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Magica Technica ~剣鬼羅刹のVRMMO戦刀録~  作者: Allen
RC ~Running Cavalry~

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115/945

114:空の覇者を落とす












 空を閃く緋真の一閃が、急降下してきたマウンテンイーグルを真っ二つに斬り裂く。

 これで三度目だ、その軌道にもいい加減慣れてきたということだろう。

 こちらは相変わらずやることはないが、戦いの推移は順調だ。

 とはいえ――いい加減、そろそろ飽きてきた所である。《強化魔法》を唱えて待つのもそろそろ終わりにするとしよう。



「残りマウンテンイーグルは二体――そろそろ行くとするか」

「それは良いですけど、どうやってやるつもりなんですか?」

「そりゃ、向こうから来て貰うしかあるまい」



 幾らなんでも、ここから上空を攻撃するのは無理だ。

 先ほどから繰り返している方法では、マウンテンイーグルは仕留められてもグリフォンはどうしようもない。

 ルミナも敵の数が減ってある程度動き易くなっているが、攻撃に回ればグリフォンの攻撃を避け切れる保証はない。

 やはり、奴だけは他のと比べても別格の様子だ。

 ならば――



「ルミナ、敵をこちらに誘き寄せろ!」

「っ、はい――!」



 空中で身を翻したルミナが、グリフォンへと目眩まし目的の閃光を放ちながら、墜落するようにこちらへと急降下する。

 それはまるで、先程のマウンテンイーグルの動きをなぞるように……ルミナは、一直線に落下していた。

 地面へと真っ直ぐに落下するその動きには、抗いがたい恐怖があるだろう。

 しかしそれでも、ルミナは一切躊躇することなく地面へと向かい――地面に衝突するギリギリで、その方向を横へと向けていた。

 俺の傍スレスレを、衝突寸前で回避してゆくルミナ。それを追うグリフォンは――巨体である以上それに対応しきれるものではないと思っていたのだが、奴は器用に体を翻すと、地面を走るようにしながら衝突を回避していた。

