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ボクは悪いスライムじゃないよ、ニクマーンだよ!(ただ今改稿中ぽよよ~ん)  作者: ゆー


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13/35

12-それ、ほんまにスライムなん?



 色々と騒ぎに巻き込んじゃったから、とルードが俺にだけ本当のことを教えてくれた。本当は、スラキングを捕まえられたのはロミィのおかげだったんだって。


 スラキングを見つけた日、ルードはロミィにねだられて森へ連れて行ってた。小さい妹を連れてるから、そうは早くは歩けないし奥の方なんて近づけない。今日は無駄足だなあ、なんて考えていたその時に、目の前にスラキングが現れたんだって。ただし、大きいしすばしっこいしでルードの虫取り網なんかじゃ全然捕まえられなかった。

 一度は取り逃がしたと思ったのに、ロミィが「スライムが逃げちゃったぁ~~~!」と泣きだしたら再び出てきたんだって。しかも、ルードの網をかいくぐって、ロミィの目の前でじっと動きを止めた。それをロミィが抱き上げて「レアスライムゲット~~~!!」っていうことになったんだって。



「じゃあ、スラキングはロミィのだって言う話は……」


「うん。そうなんだ。俺じゃなくてあいつに懐いてるんだよ、スラキング、いやオランジェーヌは」


「ブププー」

 ホーオー様が性懲りもなく小声でスラキングに野次を飛ばしている。


「やめなよ、ホーオー様」

 俺が小声でたしなめると、ふんっ!とそっぽを向いた(多分)


「ねえ、でもさスラキ……じゃなくてオランジェーヌはどうして森を出たの?」

 そんなにロミィのこと気に入ったのかな?でも、最初は捕まるつもりはなかったんだよね?


