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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛七十四回目

 まさかあんな動きをするドワーフがいるとは思わなかった。

 僕の中にあるドワーフのイメージって、動きは鈍重だけど力が強くて一撃一撃が重たいイメージだったんだけど・・・。

 動きは無駄が無いうえに早く、急所などに強烈な一撃を加えてくる。

 あれに勝てるイメージが一切沸かないんだけど。それよりもPLの中で対抗できそうな人がいそうにないことが大問題だと思うんだ。

 要塞内を縦横無尽に、3次元的な動きをして接近してくる上に、目にも留まらぬ速度でエストックを急所、又は腕などの武器を持つ手を攻撃してくる相手に勝てる?

 ・・・そうだな。やっぱり出来る人にお願いするべきだ。ウェイルズさん出番です。


「・・・前線に戻る?」

「そうだね。戻ろうか。ケイや姉さんがどうなったかも知りたい」

「きっとどこかにいる」


 そうだよね。きっとどこかにいるよね。どこにいるかなんて知らないけどね。

 要塞の見える位置まで戻ってきた僕たちは、要塞内部に敵を押し込み、ローテーションを組むことで押しとどめ続けることに成功しているPL達を見て、今度はアイスボムを打ち込む必要性を感じないことに安堵した。

 今ドワーフを抑えているパーティの背後まで行くと、援護射撃を開始する。


「サンキュー・・・誤射したらお前をキルするからな」

「お前の援護射撃は死んでもいらねえからな!絶対に撃つなよ!」

「バカお前!それ完全にふるときの掛け声だからな!」

「お前の魔法は絶対にいらねえよ!」


 僕に魔法を使うなと仰るのですか!そしたら僕の戦闘能力なんてその辺のスライムレベルになっちゃうよ!

 どうやらこの人たちは、先ほど僕の魔法で見事に巻き込んでしまった人たちみたいだ。

 そりゃあ、警戒心も強くなるだろうさ。けどね、魔法を使うのはやめないよ!僕は魔法特化でやってるからこれ以外にこの防衛戦に貢献する方法がないんだ。


「『アイススピンジャベリン』」

「使いやがったぞ!退避、退避ぃぃぃぃ!!」

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!掠った、掠ったよぉぉぉぉぉぉ!!」


 あれ?狙いを間違えた。なんか色々言ってきた人めがけて魔法撃っちゃった。

 綺麗に躱してたから問題は無いよね。

 掠っただって?それは僕の知らない事柄だね。


「てめえ、この防衛戦が終わったら本気で泣かせてやる!」

「キルしてやる!絶対にキルしてやるからなぁぁぁぁぁ!」


 おうふ、また恨みを買ってしまったみたいです。


「『アイススピンジャベリン』」

「下がれ!あいつの後ろに下がるんだ!そしたらもう魔法の誤射は絶対になくなる!」

「後衛職の僕を前衛に送るとか、君達は正気なのか!」

「誤射する奴を後ろに配置できるか!」


 すごすごと引き下がり、こちらのことを一切気にせず淡々と矢を射続けているマドイさんの護衛をすることにした。

 近づいてくる奴はPLであろうと関係なく魔法を撃ち込んでやろう。


「あ、ようやく見つけたぞ。お前ら一体どこで「『アイスボム』」うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 なんか烏丸みたいな派手な格好をしたシーフスタイルの男にアイスボムを叩き込んじゃったんだけど、急に話しかけてきたんだから問題ないよね。しかも、若干敵意があった気がしたので後悔はしていない。


「おいこらヤマト!いきなり何しやがる!」

「・・・ああ、烏丸だったのか。ごめんごめん。言葉に悪意を感じたから」

「どこに悪意を感じる部分があった!?てか、お前らどこにいたんだよ。急にHPがなくなってたし、マドイさんもなくなってたよな!」

「ああ、中に侵入したら死に戻りしちゃってね」

「・・・どうせお前の不注意のせいだろ?」


 あのような事態になったのは僕の所為じゃないよね?あそこのスイッチ押しちゃったから隔離されてあの流れになったとかじゃないよね?


「おいまて、なんで目を逸らす。お前何をした?」

「いや、何もしてないよ」

「うん、こっちをまっすぐ見て同じ台詞を言ってみようか」

「僕は何もしてないよ?」

「目が泳いでるじゃねえか!はあ、もういいよ。そんで、なんで死に戻りしたんだ?」

「実はさ、とんでもない動きをするドワーフがいたんだよ。僕の魔法も全部避けられた上に、マドイさんの矢も全部弾くなり回避するなりしてたよ」

「え?またまた、無様を晒して負けたからって嘘はつかなくていいんだぞ」

「真実」

「・・・嘘だろおい」


 僕の言ったことに関しては全く信じた様子がなかったのに、マドイさんが同意した瞬間に手のひらを返したような反応で空を仰ぐさまを見てしまい、釈然としない何かを感じたため、憂さ晴らしに数発魔法を前線に撃ち込んでおいた。

