224:シェーダン貧民街
書籍版マギカテクニカ第1巻、5/23発売です!
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しばし街道を進み、幾度か襲ってきた悪魔を撃退したが、南の時のように人間を引き連れた悪魔と遭遇することは無かった。
そうして見えてきたのは、アイラムと同程度の規模を誇る巨大な都市。
あれこそが、この南西の領地の領都であるシェーダンだろう。
街の規模についてはアイラムとそれほど変わりはないが、ここから見た限りでは外壁が破損しているような様子もない。
だが、あの街にはアイラムとは明らかに異なる点があった。
「あれが貧民街、ですか?」
「そのようだな。また、見るからにごちゃごちゃとした様子だが」
外壁の外、そこに付け足すようにして建てられている、無数の木造の建物。
あれこそが、シェーダンの貧民街。あの街から排斥された者たちが住まう場所。
そんな人々が悪魔の支配から逃れているという事実は、何とも皮肉なものであるが。
「よし、あそこに寄せるぞ。とりあえず、情報収集だ」
「分かってますよ」
騎獣を操り、貧民街の方へと接近する。
それなりの規模を誇る貧民街は、地上からではその全容を把握することはできない。
だが、言ってしまえばスラムのようなものなのだろう。この街の様子は、とてもではないが『裕福』という言葉とはかけ離れたものだ。
ちらほらと見える人々の格好は薄汚れており、あまり活気もない様子である。
いや、活気のなさに関しては、悪魔の影響によるものであるかもしれないが。
さて――どこから手を付けたものかな。
「……とりあえず、様子を見て回るとするか」
「分かりました」
「いいけど、セイランは戻しておいた方が良いんじゃない?」
「確かに、それもそうだな」
この雑然とした街並みではセイランの巨体は邪魔であるし、見た目からして中々の威圧感がある。
セイランを連れたままでは、少々行動しづらいことは事実だろう。
セイランには一言断って従魔結晶に戻って貰い、改めて貧民街へと足を踏み入れた。
酷く雑然とした、あばら家の連なった街並み。現代は勿論、このゲームの中ですらお目にかかったことのないような光景だ。
「何と言うか……ここの領主は、こういう支配方針だということか?」
「税金を納められない連中は壁の内側で暮らす権利はない、ってトコ? 何とも自分勝手な話よね」
「具体的な条件は知らんが……まあ、見ていて気持ちのいいものではないな」
どのような理由でかは知らないが、彼らはこの外壁の外でしか暮らすことができない。
それは即ち、街を覆う結界の守りや、外壁による防御の恩恵を受けられないということだ。
元より街の周辺にはあまり魔物は出現しないが、それでも決して皆無ではない。
その時、彼らは自分で自分の身を守らなければならないのだ。
ロクに事情も知らぬまま同情するなど失礼な話であるが、彼らの住まう環境は決して良くないものであることは事実だろう。
(尤も、今はそれが功を奏しているわけではあるが)
見受けられる人々の数はそれなりに多い。
だが、それはこの街の規模に比して中々に多いようにも思える。
そして同時に――
「聞いていた通り、女子供と老人しかいないな。若い男は皆やられたのか?」
「――違うよ、連れて行かれたんだ」
と――ふと、横合いから声がかかる。
その言葉にそちらへと視線を向けてみれば、そこにいたのは乱雑に置かれた木箱に腰かける少年の姿があった。
年の頃は十代前半ぐらいと言った所か。まだまだ子供と言っていい姿の少年は、生意気そうな表情でこちらのことを見つめていた。
どうやら、この街の住人であるようだが……声を掛けてくるものがいるとは考えていなかった。
だが、ある意味では好都合だ。わざわざ、情報源が向こうから来てくれたのだから。
「連れて行かれた、とはどういうことだ?」
「そのまんまだよ。戦える連中とかは、皆あの壁の向こう側に連れて行かれた。それから、回復魔法を使える人もな」
少年は、忌々しそうにそう付け加える。
どうやら、何かしら事情がある様子だ。こちらに声を掛けてきたのはその事情からか、或いは単なる興味か。
だが何にせよ、彼はある程度の事情には通じている様子である。
その上で、この少年は俺たちに声を掛けてきたのだ。それも――俺たちの素性を察した上で、である。
「なあ、アンタたち、異邦人だろう?」
「その通りだが、それがどうかしたか?」
「他の異邦人たちは皆いなくなった。悪魔に勝てないとか、レベルを上げるとか……アンタたちもその口か?」
「さてな。敵の戦力を確認していない以上、はっきりとしたことは言えんが――壁の向こうにいる悪魔は、一匹残らず殺し尽くすつもりだぞ」
視線を合わせ、逸らすことなく、俺はそう宣言する。
その言葉に、少年は目を見開いて息を飲んだ。
どうやら、軽く零した殺気を敏感に感じ取ったようだ。
だが、それでもなお怯むことなく、少年は若干身を乗り出しながら声を上げた。
