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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
RC ~Running Cavalry~

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124:進化と帰還












 セイランの進化条件を満たしたことを確認し、こいつの背から降りる。

 流石に、進化の最中まで乗っている訳にはいかない。



「先生、どうかしたんですか?」

「ああ、セイランが進化できるようになったらしくてな。早速進化させようってわけだ」

「もうですか!? 早かったですね」

「この辺りの敵とは、10ぐらいレベル差があるからな。経験値量は十分だっただろうさ」



 セイランの鞍を取り外しつつ、緋真の言葉にそう返す。

 マイナーグリフォンの進化先はグリフォンだ。その姿は以前見ているし、どの程度の大きさであるかも把握している。

 あの体格は今のセイランよりも一回りほど大きかったし、鞍をそのまま装備していたらどうなるか分からない。

 まあ、自動でサイズが調整されるかもしれないが、そこは念のためだ。

 一応、この鞍は従魔の巫女が選んだものであり、進化した後でも装備できるサイズになっているらしい。

 使用すること自体には全く問題は無いだろう。



「さて、確認するからちょっと待ってろよ、セイラン」

「クェ」



 首肯してくるセイランに笑みを返しつつ、メニューからセイランの進化先情報について確認する。

 そこに表示されたのは、以前のルミナの時のような二種類の情報ではなく、予想した通りの進化先だった。


■グリフォン

 種別:魔物

 属性:風

 戦闘位置:地上・空中


 大空の死神の異名を持つ、気性の荒い強力な魔物。

 身体能力に優れ、地上であろうと空中であろうと高い機動力を発揮する。

 また、風の魔法の扱いにも優れており、手懐けられれば強力な騎獣となる。



「やはり、進化先はグリフォンだけか」

「元がマイナーグリフォンですしね。妖精みたいに色んな種類に進化できる方が珍しいと思いますよ」

「確かに、私たち程多様な種がある存在は珍しいです。妖精や精霊は成長とともに変化する種ですから」

「そういうもんか……まあいい、悩まずに済むしな」



 選択肢が無いならば順当に進化させればいいだけの話だ。

 小さく笑みを浮かべつつ、俺はグリフォンの選択肢を押下した。

 その瞬間、セイランの体はゆっくりと輝き始め、やがてその全体が球状の蒼い光に包まれる。

 眩い輝きの中、シルエットだけが映るセイランの姿は、徐々にその大きさを増していた。

 やがて、ゆっくりと光はセイランのシルエットへと絡まり――



「クェェェエエ――――!」



 ――光の中から、進化を完了させたセイランが姿を現す。

 その姿は、間違いなく以前に戦ったグリフォンと同じ、マイナーグリフォンを一回りたくましくしたような姿の魔物だ。

 バトルホースと比べても少々大きくなった姿ではあるが、【アニマルエンパシー】の効果で伝わってくる感情は進化前と差はない。

 その高揚と恭順の意志に、俺は笑みを浮かべつつ滑らかな首筋を撫でる。



「立派になったもんだな、期待しているぞ」

「クェエ!」



 威勢のいい返答に満足しつつ、俺は再びウィンドウを操作する。

 確認するのは、新たな力を得たであろうセイランのステータスだ。


■モンスター名:セイラン

■性別:オス

■種族:グリフォン

■レベル:1

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:36

VIT:25

INT:26

MND:18

AGI:34

DEX:15

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《風魔法》

スキル:《風属性強化》

 《飛翔》

 《騎乗》

 《物理抵抗:大》

 《痛撃》

 《爪撃》

 《威圧》

 《騎乗者強化》

 《空歩》

 《ターゲットロック》

称号スキル:なし


 ステータスは相変わらず、物理的な部分と素早さが優秀だ。

 同時に、魔法防御と器用度の低さもまた改善されていない――というより、余計に差が開いてきている。

