防衛七十一回目
ドワーフ達の操る移動要塞に侵入することに成功・・・しません。
前線でおしくらまんじゅうをしていたドワーフをPL共々吹き飛ばしたまではよかったのですが、後から後からとめどなく出てくるんだけど。そう、まるで1匹見かけたら30匹はいると思えと伝えられるあの黒光りする悪魔のごとく!
なので、片っ端らからアイシクルジャベリンでけん制射撃をしています。
ああ、こんなことなら前線で戦っていた人たちを纏めてなぎ払わなければよかったよ!せめてアイシクルボムに留めておくべきだった。しかもキャノンの方はMP消費が激しすぎるせいでけん制しか出来ない。
くう、いくら気持ち悪いものを排除するためとはいえ、浅はかだった僕をぶん殴ってやりたい。
それでも後悔も反省もしてないけどね。僕の精神のためには必要だったんだ。
さて、今僕達がすることは、前衛を出来る人が戻ってくるまでの時間稼ぎぐらいだ。この場から後退したらすぐに大量のドワーフ達があふれ出てくるだろう。
「もうMPが切れちゃいそうなんだけど、どうなかできそう?っていうかなんで前衛の人が誰も来ないのさ!」
「あらかた全滅させたから」
「だとしても、死に戻りから戻ってくるのに時間かけすぎじゃない?ここまでだったら大した時間もかけずに来れるよ。たとえ自分のパーティとかの再編があっても、そろそろ誰かが来てもいいころ」
「・・・ヤマトを警戒してる」
「なんでさ!僕何かした!?」
「・・・胸に手を当てて考える」
「はい、そうでした!僕の魔法が原因でした」
じりじりと後退をしながらけん制を重ねていたんだけど、なぜかドワーフ達が急に魔法や、矢を食らいながらも突っ込んできた。
NPCからしたら相当痛いはずなんだけどな。現にアイシクルジャベリンが胴体に突き刺さっていているドワーフは顔を歪めているけど、そんなのおかまいなしに接近してきてる。
「どうする?とどまって死に戻りするまで戦う?それとも逃げちゃう?僕としては貴重な死に戻りのうちの1回をここではあんまり消費したくないんだけど」
「撤退する」
僕はMPを全部使う気で魔法を使いまくり、マドイさんも今矢筒に残っている矢を速射して攻撃をする。
少しでも相手の行動を阻害できたらとの考えだったのだが、それでも関係無しに突貫してくるドワーフ達の姿を見て、背筋に寒いものが走る。
「マドイさん!大きいの撃つから全力で走るよ」
「ん」
うなずくマドイさんを確認すると、アイシクルボムを放ち、背を向けて全力で駆け出す。
下手したらここまで範囲内だからね、マドイさんも悪い意味で察していたみたいで僕がアイシクルボムを使ったことが分かった瞬間に背を向けて走っていた。
もう、それは見事な走りっぷりです。
もちろん僕も全力です。それでもマドイさんよりかはよっぽど走る速度が遅いようで全く追いつけない。
結果、僕は自分の魔法の余波を受けました。ダメージ?自分の魔法だから無いに決まっているじゃないか。爆風でちょっとした事故が起こりかけただけだよ。詳しくは言えません。言いません。
「あー、少しここから戦況を見てようか」
「疲れた」
「・・・マジすいません」
反射的に謝った僕に対して不思議そうに首を傾げて見つめてくるけど、目を逸らしてしまう。何か悪いことをしてしまった気分になってしまう。
・・・とりあえず切り替えよう。MPを回復させたら、またすぐに攻めよう。相手に休む暇を与えちゃダメだと僕は思うんだ。
先ほどまで手を出してこなかったPLの内で、いくつかのパーティが出てくるドワーフを押さえ、攻撃を加え始めているのを見ながら、休憩をしておく。休憩ついでに、魔法媒体を取り替えてこの要塞を攻略するのに使いやすい魔法に切り替えよう。
