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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛七十九回目

 結局俺は右の部屋に入ることにした。

 ダストシュートがあれば下の階まで逃れることが出来るし。武器があるかもしれない。

 これは妥当な判断だと思いたいが、中に何があるかね。


「おい!酒が足らんぞ!」

「いい加減にしてくれ!皆が頑張って前線で戦っているのにあんたらは何でこんなところで酒飲んでるんだ!」

「あんまりお堅いこと言うなよ。若いのに禿げるぞ」

「このことは上に報告させてもら・・・誰だ!」


 部屋の中には酒盛りをしている中年ドワーフと、それを注意する若いドワーフ。

 諦めたように頭を振ってこちらを向いた若いドワーフと目が合った。

 声を上げた若いドワーフが背中に背負っている大剣を抜いて振りかぶり、叩き付けて来た。


「その剣を寄越せえぇぇぇぇ!!」


 すれ違いざまに振り下ろしの一撃をステップで避け、膝を胴に突き刺す。

 その場にうずくまるドワーフの手を踏みつけて大剣を強奪すると、勢いよく跳ね上げて背後から迫るエストックを防ぐ。その際に足元から嫌な音と絶叫が聞こえたがそんなものに構っている時間は無い!

 連続で突き出されるエストックの動きを予想して大剣で弾き続けていると後ろでゴソゴソと動き始める酒飲みドワーフ達。

 後ろに気を取られると攻撃を弾き損ね、大剣の腹に綺麗な穴が開く。

 唯一の逃げ道である出入り口は人形女の背後にあるため逃げるのは難しそうな上に、そのことを理解しているのか先ほど戦ったときのようにあっちこっち飛び回りながら攻めてくるのではなく

 あれ?もうこれ詰んでね?


「自分から逃げ場の無い場所に行くなんて。何がしたかったの?」

「何かあったときのためにちゃんと出入り口は2つ用意しておくべきだと俺は思うんだが。ここは欠陥建築じゃないか?」

「別に私が作ったわけじゃないからその質問に答えることは出来そうに無いわ。その後ろのドワーフ達に聞いてみては?そんな余裕は与える気は無いけど」

「いやいや、元から会話してる余裕すらねえよ!」


 会話している間にも人形女の繰り出す突きを捌き、捌ききれなかったものが体に掠ってHPを削っていく。

 気の抜けない戦闘をする中で、背後に気配を感じたので咄嗟に横に大きく跳ぶと、先ほどまで胴体があった場所をエストックが通過し、バトルアックスを振りかぶったドワーフの喉に吸い込まれていった。

 動きが一瞬硬直したのを見逃さずに回し蹴りで扉を塞ぐ位置から退かし、楽しそうな顔でこちらの戦闘を観戦していたスタリブに大剣を叩きつける。

 だが、半身下がることで躱わされてしまう。


 よし、道は出来た。

 スタリブが半身になることで開いた空間に強引に体をねじ込むと部屋の外に出ることに成功した。





 もうどこをどう走ったかなんて覚えていられるはずも無い。

 先ほどの部屋から脱出してからそれなりの時間を走り続けているがスタリブも人形女も息切れをするようすが見られない。

 こちらはすでに疲労から足が少し震えているというのに。

 逃げている間にも何人かのドワーフとは遭遇しているのだが、そのことごとくが人形女の攻撃に巻き込まれて死んでいる。まあ、どこかで生き返っているみたいだがそれでも人形女はやり過ぎではないのかと思う。


 そんな相手を心配している余裕は無いんだがな!


 足が鈍り、必然的に打ち合う回数が増え疲労を感じているこちらが一方的に傷つき体力を奪われていく。

 大剣も元の無骨でありながら相手を叩き潰せる頼もしさはどこにも無く、腹には複数の穴が開き刃は欠けてしまっているため鈍器としての役割しか期待できそうに無い。


「頑張って逃げているようだけど、これ以上この子に手を出させたら本当に四肢欠損しちゃいそうだし、そろそろ私も手を出しちゃおうかしら」


 穏やかな声だが、俺からすればそれは死刑宣告にも近い言葉だった。

 流れるように抜かれたスタリブの手にした物が鋭い風切り音と共に迫る。

 反射的に盾にした大剣とぶつかり、つばぜり合いとなったときにそれ――呪われているんじゃないかと危惧したくなるほど禍々しい装飾を施されたレイピアと接触しているところが錆付きボロボロに崩れ落ちて行った。

