231:地竜
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竜、ドラゴンという言葉を聞いて、最初に思い浮かべるのはヴェルンリードの真の姿だ。
奴はバジリスクとかいう種類であったらしいが、姿かたちは間違いなくドラゴンであった。
目の前にいるアースドラゴンは、ヴェルンリードよりは二回り程度小さい体躯をしている。
更に背中には翼が無く、空を飛ぶ能力は有していないことは明らかだ。
《識別》の結果には亜竜と記載されていたが、純粋なドラゴンではないということだろうか。
まあ、どちらにせよ――
「厄介な相手には変わりない、か!」
「ガアアアアアアッ!」
鋭い牙を剥き、こちらへと突進してくるアースドラゴン。
ヴェルンリードほどではないとはいえ、この巨体の突進は受け切れるわけがない。
素直に横に跳躍して回避すれば、目標を失ったアースドラゴンは地面を削りながら俺の横を通り過ぎて行った。
そんな地竜へと、進化したばかりのセイランが突撃する。
「ケエエエエエエエエエッ!」
鋭い叫び声と共に、セイランの周囲を風の渦が覆い始める。
若干薄暗いそれは、嵐の日の空の色にも似ていた。
黒雲の合間からは紫電の瞬きが零れ始め、内側にいるセイランの姿を妖しく照らし出す。
だが、激しく周囲の雑草を揺らしている様子の暴風は、しかし俺に対しては全く影響を及ぼしていなかった。
どうやら、今のセイランの風は、効果のある対象を選ぶことができるようだ。
嵐を纏うセイランは、その腕に雷光瞬く黒雲を纏わりつかせ、鋭い爪を鉄槌のように振り下ろした。
瞬間――ガァンという鈍い音と共に地竜の体が曲がり、大地に深い溝を作りながら横へと弾き飛ばされる。
「クケェエッ!」
次いで、鋭い鳴き声。
それが響き渡った瞬間、眩い雷がアースドラゴンへと向けて降り注いだ。
セイランの放った魔法の直撃を受け――しかし、ドラゴンの巨体は健在だ。
どうやら、雷の魔法についてはあまり効果を発揮していないらしい。
とはいえ、脇腹の鱗が砕けて血が流れている辺り、打撃については十分すぎる効果を発揮していたようであるが。
傷を負ったアースドラゴンはどうやら怒り心頭の様子であり、手足を広げて踏ん張るような姿勢を取り――
「グルァアアアアアアッ!」
強大な魔力を纏いながら、鋭い咆哮を上げた。
瞬間、地面からは鋭いスパイクが次々と突き出し、こちらへと一直線に向かってきた。
どうやら魔法による効果のようだが、これはどう斬ったら破壊できるのやら。
「『生魔』」
左側へと回避しながら、横薙ぎに刃を振るう。
下から掬い上げるような一閃は、突き出そうとしていた石のスパイクを豆腐のように斬り裂いて霧散させる。
どうやら普通に斬ればいいようだが、地面から突き上げてくるものは中々斬り辛い。
これは変に狙わず、素直に回避した方が楽だろう。幸い、直線にしか向かってこないわけだしな。
「お父様!」
どうやら、離れた場所にいた緋真たちもこちらに近づいてきたようだ。
一番最初に到着したのは、空を駆けて接近してきたルミナだ。
上空から光の槍を放ったルミナは、そのまま打ち降ろすように光の尾を引く刃を振り下ろす。
その一撃はアースドラゴンの鱗を貫くことは無かったが、魔法によるダメージは確かにアースドラゴンに届いているようだ。
どうやら、かなり頑丈な鱗を持っているらしい。セイランの一撃を受けてあの程度のダメージであることからもそれは理解できる。
ならば――
歩法――縮地。
アースドラゴンが意識をルミナへと向けた瞬間、そのトカゲの巨体へと肉薄する。
狙うはセイランの一撃が当たった場所、その鱗の亀裂へと向けて刃を突き出す。
まだその下の肉を穿てるレベルの隙間ではないが、やりようはある。
「よっと」
「グ、ギィイイイッ!?」
鱗の亀裂に突き刺さった刃を、押し込み抉るようにしながら捻る。
瞬間、陶器が割れるような音と共に、ドラゴンの鱗の一枚が剥がれ落ちた。
これでダメージを与えやすい弱点ができたが、どうやら鱗を剥がすのには随分な痛みが伴ったらしい。
身を捩って暴れ出したアースドラゴンに、不用意な追撃はせず後方へと跳躍する。
そして、それと入れ替わるように前に出たのはセイランだ。
純粋なパワーに優れるセイランは、その強靭な膂力をもってアースドラゴンを抑え込みにかかる。
だが、流石に体格で言えば相手の方が上。たとえ高いステータスを持っていたとしても、容易く抑え込めるものではないようだ。
(いや……体格差があるとはいえ、このレベル差でセイランと拮抗するのか?)