 まあ、ここはセイランにとっては苦手分野ということだろうし、ほどほどにフォローする程度でいいだろう。


 スキルを確認すれば、いくつか見覚えのないスキルが存在していた。

 まず、《飛行》だったスキルが《飛翔》へと変化している。これは、ヴァルキリーに進化する前のルミナが持っていたものと同じスキルだろう。

 恐らくは、単純な飛行能力の向上だと思われる。だが、それはセイランにとって非常に大きな強化となるだろう。

 空中における機動力は、セイランにとっても俺にとっても重視すべき能力だ。

 先ほど空中戦をした時も機動力は課題であったし、この強化は大きいだろう。


 《物理抵抗:大》については、単純に以前の能力の強化になる。

 被弾によって体勢を崩されることは厄介であるし、これがその対策となるなら有用なスキルだろう。


 そして、最後に追加されているのは《爪撃》のスキルだ。

 これはその名の通り、爪で攻撃するスキルだろう。

 先ほどから爪で攻撃するようになっていたし、ひょっとしたらデータの内部ではこのスキルが既に存在していたのかもしれない。

 ともあれ、打撃と斬撃、その両方を扱えるようになったのはプラスだろう。

 単純にダメージを与えるのであれば《痛撃》の方が強力であろうが、血を流させるという意味では《爪撃》の方が便利だ。

 どちらを使った方が良いかは――まあ、状況次第だろう。



「突飛な能力が生えたわけではないが、純粋に強化されているな。これなら、感覚のズレも少ないだろう」

「へぇ……やっぱり、進化ってワクワクしますね。かなり強くなったんじゃないですか?」

「かなりバランスのいい強化だろうな。特に、攻撃力と機動力の強化は大きい」



 後は燃費方面であるが、それについてはポーションを使えばどうとでもなるし、通常の火力が上がったことで魔法に頼らなければならない場面も減る筈だ。

 まあ、次はMP関連のスキルが増えて欲しい所ではあるが、それに関してはしばらく先だろう。

 外していた鞍と手綱を再び装着しながら、俺はセイランへと声を掛ける。



「きつくはないか?」

「クェ」

「そうか。なら、早速確認といくぞ」



 鞍をしっかりと固定し、その背中に跳び乗る。

 やはり一回り大きくなっているだけに、その高さには感覚のズレが生じている。

 とはいえ、そこまで大きいものではないし、気を付けておけば修正は可能だろう。



「よし、戻りながら確認を行う。そろそろアルトリウスたちも第一陣ぐらいは到着してるだろ」

「そんなに時間経ちましたっけ? まあ、あの人たちならイベントがあるとなれば逃しはしないでしょうけど」



 緋真は呆れと感心を交えた表情でそう呟く。

 先ほど連絡した時の反応からして、こちらに来ることは確実だ。

 下手をしたら、隊列を組んで全力でこちらに向かってきていてもおかしくはない。

 グランドクエストの進行状況からしても決して無視できない戦いであろうし、アルトリウスなら何としてでも間に合わせるだろう。



「戻れば確認できるだろうさ。そら、行くぞ」

「了解です」

「分かりました、お父様」

「クェ」



 セイランの声が加わった返答に思わず笑みを零しながら、馬首を南へと向ける。

 世界規模でイベントが進行しているからか、息を吐く暇も無いような密度だ。

 だが――それでこそ、戦場にいる実感が湧くというもの。

 歪む口角を隠しながら、俺はセイランへと合図を送り、牧場への帰還を再開したのだった。











 * * * * *











「……来ているだろうとは予想していたが、まさかここまで本気だとは」

「はははは、グランドクエストに絡むとなると、流石に放置はできませんから」



 フェーア牧場へと帰還した俺が目にしたのは、百人規模で集まっている『キャメロット』のメンバーの姿だった。

 ある程度集まってきているとは思っていたが、既にこれだけの人数を送り込んできているとは。

 呆れを交えた俺の言葉に対し、アルトリウスは苦笑交じりに声を上げる。



「騎獣が欲しいメンバーはかなり多かったもので。この通り、かなり盛況ですよ」

「一応、この牧場はそういう施設のようだが……この数は大丈夫なのか?」

「全てのプレイヤーが利用可能な施設ですから、そこは問題ないと思いますよ。それより、そのグリフォンがクオンさんの騎獣ですか」

「ん、ああ。セイランだ。立派なもんだろう?」