 前線が再び混乱しているみたいだけど、見事に対策をしているみたいだし、問題は無いよね。


「「「お前絶対にPKしてやるからな!防衛戦終わったら首洗って待っとけよ!」」」

「断る!」


 ゲームなのに殺気を凄い向けられてるのが分かってしまうのだが、これは脅迫と受け取っちゃっていいのかな?そうとなれは早速GMに連絡だ。

 とか、バカなことを考えてないで一回戦線から下がって休憩しよう。

 ちょうどマドイさんの矢筒に入っていた矢を撃ちつくしてしまったみたいだし、タイミングもいい。


「矢が無い」

「え?予備とかも無いの?」

「ん」

「そうか、じゃあ買ってくるなり支給されてるのを取りに行くなりしないと行けないね。僕が行ってこようか?」

「自分で行く」

「待った待った、お前ら2人は死に戻りもしてるし、要塞内部に侵入したから精神的に疲れているはずだ。ここは俺が行って来よう」

「ありがとう」


 マドイさんからありがとうと言われたケイは、少し顔を赤くしてダッシュでこの場から立ち去る。

 僕も魔法の改良をしておこう。

 有志のPL達の形成した陣地に戻ると、ウェイルズさんが歩いているのが見えた。あの人今までどこにいたんだろう。


「あ、ウェイルズさん。見かけなかったけど?よかったら僕達とパーティを組んでください」


 そう声をかけたらいきなり頬を張られてた。なぜ攻撃されたのかが全く分からない。この理不尽に僕は怒ってもいいんだと思う。


「何をするんですか!」

「すまん。ついうっかりイラついてな。悪いとも思ってないし反省もする気は無い」

「ちょっ!」


 こちらの抗議にどこ吹く風な態度でスルーしてくるウェイルズさんにさらに文句を言うも、初めから何も聞いていないみたいで、僕は文句を言うことを諦めた。

 こちらの抗議中に立ち去ろうとしたウェイルズさんの服のすそをマドイさんが掴むと、めんどくさそうに振り返ってくる。


「・・・」

「話してくれないか?」

「二人足りない」

「何が」

「パーティメンバー」

「あれか?俺に入れと言ってんのか」


 無言でうなずくマドイさんに逡巡するウェイルズさんだが、何かを感じ取ったのだろう。首を僅かに左右に振ると、あっさりとマドイさんの申し出を断った。


「・・・そう」


 少し悲しそうな顔をするのを見て、良心が痛むのだろう。微妙な顔をしている。

 あ、ケイが戻ってくるのが見える。あれ?マドイさんのこの顔見たらキレるんじゃ・・・。


「マドイさんどうしたんだ!」

「ほら、烏丸落ち着いて。深呼吸はい、吸ってー、吐いてー」

「いやいや、なんでそんな残念そうな空気を漂わせてんだ?」

「パーティ申請断られただけだよ。向こうにもいろいろあるんだからその程度で怒ったらダメだよ」


 案の定ウェイルズさんに詰め寄るケイの前に立って抑えることに従事していると、背後から驚くような顔で見てくる。待った待った、何でそんな驚いた顔で見てくるのさ!ん?小声で何か呟いてるな。


「赤髪が常識人だと?嘘だろ、いきなりスライム相手に死に戻りするような奴だぞ」


 メチャクチャ失礼なことを呟かれてる!?確かにスライム相手に死に戻りしたけども。だからってイコールで常識人じゃないわけじゃないよ!


「あの、全部聞いてるんですけど」

「・・・悪いな」

「そんな哀れんだ目をしないでよ!烏丸だって死に戻りぐらいするじゃん!」

「スライム相手には・・・」


 ウェイルズさんの呟きがケイにも聞こえていたみたいで、僕に送られる哀れみの視線。

 元凶を睨み付けると、バツの悪そうな顔で頭を掻いている。

 しかし、何かに気がついたのか急速に顔を青ざめさせると、背中を向けてこの場を立ち去ろうとする。


「何そいつ?まさかとは思うけど烏丸君を困らせてるんじゃないでしょうね」


 ん?姉さんはいつの間に近づいていたんだろう。

 ウェイルズさんに文句を言いつつも、視線をケイから一切はずさないというマネをしているのに、威圧感が半端ないのですが・・・てか怖い。怖すぎるよ!もうストーカーって言ってもいいレベル。まさか足音を殺してずっとケイの跡を付回してたとかじゃないよね?

 姉さんが来てからケイがゲッソリとした顔に変わっていってるんだけど。


「いえ、俺は別の場所に用がありますので。それではここで」


 端的にそれだけを告げると、ウェイルズさんはこの場から立ち去っていった。

 うまく逃げたな。

 ウェイルズさんがいなくなると同時にケイに絡み始める姉さん。

 必死に距離を置こうとするケイ。

 ついにはケイが走り始め、姉さんがそれを追いかける追いかけっこが勃発。

 ものすごい形相で逃げるケイを、満面の笑み(足音無し)の姉さんが追いかける恐怖の図に、第3者の関係ない立場から見れるマドイさんは、それをどこか楽しそうに見ている図が完成した。

 その光景を見た僕は遠い目をして空を仰いだ。

 VRの夜空はこんなに綺麗なんだなー。

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