろう。ユウは俺のことを見上げながら、何かを堪えるように口を噤む。

 そして……一も二も無く、少年は頭を下げた。



「姉ちゃんのこと、お願いします」

「ああ、任せておけ」



 そんな少年の頭を軽く撫で、俺たちは通用口の中へと足を踏み入れる。

 ここを抜けた先はすぐに戦場となるだろう。



「アリス、出た先は案内を頼む」

「分かってるわ。けど、どう移動するの?」

「最短でいい。邪魔な悪魔がいれば片付けながら進めばいいだけの話だ」



 ここの悪魔はそこそこに強いというし、あまり余計な時間をかけている暇はないが、ここは効率的に行かなくては。

 目的地は、悪魔たちが人間を育てていた闘技場のような場所。

 バルドレッドが人間と戦う場所は、そこである可能性が高い。

 まあ、話を聞くに逃げ隠れするタイプではなさそうだし、堂々と出て行ってやれば戦うことになるだろう。

 さて――通路の出口も見えてきた。ここで確認しておくこととしよう。



「突入だ、準備はいいか?」

「はい。まあ、成長武器の新しいスキルは確認したかったですけど」

「ああ、緋真さんのは毎回出るんだったわね。こっちは新しいの無かったけど」



 二人の武器については、俺と同じく★4まで成長させることができた。

 特に、毎回新たなスキルが発生する緋真の紅蓮舞姫はかなりの強化となっただろう。



■《武器:刀》紅蓮舞姫 ★4

 攻撃力:41

 重量:16

 耐久度:-

 付与効果:成長 限定解放

 製作者:-


■限定解放

⇒Lv.1:緋炎散華(消費経験値10%)

 攻撃力を上昇させ、攻撃のダメージ属性を炎・魔法属性に変更する。

 また、発動中に限り、専用のスキルの発動を可能にする。

 専用スキルは武器を特定の姿勢で構えている状態でのみ使用可能。

 →Lv.1:緋牡丹ひぼたん

  上段の構えの時のみ使用可能。

  斬りつけた相手に周囲から炎が集まり、爆発を起こす。

 →Lv.2:紅桜べにざくら

  脇構えの時のみ使用可能。

  横薙ぎの一閃と共に飛び散った火の粉が広範囲に爆発を起こす。

 →Lv.3:灼楠花しゃくなげ

  霞の構えの時のみ使用可能。

  突き刺した相手に特殊状態異常『熱毒』を付与する。

 →LV.4:灼薬しゃくやく

  正眼の構えの時のみ使用可能。

  全身に炎を纏い、ステータスを向上させる。



■《武器:短剣》ネメの闇刃 ★4

 攻撃力:37

 重量:13

 耐久度:-

 付与効果:成長 限定解放

 製作者:-


■限定解放

⇒Lv.1:暗夜の殺刃(消費経験値10%)

 発動中は影を纏った状態となり、敵から認識されづらくなる。

 また、発動中に限り、認識されていない相手に対する攻撃力を大きく上昇させる。

 更に、4秒に一度、1秒前にいた場所に幻影を発生させる。

⇒Lv.3:夜霧の舞踏(消費経験値5%)

 《暗夜の殺刃》の発動中のみ使用可能。

 周囲に霧を発生させ、敵からの発見率を大幅に下げる。



 紅蓮舞姫に発現した新たなスキルはステータスの向上。

 これならば、攻撃に使用しない分あまり習熟は必要ないだろう。

 このタイミングで取得するスキルとしては、都合が良かったと考えておくべきか。



「そのスキルなら、多少調整すれば問題は無いだろう。だが、使う時は気を付けろよ」

「勿論です。上手く使ってみせますよ」

「期待しているぞ。さて――行くとするか」



 通路から一歩足を踏み出せば、そこは戦場だ。

 さあ、舐めた真似をしてくれた悪魔に、刃を突き立ててやるとしよう。











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