「アンタ、情報が欲しいんだろ?」
「ほう? 何が望みだ?」
ストリートチルドレンの扱い方については、ある程度馴染みがある。
金を渡してもいいのだが、どちらかといえば食料を渡した方が良いだろう。
まあ、俺たちが持っている食料は大体保存食しか無いわけだが。
しかし、少年は首を横に振り、声を上げた。
「頼みたいことがあるんだ。その代わり、情報を渡す。それでいいか?」
その言葉に、俺は僅かに視線を細める。
正直、取引としてはあまり旨味のないものだろう。
情報を手に入れる方法は他にもあるし、わざわざ依頼を受けてまで情報を手に入れる理由は無い。
だが――
「……ひとまず、受ける方向で検討したい。案内してくれ」
「……! 分かった、こっちだ」
喜色を浮かべた少年は、手招きしながら街の奥の方へと歩いていく。
俺たちは軽く顔を見合わせてから、その背中を追って街中へと足を進めた。
街の住民からはある程度視線が集まってきているが、こちらへと声を掛けてくるものはいない。
尤も、視線には二つほど種類があるようだが。一つは、こちらを警戒しているもの。そしてもう一つは、助けを求めるように縋っているものだ。
後者の方については、どうにもこの街に馴染んでいないような印象を受ける。
これは――
「……周囲の町や村から集められた人々も、一部はここにいるのか?」
「ああ、そうだよ。悪魔共が連れ去ってきた連中だ。余所者だけど、外に放り出すわけにもいかないだろ」
こういった街の連中は、そこそこ連帯感が強い傾向にある。
外から連れて来られた人々は、異物以外の何物でもないのだろう。
だが、それでも外で野垂れ死ねばいいと考えるほどではないようだが。
周りの様子を見つつも前方へと視線を向ければ、徐々にシェーダンの外壁が近付いてきた。
どうやら、街がある方向に向かって行っているようだ……そろそろ聞いておいた方が良いだろう。
「一応、あらかじめ言っておく。依頼の内容を確かめていない内から受けるつもりは無い。失敗すると分かっているものを受けるわけにはいかんだろう?」
「それは……俺だって分かってるさ」
少年は、くるりとこちらに振り返り、俺のことを見上げてくる。
その瞳の中にあるのは、覚悟と決意の色だ。
目的のためならば最早手段は選ばぬという、身を擲つ覚悟を決めたものに見える決意。
このような幼い少年が、そんな決意を抱かねばならぬことに歯噛みしながら、俺は彼の言葉を待った。
「どうか、俺の姉ちゃんを助け出して欲しいんだ」
『《シェーダン壁外区画の姉弟》のクエストが発生しました』
やはり、これはクエストの一つであるらしい。
それに関してはある程度予想はできていたが、問題は内容だ。
どのようなクエストであるのか、それを確認せねばなるまい。
「……具体的に、どういうことだ?」
「俺の姉ちゃんは、回復魔法が使える。だから、悪魔に壁の内側に連れ去られちまったんだ」
回復魔法という単語に、ピクリと眉を上げる。
確かに、話は聞いていた。街の中で魔物と戦わされ、傷ついた人間が癒されていると。
回復魔法を扱える人間は、その回復役として利用されているのだろうか。
「……聞きたいことはいくつかあるが、その前に条件を確認しておこう。あの街中から連れ出し、お前の所まで連れてくるということでいいか?」
「ああ、その通りだ」
「だがその場合、また悪魔に見つかれば連れ戻されてしまうんじゃないのか?」
「それは……隠れてやり過ごすさ」
どうやら、その辺りは無計画であるようだ。
この辺り、強かなのか考えなしなのか、良く分からない子供だな。
俺は軽く嘆息し、押し黙る少年へと告げた。
「お前の姉は、回復魔法を使えるから連れて行かれた。つまり、利用価値があるから連れ去られたわけだ。であれば、殺される可能性は低いだろう」
「けど……」
「心配なのは分かるが、変に刺激する方が危険という可能性もある。根本的な解決には、この街の悪魔を倒す必要があるわけだが……」
「……そんなこと、できるのかよ」
「やるさ。悪魔を斬るのが俺の仕事だ」
とは言え、伯爵級が暴れるとなるとかなり危険だ。
その時は、周囲に人がいない状況にしておきたいものだが――まだ、情報が足りないな。
「とりあえず、内部の状況だけでも確認したい。こちらに連れて来たってことは、侵入できる場所があるんだな?」
「あ、ああ……こっちに、資材搬入用の入口がある……って言っても、今はもうそうは使われていないけどな。あそこからなら、内部に入れる」
指し示した先にあるのは、両開きの鉄の扉だ。どうやら、鍵はかかっていない様子である。
彼の言う通り、あそこからならば内部に侵入できるだろう。
「成程な。アリス、とりあえず内部の偵察と、この小僧の姉とやらの捜索をお願いしたい。回復魔法を扱える人間なら、一塊にされている可能性が高いだろうさ」
「了解。貴方、それとお姉さんの名前は?」
「お、俺はユウ。姉ちゃんの名前はモニカだけど……」
