防衛六十七回目
すいません。
投稿したつもりがされてなかった・・・。
集合して必要な物をそろえると、すぐにメタルガドを出ようとしたが、その前にやることがある。
ここまで着いてきたササをどうするか本人に聞かなきゃいけない。
本来なら僕達が護衛としてファルフラムの町に連れ戻さなくてはいけないのだろうが、それをしているとイベントに間に合わない可能性がずいぶんと高くなってしまう。
自分勝手かもしれないけど、イベントが終わるまで待ってもらうか別の護衛を雇って戻ってもらうかを相談しなくちゃ。
「んじゃ、私もついてくわ。また護衛よろしくな」
ササの泊まっている宿に戻って今起こっていることと、これからの僕達の行動を彼女に告げたときの返答である。
理由を尋ねてみたところ、こういうところには大抵ウェイルズがいるとの事で、装備の修繕は私がやると言っていた。それと、マドイさんの試作弓の完成を目指すためにはウッドロックにある素材がたくさん必要だかららしい。
これによりササの同行が決定した。
僕達はササを守りながら、今日中にウッドロックの町まで行かなくちゃいけない。ちゃんと道を通れば強力なMOBはめったに出ないらしいけど、確率は0じゃない以上警戒を怠ってはいけない。自然と進む速度は少し遅くなってしまう。
そうと決まれば早めに出たほうが言いに決まってる!
「ちょっと待ってくれない?私の武器は」
姉さんの発した一言に場の空気が凍る。あれ?さっきの依頼受けたときには新調してなかったっけ?
「さっき持ってなかったっけ?」
「死に戻りしたときに落としたわよ」
先日手持ちのアイテムを全ロストした姉さんは、数を揃えられなくて手持ちが少ない状態だったらしい。そのため、タダでさえ確率の低い、手持ち武器のドロップが起きたのか。
「・・・まだ調達してなかったの?」
「お金がないからに決まってるでしょ」
「なんだ?武器持ってねえのか?よし、ユイシロ、手持ちはどれぐらいもってる」
ササの問いに首を振りながら、あんまり持ってないという。
それを聞いたササは、簡素な槍を取り出して手渡す。
「んじゃ、この辺かね。今後素材とかを持ち込めばどんどんグレードアップしてくぜ。素材によってはお前だけのオリジナル武器を作ってやれるかもな」
「あら?それは嬉しいわね。それじゃあこれは貰っておくわね」
受け取った槍をクルクルと回しながら立ち去ろうとするも、ササからの無言の圧力を浴びておとなしくお金を払っていた。
「走れ走れ!アレに掴まったら全滅だぞ!俺が一番先頭で足元を確認するから、ユイシロさんは殿!マドイさんは適度に矢で牽制!ヤマトは前から敵が出てきたら強力なやつをぶち込め」
後ろからバキバキと乾いたものを砕くような音が響いてくる。
必死に後ろを振り返らずに走るも、音がどんどん大きくなってきているのは気のせいではなく、後ろを振り返ると追跡者が木々を極力避けながら近づいてきているのがよく分かる。
木々の隙間から差し込む、夕暮れの太陽の光が照らし出しているのは、木を無理やり人間にしたかのような異形の姿だ。
確かこういうMOBってトレントとかって言わなかったっけ?それともドリアード?あれ?二種類とも同じだったっけ?