MPが回復するまで、うんうんと頭を捻りながら考えていたけど、Dランクの魔法媒体が残っていることを思い出したので新しく作ることにした。
ドワーフ達がガッチリしているからなのか、全身鎧を装備しているのが多いんだよね・・・。跳弾する魔法でも作ってみようかな。うん。いいかもしれない。
想像力をかきたてよう。氷の弾丸が硬いものに当たったときだけ跳ねる様を。そうだ、当たったときに強い衝撃を与えるようにしてしまおう。
あ、跳弾しているかぎり弾が消えないようにしてと・・・MP消費が激しすぎるから射程を短くしようかな。・・・どれくらいの射程にすればいいのか分からないから、使っていく中で調整をしていけばいいかな?いやまてよ、先頭の奴だけに当てたらそのままこっちに帰ってくる可能性があるような・・・。そうだ、最初の弾だけは山形の軌道を描くようにしたらいいんだ。
うん、だいたいイメージ出来たから作っていこう。
MPも全快したことだし、行こうか。
少数のプレイヤーで抑えている場所までたどり着くと、アイシクルボムを敵集団の奥のほうに放り込み、敵味方問わず混乱しているところに先ほど作ったアイスショックの魔法を叩き込む。
ゆったりとした速度で山形の軌道を描いた弾は、アイシクルボムの爆風をギリギリのところで浴びなかったドワーフの丸まった背中に直撃。そこからピンボールのようにあっちこっちに衝撃を撒き散らしながら跳ね始めた。
すごいや。ドワーフ達がボーリングのピンみたいになぎ払われていくんだよ!おかげで先に進めないけどね!!
やっぱりここは一定回数跳ねたら消えるように設定するべきだったようだ。消費MPもかなり大きいし。てか、すでに半分切ってるんだけど。
改良するべきだと判断しました。
と、ここまでゆっくりと考えてたんだけど、いまだに消えずに衝撃を巻き散らかしている。あれ?壁に当たっても消えてない?
あの魔法を弾くのって外だけなんだ。これはいいことを知ったぞ。中だったら壁とか床に干渉する魔法を使えるということだね。
アイシクルボムの魔法媒体を取ると、別のものをセットする。
準備は完璧だ。後は殴りこむだけだ!!
・・・ケイと姉さんはどこいった?特に姉さん。前衛がいないと話にならないよ!!暴れすぎるところは問題だけど、割と優秀な前衛なのに!!
今度はちゃんと侵入することが出来た。
ええ、アイスショックの跳弾が敵をなぎ倒した後にPLの群れに突っ込んでたけど、あれは気のせいだということにしておこうかな。
「おい、こいつを使ったのお前だろ。止めろ!!」
「・・・しばらく何かに当たらなかったら自然消滅するよ」
「今すぐ消せ!!」
「こっちから干渉できないんだ。ごめんね」
「「クソがあぁぁぁぁぁぁ!!」」
君達の怒りももっともだと思うよ。でもね、短い射程の中、何にも当たらなかったときのみ消滅する設定にしちゃったんだもん。
射程?約5mだよ。遠距離攻撃が基本の魔法使いにしては短い射程でしょ?
後君達ナイスシンクロ。仲良いね。
「早く。次が来る」
「分かった。すぐに行くよ」
「くそ、こっちには一方的に迷惑な魔法を残していったあげく、お前銀髪美少女と同行だと?ふざけるな!」
「お前絶対にKLするからな!これは決定事項だ!」
「夜道に気をつけるこった」
「PKに堕ちてでもお前をKILLしてやる!」
賑やかなようでなによりです。
どうしよう。このイベントが終わった後1人で外を出歩けなくなってそうなんだけど・・・。
今は攻略に専念だ。皆さん。僕達は先にもぐらせてもらいます。きっとすぐに他のドワーフが来るかと思いますが、処理を頼みます。
アイスショックの洗礼を受けているPLの皆様に敬礼をすると、怒号と罵倒のエールを頂戴しました。
なんで?