 どうやら、思ったよりも身軽であったようだ。だが、その身が地面にまで降りてきたことに変わりはない。



「――《生命の剣》ッ!」



 手に持った小太刀に、黄金の輝きを宿す。

 そしてこちらへと突撃してきたグリフォンを紙一重で回避しながら、俺は手に持った小太刀をグリフォンの翼へと突き刺していた。



「クェエッ!?」



 その痛みからか、グリフォンはバランスを崩して派手に転倒する。

 馬並みの巨体だ、それに巻き込まれるだけでも危険だろう。バランスを崩したグリフォンの体を回避しつつ、俺はその動きを観察していた。

 この巨体が空を飛んでいるというのは、正直詐欺としか思えないが――流石に、その翼で空を飛ぶことは不可能だろう。

 目的はこれで達成した。小さく笑い、俺は餓狼丸を抜き放つ。随分と待たされてしまったが、ここからが本番だ。



「ルミナ、マウンテンイーグルの処理は任せるぞ。それまでは、俺たちで相手をするとしよう」

「気を付けてくださいよ、先生。飛べなくなったとしても、馬並みの大きさのライオンみたいなもんです」

「ついでにやたらと身軽だがな。無論、油断する気はないとも」



 起き上がり、前足で地面を掻くグリフォンの動きに注意しながら、俺は意識を研ぎ澄ませる。

 あの巨体で押し倒されれば一巻の終わりだ。鋭い嘴や爪も十分な凶器であると言えるだろう。

 更に、発達した筋肉から繰り出される一撃は、肉を抉り骨を砕くには十分すぎる破壊力を有している筈だ。

 相手は獣。奴らには遊びは無く、油断も無い。狩るか狩られるか――その世界で生きているのだ。



「ケェッ!」

「――――ッ!」

「速っ!?」



 グリフォンは地を蹴ると同時、その巨体を生かしてこちらへと突進を仕掛けていた。

 そのスピードは凄まじい。一歩目から、奴はトップスピードに準ずるような速さを発揮していたのだ。

 舌打ちしつつ、俺は緋真とは反対方向に、散開するように回避する。

 俺たちの間を駆け抜けたグリフォンは――そのスピードを殺さぬまま、旋回するようにこちらへと向かってくる。



「うへぇ、地面走ってても厄介ですね――《術理装填》、《スペルチャージ》【ファイアボール】」

「全くだな……『生奪』」



 スキルを発動し、グリフォンの接近を待ち構える。

 やはり動物ということなのか、炎を見て警戒したらしく、奴はこちらへと向かってきた。

 とは言え、俺からすれば好都合だ。口元を笑みに歪め、重心を低く落とし――



「ケェッ!」

「シャァッ!」



 飛行ではない跳躍と共に、こちらへと振り下ろされる強靭な前足。

 俺は、その一撃を掻い潜るように奴の懐へと飛び込んでいた。

 命中すれば頭など簡単に砕け散るだろう。この攻撃の直撃を受けるわけにはいかない。

 背中をかすめてゆく剛腕を感じながら、俺は蜻蛉の構えから刃を撃ち込んでいた。



「グァッ!?」



 振り下ろした刃はグリフォンの胴を斬り裂き、赤い血が飛沫を上げる。

 だが、その身は随分と固い。皮こそ斬れたものの、内臓には到底到達しない程度の傷だ。

 やはり、ボスというだけはある、相応に頑丈だ。



(だが、子爵級悪魔フィリムエルほどじゃねぇな!)