「ええ、本当に。先ほど苦戦した相手とこんな形で再会することになるとは思いませんでしたが」



 どうやら、アルトリウスもあの関所のボス戦には苦戦することになったらしい。

 まあ、無理も無いだろう。対空戦はそう簡単なものではない。

 指揮に優れるアルトリウスと言えど、そう容易く処理できるような相手ではなかったということだ。



「飛行が可能な騎獣は、さすがにまだ手が届きませんね。できれば部隊として配備したいところですが……そんな数を購入したら破産しますね」

「《テイム》や《召喚魔法》を使える奴に任せた方が良いんじゃないのか? 馬の進化でペガサスになるんだろう」

「そうですね……その辺りは当人たちからヒアリングしてみます」



 空戦の部隊というのは中々想像が付きづらいものだが、実際に飛んでみると結構難しいことが分かる。

 不安定な状態で、縦横無尽に飛び回らなければならないのだ。

 安定して飛行するだけならまだしも、戦闘を行うとなると難易度は急上昇する。

 何しろ、足元が全く保証されていないし、いつ落下するかも分からんからな。



「さて……それで、どう立ち回るつもりだ?」

「基本は、彼らの邪魔をせぬように動くつもりですよ」



 言いつつ、アルトリウスが示したのは統一した鎧を纏っている一団だ。

 そのデザインには見覚えがある。間違いなく、このベーディンジアの騎士団のメンバーだろう。

 やはり、この状況に彼らも集まってきたか。



「ベーディンジアの騎士団は、自分たちの戦力も活用して牧場の防衛に当たるつもりのようです。しかし――」

「数が少ないな。今の『キャメロット』の数と大差ないか」

「ですよね。相手の数もそう多くはないようですが、少々厳しいことは事実でしょう。ですから、こちらからも協力は提案しています」

「ふむ……相手の出方次第ってことか?」

「そうなりますね」



 いくら手が足りないと言っても、初対面の俺たちといきなり行動を共にするのは困難だろう。

 彼らの騎兵としての練度は非常に高い。それに合わせるのは、一般のプレイヤーには厳しいだろう。

 とは言え、手数が足りるかどうかは微妙な所であるし、どうなるかは彼ら次第ということだ。

 どちらにせよ、暴れられることに変わりはない。戦いが始まったら、存分に暴れさせてもらうとしよう。



「とりあえず、俺と緋真はしばらくログアウトしておく。戦いが始まる前には再度ログインするが……」

「リアルの時間で言ったら、およそ夜の九時頃なら大丈夫だと思います。その辺りまでには戻ってきてください」

「了解だ。その時間なら問題ない」



 飯と風呂の後は基本的に訓練は無いし、その時間なら問題なくログイン可能だ。

 ゲームの中での戦いはある意味修行のようなものでもあるため、有意義な時間を過ごせるだろう。

 対集団における騎乗戦闘、滅多に出来る経験ではない。楽しませて貰うとしよう。



「それじゃあ、また後でな」

「ええ、お待ちしています」



 アルトリウスの挨拶に頷き、踵を返す。

 再度ログインした時には、とりあえずエレノアの所で注文しておいたアイテムを回収しておくこととしよう。

 野太刀があれば、色々とやり易くなるだろうからな。

 夜に行われるであろう決戦の戦い方を思い描きながら、俺は緋真と連れ立ってログアウトを押下するのだった。






















■モンスター名:セイラン

■性別:オス

■種族:グリフォン

■レベル:1

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:36

VIT:25

INT:26

MND:18

AGI:34

DEX:15

■スキル

ウェポンスキル:なし

マジックスキル:《風魔法》

スキル:《風属性強化》

 《飛翔》

 《騎乗》

 《物理抵抗:大》

 《痛撃》

 《爪撃》

 《威圧》

 《騎乗者強化》

 《空歩》

 《ターゲットロック》

称号スキル:なし

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 馬上や馬首となっていますが セイランはグリフォンなので 「鷲首」や「騎乗中」などにしたほうが よろしいのではないでしょうか? [一言] ルミナと合わせると鉄壁すぎぃ()
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