相手のステータスを覗き見ることはできないため、流石にどのような数値関係なのかは分からないが、どうも基礎的なステータス値が高いように思える。
STRが特別高いのか、或いはドラゴンという種族そのものが特殊なのか。
どちらなのかは分からないが、このトカゲが強敵であることは間違いない。
セイランでさえ抑え込むことが難しいのだ。ならば、バランスを崩している今のうちにダメージを与えておくべきである。
――その考えは、どうやら他の二人も同じであったようだ。
「ついに野良のドラゴンなんて出てくるとはね……モグラから派生したギャグかしら?」
言いながら、アリスがドラゴンの背中に刃を突き立てる。
防御無視の攻撃を持つアリスは鱗を貫いてダメージを与えられるが、流石にこの巨体では内臓にまで刃を届かせることはできないようだ。
だが、すぐさま刃を抜き取ったアリスは、アースドラゴンの巨体を蹴って跳び離れ――入れ替わるように、炎を纏う紅蓮舞姫を構えた緋真が飛び込んだ。
流石に成長武器を解放した訳ではないようだが、魔法を伴う緋真の攻撃威力の高さは折り紙付きだ。
「――【炎刃連突】!」
緋真が突き出した刃は、アリスが穿った傷へと吸い込まれ――派手な炎を上げる。
どうやら、《術理装填》で【フレイムピラー】を装填していたようだ。
刺突と共に開放された緋真の魔法は、アースドラゴンの巨体を包み込み、灼熱の炎で焦がしてゆく。
どうやら、魔法についてはそれなりにダメージを与えられるようだが、それでもある程度耐性はあるらしい。
全体的に頑丈な相手、と言った所だが――
「緋真、離れろ!」
「っ!?」
急激な魔力の高まりに、俺は鋭く緋真へと告げる。
緋真も《魔力操作》を持っているため、その感覚を感じ取ることができたのだろう。
俺の声とほぼ同時に、アースドラゴンの巨体を蹴って距離を取っていた。
そして次の瞬間――アースドラゴンの体が、一回り膨れ上がった。
「……何だそりゃ」
「岩の……鎧?」
炎が消え、姿を現したアースドラゴン。
その体は、全身が岩石による装甲で覆われていたのだ。どうやら、体を岩で覆って防御力を高める魔法であるらしい。
元々頑丈であるというのに、更に防御を厚くするとは……まともに相手をしていたら面倒なことこの上ない。
しかも随分と刺々しいデザインであるため、あのまま体当たりされたらかなりのダメージになりそうだ。
「セイラン!」
「クアアアアアアアアアアアッ!」
勇ましく叫び声を上げ、嵐を纏うセイランが突撃する。
対し、アースドラゴンもまた低く唸り声を上げながら、正面から立ち向かってくる。
両者の距離は瞬く間に詰まり――セイランの剛腕とアースドラゴンの突進、それらが正面から激突して大気を揺らすような衝撃が迸る。
地面が爆ぜ割れ、粉塵を撒き散らし――その中へと、俺は躊躇うことなく飛び込んだ。
衝撃によって互いに距離を取ることになったセイランとアースドラゴン。
お互いに体勢が崩れているが、それほど大きなダメージにはなっていないようだ。
「よくやった、セイラン」
激突によってバランスを崩し、動きを止めているアースドラゴン。
今の状態ならば、容易に弱点を狙い打つことができる。
「『生魔』」
斬法――剛の型、穿牙。
アースドラゴンの横っ腹へと肉薄、岩石の鎧に覆われた体の下――鱗の剥がれた一点を狙い、勢いづけた刃の切っ先を突き出す。
例え頑強な鎧であったとしても、それが魔法によって構成されているものであることに変わりはない。
であれば、《蒐魂剣》によって斬り裂けることは道理だ。
威力を強化した《蒐魂剣》による一撃は、岩石の鎧を土塊か何かのように貫き、その下にある竜の肉体を抉る。
「ガ――――ッ!?」
刃を捻り、臓腑を掻き回し、撫でるように斬り裂きながら刃を引き抜く。
それが致命傷となったのか、アースドラゴンは口から大量の血を吐き出し、その場に崩れ落ちた。
『レベルが上がりました。ステータスポイントを割り振ってください』
『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』
『《格闘》のスキルレベルが上昇しました』
『《降霊魔法》のスキルレベルが上昇しました』
『《蒐魂剣》のスキルレベルが上昇しました』
『《生命力操作》のスキルレベルが上昇しました』
『《戦闘技能》のスキルレベルが上昇しました』
どうやら、一体だけではあったものの、そこそこの経験値を有した魔物であるようだ。
レベルが低かったのはやはり種族的なものだったのか……何にせよ、戦う相手としては悪くはない。