 グリフォンの巨体に押し潰されぬように駆け抜け、振り返る。

 その頃には、奴は血を点々と垂らしながらもまるで動きを鈍らせることなく、凄まじい速さで疾走していた。

 厄介な機動力だ。あの重さとスピードはそれだけで凶器となる。

 故に――



「緋真、足だ」

「っ、了解です!」



 通り過ぎたグリフォンの進行方向と交錯するように、緋真は既に烈震で飛び出していた。

 狙うべきは奴の足。空中を駆ける力を削いだならば、次は地を駆ける力を削ぐべきだ。

 どちらも潰してしまえば、攻撃が通じる以上は倒すことは難しくない。

 だが、グリフォンもそう甘い相手ではなく、即座に反応して緋真の突進を回避していた。



「甘い、そこッ!」

「――――ッ!」



 だが、緋真とて相手のスピードは理解している。簡単に捉えられるとは思っていなかったのだろう。

 故に、緋真は刃を振るい――その切っ先から、火球が発射されていた、

 《術理装填》によって刃に込められた【ファイアボール】の力。それは、刃を振るった際に火球が発射されるという効果だった。

 直接斬りつけるのと比べれば威力は随分と下がるのだが、不意を突くには十分な威力を有している。

 事実、火球が直撃したグリフォンは、驚愕と共にその動きを鈍らせていた。


 歩法――烈震。


 それを感知し、俺は地を蹴る力を強める。

 火の粉と煙が舞う中、動きを止めたグリフォンへと刃を突き立てようと突進し――刹那、背筋を這いあがった悪寒に、俺はその場から跳び離れていた。



「ケァアッ!」



 そして次の瞬間、煙が弾け飛ぶように吹き散らされる。

 それと共に発生したのは、俺と緋真へと向けて放たれた風の刃だった。

 緋真はそのまま駆け抜けることによって回避し、俺は体勢を崩しながらも着地する。

 だが、グリフォンの殺気は依然として俺たちの身を貫いていた。



「ッ……《斬魔の剣》!」



 飛来した風の砲弾を《斬魔の剣》で斬り裂き、体勢を立て直す。

 どうやら、グリフォンという魔物は風の魔法をも操れるらしい。

 あの身体能力だけでも厄介だというのに、風の魔法まで使ってきやがるとは。

 しかも――



「移動しながらでも使える、か!」

「ッ……《スペルチャージ》、【フレイムバースト】!」



 地を駆けながら放たれる風の刃。それらを《斬魔の剣》で打ち消しながら、俺は奴を追い縋るように駆ける。

 緋真が奴の進行ルートに合わせるように魔法を発動したおかげで、その動きは若干鈍ったが、やはり人間の足で追いつけるようなものではない。

 つまり、追いかけるのではなく待ち構える形で戦うべきなのだ。

 であれば、方法は一つだ。



「緋真、壁だ!」

「了解です! 先生はそこで!」



 俺の言葉だけでやるべきことを理解したのだろう。緋真は即座に足を止め、魔法の詠唱を開始していた。

 破壊力は必要ない。今はただ、奴の動きを制御できればいいのだ。

 奴は最初、緋真の持つ炎の刃を警戒していた。やはり、炎は奴にとって脅威であると映っているのだろう。

 であれば、奴は態々炎の壁に突っ込むような真似はしない筈だ。



「――【フレイムウォール】!」

「ケェッ!?」



 奴の進行ルートを遮るように、炎の壁が発生する。

 それに驚いたグリフォンは迂回するように進路を変え――その進行ルートを狙って、上空から光の槍が突き刺さっていた。

 どうやら、ルミナは他のマウンテンイーグルたちを片付けたらしい。

 突き刺さった三本の槍を避けるためにグリフォンは再び進路を変え、それに沿うようにして再び炎の壁が発動する。

 緋真とルミナの魔法――その合わせ技は、ついに奴を俺の正面まで導いていた。



「いい仕事だ……《生命の剣》」



 三割のHPを代償として捧げ、黄金に輝く餓狼丸を蜻蛉の構えに。

 俺を正面に捉えたグリフォンは、身に纏う風を撃ち出すように風の刃を放つ。

 数は三つ、全て角度を変えた器用な連撃だ。


 歩法――影踏。


 その全てを捉えながら、俺はあえて前に踏み出していた。

 重心を僅かに傾けながら踏み出すことで、次なる一歩の方向を曲げる歩法。

 それによって刃の内側を掻い潜った俺は、最後の一歩にて奴に接近していた。

 グリフォンは、接近してくる俺に対し、大きく跳躍しながらその剛腕を振り下ろす。


 斬法――剛の型、刹火。


 その一撃に対し、俺は体を斜め前へと傾けるようにしながら刃を放っていた。

 これはカウンターの一撃。相手の突進の勢いと、こちらの突進の勢い、その両方を利用する一閃だ。

 振り下ろされた一撃を紙一重で回避しながら放った一撃は、グリフォンの剛腕を斬り裂き――血飛沫と共に斬断していた。



「ガアアアアアッ!?」

「――《術理装填》、《スペルチャージ》【フレイムランス】」



 そこに、新たに覚えたばかりの魔法を携えた緋真が駆ける。

 烈震と共に突き出されるのは、穿牙による刺突。

 その一撃は、前足を失って地面を転がったグリフォンの腹部へと突き刺さり――その先端より解放された炎が、槍と化してグリフォンの体を貫通していた。

 刃と炎によって体内を蹂躙され、グリフォンは苦悶と共に大きくHPを減らす。

 そして――



「随分と追い回してくれた、お返しです」



 白い輝きが閃いて、光を纏うルミナの刀が、グリフォンの首を斬り裂く。

 一拍遅れて、大量の血が大きく噴き上がり――グリフォンは、その場に横倒しとなって倒れていた。



『レベルが上昇しました。ステータスポイントを割り振ってください』

『《刀術》のスキルレベルが上昇しました』

『《識別》のスキルレベルが上昇しました』

『《生命の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《斬魔の剣》のスキルレベルが上昇しました』

『《テイム》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔力操作》のスキルレベルが上昇しました』

『《魔技共演》のスキルレベルが上昇しました』

『テイムモンスター《ルミナ》のレベルが上昇しました』

『フィールドボスの討伐に成功しました! エリアの通行が可能になります』

『フィールドボス、《グリフォン》が初めて討伐されました。ボーナスドロップが配布されます』






















■アバター名:クオン

■性別:男

■種族:人間族ヒューマン

■レベル:33

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:27

VIT:20

INT:27

MND:20

AGI:15

DEX:15

■スキル

ウェポンスキル:《刀術:Lv.4》

マジックスキル:《強化魔法:Lv.22》

セットスキル:《死点撃ち:Lv.20》

 《MP自動回復:Lv.19》

 《収奪の剣:Lv.19》

 《識別:Lv.20》

 《生命の剣:Lv.23》

 《斬魔の剣:Lv.15》

 《テイム:Lv.18》

 《HP自動回復:Lv.17》

 《生命力操作:Lv.15》

 《魔力操作:Lv.8》

 《魔技共演:Lv.5》

サブスキル:《採掘:Lv.10》

称号スキル:《剣鬼羅刹》

■現在SP:33






■アバター名:緋真

■性別:女

■種族:人間族ヒューマン

■レベル:31

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:28

VIT:19

INT:23

MND:18

AGI:16

DEX:16

■スキル

ウェポンスキル:《刀術:Lv.2》

マジックスキル:《火魔法:Lv.26》

セットスキル:《闘気:Lv.20》

 《スペルチャージ:Lv.19》

 《火属性強化:Lv.18》

 《回復適正:Lv.14》

 《識別:Lv.19》

 《死点撃ち:Lv.19》

 《格闘:Lv.19》

 《戦闘技能:Lv.18》

 《走破:Lv.18》

 《術理装填:Lv.9》

 《MP自動回復:Lv.5》

サブスキル:《採取:Lv.7》

 《採掘:Lv.10》

称号スキル:《緋の剣姫》

■現在SP:31






■モンスター名:ルミナ

■性別:メス

■種族:ヴァルキリー

■レベル:6

■ステータス(残りステータスポイント:0)

STR:26

VIT:20

INT:34

MND:20

AGI:22

DEX:20

■スキル

ウェポンスキル:《刀》

マジックスキル:《光魔法》

スキル:《光属性強化》

 《光翼》

 《魔法抵抗:大》

 《物理抵抗:中》

 《MP自動大回復》

 《風魔法》

 《魔法陣》

 《ブースト》

称号スキル:《精霊王の眷属》

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