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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
MG ~Miniature Garden~

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206/955

204:マウンテンゴーレム












 ボスの領域を示す石柱の前まで到達すると、その内側では既に別のパーティのボス戦が繰り広げられていた。

 見た目からして、『キャメロット』の連中ではない。彼らとは別口のパーティだろう。

 どこかのクランに属しているのか、はたまたたまたま組んだパーティなのか――なんにせよ、この辺りまで来られるということは、相応の実力を有している者たちなのだろう。

 尤も、だからと言ってこのボスを倒せるというわけではないのだが。

 何しろ、彼らは今まさに、巨大なボスモンスターに追いつめられている所だ。



「あれがマウンテンゴーレムか……」

「聞いてた通り、大きいですね」



 高さだけで見れば、ヴェルンリードとも遜色ないほどの大きさだ。

 全身が苔むした岩によって構成された、巨大なゴーレム。

 その体は両腕が長く、その手を地について支えるようにしながら行動している。

 俗に言うナックルウォーク、という奴だろうか。Kがゴリラと称していたことも納得できる姿だ。



(成程……確かにこいつは厄介だな)



 マウンテンゴーレムが動き回る姿を見て、俺はそう判断する。

 疑似的な四足歩行であるためか、ゴーレムにしては動きが速い。

 しかもその巨体を有しているが故に、一歩一歩が大きく、多少鈍く見える動きも実際はかなりの速さで動いていることになる。

 全身が岩であるがゆえに重さも十分だ。腕の長さを生かして振り回すだけでも、十分すぎるほどの凶器となり得るだろう。

 マウンテンゴーレムは、素早くプレイヤーたちに突撃すると、その両腕を振り回して暴れ回るといった動きを見せている。

 あの重量を抑え込むことが難しい以上、アレに対処することは困難だ。



「この大きさだと、動きを封じて採掘なんて言ってられないですね」

「そもそも掘れるのかしらね、あれ」

「余計なことを考えている余裕はなさそうだぞ、ありゃ」



 力任せな腕の直撃を受け、大盾を持って防いでいたプレイヤーが吹き飛ばされる。

 彼を生命線としていた以上、そうなれば彼らのパーティは瓦解を免れない。

 あっという間に崩壊していく戦線を眺めつつ、俺はあのデカブツと戦うための算段をつけ始めた。



「弱点らしい弱点も見当たらんか。とりあえず普通に削るしかないだろうが……」

「探せばありそうじゃないですか?」

「分析に時間をかけていたら危険だからな。直撃を受けたら死ぬだろう、あれは」



 どこかしらに核のようなものがあるのかもしれないが、それを確かめている余裕はなさそうだ。

 せめてあのパーティがもう少し粘ってくれれば何かしら情報があったかもしれないが、現状では判断に足る情報は得られていない。

 とりあえず、物理攻撃よりは魔法の方が効いていることは分かるが、後は動きぐらいしか情報は無いといっていいだろう。

 まあ、これでも戦えないというわけではない。ある程度イメージもできたしな。

 そうこうしている内に、戦闘中のパーティは壊滅し、マウンテンゴーレムはゆっくりと地面の中に沈んでゆく。

 流石に、この状況で挑むということはできないようだ。



「よし……とりあえず、片腕を潰してみるとしよう。奴の左腕に攻撃を集中させるぞ」

「了解です。あの姿なら、片腕潰れたら動き鈍りそうですしね」



 奴の機動力は、両腕を地についているからこそ発揮できているものだ。

 片腕でも潰してしまえば、その動きをある程度封じることができるだろう。

 今の所、《降霊魔法》は発動したままだ。MPを封印するデメリットがあるためか、戦闘状態が終わっても発動を続けられるようだ。

 さて、実際にどの程度威力が変わっているのやら。小さく口元を歪めながら、石柱の間を抜けてボスの戦闘エリアへと足を踏み入れる。

 エリアは山の中腹にある広場といった場所だ。戦闘を行うには十分な広さであろう。

 俺たちが広場の中央辺りまで到達した所で、地面が揺れ始める。

 そして、ゆっくりと地面が盛り上がり――先ほどと同じ姿のマウンテンゴーレムが姿を現す。


■マウンテンゴーレム

 種別:物質・魔物

 レベル:50

 状態:アクティブ

 属性:地

 戦闘位置:地上


 レベルだけを見るならば、カイザーレーヴェにも匹敵する能力ということか。

 だが、コイツは仲間を呼び出すような面倒な行動はしてこないだろう。純粋に一体を相手にすればいいだけだ。

 であれば、集中して叩き潰してやるとしよう。



「【マルチエンチャント】【スチールエッジ】【スチールスキン】!」

「焦天に咲け――『紅蓮舞姫』ッ!」



 餓狼丸の刃が輝き、緋真の腕は炎に包まれる。

 それと共に、俺と緋真はマウンテンゴーレムへと向けて駆けだした。

 対するデカブツは、俺たちに対して威嚇するように両腕を振り上げる。

 あの巨大な腕を、ハンマーのように叩き付けるつもりだろう。


 歩法――陽炎。


 俺は陽炎でスピードを変え、緋真は烈震で一気に通り抜ける。

