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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛八回目

 俺はゴブリン将軍(ジェネラルゴブリン)を倒したら、ちょうど武器の強化に足らなかった素材が出てきたため、ホクホクした気分でアイテム欄を見ていたが、視界に今日だけで何度も遭遇した、赤髪の少年が視界に入ってきた。


 今日はもう会う気がなかったので、全力で視線をそらして少し歩くと、そのまま走り出した。全力で町に戻って肉をガッツリ食べるぞおぉぉぉ!!俺は町の広場まで走り続けた。


「ハァッハァッ、フー」

 町の広場、アリシアの花屋の前まで全力疾走をした俺は、乱れた息を整えるために、噴水の淵に座って休んでいる。ちょっと頑張って走りすぎたな。


「そんなに息切らしてどうしたのよ?まさかファルフラムの森のモンスターに苦戦でもしたの?」

「いや、モンスター自体は楽に倒せたんだけどな、めんどくさい冒険者と遭遇しかけたから、走って戻ってきた」

「めんどくさいって…まあ、あなたは無事なのね?」

「おう、ピンピンしてるぜ」


 アリシアは安心した表情をすると、

「それで、討伐対象はどうしたの?」

「バッチリだ、これでいいか?」


 俺はゴブリン将軍から入手したアイテムを一つアリシアに渡した。

『討伐クエスト【ファルフラムの森の部隊長】をクリアしました』


「うん、確かに。じゃあ、報酬のほうは町長のほうから受け取ってね。はい、これが引換の書類。なくしたら報酬はもらえないから気を付けてね」

「わかったよ、報酬受け取ったら戻ってくるから、そしたら飯でも食いに行こうぜ。もちろん俺のおごりだ」

「やった。じゃあ待ってるからね」


 待っているという言葉を聞いて俺のテンションは少し上昇した。だから町長がいるはずの家に向けて走り始めた。



 町長宅が見える所まで来ると、町長宅から赤髪の少年と銀髪の少女が出てきた。ゲッ、なんで…そういえばアリシアが町長に紹介したって言ってたな。それで森にいたってことは町長に頼み事でもされていたんだろうな。


 そう思いながら二人を見ていると、銀髪の少女と目が合ってしまった。少女は少し赤髪と話すと、赤髪のほうが光を発しながらいなくなった。冒険者の死に戻りや、倒したモンスターが消滅する時とは少し違う気がする。多分町民が送還、冒険者がログアウトと呼んでいる現象だろう。


 赤髪のほうが送還されるのを見送った少女は迷うことなく俺のほうへと歩いてくる。

「会ったことありますね」

「は?」

「先ほどナンパされた時のです」

「ああ。ちなみにアレはナンパじゃねえぞ」

「分かっています」


 少女は俺の目をまっすぐ見てくる。


「あー、実は俺まだどこであったか思い出してないんだよ」

「…燃える町」

「え?なんて?」

「だから、燃える町」


 燃える…町?…俺の中にある一番印象の強い燃えている最中の町は、なんと言ってもあのときだ。

 その後の冒険者の会話を聞いてから、俺は冒険者という物を信じられなくなってしまった。…話が逸れたな。

 あのとき確かに一人の少女と会っている。そして、次の世界では会えなくて、気がついたらッ記憶の彼方に持って行ってしまった。しかし、泣いていた表情しか見ていなかったため、こんなに表情が動かない少女とあまり関連が見られなかった。もっと表情動く子だと思っていました。ハイ。


「思い出した?」

「思い出したよ、思い出したからこそ、君に改めて言いたいことがある。」

「何?」

「多分もうそろそろゴブリンが攻めてくるはずなんだ。だから、そのときに力を貸してくれ」


 少女はうなずくと、

「こちらこそお願いします」

 そういって頭を下げてきた。


「頭下げる必要はないぞ。こっちが頼み込んでいるんだから」

 俺は自分より年下に見える少女に頭を下げられる経験がない。寧ろそんな経験がある同年代の人間がいたら、俺は距離を置かない自信がない。

 そんな俺に妙案が浮かんだ。気がする。


「なあ、よかったら一緒に飯でも食わないか?ちょっと用事を終えたら、知人と晩飯を一緒に食べる予定なんだよ」

「私お邪魔な気がする」

「そんなことねえよ?」

「ナンパはお断り。それに家族と食べる」

「ナンパのつもりはないって。それより先約があるんだったらしょうがないか。じゃあ、これが連絡先だ。ゴブリン共が攻めてくることが分かったら連絡してくれ」


 俺はそう言って少女に、小さな黄色いピアスを渡した。


「なにこれ?」

「ああ、これは二つで対になっている鉱石。音鉄鉱(アイアンコール)を使用して作られた物だ。もう一つは俺が持っている。必要になったら呼べ。いける距離だったらすぐに駆けつける」

