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6-ゆとりニクマーン教育!?

 ホーオー様から『元祖』ニクマーンの話を教えてもらい、俺は新しく色々なことを知った。


 まず、スライムは喧嘩好き、ニクマーンは平和主義。これはスライムが新たな生息地を切り開いてきたということが関係しているらしい。新たな地で暮らすには、元々いる生き物と闘って勝ち抜かなければならない。それに、手に入れた縄張りも守り続けないとだめだ。だから、いつも強気で戦う気満々じゃないと生き残れなかったんだって。そうなると、気が荒い奴や力の強い奴が残っていく。そういうのが増えて行って、今のスライム=喧嘩好き!になっていったらしい。


「じゃあ、どうしてニクマーンはそうならなかったの?」

俺が聞くと、ホーオー様がまわりのちびニクマーンを次々と取り込んで巨大ニクマーンに戻ってみせる。


「これやな」


つまり、ホーオー様のように、他のニクマーンを取り込んで守る存在があったから。ああやって大きくなってる時には、全員の力が合わさって、相当な強さなんだって。だから、みんなでいる限りは安心安全。あえて他の生き物に挑むような危ない真似はしないんだって。


「でも、スライムも元々はニクマーンだったんなら、同じでしょ?」

「どこにもおるねん、良く言えば独立心が旺盛、悪く言えばわがままなやっちゃな」

「ふうん」

「たいていは外で怖い思いして帰ってくるんやけど、そのまま帰らん奴らもおる」

「そっか」

「まあ、だんだん強うなって生き残れば、そこで新たな群れも作れるやろ?」

「うん」


だから、スライムの方がニクマーンより強い。でも、我が強いタイプが多いので、集まって一体になろうって気持ちはほとんど起きないんだろうって。一匹狼、じゃなくて一匹スライムだな。


「せやから喧嘩スライムとかやらでも、ムキんなって戦うんやろな」

「そっか」

「そやで、ニクマーンやったらそんなことよーせえへんわ」

「そうなんだ」


スラゾーを喧嘩スライムに出さなくて良かった。ランディに止められなかったら、スラゾーは今頃あの台の上でぺちゃんこにされていたかも……思わず腕の中のスラゾーの温かさを確かめる。


「きゅる~~ん?」


「まあ、これで坊主もニクマーン博士やな!」

「うん、ありがとう、ホーオー様」

「よっしゃよっしゃ♪。ほなさっそく行くで!」

ホーオー様が上機嫌でポムポムとその場で弾んでみせる。


「どこに行くの?」

「坊主の村に決まってるやんか」

「えっ、ホーオー様も行くってこと!?」


驚いて聞き返すと、途端にホーオー様のくろぽちが不機嫌そうに細められた(多分)


「なんや、坊主、わしが一緒に行ったらアカンのか?」

「や、だってみんなびっくりしちゃうでしょ?ホーオー様、見た目だけなら巨大スライムだもん」

「なんやその“見た目だけ”っていう言い方は」

「えっと、だって、その……」

「坊主、ニクマーンを見た目で判断したらアカンて、お母ちゃんから教わらなかったんか?」

「いや、ニクマーンのことは何も知らないと思う、うちのお母さん」

「かあっ~!これか!?これがゆとりニクマーン教育のしわ寄せやな?」

「え?ゆと?な、なに?」


「ええか、坊主、わしはお前の純粋な心に打たれたんや!」

「え、うん」

「せやからはっきり言うで!今のままではニクマーンは滅びてしまう!」

「うそっ!?」

「アカンやろ?」

「うん、アカンアカンだよ!」


よくわかんないけど、アカン気がする。思わずスラゾーを抱き締める力が強まった。


「スライムのやつらにばっかりデカイ面させてたらアカンねん!」

「うん!」

「村の奴らにニクマーンのすごさをガツンッ!と教えてやるんや!」

「うん!!」


よくわかんないけど、ホーオー様ならスラキングにだって勝てそうな気がする。ただし、あのバトル台の上に収まれば、の話だけど。


 でもこの森から出ても大丈夫なのかなあ?ニクマーンたち。


「あの、ホーオー様たち、森から出ても大丈夫なの?」

「大丈夫や!まかしとき!」

「でも、それならなんで今までは森の中に隠れてたの?いつでも出られたでしょ?」

「……それはな、呼び名 や」

「?」

「わしらは今までスライムモドキっちゅう小者な呼ばれ方しとった」

「うん」

「その呼ばれ方しとるうちはスライムに勝てんのじゃ」

「へえ、そうなの!?」

「ああ、腹が立つけどな、名前には力があるねん」

「名前に、ちから?」

「ああ。坊主んとこの村で一番強いスライムは、名前に最強とかキングとかついてるんちゃう?」

「ついてる!ついてるよ!!何でわかるの!?ホーオー様、すごい!」


さすがホーオー様、やはりただのデカイだけのオヤジっぽいニクマーンじゃなかったんだ。


「おい、坊主!以下略」

「略」

「おおーーーーーい!略し過ぎっちゅーねん!」

「あ、ごめんなさい」

「まあ、ええわ、ったく」


「名前のおかげでスラキングは強いのかな?」

「まあ、それだけや無いやろうけど、関係はあるやろな」

「そっかあ。スラキングはすごく強いんだ!珍しいオレンジ色のスライムなんだよ。今まで一度も負けたことが無いんだ!」


それを聞くとホーオー様のくろぽちがキラリ!と光った(多分)


 虹色の巨体をポム~ン!と大きく弾ませると、風が巻き起こって辺りの草がホーオー様を中心になぎ倒される。



「そりゃあ、今までの話や、坊主」







カッコいいとはこういうことさ(ぽむんっ)

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