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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛七十回目

 僕達が戦場に到着したときにはすでに戦端が開かれており、ウッドロックの町に在住しているギルドがドワーフ達と全面でぶつかっていた。

 最前線に押し出された盾持ち(タンク)のPLが、要塞の窓から飛んでくる弾を必死になって防ぎ、後衛の弓や魔法を使う人たちが窓めがけて矢を放っているが、中には普段は別の武器を使っている人がいるのだろう。見当違いの方向へ飛んで行ってしまっている。

 それでもドワーフ達の銃は一定以上の被害を出し続けている。その被害を少しでも抑えようと、エルフが魔法を要塞に撃ち込むも、僕の使った魔法みたいに霧散し、対した成果を出せていないみたいだ。運営の性格の悪さがにじみ出ているような・・・。

 と、ここでタンク役の人たちのHPを回復させるためなのか、魔法で作られた壁がドワーフ達との間に次々と出来ていく。

 しかし、魔法を使える人自体が少ないのだろう。作られた壁はあえて高さを抑えて横に広げたものになっている。身長の低いドワーフには十分なようで、乗り越えてくるようなものはいない。

 もちろんこちらから向こう側を伺うのは難しくなっている。要塞にある窓の、上のほうに陣取っているドワーフ達が銃弾を打ち込み続けているからだ。

 弓を持っているPL達も矢で応戦するも、そこまで成果は出ていないみたいだ。


「ん?烏丸君。今何か叩く音しなかった?」

「前線で戦っている人たちじゃないの?」

「ヤマトには聞いてないわよ」

「・・・」


 黙り込んでいると、ドン、と大きな音が僕の耳に届いた。

 ほら、私の言ったとおりでしょ。と、ケイの方を見ながら言う姉さんは放っておいて、最前線に張られている壁に目を向けると、一部を無理やり壊して雪崩れ込んで来たドワーフの一団が、HPを回復中のPL達に襲い掛かろうとする。

 慌てて後退するPLの中から1人の男性PLがゆっくりと前に出て行く。

 ドワーフはそれを格好の獲物だと判断したのだろう。その人物の元へと殺到していっている。

 しかし、前に出たPLは戦闘のドワーフの攻撃を処理して短槍を突きこんで倒すと、攻撃を捌き始めた。

 多対一にでも慣れているのか、囲まれているのに見事に対処してみせ、押さえ込んでいる。

 そんなPLを脅威と判断したのだろう。

 囲みを分厚くし、次々と命も恐れぬ特攻を開始して少しでもHPを削りにかかっている。


 NPCって死んだら復活しないから、こういう時って慎重に行動するんじゃ・・・それに、このイベントの戦端はまだ開かれたばかりだ。それなのにこんな調子で人数を減らしていたらすぐに息切れしちゃうと思うんだ。


 首をかしげながら、そのドワーフの囲いの外側に向けて魔法を撃ち込んでいると、誰かが囲いの中に無理やり突貫して暴れる。

 あそこだけ無双ゲームになってしまっているのですが、そうだ、姉さんも入れればもっとそれらしくなるんじゃないかな。

 適当にそう考えているうちに、どこかで見たことのある金髪の男のわき腹に槍が突き刺さっていた。


「ウェイルズさん?」

「・・・ああ!本当だ!なんであんなところに」


 ドワーフの肩に足をかけて空中に身を躍らせながら敵を切り裂き、銃弾から身を守っている金髪の男は確かに僕達がよく知るウェイルズさんだ。てか、あの戦い方とか牛若丸か!

