3-スライムモドキ……ング
スラゾーは、巨大スライムに飛びついて、そのままスッと吸収されてしまった。すでに巨大スライムの表面は何事も無かったかのようになめらかに輝いている。
「あ、あ……」涙で視界が揺れる。
「か、返せ!スラゾーを返せよ!!」
ビックリしたのと悲しいのとで、俺は一瞬怖さを忘れた。 巨大なスライムに向かって走り出すと、力いっぱいに虹色の体を叩いた。
ばしっ!
ポヨ~~~~ン
「返せ!返せ!返せ!」
ばしばしっ!
ポヨヨ~~~ン
「おい、坊主」
「返せ!返せ!返せ!」
「ちょ、ひとの話聞けや!」
「返せ!返せ!返せ!」
ばしばしばしっ!
ポヨヨヨ~~~ン
「おらっ!このクソガキャー!話し聞けって!」
「スラゾー返せ!!」
そう言ってもう一度叩こうとした俺の頭の上に、何か柔らかい物がポヨンと落ちてきた。
「きゅる~ん!」
あわてて頭に手をやると、懐かしい、暖かくて柔らかい感触が返ってくる。
「スラゾー!?」
頭から下ろしてやると、スラゾーが嬉しそうにプルンと震えて見せた。
「きゅるる~ん!」
「わ、お前どうやって出てきたんだ?確かに吸い込まれちゃったよね?」
俺は、さっきまで巨大スライムを叩きまくっていたことも忘れてスラゾーを撫でまくる。どこにも怪我は無さそうだった。溶かされてもいない。
「おい!坊主、さんざんわしのこと叩いてくれよってからに」
「あ、ご、ごめんなさい」
「きゅる~ん」
スラゾーも一緒に謝ってくれているみたいだった。
「あの、でもさっき確かに吸い込まれちゃったように見えたんだけど……」
まだなんとなく納得できなくて、巨大スライムを眺め回す。すると、あっさり答えが返ってきた。
「そのチビは出たとこに戻ってきただけや」
「えっ!?」
巨大スライムとスラゾーを見比べる。
「あの……お父さん?」
「んなわけあるかいっ!ボケェ!」
「えっ、ご、ごめんなさい」
「わしゃ、スライムモドキングや!」
「スライムモドキ……?ング」
「こらぁ、なんでそこで区切るんじゃ!スライムモドキング!って言ってるやろ!!」
「あ、ご、ごめんなさい」
そこは一気に言わないといけないらしい。巨大な割には小さな事にこだわる……
「おい、坊主!今、なんか失礼なこと考えてたやろ?」
「い、いえ別に」
さすがキングだけあって勘が鋭かった。
「えっと、キングってことは、スラゾーたちの王様……なの?」
「おうよ!」
辺りを見回したが、この巨大スライムモドキ……ング以外は見当たらない。でも、スラゾーの嬉しそうな様子を見ると、確かに慕われる存在には違いないらしい。
「あの、ここには他にもスライムモドキはいるの?」
「おらん」
「えっ、じゃあ、王様とスラゾーの二匹だけなんだね……」
弱い生き物だって、ランディが言ってたし、他のスライムモドキはみんな死んじゃったのかな……
「いや、一匹もおらんで!」
「え、どういうこと?!」
「スライムモドキはおらん!」
「え、でもスラゾーと王様は、ここにいるでしょ?」
「ちゃうねん!“スライムモドキ”なんちゅう生き物はここにはおらんねんて!」
「?」
思わず首をかしげて黙り込む俺に、スライムモドキングがずずい~~~んと近づいてきた。
「ええか坊主、ここにおるのはな、数多の魔物を従える、魔物の頂点を極めた“ニクマーン”じゃ!!」
それを聞いて俺は目を大きく見開いた。
「えっ!アマタノマモノ!?」
「なんでそこに喰いつくねん!?数多っていうのは、ぎょーさんってこと!いっぱい!たっくさん!」
「あ、そうなんだ」
「ちゃうねん!そこに喰いついて欲しいちゃうねん!その後!その後が重要!!」
「“をしたがえる”?」
「ちゃうて!全然ちゃうて!」
スライムモドキングがぶるぶると震えだした。
「ああ?坊主、大人からかって楽しいんか!?ああんっ!?」
「ご、ごめんなさい!だってわかんない言葉がいっぱいあったから」
「ちっ」
「きゅるるん!きゅる~~~ん!」
腕の中でスラゾーが王様にとりなしてくれているらしい。スライムモドキングはしばらく不満そうに震えていたが、ようやく機嫌を直してくれた。
「わしらは“ニクマーン”じゃ。スライムモドキなんて呼ばんといてってこと」
「ニクマーン!?」
「↑今ココ♪ か!?やっとそこか!?」
巨大な体がふ~っとため息をつくようにつぶれた。虹色のクッションのようで、ちょっと乗ってみたいとこっそり思う、俺だった。
「おい、坊主!今、なんか失礼なこと考えてたやろ?」
「い、いえ別に」