「うちなあ、うち、ずっと考えてたんや」

 オランジェーヌがロミィに抱っこされたまま語り出す。俺はホーオー様と一緒に話を聞くことにした。


 ついでに、もう良いかな?ってことでホーオー様にスラゾーを出してもらった。もう、ルードも今さら小さいニクマーンが一匹増えたくらいじゃ騒がないだろうし。


 ルードが気付かなかったことからもわかるけど、オランジェーヌは初めからスライム化(トンガリ)した姿を見せてたんだって。


「スライムだって思われたら捕まるのに、どうして?」

 俺が不思議に思ってたずねると、オランジェーヌは一度ポムンと膨らんでから答えてくれた。

「それや、うちらニクマーンとスライムなんて、なんの違いもあらへんねん」

 オランジェーヌの言葉に、ホーオー様も大きく弾みながらうなずいている。

「っていうか、なんで人間があんなにスライムスライム騒ぐのか、うち、不思議に思っとったんや」

「えっと、それはスライムの方が色々と魔力とか知力とか、環境の変化にも適応力が高いし……」

 ルードがロミィのことをチラチラ気にしながら説明する。


「それ、誰がゆーたん?」


 オランジェーヌがルードにたずねる。

「えっ!?誰って……そんなの常識って言うか、昔っからそう言われてるし」

「そんなはずないんや!」

 オランジェーヌが強い口調で言い返す。

「そやそや!」

 ホーオー様も同調して声を上げる。俺は一瞬『改訂版!魔物大百科』のことを思い出したけど、スラゾーが「きゅる~ん」と鳴いたので黙っておいた。



「うちなあ、不思議やったん。確かにスライムは強いんが多いと思う。元々が一匹ニクマーンを気取るやつらやもんな」

「だ、だろ?だからさ――」

 ルードの返事をさえぎってオランジェーヌが続ける。

「けど、あいつらがペラペラしゃべったり魔法の補助するなんて、考えられへん!」

「えっ!?」

 これには俺もルードも驚いて声が重なる。


「あんなあ、スライム化するような奴は頭より体を進化させたんや。腕っ節ひとつで独立!や」

「でも、現に高価なレアスライムは喋ったりするんだよね?」

 俺は思わずルードに同意を求める。

「あ、ああ、そうだよ。デリクから聞いたし、他にも見たことがあるっていう大人もいるし」



「それ、ほんまにスライムなん?」



 オランジェーヌの言葉に、もちろん!と答えようとして言葉を飲み込んだ。ルードも同じみたいだ、黙り込んでいる。

「うちらはスライムの振り(トンガリ)も出来るし、多少なら魔力だって扱える。知恵だってこの通りや!」

 オランジェーヌが胸を張る横で、ホーオー様も得意そうにポムンと膨らんでいる。う~ん、ホーオー様に知恵……

「坊主!」

「いいえ!」

 ふー、あぶないあぶない。

「全部が全部とは言わんけど、スライムのふりをさせられてる子ぉが、けっこう居るんやないかと思うんや」

 そういうオランジェーヌに、ホーオー様が労わるように声をかけた。

「自分、まだあん時のこと忘れてないんやな……」

「当たり前や!あの子はうちの目の前でさらわれてったんやで!!」


「あの子?」

 俺の疑問にホーオー様が答えてくれた。

「ずいぶん前なんやけど、まだわしらがもう少し小さかった時や。森にスライム狩りが来てな」

「ニクマーンってわかると、ひどい時は猟犬のエサ代わりにされたりするから、捕まりそうになったらスライムのふりするんや」

「そいで、こいつの妹分が捕まって……」

「桃色の可愛い子やった。あの男『レアスライムだ!!』って叫んで、あの子をさらったんや」

「村にスライム狩りの人間なんて来たこと無いよ?」

 ルードが口をはさむとホーオー様がポムンと膨らんで答える。

「あんちゃんらが産まれるずっとずっと前の話や。知るわけないやろ」

「えっ!?ホーオー様達って、いったいどのくらい生きてるの?」

 俺の声に、オランジェーヌのくろぽちがあやしく光る。

「坊主、ニクマーンレディに歳たずねたらアカンて、オカンに教わらんかったんか?」

「え、教わってな……あの、すみません!」

「まあ、まあ、許してやってーな。そいつらの母ちゃんな、ゆとりニクマーン教育世代やねん」

「え、ゆと、ニク?」

 そばで見ていたルードが不思議そうに首をかしげたけど、ホーオー様達にあっさり流された。

「しゃーないな、そこんとこは目ぇつぶったるわ」

 はあ、良かった。よくわからないけど、良かった。


「うちな、スライムのふりして森を出て、スライムとして名を上げる計画立てたんや!」

「は、はあ」

「ここら辺のじゃりんこの間で喧嘩スライム流行ってるやろ?まずはあれでチャンピオンになる!」

「なったよね!」

 ロミィが嬉しそうにオランジェーヌを見つめる。


「次に村から出て喧嘩スライムで名を上げながら王都へ向かう!」

「えっ!オランジェーヌちゃん、出て行っちゃうの!?」

 ロミィの目が潤む。


「いやいや、今すぐや無いでぇ、まだ先の話しやから~」

 オランジェーヌがおろおろしながらロミィの涙を体で拭いてる。



「王都へ行ってどうするの?」

 なんだか、話しが大きくなってきたなあ?と思いながら俺がたずねると、オランジェーヌがロミィの腕から飛び出して、ポーンと弾んだ。

「王都で一番の“スライム”になるんや!!」

「ええっ!!」

 みんなの驚く声が重なった。


「王都で、喧嘩スライムで名を上げて、そいで『うちはほんまはニクマーンや!』って発表するんや」

 オランジェーヌのくろぽちがキラキラ輝いてる(多分)

「な、ええ作戦やろ!?」

 あれ、なんかそれすごく既視感のある考え方……


「そんなうまく行くかよ、なあ?」

 ルードが即座にダメだしして相槌を求めてくる。

 あ、ダメ?ダメなのかあ。うーん、ここは普通はルードの言葉に首をタテに振るところなんだろうけど……

「きゅる~ん」

 腕の中でスラゾーが俺を見つめてくる。オランジェーヌも俺も、考えが甘いのかもしれない。だけど、だけどさ、それが甘い考えだとしても、何もせずにいるのはどうなんだ?

「あ、あの、今すぐ、じゃなくても良いんだよね?」

 俺がたずねると、オランジェーヌがくろぽちをキラキラさせながら見つめて来た(多分)

「坊主、ひょっとして……やってくれるんか!?」

 ホーオー様がぶるぶる震えている。わかってるよ、武者震いでも怖いわけでもないよね?それくらい、わかるようにはなってきたんだ、パートナーとして。


「行こう!本当のニクマーンのことを、一人でも多くの人にわかってもらおう!」

「坊主!」

「ジェムちゃん!」

「きゅる~ん!」


 感動して抱き合うニクマーン達と俺とロミィ。

 の横で、手持無沙汰で気まずそうなルードが聞いてくる。

「でも、お前、まだ他の村に行くのは許されてないだろ?」


 あ、そうだった。

 ルードやランディ位にならないと、一人で他の村には行けないんだったっけ。


「なんや、五年や十年なんてうちら気にせーへんわ!」

 オランジェーヌが励ましてくれる。

「そや。坊主が、もーちょこっと大きくなるまで、わしらも喧嘩スライムの腕磨くで!!」

「きゅる~~ん!!」

 ホーオー様とスラゾーも一緒に弾んで応えてくれる。

 俺が大きくうなずくと、ロミィがパチパチと拍手してくれた。



 なんか、良くわからないけど、ニクマーンの存亡をかけた戦いが、ここに始まろうとしていた!!


(多分)

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