防衛六十三回目
突き出される槍を剣で捌き、打ち下ろされる戦斧は身を引くことで避ける。壁はすでに壊されたのだろう、銃の弾が撃ちだされるが、それは今までの経験で、見ないで弾道を予測。最低限の弾を剣で弾き、後は躱わすことに専念する。
しかし、たった2人で数えるのも面倒になるような数の敵と戦って勝てるわけも無く、徐々にHPを削られ、すでに危険域まで減っている。集中を僅かでも切らしたら即効で袋叩きにされて殺されるのは確実だ。
「体制を立て直しました!もう大丈夫です!」
「よ~し、とにかく俺たちのところまで来てくれ、早く来なきゃ死に戻りで報酬が減っちまうぞ~」
「おい、俺は死に戻りなんぞ出来ねえよ」
「こっちの奴は絶対に死ぬ事態には持ってくなよ~、アレの攻略にきっと必要になるからな~。つうことでもう少しだけ粘るか。なんだったら俺が最後の肉壁になってやんよ」
ヘラヘラと笑いながらそんなことを言ってくるが、そんな言葉は一片も信用はしない。
その言葉に返事をせずに、無言でドワーフ達を切り殺す。
そこに、目の前のドワーフが手斧を放り投げてきた。反射的に剣を叩きつけて逸らす間に接近してき奴に組み付かれてしまう。
次の瞬間、組み付いてきたドワーフごと俺に槍を突き込んできた。
「んな!?」
わき腹に走る激痛に顔を顰めつつも、その槍を持っている奴の頭に剣を叩き付ける。
消えていく奴らは無視して、剣をふるい続けた。
色々考えるのはこいつらを撃退してからだ!
「うらあぁ!!」
一度体を回し、周囲にいた奴らを切ると、ジャンプして目の前のドワーフの肩に飛び乗る。
「くそ、ワシの肩から降りふぅ」
喚くドワーフの顔めがけて剣を振り下ろし、次の獲物の肩へと飛び移る。そんな攻撃を繰り返すうちに、戦列がだんだんと乱れ、足並みがそろわなくなってきた。
・・・もう少しか。
「おい!1人で勝手に奥進んでんじゃねえよ!お前もうあんまりHP無いだろ!」
群がる虫を蹴散らすように俺と合流をしたギルド長が文句を言ってくるが、これでようやく敵の戦列は乱れ、そこに盾を持つ冒険者たちが雪崩れ込んでいく。これにより、今度は相手が体制を立て直すために戦線を下げていっている。
だが、それを見逃す彼らではない。
一気に攻め立て、次々と討ち取っていった。
「敵の大将倒しました!」
「おうし、お前は特別ボーナスをやろう!お前ら!周囲と歩調を合わせ、あんまり欲に目がくらまないように指示出してる奴を根絶やしにしろ!」
「おら、チャンスだ!攻めろ攻めろ!ギルマスからもらえる報酬が高くなるぞ!」
テンションが高くなっていく冒険者たちの後ろをゆっくりとついていくことにしよう。ああ、回復薬もシッカリと飲んでHPを回復しておかなきゃな。
「前線を一気に押し上げろ!要塞に近づいたらタンク組はひたすら耐え抜け!HPが切れても耐え抜けよ~」
「ええ!?それって死に戻りしろってことですか」
「違う違う。中に先遣隊を放り込むから、そいつらが適当に混乱させてくれるだろうからな」
「あ、はい」
HPが回復していくのを見ている間に状況はどんどん変わっていく。
冒険者が少人数単位で次々と要塞内に入っていく。そして、中からは激しい攻防をしているのだろう。金属同士を叩き付け合う音が響き渡る。
さてさて、HPがそれなりに回復してきたから突撃するかな?
「どうした~?お前もあん中に混ざりたいのか?」
「冗談を言われても答える余裕は無いもので。こっからは俺は別行動だ。じゃあな」
そう告げると、ギルド長が何かを言う前にさっさとこの場を立ち去る。
だからといって今も冒険者たちが侵入して行っている場所からではなく、もっと別の場所。
確か大きな出入り口が3箇所の他に、裏口であろう場所が1箇所あったな。
頭の中に地図を思い浮かべると、裏口向けて走り始めた。
裏口が見えるところで隠れるて見ているが、それなりに強そうな見張りが5人以上いる。
お互いが背を向け合っており、死角が無くなる様に立っている。
こういうときは何かを投げて気を引くのが鉄板だが・・・。
ダメもとで木の上にから拾った石を放り投げると2人の見張りが反応し、確かめるためにゆっくりと近づいていく。
残りの見張り達は、自分たちの持ち場から一歩も動かない。それでいて動いた2人の方もシッカリと気にしているのだ。これじゃあ侵入できねえな。
どうしたものか考えていると、元の位置に戻った見張り含め、全員が一箇所を注視し始めた。
・・・なんだ?
