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ボクは悪いスライムじゃないよ、ニクマーンだよ!(ただ今改稿中ぽよよ~ん)  作者: ゆー


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11-女王様だよ!



ようやくロミィをなだめ、おろおろするルードを落ち着かせて、俺は話しを聞くことが出来た。スラキングが「本当はニクマーンだ」と告白しても、ロミィのスラキングへの愛着は変わらなかった。

けれど、ルードは違う。


「ニクマーンなんて、弱くて格好悪い魔物の代表だぜ?そんなのをスライムのチャンピオンだなんて……」

 そうルードがぼそぼそ話すと、ロミィの目が再びキッとなってルードを睨みつけた。

「だからってスラキングを捨てるなんてダメだもん!!」

 そう言って腕の中のスラキングをギュッと抱きしめる。スラキングは潰れそうになっているけど、大好きなロミィのために我慢しているようだ。

「あ、あのさ、スライムじゃなくたって、スラキングが強かったことには変わりない……よね?」

 俺がルードに話しかける。ロミィやスラキングの為もあるけど、それはそのままホーオー様やスラゾーの為でもあるんだ。

「まあ、それはそうだけど……」ルードの返事は歯切れが悪い。理由はわかっている。


 以前、行商で村を訪れた一行の中に、俺よりちょっと大きいくらいの男の子がいた。その子は、自分が可愛がっていたニクマーンを喧嘩スライムに出そうとしたんだ。でも、ルードやランディ、他の大きい子達に馬鹿にされて、バトル台に近寄ることもさせてもらえなかったんだ。結局、村を去るまで、うらやましそうに喧嘩スライムをみんなの輪の外から眺めていた。その子のニクマーンは、スラゾーと同じように白っぽかった。もし、スライム化(トンガリ)したら、レアだとかって大騒ぎになったろうな。


「どうして?どうしてニクマーンじゃだめなの?」

 ロミィが大きな瞳に涙を浮かべてルードに詰め寄る。

「だって、弱いし、かっこ悪いし……」

 そう言うルードも、自分の言葉が矛盾していることに気づいてるんだろう。

「スラキングは強いし、カッコいいもん!!」

ロミィがスラキングを頭の上まで持ち上げて立ち上がる。

「ニクマーンだって良いじゃない!!スラキングはこの村のチャンピオン(女王様)だよ!」


「じょ、嬢ちゃん、うちのためにそこまでゆーてくれるん?」

スラキングのくろぽちが涙でうるんでいる(ような気がする)


 なんだか、ルードの身長の半分もないロミィが、勇者のように見える。ニクマーンだと言われて、すごすごとスラゾーを森に戻しに行った自分とは大違いだ。ロミィ、眩しすぎるよ……ん?っていうか、本当に眩しい。この眩しさって……あれ?スラキング光ってない?


「おおおおっ!伝説の“ニクマーン大変身”や!!」

 それまで俺の腕の中で事の成り行きを見守っていたホーオー様が、いきなり叫んで飛び上がった。


 ロミィの頭の上でスラキングが金色に眩く光っている。

「うそっ!うっひゃあ~!」

 ルードが裏返った声で意味の分からない言葉を叫んでる。


 やがて、光が収まると、そこには真赤なニクマーンが姿を現した。


「ま、幻のニクマーンクイーン爆誕や!!!」

 ホーオー様の声が震えている。

「すごい!」

 俺も思わずつぶやいた。


 あらためてロミィの頭の上の真赤なニクマーンを見てみる。気のせいか、なんだかスラキングのくろぽちが誇らしげに輝いているように見える(多分)

「すごいね、ロミィ。きっとロミィの想いがスラキングを変えたんだよ」

 俺が思わず声に出すとロミィが嬉しそうにスラキングを抱きしめた。その横で、ルードがうらやましそうに見つめている。


「そやな、嬢ちゃんの想いの強さやな。……いや、ちゃうで!それだけや無いで!」

 ホーオー様の言葉に、スラキングのくろぽちがギクッと揺れ動いたように見えた(多分)

「なんのことやろなー?うちわからんわー」

「自分、ほんまは何て呼ばれてるん?」

「はっ?なんのこと?うちはスラキングちゅー立派なリングネームが、」

「それや、それがおかしいちゅーねん!」

「ホーオー様、どういうこと?」

 俺が口をはさむと、ホーオー様がここぞとばかりに説明し始める。

「あんなあ、坊主にも、魔物にとっていかに名前が大事かって話、したやろ?」

「うん」

「だからな、おかしいんや」

「わかんないよ、何がおかしいの?」

「スラキングちゅー名前は、あんちゃんがつけたんやろ?」

 ホーオー様がルードに聞いてくる。

「ああ、そうだよ。まさかメスのニクマーンだとは……」

「えっ、ニクマーンにメスとかオスとかあるの?」


「坊主、今はそこは置いとけ」


「えっ、でも」

「アールじゅうごは伊達や無いで。良いから置いとけちゅーねん」

「う、うん、よくわかんないけど、置いとくよ」

「そいでや、多分本当の名前は嬢ちゃんがつけてるんやないか?」

 ホーオー様はそう言ってロミィを見つめた。


「え、そうなの?ロミィ?」

 俺がたずねると、ロミィが嬉しそうな顔をした。あ、あの表情は俺をジェムちゃんと呼ぶ時と同じだ。

「あ~、あんなあ、嬢ちゃん……」

 スラキングがなんだかあわてた感じでロミィに話しかけたけど、ロミィが答える方が早かった。


「あのね、オランジェーヌちゃんは貴族のお姫様なの。今は悪い魔法使いにニクマーンの姿にされちゃってるけど、本当はとてもうつくしーお姫様なのよ!ねー!?」

 ロミィは嬉しそうに“設定”を教えてくれたけど、ねー!?とふられたオランジェーヌちゃん(スラキング)は無言だ。


 沈黙を破ってホーオー様の嬉しそうな声が響く。

「ブププーっ!お前まだおままごとに参加してたんかい?!貴族のお姫様て?、ブププーっ!」

 ホーオー様がここぞとばかりにスラキングに突っ込んでいく。ロミィがムッとしてるけどお構いなしだ。


 それを見て、無言だったオランジェーヌちゃん(スラキング)が反撃に出た。

「ええやんか!お姫様ごっこは女の子の永遠の夢やんか!自分こそ、そういう乙女心がわからんから、いつまでも尻に皮つけてるような「皮のことはゆーなや!!それは、ゆったらアカンやろ~っ!!」

 どうやら必殺「皮」攻撃で、あっさりホーオー様は撃破されたらしい。ロミィのご機嫌も戻ってきた。


「あのさ、なんとなくだけどわかってきたよ」

 打ちひしがれるホーオー様に声をかける。

「坊主、皮のことにはもう触れんでええ」

「ちがうよ!そんなことじゃなくて、名前のことだよ!」

「あ?あ、そうやった、名前の話しとったんやった」

「うん。ニクマーンって、名前をつけてくれた人との間の絆が深まると、力も大きくなるんじゃない?」

「そや!そういうこっちゃ!坊主、賢いなー!さすがわしに名前付けただけのことはある!」

 ホーオー様の元気が戻ってきた。良かった。本当にめんどくさいしょぼくれオヤジみたいな存在だ。

「坊主、今なんか……」

「いいえ!」


 そっか、絆が深まると、考えてることもなんとなくわかっちゃうのかも

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