「ササはあれが何か分かる?」
「すまんが分からん。それよか今は逃げなきゃな」
他のゲーム知識でも何とかなるといいんだけど・・・そうだ。炎系の魔法を使えば倒せるんじゃ・・・だめだ、僕は水系統の触媒しか持ってない。それより、桜の杖は炎系の魔法の威力が下がっちゃうんだよね。
「誰か現在地って分かるか?」
「このまままっすぐ走って10分で抜ける」
「森を抜ければこっちのもんだ!出てきたところをタコ殴りにしてやる!」
「・・・結局戦うんだね」
「だって、あれ絶対にボスMOBだろ」
あのMOBは擬態が出来るみたいで、獣道を進んでいるときに、先程までただの木であったはずなのに襲いかかってきた。
しかも、単体の攻撃力が結構あるみたいで、奇襲をモロに受けた姉さんのHPは、まだレベルが低いとはいえ危険域まで下がってしまった。
姉さんのHPが回復する時間を稼ぐためにケイが前に出るも、それを嘲笑うかのように周囲の木を操って後衛の僕やマドイさんに鋭い木の槍を突き込んでくる始末。
こんなのをまともに相手できるわけもなく、ササがいるから死に戻りして再度別ルートでウッドロックに行くなんて事も出来ない。
結果、全員全力ダッシュでこの森を抜けることになった。
周囲に木がない環境であれば、僕達の実力でも十分倒せるハズのMOBなので、この森を抜けてもまだついてきていれば僕達の勝ちだ。
あれ?こういうMOBって指定のエリアより外には出なかったような・・・。
僕の思ったことを証明するかのように、木が少しずつ疎らになってくると、どんどん追いかけてくる音が小さくなっていった。
「ありゃ?追って来ないな」
「まあ、なんにせよ助かったんだからいいじゃないか。なのになんでお前はそんなに残念そうな顔をしてんだ?」
「だってよう、できれば倒したいじゃねえか。いい素材落とすんじゃないか?」
「そちゃあ落とすだろうけどよ、わざわざ時間が無いときに戦うことは無いだろ」
「烏丸。今度の防衛戦が終わってからでも遅くないから、早く行こう」
ケイの肩をポンポンと叩くと、諦めたのか溜め息を吐くと首を振りながら森を出るために走る。
だが、先ほどまで聞こえてきていた音が再び聞こえた気がした。
僕以外の耳にも聞こえたみたいで、ケイとマドイさんがキョロキョロと周囲を警戒し始める。そして、それは現れた。
合計で4体に増えたトレント――――正式名称を知らないのでそう仮定することにした――――達が全員で追いかけてきた。
その背後には、木を無理やり人型にして動かしているかのようなMOBが登場した。人型だからドリアードかな?まさかトレントみたいな男だからトレントマンとか?
あれ?この状況って大ピンチじゃ・・・。
「やったねケイ。たくさん出てきたよ!好きなだけ戦えるよ」
「オイ馬鹿やめろ。てか、1対1ならともかく、あの数相手にしてられるかってんだよ!」
「トレイン」
誰だ今呟いたの。そんなこと言われたら逃げにくくなるじゃないか。ケイもその呟きを耳にしてしまったらしく、足を止めてしまっている。
こんな、ろくでもないことを言うのは姉さんに決まっている。
「ちょっとなんで足を止めてんのよ。逃げるんじゃなかったの?それとも受けて立っちゃうのかしら?」
あれ?姉さんじゃないの?ササはNPCだからトレインなんて言葉を知っているはずが無いし・・・まさか、ね。
マドイさんを見やると、弓に矢を番えながら少し険しい雰囲気をかもし出している。その中、MOBの群れを見る目は獲物を見つけた肉食動物のような雰囲気も感じる。
今のマドイさんに襲われて色々されても簿kは本望だ。と考えてしまうレベルでカッコいい。
完全に戦う気満々でいらっしゃる。
「ちょ、マドイさん?」
「大丈夫。私が足止めするから」
「ここじゃ思いっきり不利よ。戦うんなら森を出てからにしなさい」
「・・・分かった」
マドイさんはいつから戦闘民族になってしまったんだろう。これは姉さんの影響がでかいのかな?姉さんと合わせたくなくなってきた。
とにかく今は森の外へ。
しかし、あと少しで森から出れるというところで、何かに躓いて倒れこんでしまった。
立ち上がろうとするも、足に何かが絡み付いてきて立ち上がることが困難になってしまう。慌てて足元を確認すると、木の根っこが突き出してきていて、僕の足を拘束していた。
僕がついて来ていないことに気がついたのか、マドイさんが振り返り、戻ってこようとしているが、それを手を払うように動かすことで押しとどめる。
森の外に出たマドイさんが矢を射ってけん制するも、大して効果があるようには思えない。
ああ、僕はここで死に戻りかな?僕一人じゃこの森は突破できないし、イベントには参加できそうにないなぁ。
諦めが肝心だよね。
目の前に接近してきたトレントの、木の虚を無理やり顔の形に整えたかのような、不快な気分になる顔を無表情で眺めていると、その顔が急に視界から消えた。それとほぼ同時に足の拘束が無くなる。
その直後に視界に入ってきたのは、拳を振りぬいた体勢で目の前を通過する、灰色の髪の、温厚そうな青年と、足に巻きついていた木の根を切ってくれたであろう、黒髪に鉄製の装備を身に纏った男だ。
「よっしゃ、ちょうどいい獲物じゃねえか。さっさと狩ってウッドロックに行くぞ」
「やれやれ、迷子になってたのによく言うよ。えっと、横取りした形になっちゃいそうだけど大丈夫かい?」
「いえ、助かりました」
颯爽と現れ、手を差し出してきたフォックスに対して、きっと僕が女の子だったら惚れていただろうことだけは分かる。




