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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第1章 初めてのVRゲーム
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防衛六回目

 僕は今草原を歩いている。スライムぐらいは蹴散らせるようになったからそろそろ森に行こうという話になったのだ。ちなみにLVもちゃんとあがった。

 そういえばなんでステータスにHPとMP以外が表示されないか聞いたところ、目に見える形では表示されないそうな。プレイの過程で自分のステータスが上昇しているのを感じてほしいそうだ。そして今のステータスは…。


ネーム:ヤマト


LV:3


HP:230

MP:370


装備:見習い用おもちゃの杖

   見習いのローブ

   ベルト

   見習いのズボン


メイン称号:初心者

装備称号:【迷子】・弱者・水の使い手


 …迷子ってなんじゃあああ。こんな称号速攻で外してやる!僕は迷子の称号をさわるが、新たに出てきた表示枠(フレーム)にあった外すの表示が、真っ白に染まってしまっている。なんで?

 しぶしぶ、そのすぐ上に表示されていた詳細に触ると、


称号:迷子

 町の中で迷った者に与えられる称号。クエストをクリアした際の町人からの信頼度の上昇が大きくなる。

※滞在している町の信頼度が一定値に達するまで外せません。



 なんだろう、運営の悪意が滲み出ている気がしてならない。外せない称号って枠を圧迫するんじゃないのかなあ。


「マドイさん、なんか固定で外せない称号があるんだけど?」

「そう」

「いや、どうしたらいいのかなって…。」

「条件を満たすまで解除はされない、でも救済措置で二つまでは装備としてカウントされないから圧迫はされてないはず」


 これは運営からのあまり変な行動をするなという忠告なのかな?

「あえて強制固定の称号だけでプレイする、縛りプレイを楽しんでいる人もいる」

「VRで縛りプレイってどんな猛者?っていうよりも確かこのゲームって、ベテランって呼べる人いないんじゃなかったっけ?」


 マドイさんは頷いて肯定した。

「ただのMな人ってこと?」

「きっと他のVRゲームで慣らした人が、なめてかかった結果だと思われる」

「あれ?でも称号って自分で取り替えられるんじゃ」

「解除条件が困難なものばかり残っている」

「ああ」


 納得した。解除条件が困難すぎて、称号を外せずに枠をすべて埋めてしまったいるということか。

 僕がマドイさんに色々聞いているうちに森に着いてしまった。ここからが本番だ、なんせここのMOBはアクティブMOBだ、後衛職二人組みの僕らからしたら、見つかる前に遠距離から攻撃を打ち込むしかない。接近されたらスライムにすらやられた僕が生き延びるすべはないだろう。草原ならともかく、森だとマドイさんもやられてしまうかもしれない。


「そういえばマドイさんのLVってなんなの?」

「ん?ちょっと待って」

 マドイさんは何かを操作し始めると、僕にもマドイさんのステータスが見えるようになった。なになに、


ネーム:マドイ


LV:10


HP:1000

MP: 300


装備:鉄の弓+2

   ターゲットピアス+3

   草食竜の小手+1

   鉄の胸当て

   毛皮の腰巻+5

   コウモリ比翼の臑当て

   風読みのリング+4

メイン称号:弓使い

装備称号:風読み・クール・固定砲台・冒険初心者・【最古の帰還者】



「えっと、この装備の横にある『+』って強化の回数だよね?」

「そう、ちなみに装備によって上限がある」

「あとこの最後の、【最古の帰還者】ってなに?」

「詳細見てもいい」

「じゃあ遠慮なく…」


 僕はマドイさんのステータス表示枠(フレーム)に触れて詳細を確認する。


最古の帰還者

 サービス開始時二週間以内にプレイを開始した人が半年以上の期間を開けてログインしたときに現れる称号、特殊な効果は特にない。

※外すためには一週間の連続ログインが必要



 こんだけのたいそうな名前を持っておきながら、効果が何もないってサギ?きっと飾り的な意味合いもあるのだろう。それでも僕の称号よりよっぽどいいものがそろっている。どんな行動をしたら、こんだけの素晴らしい称号が手に入るのだろうか。


「ファルフラムの森に入るから杖抜いといて」

「了解しました!!」

「そんな大きな声を出したら…」

「え?」


 ファルフラムの森は見た目樹齢が何年だかわからないほどの巨木で形成されている。その巨木の陰から、体表が緑色で、体長が僕の腰ぐらいのサイズしかなく、尖った耳、顔のサイズに比べて大きめのギョロ目、目の色は黄色く濁っている。さらに手には粗末な剣や槍、盾や弓矢を持っておりボロ布を纏っている。きっと様々なRPGで序盤の敵を務めるゴブリンと呼ばれる種族だろう。


 そんなゴブリンが計七体ほど巨木の陰から出てきた。ちょっと待て、多すぎやしないか?普通だったら、こういった入り口付近で、出てくる量といったら多くても二~三体じゃないのか?

 ゴブリンどもは、僕達を補足すると、僕達の方へと五体ほどが素早く駆け寄ってくる。予想していたよりもずっと足が速い。さらに、その場に残った二体は、粗末な弓を構え始めている。


「魔法で足止め、弓持った奴は私がやる」

「りょ、了解」


 マドイさんの指示を受けた僕は、一箇所に固まって接近してきているゴブリンの集団のど真ん中に、魔法を撃ち込むことにした。


「僕の魔法をくらうがいい、『アイス』!」


 やっぱり魔法を唱えるのって気持ちがいい、きっと中二病に罹患している人はみんな魔法職をするのだろう、そして思う存分技名を叫べるなんて、最高だ!!