 咄嗟に後方に跳ぶことで接触を断ったのだがそれでも錆は刀身をどんどん侵食して終いには柄だけを残して消滅してしまった。

 一瞬の間思考回路が止まった隙に人形女の攻撃が俺の肩を貫いた。

 エストックが引き抜かれる痛みに口から声が出そうになるのを押さえ込み、残った柄を投げつけると肩を抑えながら背を向けて逃げる。


「ちょっと!何してるのよ!肩じゃなくても足とかの選択肢があったでしょ!」

「四肢ノ1、2本無クテモイイト言ワレタ」

「じゃあ命令よ。その男は出来るだけ傷をつけずに捕らえなさい」

「アナタハ私ノマスターデハナイ。ヨッテ、ソノ命令ニハ従エナイ」

「あの男も面倒なことをしてくれたわね。ウェイルズを動けなくしてあなたの前に出せばそのまま連れて行くのでしょ?」

「・・・」

「あの男もこの子にもう少し言語能力を付けてくれればよかったのに」


 そんな会話が聞こえたかと思うと、後ろから加わる圧力が増した。

 そんな圧力から逃げるように通路の角を曲がるとこちらを伺うようにしゃがみこんでいるドワーフ達がいたので、とりあえずスタリブと人形女の方に蹴り飛ばして障害物にしておく。

 邪魔よ!という声が聞こえた直後に絶叫が聞こえてきた。

 やっぱりあいつら味方であるはずのドワーフ達も関係無しに攻撃を加えてやがる。


「なんでだ!お前らは協力者じゃ」

「生き返るんだからいいじゃない、それよりもあなた達が邪魔で逃がしちゃいそうじゃない」

「生き返るとしても痛いもんは痛ぐぎゃぁっ!!」


 先ほど蹴り飛ばしたドワーフのおかげで出来た時間を利用して少しでも距離を稼ぐために足を動かす。

 最後の1人がやられてしまったのか硬いものが壊れる音と、大声で悪態をついたようなものが聞こえてきた。

 今度は後ろからではなく前方。閉まっている扉の向こうから激しい剣戟の音が聞こえてくる。

 扉を押し開こうとしたが鍵がかけてあるようで開かない。

 力を籠めて扉を蹴ると、蝶番が破損して吹き飛んだ。


 扉の向こう側では冒険者連中とドワーフ達が戦闘を繰り広げていた。

 飛んで行った扉が何人かのドワーフと冒険者を巻き込んだみたいだが、下敷きになった奴の手から零れ落ちたと思しき武器が複数転がっている。ラッキー。

 転がっている武器の中から大槌を選ぶと、扉が壊れたことに気がつかず冒険者と武器を打ち合っていた奴の胴体に大槌を叩き付け、相対していた冒険者ごと自分の進む道から排除。

 しかし、出来た道は他の冒険者やドワーフによってすぐに塞がれてしまう。

 ・・・道を作ったらすぐに突破するしかないか。


 別のドワーフの胴体に大槌の平らなところを押し付けると一気に振りぬいて壁の方に飛ばす。壁に叩きつけられたドワーフはカエルが潰れたときのような声を出して消えていった。

 急に剣を交えていた相手がいなくなった冒険者は間抜けな顔をして棒立ちしていたが、それも邪魔なので道を作るために後ろの冒険者もろとも吹き飛ばしてそこに体を滑り込ます。


「おい!何が起きた!」

「扉を壊して殴り込んできたNPCが1人で戦線を崩壊させて俺達の背後に回りこみマした!」

「ある程度HPが回復した人材を防衛に回せ!絶対に背後からの挟撃をさせるな!」

「扉の向こうから追加で敵性NPCが2人!」


 ギャアギャア騒ぐ冒険者達を無視して隙間をすり抜け、大槌で邪魔をしてくる冒険者を排除して突き進む。

 先ほどから指示を出している冒険者が倒せない俺に業を煮やしたのか、直接攻撃を加えてこようとする。

 しかし、その頭をエストックが貫き、よろめいた胴体を5度6度と連続でレイピアが突き刺さる。

 消えていく冒険者を尻目に振り返るとスタリブと人形女の姿が。


「逃ガサナイ」

「逃がさないわよ」


 手ごろな冒険者の足を引っ掛けると2人との視界を切るように間に置き、その隙に冒険者達の人垣の中に紛れて逃れる。

 盾にした冒険者は蜂の巣にされて消えて行き、それを見た冒険者達は2人が一番危険だと判断したのか俺に攻撃を加えてきていた冒険者達は2人を取り囲み、次々と襲い掛かっていく。


「囲め!休む暇を与えるな!」

「お前が指示出すんじゃねえ!」

「うるせぇ!お前が黙ってろ」

「喧嘩してる場合じゃねえよ」


 指揮を執っていた冒険者がやられてしまったせいなのか連携などがバラバラになりつつある。この混乱している状況を利用してこの場から早急に離脱して姿をくらますことに成功した。

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