おもむろに見張りの中の1人が懐から銃を取り出すと、茂みに向けて弾を撃ち込んだ。
すると、僅かなうめき声が聞こえると、もう3人の見張りが同じところへ弾を叩き込む。
茂みの向こうで、誰かが死んで消えるときの光が僅かに見えた。
それを満足そうな顔で確認した見張りは、自分の仕事に戻っていく。
弾を打ち込んだ奴らが持ち場に戻って視線を戻すタイミングで1人のエルフの少年が飛び出してきた。
虚を突かれたのは銃を撃ったドワーフだけで、他の奴らはしっかりと対応をする。
銃口を向けられた少年は反射的に腰にはいた剣を抜き放つと、それが偶然飛んできた弾を弾いた。しかし、衝撃で手から剣を取り落としてしまう。
「チッ、運のいい奴だ!」
「な、もう1人!?」
反射的に身を潜めていたところから飛び出してしまっていた。
くそ、1人でこんな所に来てんじゃねえよ!
少年エルフの襟首をつかむと、無理やり地面に引き倒す。
おかげで少年に弾が当たることは避けられたが、代わりに俺の右腕を掠めてしまった。
「このバカが!お前は下がってろ!あいつらの攻撃は全部俺が弾く!」
「僕だってやれる!やれるんだ!」
「そもそもお前はこんなところに一人でいて、何してんだ!!」
「・・・偵察です」
「偵察は相手の行動を探って、味方に報告するのが仕事だろうが!」
「これは威力偵察だ」
「・・・お前もう戻れ」
こんなバカなやり取りを、呆けた顔で停止ぢていたドワーフ達のスイッチが再び入った。
「撃て撃て!今なら当て放題だぞ!蜂の巣にしろ!」
「「「お、おう」」」
「「こっちが決着ついてからにしろ(てください)!!」」
腑に落ちない、なんともいえない表情でこちらを見てくるのを尻目に、こっちはエルフの少年、アシュカとの言い争いを再会する。
くそ、なんて分からず屋なんだ!!
何が威力偵察だ!そういうのはもっと情報と人数を集めてからするもんだろうが!!
・・・もう力ずくで・・・。
「そんなに言って!僕が弱いって事ですか!?」
「当たり前だ!!さっさと戻って現状を自軍に伝えろ!それがお前の仕事だろうが」
「俺たちがそれを許すわけ無いだろうが!」
「「お前らは黙っていろ(てください)!!」」
「「「・・・解せぬ」」」
先ほどからずっと微妙な表情しかしていないドワーフ達は完全に無視だ無視!このアホをしっかり言い聞かせて拠点に帰らせなければ!
「いいから戻れ!」
「僕はこれでも精鋭部隊に入れる程度の実力はあるんだ!威力偵察程度は簡単に出来る!」
「だから威力偵察じゃなくて、普通の偵察だろうが!」
「確かにメシュリカ様は偵察と言いました!これは1当てして、敵戦力の力を把握しろということでしょう!!」
「違えよバカスケ!」
「お前らは何律儀に黙ってんだ!さっさと片付けるぞ」
ドワーフの中の誰かがそう言うと、1発の銃弾が飛来してきた。
飛んできた銃弾を剣先に当てると、撫でるように弾道を逸らす。
撃った奴を2人して睨み付ける。
「先にこいつらを片付けるか」
「そうですね。それからゆっくりお話しますか」
きっと奴らからしたら俺たちは2匹の獣に見えたことだろう。若干後ずさっているしな。
実際俺たちは奴らを邪魔な獲物を見る目でしか見てないから。
「・・・偵察はどうしたんだよ!!」
「その辺のお話はお前らを片付けてからだ!!」
「話の邪魔です」
「頭を冷やせぇぇぇぇぇ!!」
邪魔で鬱陶しい奴らを殲滅するために、2人とも剣を構えて突っ込み、蹴散らしていった。
「・・・これじゃあ偵察もクソもねえな」
「・・・そうですね。僕は報告に戻りますね」
「じゃあな」
敵を全部片付け、アシュカへの説教を終えることで、ようやく頭が冷めた。
そして、自分の行った行動を思い返して頭を抱えることとなった。そんな俺と同じように頭を抱えているアシュカの図。
じゃなくて、とりあえず冷静さを取り戻した俺たちは、それぞれがやるべきことを成すために、再び行動を始めた。