「使い方は?」

「ああ、MPを消費することで使用できる」

「分かった」


 少女はそう言うと、ぺこりと頭を一度下げると光に包まれていなくなった。送還したみたいだ。

 少女が送還されたのを見届けると、俺は自分が町長の下に報酬の引換書を渡しに来ていたことを思い出し、すぐ目の前にある町長宅へと入っていった。


 町長は書類の作成をしているみたいだ。何を書いてるのか気になったので、町長の書類を覗き見るとそこには、


『ワシによるワシのためのハーレム計画その4』


 なんてことが書いてあって、

「おい、髪散らすぞ」

「な、いつの間に、クソ、計画を知られたからには」

「そんなに(髪が)散りたいと?」

「なんじゃい、ただの冗談じゃよ、本物の書類はこっちじゃ」


 そういって町長は机の引き出しから一枚の書類を取り出す。チラッと見えたが、内容は冒険者に調べてもらった、ファルフラムの森の調査結果みたいだ。


「ところで何か用か?見ての通りそんなに暇じゃないんじゃが」

「ふざける余裕のあるやつがよく言うよ」

「ホッホッホ、しかしの、まじめな話なんじゃが、そろそろゴブリン共からの襲撃がありそうでのう」

「防衛に参加しろってことか?」

「話が早くて助かるのう、その通りじゃ。力を貸してもらえんかのう?」


 そうか、あんな森の入口のほうで、ゴブリン将軍(ジェネラルゴブリン)と遭遇したのに違和感みたいなものがあったが、戦力が集まっていたからか。それに、これに対する答えはもうとっくに決まっている。


「いいぞ、それで敵の大将はどんなのか分かったのか?」

「それが分からなくてのう。巧妙に姿を隠しているみたいなんじゃよ」

「そうか」


 敵の集団のボスが出てこないときは、今までのパターンから、大抵数がそこまで膨大ではなく、全滅させるか一定時間こらえればゴブリン共は撤退。俺たちの勝ちになる。


「そういえば報酬くれ」

 俺はそういいながら、ここに来た目的である報酬を受け取るために、報酬の引換書を町長に突き出した。


「おお、ゴブリン将軍(ジェネラルゴブリン)を一人で倒したのか」

「ああ、そうだよ。おかげで欲しかった物も手に入った」

「フム、運がよければ、襲撃時に敵の数が減っているかもしれんのう」


 それは絶対ない。今までの世界でも無茶な狩りをして、敵の将クラスを何体も狩ったが、攻めて来る際の敵の量は一度として変わったことはなかった。つまり、確認されているのは斥候の部隊だと考え、本体は別にあると考えるべきだろう。

 この情報は絶対に開示できない。どうやって調べたのかを問われてしまうからだ。そしたらこれまでのことを話さなければならなくなり、この町長を殺してしまう結果になってしまうだろう。


「そんなことより早く報酬をくれ、人を待たせてるんだ」

「分かった、報酬を渡そう。ところで、待ち人はやはりアリシア嬢かのう」

「そんなこと関係ないだろ」


 俺は報酬を受け取ると、いそいそとその場を後にした。しかし、なぜか町長まで付いて来る。


「町長、何で付いて来るんですか?」

「なに、ちょっと待ち人というのが、アリシア嬢しか思いつかなくてのう」

「仕事してください。大変なんでしょう?」

「なに、ワシとて飯を食わねば力が出ないし、死んでしまうからのう、食事休憩じゃ」

「俺に付いて来る必要は?」

「ないの、しいて言うなら面白そうだからじゃ」


 いくら言っても、のらりくらりとやり過ごされる。町長をやり過ごすための会話に集中しすぎていたのか、いつの間にか花屋の前まで戻ってきてしまった。


「あら?町長さんも一緒なの?」

「不本意なんだけどな」

「色々お世話になってるんだから、そう邪険に扱っちゃダメでしょ」


 アリシアに注意されてしまった。でも、町長が付いて来た理由を聞いているこっちとしては、腹が立つ。まあ表向きの理由なんだろうけど。

 町長は悪ふざけをよくする。しかし、それは裏向きの理由を覆い隠すためだと思っている。町長はニコニコ笑っているが、そう考えて見て見ると、その笑いはすごい薄っぺらで、見ているこっちがゾッとすることもある。

 俺がそんな思考を巡らしていると、俺の耳には町長の「そうじゃそうじゃ、もっと言ってやってくれるかのう。アリシア嬢」等という言葉が入ってくる。すごいウザッたい。


「では、町長さんは何でここにいるんでしょうか?」

「決まっておるじゃろ、アリシア嬢に会いに「奥さんに連絡しますね」まった待った冗談じゃ。冗談だからそれだけは勘弁しておくれ」


 町長は懇願するような声でアリシアを止めにかかる。しかし、アリシアは慣れた手つきで懐からベルのようなものを取り出すと、ためらうことなく鳴らそうとするが、

「わかった、ここに来た用件を言うから勘弁しておくれぇぇぇ」

 泣きそうな町長の声に、ベルを鳴らそうとした体制で止まった。


「では早く言ってください。手が疲れてついうっかりベルを鳴らしてしまうかもしれませんから」

「実はのう、アリシア譲の判断で、頼んでも大丈夫そうな者に、ゴブリン系の討伐や、ファルフラムの森の調査を頼んでもらえないかと思ってのう」

「えっと、何ででしょうか」

「なに、この町が襲われにくくするための措置だと思ってくれてよいぞい」

「ああ、攻められる前に数を減らしてしまえ。ということですね?」

「正解じゃ」


 町長が肯定すると、アリシアは分かりましたと言い、ベルを鳴らした。すると、涼しげな音が鳴り響く。


「何で鳴らしたんじゃあぁぁぁぁぁ!?」

「奥さんからは」


「夫がどんなくだらないことでもセクハラをしてきたら、謝られたり、冗談と言ってお茶を濁そうとしても、絶対に鳴らして知らせてくださいね。制裁しておきますんで」


「といわれておりますので」


 町長が何かを言う前に、町長の背後から手が伸びてきて、町長の服の襟首を掴む。そしてそのまま彼は自分の奥さんに引きずられて行ってしまった。


 さて、俺はアリシアおススメの飯屋でたらふく肉でも食べますか。

無駄なオリジナル要素の撤廃しました

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