表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
RC ~Running Cavalry~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

184/987

183:駆ける騎兵たち その4












「――貪り喰らえ、『餓狼丸』」



 目の前にいた悪魔の肩を踏み台にしながら集団の中へと突入し、餓狼丸の力を解放する。

 強化したばかりではあるが、門やここに来るまでの悪魔で解放するために必要な程度の経験値は稼げていた。

 溢れ出した黒いオーラは周囲の悪魔共に絡みつき、その体力をどんどんと吸収し始める。

 現状、《HP自動回復》――否、《HP自動大回復》の効果は、餓狼丸による吸収を上回っている。

 見た目上、俺のHPは全く減っていない状態だ。

 周囲の敵の数は多く、吸収できるHPも多い。これならば、短時間で餓狼丸の攻撃力を上昇させられるだろう。


 上段からの振り下ろしで悪魔の身を袈裟懸けに斬り裂き、返す刃に《練命剣》を発動して薙ぎ払う。

 後ろから付いてきた緋真は、その様にどこか呆れを交えた声を上げた。



「もう餓狼丸を使うんですか? そこまでの強敵はいませんけど」

「ああ、現地人がいる場所では使いづらいからな。できるならば、今のうちに吸収限界まで持って行きたい」



 餓狼丸の体力吸収は、対象を選べない無差別なものだ。

 それこそ、味方どころか使い手である俺にすら牙を剥くのだ、大層な妖刀である。

 だからこそ、現地人がいる場所では流石に使いづらい。彼らにとってHPの価値は、俺たちのものよりも遥かに高いのだ。

 確かに餓狼丸の吸収能力はかなり強力であるが、俺にとってはそれよりも、攻撃力が上昇することの方が重要だ。

 鋭さを増したこの刃であれば、上位の悪魔にすら容易く傷を付けることができる。

 攻撃が通じない相手であろうと吸収ならばダメージを与えられるが、やはり直接斬り合わなければ面白くないのだ。



「画面映り悪いんですよねぇ。先生の近く、靄が濃くなりますし」

「文句を言うな、それよりも戦いの方が重要だ」



 現在、緋真は俺と自分の戦闘を生配信のカメラとやらで撮影している状況だ。

 尤も、そのカメラを手に持っている訳ではない。

 空中で浮遊している緑色の結晶、淡く光を放つそれこそがカメラであるということらしい。

 まあ、戦闘の邪魔にならないのであれば咎めるつもりは無いが……これの向こう側で師範代たちが盛り上がっていると思うと少し微妙な気分だ。

 見せることに否はないのだが、どうにも落ち着かない。



「はぁ……まあ、仕方あるまい」



 それそのものから気配を感じるわけでもなければ、物理的に触れられるわけでもない。

 であれば、存在しないのと同じだ。気にせずに、目の前の敵に集中するとしよう。

 正直な所、悪魔の数は非常に多い。この街に存在する悪魔のうち、半分は外へ、もう半分はこの中心部へ向かったのかと錯覚するほどだ。

 だからこそ、餓狼丸の効果も高い。集う黒いオーラによって、この刃は鋭さを増してゆく。


 歩法――間碧。


 悪魔共の間をすり抜けるように踏み込んで、その前進の勢いのままに刃を振るう。

 己の体重を一閃の勢いに上乗せし、放つのは渾身の横薙ぎ。



「『生奪』」



 斬法――剛の型、扇渉・親骨。


 振り抜いた刃が黒と金の軌跡を残し、五体の悪魔を斬り伏せる。

 それによって切り開かれた道へ、緋真が躊躇うことなく踏み込み、刃を振り下ろした。



「《術理装填》、《スペルエンハンス》【フレイムストライク】!」



 振り下ろしの一閃に反応し、解放された炎が眼前の悪魔共を吹き飛ばす。