 内心で突っ込みをいれている間に、おいていかれた形になっていた短槍使いの男が、ドワーフを蹴散らしながらウェイルズさんに合流していた。

 ウェイルズさんの八艘飛びじみた動きの攻撃と、短槍使いの蹴散らしで完全に戦線の統率が乱れた敵は、体勢を立て直すためなのか、下がっていく。

 そして、とっくに体勢を立て直していたPL陣は、その隙を見逃さずに一気に攻め込んでいく。


 乗るしかないこのビックウェーブに。


 一歩踏み出そうとするも、気がついたら皆とっくに乗ってました。この場に残っているの僕だけです。完全に乗り遅れました。

 後衛役の人たちですら、戦線を押し込むように、ある程度前進してから攻撃をしています。

 1人ぼっちは寂しいな~。

 あ、ケイと姉さんが前線に到達してる。マドイさんはすでに矢を射かけてるし、僕完全においてかれてるね。

 膝を抱えて座り込みたくなる衝動を必死に抑えながら、マドイさんの隣まで歩いていく。


「遅い」

「すいません。ちょっと周囲が見えてませんでした」

「早く援護」

「はい」


 口答えは一切せずに、淡々と魔法を使って攻撃を加えていく。要塞本体は狙わずにドワーフを狙うようにしているけど、やっぱり効率は少し悪いかな?

 あの要塞本体に魔法で直接ダメージを与えられたら気持ちいいんだろうな~。


 相手の前線があらかた崩壊させたPLたちは、我先にと入り口に殺到しているが、思うように攻められていないみたいで、じわじわとHPを削られて死に戻りしてしまっている。

 というか、入り口でおしくらまんじゅうしているようにしか見えないんだけど。

 その団子になっている集団に銃弾が突き刺さっていき、HPを減らしている。ここから見たら、滑稽な喜劇にしか見えないよ。

 やっぱりああいった入り口は侵入できる人数に限りがあるから一気に人が雪崩れ込んだらダメだよね。少数精鋭で侵攻の後に少しずつ人員を増やしていくべきだと思います。

 まあ、兵法に全く詳しくないからなんとも言えないんだけどね。

 じゃあ、そろそろ僕達もあれに混ざろうかな?人が大分減ってきてるし。

 魔法を直接中に打ち込めばダメージも入る可能性があるかもしれないからね。


 というわけで、入り口が見える場所に移動してきました。ウェイルズさん?いつの間にかいなくなってましたよあの人。いったいどこで戦ってるんでしょうね。まあ、また厄介なことになっちゃってるとは思いますけど。

 入り口から少し入ったところでは見たくない光景が・・・。

 明らかに体格のいいPL(男)達が大きな盾を構え、ドワーフの一団と押し合いへし合いしている。さらに飛ばされる怒号と叫び声、中には変な風に衝撃があったのか、危ない声を出してしまっている人たちも・・・。そういった知識がある正常な人にとっては、完全に毒にしかなっておりません。

 これほどVRであることを嘆いたのは、前に溺れた時ぐらいだ。だって、吐きたいのに吐けないんだもんよ。

 マドイさんも顔色がちょっと悪いように見えるのはたぶん気のせいじゃない。


「ヤマト君」

「・・・なんでしょう」

「丸ごと一掃出来る?」

「もちろん」


 うなずいた僕に出された合図はGOサイン。

 これに関しては僕に否は無かった。


「『アイスキャノン』」


 とりあえずアイシクルボムの雛形である、広域殲滅魔法でなぎ払うことにした。爆風の範囲と威力を必要以上に高めた一品です。

 やや山形の軌道を描いて要塞の入り口へと飛び込んだこぶし大の氷球は、見事集団の中心に着弾、一気に破壊の嵐を周囲にばら撒いていった。

 一瞬で阿鼻叫喚の地獄絵図に変わった戦場を一度見返すと、僕の心の中に満足な感情が広がっていく。なんだろうこの気持ち。不思議だなばぁ!


「やりすぎ」

「腰がががが」


 マドイさんから怒られてしまいました。

 汚いのは全部排除したんだからいいじゃないかとは思うんだけどね、魔法の規模を思い返して、今の入り口の現状を見直してみると、うん、やりすぎたかもしれないや。けど後悔も反省もしていない。


「いくよ」

「OK、さっさと攻め入ろうか」

「ん」


 前衛の2人が今どこで何をしているかは知らないけど、HPバーがまだ残っているということは、どこかで戦っているということだろう。けど、結構HP減っちゃってるみたいだけど大丈夫かな。

 今は気にしてもしょうがないか。できるだけ死に戻りをしないようにしながらこの要塞を攻略しなくちゃ。



 ・・・やっぱりもう少し人員が欲しい。

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