「分かったわ。じゃ、一時間ほどで戻るから」
そう告げると、アリスはさっさと扉を潜り、街の中へと消えて行った。
少年、ユウは不安そうな表情をしているが、アリスであれば心配は要らないだろう。
それより、アリスが働いている間、俺たちもただ待っているだけでは意味がない。
少しでも、情報は集めなければならないのだ。
「で、だ。小僧、お前、悪魔共の目的は分かるか」
「そんなもん、分かるわけないだろ」
「……まあ、そりゃそうだな。なら、奴らは何故人間を魔物と戦わせているんだ?」
「……噂で聞いた話だけど、強くするためらしい」
「何だと?」
ユウの告げた言葉を反芻し、疑問符を浮かべる。
言葉の通りであれば、悪魔共は人間に魔物を殺させ、レベルを上げさせているということになる。
確かに、人間を強くすることが目的であるのなら、魔物と戦わせることも、傷ついたら癒すことも理解できる。
だが、その根本的な理由が分からない。一体、奴らは何故、人間を強くしようとしているのか。
――その答えを、ユウはゆっくりと口にした。
「週に一度、悪魔共の親玉に挑むんだ。その悪魔に勝てたら、街は解放される……そう言ってたらしい」
成程――反吐が出るような理由だ。
悪魔共の設定した条件を理解し、俺は胸中でそう呟いたのだった。
■アバター名:クオン
■性別:男
■種族:人間族
■レベル:52
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:37
VIT:26
INT:37
MND:26
AGI:18
DEX:18
■スキル
ウェポンスキル:《刀術:Lv.23》
《格闘:Lv.10》
マジックスキル:《強化魔法:Lv.38》
《降霊魔法:Lv.8》
セットスキル:《死点撃ち:Lv.37》
《MP自動大回復:Lv.7》
《奪命剣:Lv.16》
《識別:Lv.31》
《練命剣:Lv.16》
《蒐魂剣:Lv.16》
《テイム:Lv.35》
《HP自動大回復:Lv.6》
《生命力操作:Lv.36》
《魔力操作:Lv.35》
《魔技共演:Lv.23》
《インファイト:Lv.28》
《回復適性:Lv.23》
《戦闘技能:Lv.8》
サブスキル:《採掘:Lv.13》
《聖女の祝福》
称号スキル:《剣鬼羅刹》
■現在SP:34
■アバター名:緋真
■性別:女
■種族:人間族
■レベル:51
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:39
VIT:24
INT:33
MND:24
AGI:20
DEX:20
■スキル
ウェポンスキル:《刀術:Lv.22》
《格闘術:Lv.7》
マジックスキル:《火炎魔法:Lv.15》
《強化魔法:Lv.9》
セットスキル:《練闘気:Lv.6》
《スペルエンハンス:Lv.10》
《火属性大強化:Lv.8》
《回復適性:Lv.33》
《識別:Lv.31》
《死点撃ち:Lv.34》
《高位戦闘技能:Lv.7》
《立体走法:Lv.7》
《術理装填:Lv.28》
《MP自動回復:Lv.27》
《高速詠唱:Lv.27》
《斬魔の剣:Lv.15》
《魔力操作:Lv.11》
《遅延魔法:Lv.9》
サブスキル:《採取:Lv.7》
《採掘:Lv.13》
《聖女の祝福》
称号スキル:《緋の剣姫》
■現在SP:32
■モンスター名:ルミナ
■性別:メス
■種族:ヴァルキリー
■レベル:23
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:38
VIT:22
INT:44
MND:22
AGI:28
DEX:22
■スキル
ウェポンスキル:《刀術》
マジックスキル:《閃光魔法》
スキル:《光属性強化》
《光翼》
《魔法抵抗:大》
《物理抵抗:中》
《MP自動大回復》
《旋風魔法》
《高位魔法陣》
《ブーストアクセル》
《空歩》
《風属性強化》
称号スキル:《精霊王の眷属》
■アバター名:アリシェラ
■性別:女
■種族:魔人族
■レベル:51
■ステータス(残りステータスポイント:0)
STR:25
VIT:20
INT:25
MND:20
AGI:39
DEX:39
■スキル
ウェポンスキル:《暗剣術:Lv.22》
《弓:Lv.8》
マジックスキル:《暗黒魔法:Lv.11》
《光魔法:Lv.8》
セットスキル:《死点撃ち:Lv.36》
《隠密行動:Lv.10》
《毒耐性:Lv.27》
《アサシネイト:Lv.11》
《回復適性:Lv.31》
《闇属性大強化:Lv.7》
《スティンガー:Lv.11》
《看破:Lv.34》
《ベノムエッジ:Lv.5》
《無音発動:Lv.26》
《曲芸:Lv.8》
《投擲:Lv.27》
《走破:Lv.22》
《傷穿:Lv.8》
サブスキル:《採取:Lv.23》
《調薬:Lv.26》
《偽装:Lv.27》
《聖女の祝福》
称号スキル:なし
■現在SP:36