 それによってできた空間へと踏み込んでいくのは、風を纏い駆けるセイランと、翼を広げたルミナだ。

 強引に踏み込んで暴れまわるセイランに対し、ルミナは器用に立ち回りながら立ち往生する悪魔を斬り裂いていく。

 アリスに関しては姿が見えないが、どうやら後方で隙を突く機会をうかがっているようだ。

 仲間たちの戦いに笑みを浮かべて前方へと視線を向け――見慣れぬ姿の敵に、思わず眼を細めた。

 姿形はレッサーデーモンに近いが、奴らよりは若干人間に近い姿をしている。

 デーモンキメラのように魔物の要素を兼ね備えている訳でもない、デーモンナイトに近い姿の悪魔だ。

 あれは――


■デーモン

 種別:悪魔

 レベル:40

 状態:アクティブ

 属性:闇・火

 戦闘位置:地上・空中


 どうやら、下級レッサーではない純粋な悪魔のようだ。

 デーモンナイトとの立ち位置の差は良く分からんが、何にせよレッサーデーモンより強力な悪魔であることは間違いあるまい。

 デーモンはこちらへと掌を向け、そこに黒い炎の塊を発生させる。

 それを目視した俺は、体を深く沈み込ませながら地を蹴った。



「《蒐魂剣》」



 歩法――烈震。


 悪魔の手から放たれる黒炎。その火球へと向けて、俺は一直線に突撃する。

 それと共に繰り出すのは、蒼い光を纏って突撃する神速の刺突。


 斬法――剛の型、穿牙。


 俺の放った刺突は飛来した黒炎に直撃し――それを掻き消しながら尚も前へと進む。

 それに対し攻撃を打ち消されたデーモンは、咄嗟に防御魔法を発動して俺の攻撃を受け止めようとする。

 魔法の構築速度は非常に速い。間違いなく、レッサーデーモンとは比べ物にならないレベルだろう。

 だが、魔法である以上は《蒐魂剣》で斬り裂ける。俺の放った一撃は、防御魔法を僅かな抵抗のみで刺し貫き、その奥にいたデーモンの胸へと突き刺さっていた。

 心臓を貫き、だがそれだけでは死んでいない。どうやら、頑丈さもかなり上がっているようだ。



「――死ね」



 故に、相手が抵抗するよりも早く、篭手を峰に添えて刃を押し上げる。

 心臓を貫いた刃にて肺を、動脈を断ち斬り――緑の血が、噴水のように噴き上がる。

 そして血に濡れた刃を羽織の袖で拭い、前方を睥睨して、俺は嗤う。



「新手をこれだけ用意するとは……中々、用意がいいじゃねぇか」



 デーモンたちは、俺たちの前方だけではなく、建物の内部や上でこちらのことを狙いながら待ち構えていた。

 同時、こちらへと降り注ぐいくつもの魔法。《蒐魂剣》では、この全てに対処することは不可能だ。

 だが――全てが俺を狙っているのであれば、回避は難しくない。



「《蒐魂剣》……!」



 前方から迫ってきていた闇の槍を斬り裂き、前へと駆ける。

 俺が居た場所へは次々と魔法が突き刺さり石畳を砕くが、こちらの身を傷つけるには至らない。

 巻き起こった爆発を背に、その圧力すらスピードに変換しながら、前へと駆ける。


 歩法――渡風。


 眼前に割り込んできたレッサーデーモンの顔面に跳び蹴りを浴びせかけ、そのまま足場にして跳躍する。

 立ち並ぶ悪魔共の肩や頭を足場に、その足場を切っ先で撫でて斬り裂きつつも前に進む。

 驚愕した様子の前方のデーモンが再びこちらへと闇の弾丸を放つ。

 魔法陣で増幅された弾丸の数は六つ。《蒐魂剣》で対処するには数が多い。故に――


 打法――槌脚。


 上方へと鉤縄を放ち、ついでに足場にした悪魔を踏み潰しながら跳躍する。

 足元を通り抜けていく魔法の気配を感じ取りながら、デーモンの頭上まで到達する。



「がら空きだ――『生奪』」



 斬法――柔の型、襲牙。


 デーモンの頭上から、一直線に刃を振り下ろす。

 一撃で鎖骨の隙間から心臓と肺を破壊し、そのまま体を押し潰すような形で臓腑を纏めて抉り抜く。

