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最強は自我を持つNPC?  作者: 現実↓逃避
第2章 種族間の問題と移動要塞
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防衛六十五回目

 ・・・ここが裏口ですか。確かに見張り番は少ないみたいですね。

 私、メシュリカはエルフ軍の総大将にされ、冒険者から買い取った双眼鏡という名の道具で裏口の出入り口を確認している。

 ここの情報はアシュカが持ち帰ってきてくれたものだ。

 当のアシュカは、ただの偵察を威力偵察と勘違いして暴れまわったみたいなので町の防衛へと回しました。異論は認めません。


 ふむ、表で冒険者の方々が奮闘してくださっているのでまだこの要塞も動き出す気配はありませんし、戦力も大分引き付けていてくれるみたいです。

 しかし、アシュカが威力偵察をしてしまったせいで、警戒度が跳ね上がっているようで、なかなか攻め込むタイミングが掴めません。

 ここはやはりその道のプロにお願いするべきでしたね。


 おや?剣戟の音がしますね。冒険者達の戦闘音はここまで聞こえていなかったはずですが・・・彼らそこまで攻め込むことが出来たんでしょうか?

 出入り口に立っていたドワーフ達は振り返り、中に対して警戒を行い、外への警戒が疎かになっているようです。

 攻めるなら今なんでしょうか?

 軍務の人を見ると、僅かにうなずかれたので、前進の指示を出すことにしましょう。

 あれが罠だった時の事を考慮して慎重に前進させます。


「狙撃部隊は突入する人たちを援護してください。行きますよ」


 手を一度高く掲げると、眼前へと振り下ろす。

 エルフ達は大きな声を上げることなく静かに走り出し、いまだこちらに気がつかないドワーフへと襲い掛かる。

 突如背後から攻撃受けたドワーフ達は慌ててこちらに向き直るも、中で暴れている冒険者の投げたナイフが後頭部に突き刺さり、その場に崩れ落ちる。

 そして私は、中で暴れていた冒険者の姿を見ることが出来ました。

 中で暴れていたのは、面識のある、ウェイルズさんでした。。

 防具をあっちこっち損壊させ、HPも残り少ないのに右手に握りこんだ剣が閃くたびにドワーフ達が倒れて消えていく。


「ウェイルズさんの援護をしてください。決して死なせてはいけません!ウッドスパイク!!」


 指示を出してから率先して魔法を唱えます。

 木の槍が足元から突き出し、複数のドワーフの足を貫いてダメージを与える。

 突如生えた木の槍に驚いた表情をしたウェイルズさんは、ようやく私達エルフの存在に気がついたみたいです。

 しかし、そのせいで一瞬動きが止まってしまう。


「後ろ!!」

「ッ!」


 彼に向けてそう叫ぶと、横なぎに振られる斧を、体を沈みこませることで避け、自分の体を影にする形で突き出した剣を相手の腹に突き刺す。


「ここを一時的な拠点とします!壁の魔法を使えるものは通路を塞ぎなさい!これ以上ドワーフ達が出てこれないようにするのです!それが終わったらHPの減っている人に回復薬を飲ませてください!全部終わったら主だったものを全員集めなさい。ウェイルズさんから話を聞きます」


 皆があわただしく動き始めると、私は回復薬を口にするウェイルズさんに近づいていきます。

 中で何が遭ったのかを聞きましょう。


 ●●●



 ふう、なんとか生き残ることが出来たか・・・タイミングよくエルフの軍勢が来てくれなきゃ十中八九死んでた。

 座り込んで貰った回復薬を喉に流し込み、HPが完全に回復するまでの時間で装備の点検をする。

 防具の方は鍛冶師に修復を依頼しなきゃ使えないな。

 武器の方はっと・・・所々刃こぼれしてるのは分かるが、詳しいことはやっぱり本職に頼まなくちゃいけなさそうだ。

 正直この防衛戦ではこの装備品達はもう使えないだろう。

 無理に使おうとしたら二度と使えなくなるまで壊れる。というより、戦闘中に壊れてしまうかもしれん。

 アイテム欄の中に代理で使える装備がないかどうかを探していると、メシュリカがゆっくりと近づいてくる。


「ウェイルズさん。今ちょっとよろしいですか?」

「ああ、別に構わないが?何かあったのか?」

「詳しくは皆が集まったら話します。ここだと他の者の耳もありますのでついて来てくれませんか?」

「・・・分かった」


 ここは素直についていくことにしよう。いろいろと情報を共有しなくちゃいけないしな。



「それでは緊急会議を始めます。まずはウェイルズさん。あなたがあの中で見聞きした情報を教えていただけませんか?もちろん相応のお礼はさせてもらいます」

「・・・元から情報は渡す予定だったが、まあ、もらえるものは貰っておこう」

「はい。期待して置いてください。それで、何があったのですか?」


 とりあえず囲まれるまでのことをかいつまんで話をすると、難しそうな顔をするエルフ達。


「死をも恐れぬか・・・厄介すぎるな。」

「あの中に何人いるか分からんが、それだとすぐに人がいなくなるんじゃないのか?」

「その事なんだがな、こっからがもっと重要なんだ」

「これ以上悪い情報でもあるのか?」

「・・・奴らは死んでも生き返る」

「「「・・・?」」」


 言っている意味が良く分かっていないのか、首を傾げる面々を見て、やっぱりそういう反応になるよなと思ってしまう。

 俺も聞いたときは信じられなかったからな。


「死んでも生き返るとは・・・冒険者のようにですか?」

「そうだ。実際に俺が殺した奴が、脱出するときに襲い掛かってきたんだ。それに、侵入したことはともかく、まだ一度も見つかっていなかった筈なのにこっちの顔を見たかのような口ぶりで探してきていた。それに、やけに捜索の手が回るのが早かったな」

「・・・それは本当なのか?」

「なんか神様に選ばれたーとかほざいてたな」

「・・・新しい宗教団体か何かか?」


 エルフの皆様に頭のほうを心配され始めるドワーフ達だが、厄介なことには変わりない。倒しても倒しても無限に戦闘を挑んでくる集団。

 生き返ることが確実だから命を投げ出した特攻も簡単に行われる。たとえ生き返るとしても痛みはあるはずなんだがな。冒険者連中と同じように痛みを感じないのか?いやしかし、攻撃を加えたときに即死しなかった奴は呻いていたんだがな・・・死んだときだけ痛みを感じなくなるのか?


