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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛六十九回目

「しっかし、ありゃあデカいな。どうやって作ったのかが気になるぜ」


 町を囲む壁の上から十分見える巨大な要塞を見て、ササの放った一言である。

 一通り観察をすると満足したのか、壁から降りていった。

 一応護衛でもある僕は、そんなササの後をついて行く。次にササが向かったのは装備品の製作、修理をしている工房。

 中には数人のエルフが、PLから渡された武器防具の耐久を回復させるために必死で修復している。

 ササは少し手の空いてそうなエルフを見つけると、何事かを相談し始めた。相談の内容を聞いていいものか悩んだ僕は、とりあえず内容が聞こえない場所まで下がることにしよう。


「んじゃ、私はここに少し用事があるから、今日はもう大丈夫だぞ。後は宿に戻るだけだ」

「分かったよ。それじゃあ宿に戻るときも気をつけてね」

「おう」


 今日はもう遅いし、僕もログアウトしよう。

 ・・・僕の分の晩御飯ちゃんと残っているだろうか。



 ●●●



「今頃来て晩飯だと?全部片付けたに決まってんだろ!」

「ですよねー」

「あんだけ呼んだってのにゲームに夢中になって聞いてなかったんだろうが。結城は呼んだらちゃんと来たってのに」

「その姉さんの所為でログアウトできなくなってたんだけどね」

「言い訳を聞く気は無い。さっさと風呂入って寝ろ」


 すごすごと部屋に戻ろうとしたが、玄関前でちょうど帰ってきた父さんと遭遇した。


「・・・勇人、そんなにしょぼくれてどうした?」

「あ、父さん。なんでもないんだ。ちょっとやらかしちゃっただけで」

「そうか?ならいいんだが・・・」


 うん、父さんもそれなりに扱いが酷いからね。我が家のヒエラルキーは男がひたすら低い。これは親戚の皆様にも言えてしまう。

 空腹を紛らわそうと、ゲーム内の食べ物を食べたけど、ログアウトした後空腹感が増してしまった。



 ●●●



 いよいよイベントが始まるのかな?ウッドロックのとある広場に、PLや、NPCが集められている。

 僕はパーティでいるわけではなく、完全にはぐれて1人でこの場に立っている。人の波って怖いね、あっさりとマドイさん達との間に人の山が出来上がったもん。

 PLは興奮気味に近くの人と話しているけど、NPC、特にエルフの人たちが震えを抑えるように強く武器を握りしめていたり、あえて大声で話していたりと緊張しているみたいだ。

 そんな緊張に包まれた広場に設置されている朝礼台のようなものの上に、エルフの女性が1人上った。

 エルフはその人が出てきたことにより落ち着いていき、PLはその美しさに目を奪われるものと、ようやくイベントが始まると戦意を高める人たちの2種類に分けられた。



「お集まりありがとうございます。私はメシュリカ、このウッドロックの町の領主を勤めています。今日集まってくださった冒険者の皆様もご存知のとおり、この町は危機に瀕しております。この危機から脱するために、我々に皆さんの力を貸してください」


周囲のテンションが一気に高くなった。あれほど綺麗なお姉さんからの頼みだから、男性陣のボルテージが限界値を突破したみたいだね。中には結婚してくださいと叫び、周囲のPLとエルフの皆様に殴られている。


「皆さんには支援物資として、アイテムを支給します。なんとしてでもあの移動要塞を破壊してください。お願いします」


 そう言って頭を下げるメシュリカさんを見て、エルフの人たちが慌てたような動きを見せている。やはり国のトップが頭を下げるのは異例なんだろうな。

 と、ここでアイテムが届いたと運営からの連絡があったので確認すると、乳白色の珠の形をした蘇生アイテムが3つに、各種回復アイテムなど戦闘に必要なものが入っていた。

 おお、金欠になりやすい僕にとってはありがた過ぎて涙が出てくる。

 さて、これで解散するみたいだし、早く合流しちゃおう。ササの泊まってる宿屋に行けば合流できるかな?


 宿屋に到着した時点でフレンド通信が入り、どこにいるか尋ねられた。これのことを完全に忘れていた僕に対して、合流した姉さんから冷たいまなざしを頂戴した。

 こんな姉さんに告白したダグロの気持ちが一片たりとも理解できないのは僕だけじゃない、絶対に僕だけじゃないはずだ。


 とりあえず一度ササに会っておこうということで宿屋の中に入るも、部屋の中には誰もいなかった。

 机の上には書置きがしてあり、『知り合いと会った。そいつの部屋に遊びに行って来る』と書いてある。紙の下の方に番号が書いてあるので、おそらくこれがササの知り合いが泊まっている部屋なのかな?