 僕の使った魔法は、氷の塊がそれなりの速度で飛んでいく魔法である。氷の塊がゴブリンの群れのど真ん中に突き刺さる。

 この魔法でゴブリン五体のうち、二体を下敷きにすることに成功した。しかし、残りの三体が潰れた仲間を見ても気にせずに突っ込んでくる。何で止まらないの!?

 さらに都合の悪くなるようなことは重なるみたいだ。下敷きにしたはずのゴブリンが、起き上がって駆け出し始めたのだ。確かに速度は遅くなってはいるが、それでも時間稼ぎにはそれほどなっていない。どうやら怪我はしたけど致命傷には遠いみたいだ。


「こっちは片付いた、私が引き受けるから、私に当てないように魔法を撃ち込みまくって」

「分かったよ」


 マドイさんは素早く矢を番えると、ゴブリンに向けて連続で矢を射る。これで先にダメージを与えていたゴブリンは倒れた。残りは三体、マドイさんは三体の気を引きながら、回避行動を続ける。そして、マドイさんを追うことで動きが単調になるゴブリンに、確実に『アイス』を叩きつけて倒していく。

 遭遇から五分とかからずに、ゴブリン七体を全滅させた。きっと僕一人だったら、また町に死に戻りをしていたことだろう。


「今回は何とかなったけど、あれ以上の数を引き付けてって言われても出来ない」

「そりゃそうだよね、僕達は後衛職だし、寧ろよく後衛職で三体も引き付けられたね」

「こ、これぐらいなら簡単」


 おお、マドイさんが照れくさそうにしている姿を見れるなんて、レアすぎる。SS(スクリーンショット)ってどうやって撮るんだっけ?


「そんなことより早く森に入る」

「分かったよ。そうだ、後でSS(スクショ)の撮り方教えてよ」

「それは自分で模索して」


 マドイさんは先に森の中へと入っていった。僕はそれを慌てて追いかけて森の中へと突入していった。

 森の中は巨木で構成されているためか、適度に光が入り込んでいて思っていた以上に明るい。寧ろそれが幻想的な風景を作り上げていた。

 巨木には相応の葉が付いていて、普通なら光の入る余地がないはずである。しかし木と木の感覚が開いているため、葉の隙間から光が線状になって降り注いでいる。運営はこれを狙ってやったんだとしたら、僕はもう見事としか言いようがない。


 すると、隣りからカシャッという音がした。きっとマドイさんがSS(スクショ)でも撮ったのだろう。

「マドイさん、僕も撮りたいから、SS(スクショ)の使い方を教えてください」

「ダメ、後で取った画像は送るからそれで我慢して」


 違うんだ、僕は確かに風景の画像も欲しい。けど、そこにマドイさんも写りこんでいたらもっと嬉しいんだ!僕がそう考えていると、またカシャッという音がして、すぐに画像の添付されたメッセージが届いた。添付されていた画像には、僕の顔が写っていた。


 若干ニヤけて、赤い髪と合わせて、見方によっては刑務所に行った方がよいかもしれない表情だった。何これキッモーイ。


 自分のニヤついた時の表情が、思っていた以上にヤバかった事にうちひしがれていると、マドイさんが弓を引いて、矢を放った。

 反射的にそれを目で追いかけた僕の目に飛び込んできたのは、弓を引いていたが、マドイさんの放った矢が刺さったせいで、消えてゆくゴブリンの姿だった。何時の間に…。

 しかし同タイプのゴブリンがまだ数体いる。僕は慌てて魔法を唱えたが外してしまった。


 落ち着け、落ち着けば絶対に当たる。


 マドイさんの速射で、ゴブリンは攻撃する間もなく数を減らしていく。しかし、残った一体が今まさに矢を放とうとしている。これを外したら、本来なら受けなくてもいいはずのダメージを負ってしまう。これは絶対に外せない。


「『アイス』!」


 今度はちゃんと落ち着いて魔法を唱えることが出来た。おかげで、ゴブリンの放った矢と衝突し、それに打ち勝ってゴブリンへと襲い掛かった。しかし、矢のせいで攻撃力が少しそがれてしまったみたいだ。だから僕はもう一度魔法を使い、止めをちゃんとさした。


「ふう、どうなるかと思ったよ」

「始めからもっと落ち着いておくべきだった」

「…そういえば調査って何するの?」

「露骨に話をそらさない」

「いや、でも、気になるじゃん」


 マドイさんからしょうがない。という空気が出ている気がするが、ちゃんと解説してくれた。


「調査系のクエストは、クエストメニューに表示される達成率のゲージを最大まで上げてから依頼主に話しかければクリアになる。ただし一度でも死に戻り(バックレヴィバル)をしたらゲージは0になる」


 なるほど、クエストメニューを見てみると確かにある。今は30%となっている。さらに達成率のゲージをためる方法は何種類かあるそうだ。


1.調査地を歩き回るなどの移動。

2.調査地で採取などの行動をする。

3.調査地のMOBを倒す。


 などがあるみたいだ。マドイさんにレクチャーされながら、やたら出てくるゴブリンを狩っていると、すぐにゲージがMAXになった。意外と簡単なんだな。調査の関係でいつの間にか森の奥まで来ていたみたいだ。


 僕とマドイさんは町長へ報告を行うために、今来た道を引き返し始めた。


 歩くこと二十分ほどで、森の外の光が見えてきた。しかし、そこに至るための道の途中で、何かが戦っている。よく目を凝らして見て見ると、戦っているのは、通常のゴブリンより二回り大きく、装備を立派にしたゴブリンと、それに対峙しているのは、今日だけですでに何度も見た金髪の男。NPCのウェイルズだった。

変更点

靴→ズボン

死に戻り(バックレヴィバル)→死に戻り

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