─ プロローグ ─
僕は今レストランで働いている。
新しい環境に来て最初の職場。
なんとか早く馴染みたい。
少しでも使えるヤツと思われたい。
そんな気持ちで日々仕事をしていたのは否定しない。
でもその時の僕は──
『彼女』をただ守りたかった。
きっと……それだけだったんだと思う。
そして、僕は彼女の前に飛び出した。
……なんて言うと、まるで僕がとびきり勇気のある人間のように見えるけど。
そうじゃないんだ。
僕は元々そんな御大層な人間じゃない。
なんて言うか。
気がついたら……本当に気がついたら彼女の前に進み出ていたんだ。
体が自然に──。
グシャッ!
目の前が真っ赤になった気がした。
お腹が猛烈に熱かった。
刃物で刺されたらしかった。
それはそうだよね。
僕は彼女に向かって刃物を突き出す男の前に。
──立ちふさがったんだから。
全てがスローモーション。
ゆっくりと時間が過ぎていく。
「翔哉さん!!」
僕が突然目の前に割って入って来たことで、今や僕の後ろにいる形になった“彼女”が叫んだ。
仰向けにゆっくり倒れていく僕の目に“彼女”の涙に濡れた顔がぼんやりと見えた。
その目は『どうして?』と。
そう驚き、問いかけているように思えた。
でもしょうがないじゃないか。
君が何者かなんて。
もう僕には関係がなかったんだ。
だって僕は……どうやら君のことが──。
……………
………
…