「冒険者と同じように死なないとは・・・」

「冒険者連中に任せようにも、支給した秘宝を使わない限り我々の町に死に戻りは出来なくなっておりますし・・・このままですと敗北は確定です」


 重い沈黙が空間を支配している。

 確かにこのままだと敗北は必至。この情報を他の奴らに伝えたら防衛戦を行うだけの士気を保てないだろうことすら予測できてしまう。


「そういえばさ、冒険者って拠点の町の転移石に死に戻りするんだよな?」

「はい。そうですね」

「その転移石を壊すと冒険者は死に戻り出来なくなるのか?」

「いえ、その町を拠点にする前に立ち寄った町の転移石に死に戻りするようです」

「じゃあさ、あの要塞内にも転移石に順ずる何かがあると考えてもいいんじゃないか?」

「・・・確かにその可能性は高いですね」


 周囲のエルフ達は皆して納得したような顔をしている。


「ということは、それを壊せば――」

「もう復活はしてこないだろうな」

「・・・兵の皆さんに詳しい話をしなければいけませんね」

「士気の方は大丈夫ですか?」

「たぶん大丈夫じゃないか、目標が無い状態で延々と復活する敵を相手にするより、目標物を壊して敵の復活を阻止する。これをするしかないんだから嫌でも上げざるを得ない。なんせ負ければ滅亡の危機だからな」


 もっと紛糾するかと思ったんだが、意外とすんなりと決定していった。

 いや、会議のたびにいろいろ言ってきた男がまたゴチャゴチャ抜かしたが、メシュリカの手によって抑えられていた。

 まったく。それが役割なのかもしれないが、もう少し言葉を選ぼうぜ。

 メシュリカもお仕置き中に若干青筋浮かべてたぞ。

 しかもあいつお仕置き中に嬉しそうな笑みを浮かべていたことを知っているのは、たぶん俺だけじゃないと思うぞ。


「では、私は冒険者の方々に話をつけてきます。あなたは軍の人たちに伝えてください」

「了解しました」


 うーん。もう一人での侵入は危険過ぎるよな。そうだ、冒険者の現状を確認しに行こう。

 そんなことを思った自分をぶん殴りたい。


「あ、ウェイルズさん。見かけなかったけど?よかったら僕達とパーティを組んでください」


 いきなりヤマトに絡まれたんですけど。張っ倒してもいいすかね?

 とりあえず一発頬を張っておいた。


「何をするんですか!」

「すまん。ついうっかりイラついてな。悪いとも思ってないし反省もする気は無い」

「ちょっ!」


 何事かをギャアギャア叫んでいる奴は放置して、冒険者達の現在の様子も分かったことだし、再び突撃するためにその場を立ち去ろうとした。

 しかし、服のすそを引っ張られたので、しかたなしに立ち止まって振り返った。


「・・・」

「話してくれないか?」

「二人足りない」

「何が」

「パーティメンバー」

「あれか?俺に入れと言ってんのか」


無言でうなずかれた。正直一人じゃキツイからはいってもかまわないんだが、大きな不安要素があるから入りたくない。

 不安要素?なんか嫌な予感がするんだよ!

 たまに訪れるこういった感覚には逆らわないようにしてんだよ。


「断る」

「・・・そう」


 だからそんなに残念そうな空気を出すんじゃない。心が痛むだろう!

 しかし、そこでもたついたのがいけないのだろうか?


「マドイさんどうしたんだ!」

「ほら、烏丸落ち着いて。深呼吸はい、吸ってー、吐いてー」

「いやいや、なんでそんな残念そうな空気を漂わせてんだ?」

「パーティ申請断られただけだよ。向こうにもいろいろあるんだからその程度で怒ったらダメだよ」


 赤髪が常識人だと!?

 嘘だろ?いきなりスライム相手に死に戻りするような奴だぞ。


「あの、全部聞いてるんですけど」

「・・・悪いな」

「そんな哀れんだ目をしないでよ!烏丸だって死に戻りぐらいするじゃん!」

「スライム相手には・・・」


 なんか悪いこと言ったかな?事実を言っただけなんだが。それよりも今こいつ烏丸って呼ばれなかったか!?

 この場を急いで離れようとしたが遅かった。


「何そいつ?まさかとは思うけど烏丸君を困らせてるんじゃないでしょうね」

「いえ、俺は別の場所に用がありますので。それではここで」


 その場を早急に離脱することに成功した。

 ああいう、なんていったっけ?冒険者がヤンデレとか言っているのを耳にしたことあるが、まさしくその類のものだと思う。

 そんな奴とは接点を持ちたくない。ええ、持ちたくありませんとも。

 いまだに剣戟の音が僅かに聞こえる要塞に目を向け、どうしたものか悩みながらエルフの陣営へと戻ることにした。

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