 そしてマウンテンゴーレムの左腕を挟む形で立った俺たちは、挟むように刃を振り抜いた。



「『生奪』!」

「《練闘気》、《スペルエンハンス》――《術理装填》【フレイムピラー】! そして【灼楠花】ッ!」



 斬法――剛の型、輪旋。


 俺の振るった刃はマウンテンゴーレムの左腕を薙ぎ、その表面を軽く削り取る。

 あまり大きな手応えであるとは言えない。どうやら、この程度ではあまり大きなダメージにはならないようだ。

 対し、緋真が繰り出した刺突はマウンテンゴーレムの腕に突き刺さり、その腕を大きく炎上させた。

 突き刺した相手を炎で包む【フレイムピラー】の装填効果は、コイツには中々に効果的であるようだ。



「状態異常を確認。驚いた、ゴーレムにも効くのね、その毒」



 後方でマウンテンゴーレムの状態を観測していたアリスが、驚いた様子で声を上げる。

 どうやら、紅蓮舞姫の特殊攻撃である【灼楠花】が効果を発揮したようだ。

 特殊状態異常の『熱毒』とやらであるが、その効果は今の所良く分かっていない。

 だが、炎を振り払ったマウンテンゴーレムの腕には、木炭が燻るような赤いエフェクトが纏わりついていた。

 どうやら、徐々にではあるがダメージを与えているらしい。



「行動の阻害にはなっていないみたいですけど……効くんなら文句はないですよ!」

「だな。さて――これならどうだ。《練命剣》、【命輝閃】」



 炎を振り払うために腕を上げたマウンテンゴーレムの懐へと飛び込み、その膝へと向けて刃を振り下ろす。

 眩く輝く黄金の一閃は、先ほどよりも大きく岩の表面を削り取った。

 だが、それでも行動不能に陥らせるには足りない。

 やはり、物理攻撃が主体ではあまり大きくはダメージを与えられないか。

 とは言え、確実にダメージを蓄積できていることは事実。全く攻撃が通じていないというわけではないのだ。

 マウンテンゴーレムの背後へと回り込みながら、刃を向けて相手の動きに集中する。



「《スペルエンハンス》――《術理装填》【フレイムストライク】」



 並んだ緋真は改めて刀に魔法を装填する。

 より紅く燃え上がる紅蓮舞姫を横目に、俺は改めて餓狼丸を構え直す。

 今回は餓狼丸を解放するつもりは無い。使えば楽に倒せるだろうが、今回は緋真たちの戦いを見てみたいのだ。

 無論手を抜いて戦うつもりは無いが、餓狼丸の力に頼りすぎることは己の力にはなり得ない。

 特に、吸収の力を当てにして戦うということは避けなければ。


 マウンテンゴーレムは、より大きなダメージを与えた緋真の方に注意を向けている。

 このデカブツは、後方にいる緋真を薙ぎ払うために左腕を大きく振るい――俺たちは、回避のために軽く後方へと跳躍した。

 巨大な岩塊が唸りを上げると同時、脇構えに刃を構えた緋真が、新たなスキルを発動する。



「試してみますか、【紅桜】!」



 横薙ぎに振るわれた刃から、花弁の如き紅の火の粉が飛び散る。

 それと共に振るわれたゴーレムの巨大な腕は、緋真の放った火の粉に触れ、次々と小さな爆発を巻き起こした。

 今の一撃で、どうやら随分とHPを削ることができたようだ。



「射程も持続も短いですけど、多段ヒットすると強いですね」

「どちらかというと牽制だな。これがあると流石に近付きづらいな――ルミナ!」

「はああああああっ!」



 上空に舞い上がっていたルミナが、急降下しながら光の魔法を撃ち込みつつ、ゴーレムの左腕に一閃を加える。

 次いで、ゴーレムの背後に回り込んでいたセイランが、飛来しながらその腕をゴーレムの後頭部へと向けて叩き付けた。

 衝撃と轟音が空気を伝って響き、次いで砕け散ってきた石の破片を刀で弾き返して、思わず苦笑する。

 セイランめ、本当に遠慮がないことだ。無論、ゴーレムに人間的な弱点などありはしないが、今の一撃を受ければバランスを崩さざるを得ないだろう。



「ナイス……【緋牡丹】ッ!」



 そして、バランスを崩したマウンテンゴーレムに対し、緋真は上段から刃を振り下ろす。

 紅の炎が中空に一直線の軌跡を描き、緋真の一閃はマウンテンゴーレムの腕に突き刺さる。

 瞬間、まず噴き上がったのは【フレイムストライク】の炎だ。

 爆発となって顕現した炎は、まるで噴火のようにゴーレムの腕についた亀裂から噴き上がる。

 そしてそれに次いで、周囲に現れた炎がその切り口へと収束し、二度目の爆発を巻き起こした。

 大した熱量ではあるが、その傍にいる緋真は熱さを感じている様子はない。

 魔法を使っている本人には、その効果から逃れる術があるのだろうか。


 緋真の攻撃を受けたマウンテンゴーレムは、その腕に付いた深い亀裂の内側から炎を噴き上げ――その腕を、半ばから切断されることとなった。

 ぐらりとバランスを崩したマウンテンゴーレムはその場で動きを止める。

 しかしその直後、地面が再び盛り上がり始めた。



「チッ……今のうちに畳みかけろ!」

「了解です!」



 どうやら、体の一部を欠損すると、再び地面から土を補充して再生するようだ。

 だが、その再生中は動きが止まる。今ならば安全に殴ることができるだろう。

 さて、ある程度の性質は理解できたが、まだまだ確認できたパターンは少ない。

 注意して戦闘を続行することとしよう。





















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