まあ、普段地面の下にいるようであるし、狙って戦えるような相手でもないようだが。
「しかし、セイランも随分と強化された。やはり、進化はかなりの強化になるもんだな」
「あのでっかい魔物と正面から押し合うなんて、進化前じゃ無理でしたよね」
「押し負けていた可能性は高いだろうな。嵐属性の具合も見れたし、戦闘面では十分だな」
後は騎獣としてどのような変化が起こっているか、それを確かめる必要があるが……とりあえず、それは追々分かるだろう。
何にせよ、ルミナとセイランはかなり強化された。だが、俺自身の強化が進んでいるかと問われれば、それはまだ頷くことはできないだろう。
少なくとも、今のところ大きな変化は無い。このまま伯爵級悪魔に挑めるかといえば、まだ少々疑問は残るだろう。
ここから強化を続けたとして、次に変化が起こるとすれば……三魔剣のレベル20だろうか。
恐らく、そこで新たなテクニックが追加される。それがどの程度有効なものとなるかは分からないが……手札が増えることには違いない。
「……よし、移動するぞ。まだまだレベルアップせにゃならん」
「はいはい。本当に熱心よね、貴方も」
苦笑するアリスには笑みを返し、俺は進化したセイランの背へと跳び乗る。
さっさと移動し、また羊なりを探さねばなるまい。
確実に悪魔を斬る、そのために手を抜くつもりは無いのだから。
■アバター名:クオン
■性別:男
■種族:人間族
■レベル:54
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:37
VIT:28
INT:37
MND:28
AGI:18
DEX:18
■スキル
ウェポンスキル:《刀術:Lv.25》
《格闘:Lv.14》
マジックスキル:《強化魔法:Lv.38》
《降霊魔法:Lv.11》
セットスキル:《死点撃ち:Lv.37》
《MP自動大回復:Lv.7》
《奪命剣:Lv.18》
《識別:Lv.32》
《練命剣:Lv.18》
《蒐魂剣:Lv.18》
《テイム:Lv.36》
《HP自動大回復:Lv.7》
《生命力操作:Lv.37》
《魔力操作:Lv.36》
《魔技共演:Lv.24》
《インファイト:Lv.28》
《回復適性:Lv.24》
《戦闘技能:Lv.13》
サブスキル:《採掘:Lv.13》
《聖女の祝福》
称号スキル:《剣鬼羅刹》
■現在SP:38
■アバター名:緋真
■性別:女
■種族:人間族
■レベル:53
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:40
VIT:25
INT:34
MND:25
AGI:20
DEX:20
■スキル
ウェポンスキル:《刀術:Lv.24》
《格闘術:Lv.9》
マジックスキル:《火炎魔法:Lv.17》
《強化魔法:Lv.12》
セットスキル:《練闘気:Lv.8》
《スペルエンハンス:Lv.11》
《火属性大強化:Lv.8》
《回復適性:Lv.34》
《識別:Lv.32》
《死点撃ち:Lv.35》
《高位戦闘技能:Lv.7》
《立体走法:Lv.9》
《術理装填:Lv.30》
《MP自動大回復:Lv.1》
《高速詠唱:Lv.28》
《斬魔の剣:Lv.15》
《魔力操作:Lv.15》
《遅延魔法:Lv.13》
サブスキル:《採取:Lv.7》
《採掘:Lv.13》
《聖女の祝福》
称号スキル:《緋の剣姫》
■現在SP:32
■アバター名:アリシェラ
■性別:女
■種族:魔人族
■レベル:53
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:25
VIT:20
INT:25
MND:20
AGI:41
DEX:41
■スキル
ウェポンスキル:《暗剣術:Lv.24》
《弓:Lv.11》
マジックスキル:《暗黒魔法:Lv.11》
《光魔法:Lv.12》
セットスキル:《死点撃ち:Lv.36》
《隠密行動:Lv.10》
《毒耐性:Lv.27》
《アサシネイト:Lv.12》
《回復適性:Lv.32》
《闇属性大強化:Lv.9》
《スティンガー:Lv.12》
《看破:Lv.35》
《ベノムエッジ:Lv.8》
《無音発動:Lv.26》
《曲芸:Lv.10》
《投擲:Lv.29》
《走破:Lv.25》
《傷穿:Lv.12》
サブスキル:《採取:Lv.23》
《調薬:Lv.26》
《偽装:Lv.27》
《聖女の祝福》
称号スキル:なし
■現在SP:40