 ケイの方から早くイベントに参加したいという感情がひしひしと伝わって来るので素早く行動したほうがよさそうだ。

 その部屋を勢いよく開けると、中にはササと、何度か会った事のあるNPCであるアリシア。そして、なぜか床にぐったりと横たわっているウェイルズさん。


「・・こいつ何?なんでこんなところでぐったりしてんの」


 姉さんの一言でフリーズしていた僕の頭が再び稼動し始める。


「って、ウェイルズさん!?何やってんの」

「ヤマト、こいつ知り合い?」

「うん。この前パーティを組んだ仲だよ」

「で、その人物がなんでこんなところで転がっているわけ?」


 ウェイルズさんは震える手でササを示したので、原因はきっとササなのだろう。

 そして、そこで力を使い果たしたのか、ウェイルズさんの手が力なく床に落ちる。

 僕はウェイルズさんに駆け寄ると、ウェイルズさんの頭を僕の膝に乗せ、ウェイルズさーんと上を向きながら叫ぶ。

 その様子に吹き出しそうになるケイ。


「また組む?」


 あほな事をしている僕を完全に放置して、マドイさんが空中に指を走らせる。

 指の動きが止まったところでウェイルズさんの顔が真剣になったのできっとパーティ申請を送ったのだろう。


「却下だ。俺は1人でやる」


 僅かに逡巡するも、すぐに拒否をしてきた。

 まあ、そういうこともあるだろうと僕は判断し、マドイさんもそれに納得したみたいだ。若干残念そうな空気をかもし出してるけど。

 ここで落ち着けばよかったのだが、これに黙っていられない奴がいた。


「マドイさんの勧誘を跳ね除けるってどういうことだ手前!」

「そうよ!何烏丸君を怒らせてるのよ!」


 あれ?ケイってマドイさんのことを好きなのはなんとなく分かるんだけど、ここまで信者やってたっけ?あと姉さんは全く関係ないことで怒り始めてるんだけど、どうやって止めればいいでしょうか?

 しかし、姉さんの発言でケイはウェイルズさんを追及するどころではなくなり、ゆっくりと姉さんから距離を置き始める。だが、置かれた分の距離と同じだけ距離を詰める姉さんの図を見て、頬が引き攣る。

 視界の端に写ったマドイさんが、手を合わせて合唱をしているのを目撃し、僕もこれに便乗する。気がつくとウェイルズさんもしていた。


「そんじゃ、俺はそろそろ行くわ。アリシア、ササ。また後でな」

「あ、ちょ」


 しばらく3人で合唱をする怪しげな風景を作り出してたけど、ウェイルズさんが突如離脱を宣言。部屋から飛び出していく。

 止めようと声をかける暇が全く足りなかったな。


「そ、そうだ、マドイ。こいつでちょっと戦ってきてくれないか?」

「ん?」


 ササがマドイさんに渡したのは例の試作弓。

 戸惑いながらも受け取ったマドイさんは、何度か弦をはじいて感触を確かめている。その顔は凄い真剣だ。


「7割方完成しているんだが、細かい調整とかをするためには、実際に使ってみてデータを集めた方がいいんだ。だから普段よりマドイのパフォーマンスが落ちちまうかもしれないが、試してみてくれないか?」

「ん。私のためにやってもらってるから当然」

「ありがとな。それと、ユイシロ!お前の槍だ」


 続いて、部屋の隅に追い詰めたケイに、今にも飛び掛らんとしていた姉さんめがけて槍を放り投げる。ケイから一切視線をはずさずに後ろ手で受け取った姉さんのスペックに驚けばいいのか、生まれたての小鹿のごとく震えるケイに同情すればいいのか分からない光景だね。

 姉さんとしては水を挿されたからなのか不機嫌そうな表情になっている。


「何かしら?」

「お前の槍だよ。感触はどうだ?」

「・・・少し重くなってるわね。私としてはこのぐらいの重さが一番使いやすいわね」

「それは何よりだ」


 ササは満足のいく仕事が出来たのか、にこやかな顔をしている。

 昨日の夜に到着してからこういったものを完成させたということは・・・あれ?ササってほとんど寝てないんじゃ・・・。


「準備はもう終わったってことでいいのか・終わったんだったら早く行こうぜ」

「そうだね。じゃあ行こうか」


 まだ色々と考えなきゃいけないことはありそうだけど、アバターとはいえ、ケイの貞操が拙いことになりそうだから、姉さんをイベントの方に集中させなくちゃね。


 こうして僕達は他のPL(プレイヤー)に大きく遅れつつも要塞が鎮座している場所へと駆け足で向かう。

最近はまってしまったもの


辛いジンジャーエール。

他の方の小説。

時間を食いつぶす悪魔 elona

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