 流石に体内を刃でかき混ぜられれば、この悪魔とて絶命するようだ。

 どの程度で死ぬのかは覚えておく必要があるが――



「――《蒐魂剣》」



 まずは、殺到してきた魔法に対処するとしよう。

 眼前に収束する黒い炎を斬り裂き、範囲魔法の発動を防ぐ。

 同時、体を低く沈み込ませて地を蹴った。


 歩法――烈震。


 遅れて俺のいた場所に突き刺さった風が、炸裂と共に竜巻と化す。

 その影響範囲から辛うじて逃れた俺は、眼前の悪魔を斬り裂きながら建物の上へと鉤縄を伸ばした。

 そして屋上の縁に引っかかった鉤縄を全力で引き、同時に強く地を蹴って跳躍する。

 そのまま建物の外壁を駆け上り屋上へ――



「《蒐魂剣》ッ!」



 直後、襲ってきた黒い氷の槍を斬り裂いて着地、そのまま目の前の悪魔へと向けて駆けだす。

 それに対し、デーモンは右腕を巨大な剣へと変貌させてこちらを迎え撃ってきた。


 斬法――柔の型、流水。


 振り下ろしてきた巨大な刃に、刃を添わせて流し落とす。

 互いの息遣いすら感じ取れるその距離で、俺はそのまま踏み出した足を強く捻るように回転させ、その動きに腰を、そして全身を連動させる。



「『生奪』……ッ!」



 斬法――剛の型、白輝・逆巻。


 本来であれば振り下ろしのみでしか使うことのできない白輝の術理。

 それを強引に振り上げに適応させたその業は、白輝にこそ及ばないが、それでも破壊力は十分すぎるほどに高い。

 刹那の間に振り抜かれたその一閃は、デーモンの体を逆袈裟に断ち斬っていた。

 吹き飛んだ上半身が地上へ落下していくのを見下ろしながら、飛来する魔法を迎撃しようと餓狼丸を構え――こちらへと向いていたデーモンの内の一体が崩れ落ちた。



「アリスめ、働きすぎだ」



 どうやら、アリスは二体程度はデーモンを片付けたらしい。

 俺が視線を集めていたとはいえ、手際がいいことだ。

 他のデーモンについても緋真が周囲のレッサーデーモンごと一体を仕留め、ルミナとセイランは建物の上にいた連中を狙って攻撃を行っている。

 俺の方に注意を向けているデーモンは最早おらず、拍子抜けして嘆息し――改めて、街の中心の方向へと視線を向けた。

 ――そこに現れた、強い殺気を放つ気配へと向けて。



「さてと……多少は骨のある奴が出て来たか」



 こちらへと向かって歩いてくる、一体の悪魔。

 人間に近い姿をしたそいつは、少女に近い見た目の悪魔だった。

 また、同じく人と同じ姿をした悪魔を三体引き連れているが、強い魔力を有しているのは先頭にいる少女の悪魔だ。

 白いローブに近い服を纏うそいつは、俺のことを敵意の篭った視線で見上げていた。

 その視線を真っ向から受け止めて、俺は嗤う。



「さあ、テメェはどう来る? 試させて貰うぞ」



 ヴェルンリードへの前哨戦だ。

 ここまで増してきた力が、果たしてどれほどのものであるか――それを確かめるとしよう。





















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マギカテクニカ書籍版第13巻、1/19(月)発売です!
書籍情報はTwitter, 活動報告にて公開中です!
表紙絵


ご購入はAmazonから!


  https://x.com/AllenSeaze
書籍化情報や連載情報等呟いています。
宜しければフォローをお願いいたします。


― 新着の感想 ―
[一言] 伯爵級を国解放級クエストのボスとすると、都市解放級なら子爵級悪魔がボスになるクラスなのかな? しかし、更に侯爵・公爵クラスの能力が爆上がりしそうだな そこにソロモンの悪魔が名を連ねていたら…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